“「砂の器」がわからない”はこちら。
「霧の旗」は1965年に製作された、山田洋次唯一のサスペンス映画。【原作:松本清張】は、日本の芸能界ではトップブランドなので、二時間ドラマ枠で何度も何度も制作されているし、山口百恵主演でリメイクもされている(’77 東宝)。主役が若い女性で、純朴な田舎のOLから都会のホステスまでを演じること、ベテラン男優に土下座までさせる見せ場があること、撲殺や刺殺などの派手な殺人が連続して行われることなどで映像化に向いているのだろう。見たことがある読者は多いと思います。
で、このいわば名作に、どうしても納得できない点がいくつもあるので特集します。ネタバレがガンガン出てくるのでよろしく。
ストーリーを順を追って紹介しましょう。わずらわしいので役名は俳優名でいきます。
熊本のOL、倍賞千恵子は、思いつめた表情で列車を乗り継ぎ、東京に出てくる(車内の光景を短くつなぐ手法は同じ松竹製作、松本清張原作の「張り込み」を踏襲している)。高名な弁護士、滝沢修の事務所を訪れ、殺人罪に問われている兄(露口茂)の弁護を依頼するため。しかし滝沢は、自分の弁護料は高額であり、多忙でもあることからその依頼を断る……
ここで第一の疑問。依頼を断られた倍賞は「先生は、わたしがお金を払えないから弁護ができないというんですね?!貧乏人は無実であっても死刑になっても仕方がないというんですか」と逆ギレする。これ、とりあえず無茶でしょ?
いや、貧しい人間が貧しい弁護しか受けられないという法の下の不平等を肯定しているわけではない。それ以前に、倍賞の言い分があまりに理不尽なのである。
滝沢はこう説明したのだ。
「自分の弁護料は高額です。それは、それだけの経費をかけるということでもあるんですよ。わたしが東京から熊本へ何度も赴くということは、交通費や日当だけでもあなたの負担はどんどん膨れあがりますよ」
「わざわざ熊本から訪ねてくれたことは光栄ですが、名が知れているだけにわたしは多くの事件をかかえています(おそらくは民事)。ですからお兄さんの事件にかける時間は相対的に小さなものになってしまいます。」
「九州にも、いい弁護士はたくさんいますよ」
……もちろん言い訳。でも、わたしがもし滝沢だったら同じ返答をしただろう。以下次号。
お子さんもいますよー。いないように思われるかもしれないけど、家庭生活が破綻しているようによく誤解されてます(T_T)
確かに今日から山形はてんやわんやしています。路面すべりまくり。ああそんな心配がないところに住みたい……
さて、松本清張は好きとか嫌いとか以前に、とにかく
突っこみどころが満載。
「点と線」に致命的な欠陥があるとされているのは
有名ですが(わたしはどこだかさっぱり)、
それでも、人間というものをそこまで性悪説でとらえるのかと
お勉強になります。
米倉涼子などで今でも勝負ネタとして清張原作が使用されている
ことを考えると、わたしたちみんながやっぱり松本清張を
無視できないんでしょう。