古典部、小市民シリーズに続く米澤穂信の学園ミステリ。どうやら版元の集英社は“図書委員”シリーズとして売り出したいようだ。
前作の「本と鍵の季節」は短篇集だが、意外なほどダークな味わいで、実はそこが少し不満だった。というのは、わたしが米澤ワールドの高校生たちに期待しているのは、暗いように見えてもその底にあるだろう一種の楽天性だからだ。
その点、長篇としての「栞と嘘の季節」では、人がいい堀川と顔がいい松倉の図書委員コンビが、仲がいいようで疎遠なようで微妙な距離感があっていい感じだ。延々と続くワイズクラック(へらずぐち)の応酬と、競い合う推理合戦。直木賞をとった「黒牢城」が時代小説だったので、この楽しさは久しぶりだ。
写真部の生徒が校舎の裏側で(ごめん、場所の特定にも工夫があったのに)撮った写真があるコンクールで受賞する。モデルの女生徒が握っていたのは、毒草であるトリカブトだった。いったいなぜ、誰が……
学校の図書館が舞台。となれば意識せざるをえない超有名ミステリが存在するわけで、ちゃーんとその本も重要なポイントになっています。図書館のルールが主役たちを“信用できない語り手”にするあたりの工夫もすばらしい。
美人すぎる女子生徒が、その美しさのために苦しんでいるあたりの描写も学園小説の王道か。いやはややっぱり米澤穂信はいい。