事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「座席ナンバー7Aの恐怖」セバスチャン・フィツェック著 文藝春秋

2019-10-20 | ミステリ

乗客ナンバー23の消失」のセバスチャン・フィツェックの新作。というかこの人はドイツ本国では大ベストセラー作家のようで、次から次へと書き続け、そしてヒットを飛ばしている。だから前作との3年の間にもっと書いているし、未訳の作品もたいそう残っているらしい。そのあたりがよく理解できるサービス満点の一冊。

でも、前作のときも言いましたけど、ここまでサービスしてくれなくてもいいんじゃないかなあ。まず、設定がすごいんですよ。ブエノスアイレスからベルリンへの13時間のお話で

・主人公は飛行機恐怖症の精神科医

・彼の娘は出産寸前で何者かに拉致される

・おまけにHIV陽性

・拉致の犯人の動機は驚天動地のもの(これを読んで〇〇が飲めなくなる人は絶対にいる)

・主人公はあるテロ事件に関係した女性を診察した経験がある

・その女性が客室乗務員として搭乗している

……ありえないだろっ!と突っこまれるのを承知で作者は強引な理屈でねじふせる。はたして、金属探知機など気にせず、武器を持ちこまないで飛行機を墜落させる方法とは?犯人の目的は?

乗客乗員すべてに一度は疑いが向くように書いてあり、あのジェフリー・ディーヴァーだってそこまではやらないであろうどんでん返しの連続。

なにより、主人公がまことに変わっている。数多くの飛行機事故をもとに計算し、もっとも危なくない席と安全な席を選択。んで、乗るのは1人なのに四つも席をとるんだよ(笑)。しかも妻が亡くなるときに(その妻も望んでいるだろうと)病室を抜け出し、別の女と寝たりするのである。おまけにその女性を使って事件を解決しようと……お前最低だよ。

もちろんそれも込みでハッピーエンドに持っていくのがベストセラー作家というもの。にしても、これをドイツ国民は大喜びで読むのか。さすがゲルマンは身体と度量が大きい。


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