Vol.39「黄金のバックル」はこちら。
今回の犯人は“天才”。高いIQの持ち主たちが集まるクラブにおける殺人。トリックはアナログオーディオプレイヤーを使ったアリバイづくり。登場人物たちがことごとく天才である場所へ、彼らにくらべればIQは低く(わかんないけれど)、風采も上がらない凡人である刑事がのりこんでくる。
地道に捜査を進めるコロンボに、天才たちがそれぞれ推理を披露するのだが、これがなかなか迷推理のオンパレードなので笑えます。
IQは、精神年齢÷生活年齢×100で求められるわけだから、パブリックイメージとして天才少年・天才少女がある。いわゆる神童。ドラマの構図は、無垢なる精神をもった神童が、世俗にまみれるうちに次第に輝きを失い、ついにはつまらない理由で殺人を犯してしまう哀しさが基調になっている。世間は実は天才なるものを嫌っており、二十歳すぎればただの人になることを期待してもいるのだ。
コロンボは世智に長けたずるい大人の象徴。チャイルディッシュな犯人(セオドア・バイケル)にとって、彼はだから悪魔のように見える。
コロンボは語る。
「あたし、どこへ行っても秀才にお目にかかってる。あたし考えました。連中よりせっせと働いて、もっと時間かけて、本を読んで、注意深くやりゃ、ものになるんじゃないかと。……なりましたよ」
凡人の、勝利宣言。天才であるがゆえの人間的なもろさをコロンボに痛撃され、天才は降伏する。原題はTHE BYE-BYE SKY HIGH I.Q. MURDER CASE。空高いほどの知能をもつかわりに、地に足のついた考え方のできなかった男の悲劇。
「忘れられたスター」でいつまでも美しいところを見せたジャネット・リーの愛娘ジェイミー・リー・カーティスが、はすっぱな(だからこのドラマではむしろ健康に見える)ウェイトレス役で出演しているのでうれしいっす。
Vol.41「死者のメッセージ」につづく。
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