陰陽師的日常

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「褒められて伸びる」の反対は?

2009-07-03 22:42:25 | weblog
先日アンケートで「あなたは褒められて伸びるタイプか、批判されてがんばるタイプか」という二択があって、変な気がした。

「褒められて伸びる」と「批判されてがんばる」というのは、対義関係にあるんだろうか?

「褒められて伸びる」の反対は、「褒められるとすぐいい気になってダメになる」
「批判されてがんばる」の反対は、「ちょっとの批判ですぐにくじけてしまう」ではあるまいか。

察するに、このアンケートが対象としているのは、教えや指導を受ける側のようだ。教えや指導を受ける側というのは、何かができない、できるようになるためにはいまの能力のままでは不十分である、という状態にあるのだろう。できていれば、それで教わる必要はないのだから。

教わっている側は、何よりも、いまの自分のどこがダメなのかわかっていない(だからうまくいかない)。となると、教える側・指導する側が最初にやることは、「どこがダメなのか」の指摘で、そこから「その状態を改善するにはいったいどうしたらよいのか」に進んでいくわけだ。

結局、教えられる側は、自分のダメなところ、できないところに向き合わなければどうしようもない。先生や指導者がたとえ優しい言葉遣いをしてくれたとしても、できない箇所・ダメな箇所の指摘は、おもしろくないし、つらいことだし、屈辱を感じることだってあるし、自分が情けなくなって落ち込みたくもなるだろう。だが、できない自分をつきつけられることは、何かを学ぼうとすれば避けては通れない。あるていどできるようになっても、ここから先はできてない、ここから先へはいまのままでは進めない、という関門はついてまわる。逆にいえば、「できる」ということは、「そこから先はできないけれど、そこまでならできる」という見極めがつけられる、ということだ。教わる必要がなくなった、というのは、ひとりで自分にダメ出しができるようになる、というだけの話なのである(そこまで行くには実際大変なのだが)。

最近「わたしは褒められて伸びるタイプなんです」という物言いに、結構な確率で出くわす。言いたいのは「だからわたしを批判しないで」ということなのだろう。

でもなあ、と思うのである。できるんだったら、もうそれは放っておいてもいい。うまくやれるのなら、ほうっておいてもうまくやれるのだ。そうではなくて、問題は、できないところ、ダメなところ、おかしな考え方をしているところ、筋道を見失っているところ、自分に欠けているところ、劣っているところ、考えの及ばないところ、気がついていないところ、知識のないところ……なのである。教える側は、結局はそれを教えるためにいるのだ。

もちろん、よくできている箇所や、よく考えられている箇所も指摘する。それは、見方を変えれば褒めているということにもなるのだが、それは「できていないところ」と「できているところ」の区別をするためにそうしているのだ。
つまり、「褒める」も「批判する」も同じことを別の角度からやっているのである。だが、褒められてウカウカと喜んでいるうちに、肝心の「できていないところ」を見落としてしまうことにもなりかねない。

批判されたくない、悪く言われたくない、欠点を指摘されたくない、それは誰だって同じだ。けれど、できないことができるようになったときの喜びは、どんな褒め言葉よりうれしいはずだ。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (コウ)
2009-07-04 02:37:28
陰陽師さんに一票!

まったくもって同感です。本末転倒方面には気をつけたいものです^^
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コウさん、こんばんは (陰陽師)
2009-07-05 22:40:20
この間、ちょっと副鼻腔炎をこじらせていて、体調が悪かったんです。またゆっくりレスポンスさせてくださいね。
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こんばんは^^ (コウ)
2009-07-06 03:37:06
大丈夫ですか?

レスに関してはお気遣いなく^^
そんなことより、くれぐれも身体を大事にしてください。
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