事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「乗客ナンバー23の消失」セバスチャン・フィツェック著 文藝春秋

2019-05-10 | ミステリ

昨年のミステリランキングを見ていて、こりゃあ面白そうだと狙いをつけてました。で、ようやく図書館で見つけて(そうかドイツ文学の棚だったのか)一気読み。しかしジェフリー・ディーヴァー路線かと思ったら全然違う展開でした。

まず、主人公の捜査官の壊れっぷりがすごい。5年前に妻子をある事情で失い、生きる希望を失っている男。潜入捜査官として、えーとこれは本筋とは関係ないからばらしてもいいのかな。エイズ陽性の客たちが少女たちと寝るというHIVパーティにもぐりこむために……うわああそこまでやるか。っていうかそんなパーティほんとにあるのか。あるんだろうな。

そんな彼に、妻子が亡くなった客船へ来いと某人物から連絡が入る。お前の妻と息子はまだ生きているかもしれないと。

酒田にも豪華客船が入港するようになり、町のいたるところに外国人がドッと広がるのはありがたい話。いっぱいお金を落としていってね。しかしそんな客船から、毎年一定数の客が消えているのだという。業界は必死で隠しているが、船から飛び降りればかなりの確率で即死するし、生きていたとしてもスクリューが待っている。ダークな業界ものとしても楽しめます。楽しんでどうする。

にしても、犯人の動機や、妻子が消えた理由など、おそろしく陰惨。「特捜部Q」などもそうだけれども、ヨーロッパのミステリはそのあたりがちょっとしんどい。逆に、近ごろの北欧ミステリの隆盛を考えると、英米ミステリのドライさに飽き足らない読者が日本にも増えてきたということだろうか。

それからこれは微妙な話だけれども、事件が一応の解決を見て、作者のあとがきが始まったからと言って油断してはいけません。ここから作者、セバスチャン・フィツェックの企みが炸裂します。

びっくりした。そして、予想とは違った形ではあったけれども面白かった。さあ次は新作「座席ナンバー7Aの恐怖」を読まなくては。今度は飛行機かあ。

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