最終回
「穀物ですって?」と運転手は聞いた。「馬の名前の話でしょ、たとえば、小麦とかなんとかだっていいんですかね?
「そういうことだ」ミスター・ジョンスンは言った。「実際のところ、もっと話を簡単にすると、CとRとLを含む名前の馬なら何だっていい。単純なことなんだよ」
「トールコーンだったらどうです?」運転手は目を輝かせている。「お客さんが言う馬の名前っていうのは、たとえばトールコーンなんかもそうですよね?」
「すばらしい」ミスター・ジョンスンは言った。「これが君のお金だよ」
「トールコーン」運転手は口に出した。「お客さん、ありがとうございます」
「じゃ、さよなら」ミスター・ジョンスンは言った。
自分のアパートメントがある一画で降りると、まっすぐ部屋に上がっていった。ドアを開けて中に入り「ただいま」と声をかける。するとミセス・ジョンスンが台所から「お帰りなさい、早かったのね」と応えた。
「タクシーを使ったんだ。チーズケーキのことも思い出してね。晩ご飯は何かね」
ミセス・ジョンスンは台所から出てくると、夫にキスをした。頼もしい感じの女性で、ミスター・ジョンスン同様に、にこやかな表情である。
「今日は大変でした?」
「いや、それほどでもなかった」ミスター・ジョンスンはコートをクロゼットにかけながら答えた。「君の方はどうだったのかい?」
「まあまあ」妻の方は、台所の戸口に立ち、ミスター・ジョンスンはアームチェアに腰かけて、はき心地の良い靴を脱ぐと、今朝買った新聞を取りだした。「あっちでもこっちでも」と彼女は言った。
「ぼくの方は、悪くない一日だった。若いふたりを取り持ってやったし」
「よかったわね。わたしはお昼に少し寝て、一日じゅう、のんびり過ごしてたの。朝のうち、デパートへ行ったんだけど、すぐ横にいた女が万引きをしてたの。だから警備員に言って、つかまえてもらった。犬も三匹、野犬センターに送ったわ。まあいつものことね。そうそう」と急に思い出したらしく、つけ加えた。「それはそうと」
「どうしたんだい?」ミスター・ジョンスンはたずねた。
「あのね、今日、バスに乗ったんだけど、運転手に乗車券ください、って言ったの。そしたらわたしを後回しにして、よその人を先にしようとするものだから、失礼なことをしないで、って言ってやったの。そしたら言い争いになっちゃって。それで、『軍隊に入ったらどう?』って言ってやった。大きな声で言ったから、きっとみんなに聞こえたんだと思うの。それからその人の番号を控えておいて、苦情係りに出したの。きっとクビになるでしょうね」
「結構。だが君、ずいぶん疲れたみたいだが。明日は役を交替してあげようか?」
「そうしてくれるとありがたいわ。きっと気分転換になるはず」
「わかったよ。晩ご飯は何かな」
「子牛のカツレツよ」
「昼に食べたんだがね」とミスター・ジョンスンは言った。
(※後日手を入れてサイトにアップします。お楽しみに)
「穀物ですって?」と運転手は聞いた。「馬の名前の話でしょ、たとえば、小麦とかなんとかだっていいんですかね?
「そういうことだ」ミスター・ジョンスンは言った。「実際のところ、もっと話を簡単にすると、CとRとLを含む名前の馬なら何だっていい。単純なことなんだよ」
「トールコーンだったらどうです?」運転手は目を輝かせている。「お客さんが言う馬の名前っていうのは、たとえばトールコーンなんかもそうですよね?」
「すばらしい」ミスター・ジョンスンは言った。「これが君のお金だよ」
「トールコーン」運転手は口に出した。「お客さん、ありがとうございます」
「じゃ、さよなら」ミスター・ジョンスンは言った。
自分のアパートメントがある一画で降りると、まっすぐ部屋に上がっていった。ドアを開けて中に入り「ただいま」と声をかける。するとミセス・ジョンスンが台所から「お帰りなさい、早かったのね」と応えた。
「タクシーを使ったんだ。チーズケーキのことも思い出してね。晩ご飯は何かね」
ミセス・ジョンスンは台所から出てくると、夫にキスをした。頼もしい感じの女性で、ミスター・ジョンスン同様に、にこやかな表情である。
「今日は大変でした?」
「いや、それほどでもなかった」ミスター・ジョンスンはコートをクロゼットにかけながら答えた。「君の方はどうだったのかい?」
「まあまあ」妻の方は、台所の戸口に立ち、ミスター・ジョンスンはアームチェアに腰かけて、はき心地の良い靴を脱ぐと、今朝買った新聞を取りだした。「あっちでもこっちでも」と彼女は言った。
「ぼくの方は、悪くない一日だった。若いふたりを取り持ってやったし」
「よかったわね。わたしはお昼に少し寝て、一日じゅう、のんびり過ごしてたの。朝のうち、デパートへ行ったんだけど、すぐ横にいた女が万引きをしてたの。だから警備員に言って、つかまえてもらった。犬も三匹、野犬センターに送ったわ。まあいつものことね。そうそう」と急に思い出したらしく、つけ加えた。「それはそうと」
「どうしたんだい?」ミスター・ジョンスンはたずねた。
「あのね、今日、バスに乗ったんだけど、運転手に乗車券ください、って言ったの。そしたらわたしを後回しにして、よその人を先にしようとするものだから、失礼なことをしないで、って言ってやったの。そしたら言い争いになっちゃって。それで、『軍隊に入ったらどう?』って言ってやった。大きな声で言ったから、きっとみんなに聞こえたんだと思うの。それからその人の番号を控えておいて、苦情係りに出したの。きっとクビになるでしょうね」
「結構。だが君、ずいぶん疲れたみたいだが。明日は役を交替してあげようか?」
「そうしてくれるとありがたいわ。きっと気分転換になるはず」
「わかったよ。晩ご飯は何かな」
「子牛のカツレツよ」
「昼に食べたんだがね」とミスター・ジョンスンは言った。
The End
(※後日手を入れてサイトにアップします。お楽しみに)
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