このタイトルで、主演が阿部サダヲなのだから、歴然としたコメディだと誰だって予想する。イメージとしては「超高速!参勤交代」あたりかな。
でもちょっと肌合いは違った。いやもちろんコメディ色はかなり強いんだけど、実は感動大作でした。大作、は言いすぎか。でもわれらが庄内映画村、じゃなくて名前が変わってスタジオセディック庄内オープンセットで撮っているし、なにしろ超豪華キャストなのでそれくらいは(笑)。
原作は「武士の家計簿」の磯田道史の評伝。仙台藩で実際にあったお話なのだそうだ。藩主は見栄っぱりだし、あの藩は「樅の木は残った」で知られるようにいろいろとあったところなので金欠状態。
おかげで領民は理不尽な賦役に苦しんでいた。そのため、一千両(現在の価値で3億円)の金を百姓たち(というか半農半商な感じ)は集め、藩に貸し出して苦役から脱しようとする。
これがメインのストーリーなんだけど、味わい深いのはむしろ金を集めてからのほうで、出資者たちはルールをつくって自らを律しようとするのだ。けんかや言い争いを慎み、寄付するときに名前を出すことを慎み、道を歩くときはすみっこを歩き、飲み会では下座に座る……そしてこれらを子々孫々にまで守らせようと決める。
だからこのお話は、寺の和尚が書き残していなければ、誰も知らないままになっていたことになる。なんという謙虚さ!
監督は伊坂幸太郎原作ものでおなじみの中村義洋。彼と「奇跡のリンゴ」で組んだ阿部サダヲ、「アヒルと鴨のコインロッカー」で組んだ瑛太(濱田岳がナレーションで参加)、「ゴールデンスランバー」やチームバチスタのシリーズ(もう新作つくらないのかなあ)の竹内結子が結集していい感じ。
そしてそして、最後に“あの人”が出てきたのでびっくり!他のお客さんたちは驚いていなかったようなので、みんな知ってたんですか。いやー驚いた。
実在する人々のお話なので、ラストに子孫が営むお店が出てくる。小さくて、つつしみ深い店構え。彼らの謙虚さは、まだちゃんと生き残っていたのだ。いい話だったなあ。
あの人の登場は演じているキャストに秘密だったらしく、演じながらマジに驚いてるらしいです。
キャストのリアクションが素だったってのは
これもいい話だなあ。
にしても、あの役はこの映画で最大の悪役の
はずなのに、憎めないのはあのキャスティングの
おかげかな(^o^)
誰よりも“金”がほしいのねー。