PART2「励み場」はこちら。
三人のまだ若い武士たち。彼らは日々の屈託を剣の腕を磨くことで雲散させている。時代は江戸幕府が開かれてから百八十年。身分制度はほぼ固定され(「半席」「名子」のような例外もあるとはいえ)、戦など遠い彼方だ。ということは、武士というものの存在価値が問われる時代でもある。そんな時代なのに、三人が通う道場の主は武者修行の旅に出ている。弟子たちも、竹刀での打ち合いが主流の時代に木剣で打ち合っている……
時代錯誤の男たちに、一本の刀と辻斬り事件が提供され、彼らの運命を急転させて行く。商家の跡取りが金で侍の身分を買い、辻斬り犯人として主人公を疑うあたりの展開は、武家社会への批判として有効。松本清張賞受賞作。
PART4「伊賀の残光」につづく。
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