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ブルガリア政府の定めたヨーグルトの製造基準として、乳酸菌の規制は正しいか?

2011年09月20日 13時59分57秒 | Weblog
 今日の朝日新聞朝刊(2011年9月20日)によると、ブルガリア政府はヨーグルトに新基準を制定したようです。以下に記事の一部を抜粋して紹介し、私見を述べます。

 「政府がブルガリアヨーグルトの厳格な基準を定めたのは昨年7月、乳酸菌は古くから受け継がれている政府指定のブルガリア菌とサーモフィルス菌を使用。材料には牛、羊、水牛、ヤギの生乳を用い、粉末乳や防腐剤を認めない。ミルクの種類によって脂肪分やたんぱく質の量も細かく規定。温度管理は2~6度。賞味期限は酸味が強くなりすぎないよう20日以内とした。」
「なぜ今、基準が必要なのか。ナイデノフ農業・食糧相は「この20年間でヨーグルトの質は劇的に変わってしまった。伝統の味を次世代に残したい」と話す。
 共産主義時代にも基準があり、全生産者に順守が義務づけられていたが、冷戦終結後の1998年、欧州連合加盟をめざす当時の政府が、共産主義の基準では市場経済に対応できないと判断。強制力のない「指針」に弱めた結果、低コストの粉末乳や防腐剤を大量に使った製品が市場に増えたという。
 食文化の変化も追い打ちをかけた。西欧の食品が流れ込むと甘みの強いヨーグルトを好む若者が急増し、酸味が強い伝統品は輸入品にとって代わられた。」

 日本からみるとブルガリアはヨーロッパの一国に見えますが、ブルガリア人はヨーロッパは異文化と映るようです。ロシアでも若者の嗜好が伝統のケフィアからヨーグルトに変わったように、共産経済から市場経済に移行すると、ダノンなどのヨーロッパのメーカーのヨーグルトが市場を席捲したことがうかがわれます。それと同時に金儲け優先の業者が粗悪な製品を作って、自国のヨーグルトの評価が下がってしまったということがあったのでしょう。
 私がブルガリアを訪れたのは3年前ですが、ホテルの朝食バイキングでも、スーパーマーケットでもダノンなどのヨーロッパブランドのヨーグルトが目立っていました。ヨーグルトの本場のブルガリア政府としては看過できないことでしょう。

 国際酪農連盟においても、ヨーグルトを「ブルガリア菌とサーモフィルス菌で発酵させたもの」と定義していますから、ブルガリア政府はヨーグルト生産に用いる乳酸菌をブルガリア菌とサーモフィルス菌と定めたことは理解できます。しかし、古くから受け継がれている政府指定の乳酸菌と定めたことは問題です。最近は世界的に乳酸菌の研究は活発になり、同じブルガリア菌でも菌株によって風味や生理効果に差があることがわかってきました。ブルガリアでも政府指定の乳酸菌を管理している国立乳酸菌研究所だけでなく、国立乳酸菌研究所から独立した研究者達が設立した民間の乳酸菌研究所があります。例えばブルガリア国立乳酸菌研究所の初代研究所長マリア・コンドラテンコ氏が興したゲネジス研究所は、ブルガリアの自然の中から風味の良いブルガリア菌をスクリーニングし、酸味の穏やかなラクトバチルス・ブルガリクスGBN1株を分離しました。牛乳の代わりに粉末乳を使うような業者を規制することは当然としても、ヨーグルトに使用できる乳酸菌の規制はゲネジス研究所のような乳酸菌研究を地道に行い、より風味の良い、そしてより健康に役立つヨーグルトを開発している研究者の意欲をそぐことにならないかと危惧します。ヨーロッパ諸国の研究者達もプロバイオティクスの国際シンポジュウムを毎年開催して、乳酸菌と人の健康の研究を続けています。ブルガリア政府は政府指定のブルガリア菌とサーモフィルス菌しか認めないという考え方では、長い目で見るとヨーグルトの本場ブルガリアのヨーグルトが世界のヨーグルト研究に立ち遅れることにならないだろうか?
コメント
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