事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

河童のクゥと夏休み~3日目

2007-08-09 | アニメ・コミック・ゲーム

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2日目はこちら

 クレヨンしんちゃんとこの映画は、実は設定が驚くほどよく似ている。舞台は東京圏ではあるが田舎の風景が残っている東久留米(しんちゃんはもちろん春日部)。

夫婦と兄妹の四人家族+犬(オッサン、と名づけられたこの犬が、シロと同じようにまことに泣かせる)の一家。オープニングの江戸時代の情景は「戦国大合戦」のタッチそのままだし、クライマックスはなんと「オトナ帝国」同様、東京タワー!だ。

 ひとりぼっちになったクゥが、その東京タワーに逃げ込み「ここ(東京)はまるで、人間の巣だ……」とつぶやくシーンがある。ひたすらに巨大な東京と比較し、ポツンとタワーにへたりこむクゥは絶望的に小さい。もう、このあたりから涙がとまらなくなる。だからこそ、ここにやってくるとんでもない訪問者がうれしい(序盤に伏線を提示済み)。

Title02_1  とにかく主人公のクゥがいい。江戸時代からほとんどタイムスリップした形の彼は、河童であることの誇りを胸に、礼儀正しく、凛(りん)としているのだ。父親を侍に斬られた記憶のために(日本刀の一閃を思い出してしまうから)光るものが苦手なのに、康一の家族と記念写真を撮るときは

「この光は、こわくない」

と微笑む。彼らが家族になった瞬間だ。ウルウル。そしてこのあたたかさと対極にあるのが、異物をひたすら珍しがり、かわいいとはやし立てるくせに、なんらかの自己主張をその異物がみせた瞬間に排除にかかるマスコミ、そして視聴者たち。つまり、現代人なのだろう。

注意:ネタバレになるのでここから先は未見の読者は読まない方がいいかと。

 おそらく、これから先もこんな別れのシーンは描かれないと思う。なにしろ康一は『ある場所』へ、クゥを宅急便を利用して送るのである。夢の場所へは、康一といえども立ち入ることができないからだ。隣町のコンビニにおけるこの別れは胸をうつ。泣いたなあ。

 この映画は、声高に環境保護やいじめをやめましょうと語るわけではない。「千と千尋の神隠し」とは違い、クゥは最後まで自分の本名を思い出せない。つまり彼が本来帰るべき場所は失われてしまっているのだ。いじめを受けていた少女は、康一やクゥとの交流で少し元気になるけれど、引っ越してゆく不安のために、康一にさよならをしたあとすぐに肩を落とす。飼い犬をなぐることでしかいじめられた憂さを晴らせなかった、オッサンの前の飼い主の現状もまた、知らされないままだ。

 状況は絶望的。しかしクゥがどこかで生きているという思いが、われわれ観客をほんの少しだけ勇気づけてくれる。西欧のこどもには聖夜に奇跡が訪れる。しかし日本では、奇跡は夏休みに起こるのである。

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河童のクゥと夏休み~2日目

2007-08-09 | アニメ・コミック・ゲーム

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1日目はこちら

 長井での学習会を終え、国道13号線を北上しているときだった。めずらしくFMを聴いていると(いつもはMDでガンガンにロックを流して無理矢理テンションを上げている)、ある番組のゲストにオオヤマユリカというアーティストが出演していた。

大山百合香

ソニーが現在大プッシュしている沖永良部島出身ボーカリスト。元ちとせとならぶ“離島系”(笑)だそうだ。

 いかにもな沖縄方言で語る彼女に、MCが「その携帯の待ち受け画面は?」ときくと「島の友だちが、砂浜にわたしの名前を書いて、その写真を送ってくれたんです。」
 いい話じゃん。

 その日彼女が歌ったのは「夏のしずく」という曲。生で、アコースティックピアノをバックに歌い上げたその曲に、わたしはほとんど感動していた。やるなーこの新人。

 MCも同様だったようで、心底感じ入った様子で「大山さん、すごいわ」と語りかけていた。

「で、この曲は今日公開されたばかりの映画の主題歌なんですよね?」

「はい。『河童のクゥと夏休み』という映画で、さっきまで池袋での舞台あいさつに監督の原恵一さんと行ってました」

「どうでした?お客さんの反応は」

「見終わってからのあいさつだったんですけど、みんな目をはらしてて(笑)」

 そうか。原の新作はやっぱりかなり泣かせる映画だったのか。こりゃ見逃すわけにはいかないぞ!

……引っぱりすぎだと批判もありましたがお待たせ。「河童のクゥと夏休み」はこんなストーリーの映画だ。

夏休み前のある日、康一は学校の帰り道で大きな石を見つける。石を持ち帰り水で洗うと、中からなんと河童の子供が!人間の言葉を話し、何百年も地中に閉じこめられていた河童を、康一は鳴き声から「クゥ」と命名。最初は驚いた両親や妹もクゥを受け入れ、家族だけの秘密にして一緒に暮らし始める。だがそんなある日、クゥが突然「仲間のところへ帰る」と言いだす。康一はクゥを連れ、河童伝説の残る岩手県・遠野へ向かうが…。

3日目につづく

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