おしぼりで手足を拭いて、手のひらをマッサージしていると、オカンがなにか言いたそうに、口をパクパク動かしている。
「………………」
「なに?どうしたん?」
「………………」
オカンの口元を注意深く見て言葉を探った。
「ありがとうって、言いよるん?」
オカンは小さくうなずいた。
ベストセラー街道驀進。あのリリー・フランキーの、しかも長編小説が売れる時代だなんてどうなってんだ。ナンシー関亡きあと、彼女のレベルぐらいに活字で笑わせてくれるフォロワーを探していたが、学校事務職員出身の小田嶋隆はさぼり気味。西原理恵子はある事件にまきこまれて鬱病状態。ここはやはり、ぶっちぎりでリリーが先行か。
そんな男が自分の家族と本気で向き合った小説が「東京タワー」。筑豊から東京に出てきた青年の半生記。平成の「青春の門」的自伝だ。とにかく泣かせる。夜半に読み始め、母親が亡くなって葬儀社のクルマで遺体を運ぶ場面、昔住んでいた家をまわってくれと運転手に頼むあたりから、この春に自分の母親が死んだときにも似たようなことがあったと思い返して涙がとまらなくなった。枕元においたシャツで鼻水をふきながら読んでいたらもうグショグショ。妻に見つからないようにゴミ箱に捨てたのに、いきなり発見されて叱られた。いい歳してティッシュ使えよオレも。
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