同じ東電OL殺人事件をモチーフにしながら、「彼女の人生は間違いじゃない」とはおそろしく肌合いが違う作品になっている。廣木隆一と園子温の体質の差が出たというか。
オープニングから水野美紀がヘア丸出しで登場し、刑事であり、不倫中であることが明かされ、そこに神楽坂恵と冨樫真がやっぱり素っ裸で現れ……
でもわたしにはこの作品は冗長にすぎた。夫に奉仕するためにスリッパをそろえることが何度もリフレインされるのが、理解はできても退屈。期待しすぎたのかなあ。
佐野真一のルポと同様、あのOLと父親はある種の関係にあったとする説を園子温もとっている。しかしわたしは、平凡な育ち方をした人間が簡単に転落することが恋の罪であると思っているので、この設定は効いていないのではないだろうか。
もちろん「冷たい熱帯魚」と同様に、異常な殺人が舞台劇のように行われるシーンのために、不可欠だったのかもしれないけれども。