シネコンの上映時間をチェックしている親子(十代の女子&おかあさん)がもめている。
「『オーシャンズ』にしましょうよ」とおかあさん。
「えー」娘は不満げだ。「のだめ」か「アバター」あたりがお望みなのだろう。
「たまには感動するような映画も観ましょうよ」
「うー」
はたして親子がその後どの映画を選択したかはわからない。わたしがその場面に遭遇したのは、ちょうど「オーシャンズ」を観て帰るときだったから。
「感動ねぇ。」
と複雑な思い。エコ嫌いで、自然なんぞについぞ感動したことのないわたしを基準に考えるのはいかがなものかと思うけれど……。
無粋なわたしがこの作品を選んだのは、例によって出張帰りで、たまたま時間がちょうどよかったから。「長い時間をかけて撮影した海洋ドキュメンタリー、か。きっとすごい場面が連続はするけれど、ちょいと退屈だったりもするんだろうな」と予想し、そのとおりの作品ではあった。監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」の(大人の方の)トト。
意表をついてイグアナ(海に棲むイグアナもいるんすねっ!)から始まり、空中を浮遊するようなクジラのジャンプ、イワシの群舞や、ミサイルのように海中に突き刺さる海鳥、カメラと同調するかのように泳ぐイルカ……どうやって撮ったんだと不思議に思うような場面が確かにつづく。きわめつけは何万体ものカニが山のように積み重なって脱皮する光景。カニアレルギーのうちの娘が観たら卒倒するかもしれない。
後半に連続する「海の多様性を守れ」というメッセージの一環で、日本のクジラ漁や、フカヒレだけを切り取って生きたまま胴体を投げ捨てるシーンへの批判的な描き方に日本人として反撥している観客も多い。
しかしそれと同時に、三川イオンシネマでは、なんと「アバター」よりも観客を集めているという事実もまた存在する。環境保護というメッセージもまた、グローバルスタンダードになっているわけだ。皮肉ではなく、ああそういう時代なんだと感じた次第。「うまそうだなあ」と舌なめずりをしながら観ていた食いしんぼもいただろうけれども。
それからね、配給のギャガにとっては久しぶりのヒット作でめでたいわけだけど、エンディングによけいな曲をつけるおせっかいはマジでやめて。平原綾香好きである中年男ですら、ちょっとひいた。客をなめてんのか。
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