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ケフィアの話(3)

2006年08月07日 17時35分19秒 | Weblog
(前回の続き)ヨーロッパでは牛乳を放置すれば自然にヨーグルトになると言いました。
しかし、風土に根ざす乳酸菌は全て同じではありません。したがって出来てくるヨーグルトも違います。これまではわかりやすく牛乳を醗酵すればヨーグルトになると言いましたが、ヨーグルトはブルガリアやトルコなど、バルカン地方が発祥の地と言われています。ブルガリアやトルコでは牛乳を放置すればヨーグルトになりますが、その他の地方ではそれぞれ違う発酵乳が出来ます。つまりヨーグルトはブルガリアやトルコの発酵乳を指している言葉です。したがって発酵乳と言う言葉はヨーグルトの上位概念です。そして各地域にはそれぞれ固有の名前を持った発酵乳があります。

世界各地には、それぞれの風土に適した乳酸菌が生息していて、牛乳や山羊乳、馬乳などの獣乳を醗酵しています。
北欧では主として低温で醗酵する乳酸球菌が旺盛に生育していて、ラクトコッカス・クレモリスなどの粘質物を作る乳酸菌によって発酵したフィンランドのヴィリやスエーデンのロングミルクなどが有名です。
バルカン地方から中近東にかけては高温性の連鎖球菌(ストレプトコッカス)と乳酸桿菌(ラクトバチルス)による発酵乳が主体になり、ブルガリアやトルコのヨーグルトがその代表です。グルジアにはマッツオーニという発酵乳がありますが、やはり連鎖球菌と乳酸桿菌で醗酵していますので、ヨーグルトに近い風味です。昨今流行っていたカスピ海ヨーグルトは乳酸菌の構成や粘り気のある食感から、グルジアのマッツオーニよりもむしろ北欧のヴィリなどに近いように思います。
コーカサスから中央アジアのモンゴルにかけての発酵乳は、乳酸菌と酵母で醗酵するのが特徴です。コーカサスのケフィア、モンゴルのクーミスなどです。

大まかに分けると、ヴィリやテッテに代表される北欧の発酵乳は乳酸球菌、ヨーグルトに代表されるバルカン地方から中近東にかけては連鎖球菌と乳酸桿菌で発酵しています。
ケフィアやクーミスなどコーカサスから蒙古にいたる中央アジアの発酵乳には乳酸菌の他に酵母で醗酵しています。

ちなみに、ブルガリアではヨーグルトのことをキセロ・ムリャコ(Kislo mliako)と呼んでいたようで、パスツール研究所の客員研究員であったメチニコフがブルガリアを旅行したとき、長寿者が多いことに気がつき、その原因がキセロ・ムリャコを常食しているためであろうと考え、「人生および長寿論」という本を書いたことがきっかけで、ブルガリアの伝統的発酵乳であったヨーグルトがヨーロッパに広がったと言われています。ところがメチニコフが長寿をもたらすと説いたヨーグルトの醗酵菌であるブルガリア菌が腸まで達しないことが判明したこと、メチニコフ自身も70数歳で早死してしまったことにより、ヨーグルト長寿説がすっかり廃れてしまうことになるのですが、その後の発酵乳・乳酸菌研究の契機になった功績は大きいと思います。
メチニコフは「白血球の食菌現象における免疫学」という研究発表によってノーベル生理医学賞を得たロシア人です。(次回に続きます)
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