事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ドーン」Dawn 平野啓一郎著 講談社

2010-02-17 | 本と雑誌

Dawnbc 2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?愛はやり直せる。(「BOOK」データベースより)

「正しいことを誰かが語っていると感じた時には、決して言葉だけを記憶してはならない。その人間の顔と声とを必ず一緒に記憶するのだ。そして、何度でも思い返しなさい。その言葉がどんな顔とどんな声で語られたのかを……」

しかし時代は可塑整形まで行われている。

「《個人》って言うのは、英語でindividual(インディヴィジュアル)でしょう?これは元々は『分ける』っていう意味のdivideに、否定の接頭辞のinがついて『分けることができないもの』っていう意味なんだよね。ところが、日本語で《分人》って言ってるそのdividual(ディヴ)は、《個人》も対人関係ごとに、あるいは居場所ごとに、もっとこまかく『分けることができる』って発想なんだ。」

平野啓一郎がこの作品で描いたものが、「決壊」とは真逆に、圧倒的なポジティブさだったことに驚かされる。ブッシュの時代へのいらつきが、韜晦では世の中は変わらないと平野に思わせたのだろう。直接的なネオコンへの嫌悪と、社会を変えるためにどうすればよいのか、という歯ぎしりに似た発露がこれでもかとつめこんである。

おそらくはそのことで「若造の青臭いたわごと」と斬ってすれる向きもあろう。しかしわたしは積極的に支持する。韜晦では世の中は変わらないことを、すでにわたしたちの世代は十分に知っていたのではなかったか?

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