ホームメイド・ケフィアを好きな方のために

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ケフィアの話(2)

2006年08月01日 15時44分29秒 | Weblog
----------------------(パスツールのフラスコ)---------------------
フラスコの中にスープを入れ、下から加熱すると蒸気でサイフォン状のガラス管の中が滅菌され、冷やしたときに外気を吸い込んでもガラス管壁に微生物が付着してスープの中まで入らないので、スープが無菌に保たれ腐敗しない。ガラス管を折ると外気とともに微生物が入ってスープが腐敗する。つまりスープの腐敗は微生物の作用であることを証明した有名な実験です。                   --------------------------------------------------------------

(前回の続きです)ところで、その乳酸菌ですがおそらく人類の起源よりも古く、人類がその恩恵に浴してきたのですが、牛乳が乳酸菌の働きによってヨーグルトになることを理解できるようになるのは、微生物学の父と呼ばれたパスツールを待たなければなりませんでした。

パスツール以前は、生命の自然発生説が信じられていて、ワインやヨーグルトは自然に出来るものだと思われていたのです。しかしパスツールは有名な「白鳥の頸型のフラスコ」によって生命は生命から生まれることを証明したのです。つまり微生物の存在を初めて証明したのです。ワインは酵母の、そしてヨーグルトは乳酸菌の生命現象の結果出来る物であることを初めて明らかにしたのです。そして1857年「乳酸発酵に関する報告」という有名な論文の中で乳酸菌の存在を始めて明らかにしたのです。

皆さんは「低温殺菌牛乳」をご存知ですね。この殺菌方法もまたパスツールの業績に負うものです。パスツールがワインの酸敗の研究をしていた頃、ヨーロッパに結核が蔓延しました。結核を媒介したのが牛乳であったのです。牛乳中に結核菌がいてそれを飲むと結核にかかるわけですから、牛乳を煮沸殺菌すればよいと考えるのが普通でしょう。しかしパスツールはそうしなかった。先ほどヨーロッパでは牛乳を放置すれば自然にヨーグルトになると言いました。牛乳の中の微生物を全部殺菌してしまうとヨーグルトにならなくなるのです。牛乳を保存できなくなるのです。乳酸菌がヨーロッパの食文化を育んできたのですから、牛乳中に乳酸菌がいなくなると言うことは非常に困るのです。
そこでパスツールは牛乳中の結核菌だけを殺菌しようと考えたのです。いろいろ研究した結果、病原菌は熱に弱い。比較的低温で殺菌できることがわかったのです。
牛乳を65℃、30分加熱すると結核菌がいなくなるが、乳酸菌が生き残ることを発見したのです。パスツールが低温殺菌方法を開発したおかげで牛乳の中の乳酸菌が生き残り、相変わらず牛乳を放置しても腐らない、発酵乳の食文化が生き残ることになるのです。

しかし、日本では事情が違います。最初にお話しましたように牛乳を放置すればヨーグルトにならないで腐ります。したがって日本の牛乳は超高温殺菌法(UHT殺菌)といって130℃、2秒の加熱殺菌によって、牛乳中の微生物を全部殺菌する方法をとっています。紙パックで販売されている大手乳業会社の市販牛乳は全てUHT殺菌牛乳です。したがって紙パック牛乳の中にはほとんど雑菌が残っていません。温暖多湿のわが国の気候風土でもホームメイド・ケフィアの醗酵が可能になったのは、UHT殺菌された紙パック牛乳の普及のおかげです。

ところが地方の牧場や牛乳処理場に行きますと、パスと呼ばれる殺菌釜が置いています。パスはパスツールのパスです。地方の中小乳業ではパスツールの開発した低温殺菌方法で牛乳を殺菌して市販しているのです。
パスツールの開発した低温殺菌は病原菌を殺菌しますが、乳酸菌を殺菌しない方法です。牛乳を放置してもヨーグルトになる性質を残すために開発された方法です。ところが最初にお話しましたように、日本では放置するとヨーグルトにならないでほとんどの場合腐敗します。つまり低温殺菌で病原菌が殺菌できても腐敗菌は殺菌できないのです。低温殺菌牛乳は足が速い(腐りやすい)といわれるのはそのためです。特に夏場は搾乳牛舎の環境も悪く、流通過程でも牛乳の温度が上がり、生き残っている雑菌が繁殖しやすいので、ホームメイド・ケフィアを作るとき、低温殺菌牛乳を用いることは危険です。(以下、次回に続きます)
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