「さくらん」~吉原篇はこちら。
監督:川島雄三 出演:新珠三千代 三橋達也 轟夕起子
伝法な新珠三千代にゾクゾクする。生活力のない、わけありの二人が赤線地帯の寸前で踏んばりきれず、女はもとの娼婦に戻ろうとする。しかし……
「幕末純情伝」しか見ていなかった川島雄三(「花に嵐のたとえもあるぞ、サヨナラだけが人生だ」の名文句で有名。今村昌平の師匠です)の、これは本領を発揮した風俗映画。確かに名人技だ。俗なる新珠と、聖なる芦川いずみ(藤竜也の奥さんです)を対比させ、その間でゆれうごく三橋達也のたよりなさがいい。まるで上質のフランス映画のよう。
洲崎は現在の江東区木場。売春防止法が国会で通り、昭和33年4月1日施行までの微妙な時期のお話。当時の洲崎には800人以上の娼婦がいたのだとか。吉原などと違い、値段の安さが特徴だったようだ。湯屋の陰から永井荷風でも出てきそうな風情。もう若くない娼婦が、飲み屋でくだをまきながら、どうしてすぐにこの町にもどってしまうのかを訥々と話す場面など、渋い。
飲み屋の女将を演じる轟夕起子が、素人さんとしての醒めた感じを絶妙に☆☆☆★★
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