陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

トマス・ハーディ「アリシアの日記」その8.

2010-06-03 23:21:30 | 翻訳
その8.

四月五日

 ムッシュー・ド・ラ・フェストの手紙は、まったく理にかなっていると思われるのだが、キャロラインはそのことで心を痛めている。ムッシュー・ド・ラ・フェストは、わざわざ海峡を越えてイギリスにまでいらっしゃり、またお帰りにならなければならないのだから、この海のひどく荒れた時期、会いに来ていただくには及ばない。まして五月になればお仕事でロンドンにいらっしゃるのだから、そのときならいらっしゃるのもお帰りになるのも、都合がよいはずだ。キャロラインもあの方の妻となれば、もっと実際的になるにちがいない。だが、いまはまだほんのねんねで、理屈を言っても納得しようとしない。とはいえ、自分の花嫁道具の準備など、しなければならないことはたくさんあるのだから、時間などすぐに過ぎていくはずだ。余裕を持って式の支度を整えようと思えば、すぐにも取りかかる必要がある。キャロラインが半ば喪に服した状態で、結婚するようなことがあってはならないのだ。母がもしそのことを知ったとしても、それを望まないにちがいないし、この点に限っては、ふだん聞き分けの良いキャロラインが、かたくなに言い張るのは奇妙な気がする。


四月三十日

 今月はツバメの背に乗ったような勢いで過ぎていった。わたしたちは興奮状態にある――わたしまでも、あの子のように――どうしてかよくわからないのだけれど。手紙によると、あと十日したら、あの方がほんとうにお越しになる。

(今日は短いんですが、つぎの日記が長くて、全部訳せなかったので、つづきは明日)


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