ジャーナリストのローダが長年放置してきた顔の傷痕を消す決意をしたのは、母親の再婚がきっかけだったのかもしれない。高名な形成外科医を訪ねた彼女は、医師の所有する荘園に滞在して手術を受けることになる。庭には古代のストーンサークルがあり、そこでかつて魔女が処刑されたという伝説が残っていた。手術の夜、そのストーンサークルに不審な光が…そして翌朝、ローダはベッドで扼殺死体となっていた。ダルグリッシュ率いる特捜チームが現場に急行するが、事件の影にはさまざまな秘密が!シリーズが、ついに重要な節目を迎える話題作。
これもまた読書の楽しみ。ハメットのように動きがあるわけでもない静謐なミステリ。もう90才!になったジェイムズのファンならおわかりのはず。内心では「これが遺作になるのかなー」とハラハラしながら彼女の新作は読まなければならない。ジェイムズもそのあたりは承知しているようで、ダルグリッシュの現役の捜査は今回で終了してもおかしくない造りになっている。
舞台はひたすらイギリスらしい荘園のお屋敷。高名な整形外科医の所有するその館で、“有能な”女性ルポライターは自費患者(原題)として顔の傷を除去する手術を受ける。しかしその夜、彼女の部屋に殺人者が……
例によって殺す方も殺される方も徹底的に描き込まれているので、まるで犯罪が必然であったかのように誤解できる。そして意外な人物が“絶対悪”としてあらわれるあたりの呼吸がすばらしい。終盤のツイストも決まってたっぷりと堪能できました。ミステリの王国であるイギリスをこれだけ感じさせる作品もめずらしい。おばあちゃん、あと一作お願い。