あの「クレヨンしんちゃん アッパレ!嵐を呼ぶ戦国大合戦」(脚本、監督は「河童のクゥと夏休み」の原恵一)を、正続「ALWAYS 三丁目の夕日」で連続ヒットをとばした山崎貴がリメイクする……このニュースを聞いたときは、さすが目のつけどころが違う、と感じ入った。泣かせるツボを知っているというか。
当時小学生だった娘はあのアニメで、見終わって中華料理屋に移動してからまで号泣していたくらいだ。しかしよく考えると不安要素もある。
・「戦国大合戦」は、ラストの青空にむけてストーリーのすべてが収束する完璧な脚本だった。あれをどんな俳優で実現する?
・合戦シーンを実写でやろうと思えば、それは当然黒澤明を再現することにほかならない。その覚悟が山崎にあるのか?
……思い切った手段で解決してました。
わたしは「戦国大合戦」における“青空侍”のパートだけ、つまり野原一家の部分を省いてリメイクするのかと思っていたら、ヒロシ(名は変えてある)は筒井道隆、ミサエは夏川結衣という、いい感じに脱力した配役でほぼ丸ごとしんちゃんを移し替えているのだ。
加えて、原恵一がアニメのときに徹底的にこだわった合戦のやり方(考証に時間をかけまくったらしい)を踏襲し、そうか長槍はこうやって使ったのかと観客を納得させるつくりがうれしい。
そしてそれ以上に、脇役に香川京子と油井昌由樹、衣装デザインは黒澤和子とクロサワっぽいメンバーで固めたのが大正解。特に香川京子の所作の美しさには感嘆した(ラストの新垣結衣との走り方の差に注目)。
もちろん欠点もある。子役も含めて、全体に演技がギクシャクしているし、お得意のCGももうちょっと何とかならなかったかとも思う。しかし草剪剛はちゃんと戦国時代の顔になっているし、ガッキーもかわいい(この人はひょっとしてすごく背が高くないか?)。おまけに大沢たかおは絶対にこんな悪役の方が似合っている(草なぎとの一騎討ちはみごとだった)。
「あなたがた(野原一家)に不幸は似合わない」
戦国時代から遠くはなれて、お姫様が語るように平成の世が得たものは野原家に代表される安穏。現代人は戦国からほんの少しの勇気をもらい、現代は戦国時代に平和と自由をかいま見させた。ひとりで見たりなんかして悪かった。娘よ、しんちゃんの時のようにまたいっしょに見よう。そしてまた中華料理屋に行こうな。
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