hiyamizu's blog

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町田康「破滅の石だたみ」を読む

2008年08月29日 | 読書2
町田康(まちだこう)著「破滅の石だたみ」、2008年6月、角川春樹事務所発行を読んだ。

最近10年の間に書いたエッセイを4部に構成したものだ。

Ⅰ「偶然の土石流」は、パンク歌手時代から作家の現在までの日常生活記録。
文章に、「イエイ」や「うくく」などが頻繁に出てくる割りに、意外と真面目な人のようで、午前中はきちんと業務(小説書き)をしているし、他人への礼もつくしているようだ。書評を書くのにも、「暦に印をつけ自分の仕事の速度と受注量に鑑み、あらかじめ計画を立てその計画に則って仕事をこなしており、ぎりぎりになって読みはじめるようなことはしない」と書いている。

Ⅱ「ときめきノーフューチャー」では、デビュー作誕生の経緯に続き、「自分は誰もやらなかったことをやろう」と今でも不安を抱えながら小説を書き出すと語る。
谷崎潤一郎賞を受賞した「告白」執筆の裏側や、会話を書く難しさ、など私にはここが一番面白いところだった。
あとは、面白かった本の紹介が続くが、その基準は最低でも十回以上読んだというものだから驚く。著名な著者のそれほど有名でない本が多いが、少年の頃から桁違いに本を読んでいるようだ。パンク歌手なのに、やはり。

町田康の「私のオールタイム文庫ベストテン」は、
村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」、
村上春樹「蛍・納屋を焼く・その他の短編」、
野坂昭如「真夜中のマリア」、
三島由紀夫「豊饒の海」、
大江健三郎「叫び声」、
筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」、
ドストエフスキー「死の家の記録」、
カート・ヴォネガット「ジェイルバード」、
ウディ・アレン「羽むしられて」、
梅崎春生「ボロ家の春秋」。

うーん、私は1冊しか読んでいない。

Ⅲ「実にいい」も面白い本の紹介。

Ⅳ「伊八のいる風景」は、パソコンのマックの音声認識・楽譜作成ソフトのでたらめぶりの紹介。

著者は、1962年大阪府生まれ。パンク歌手、詩人、俳優で、作家。1996年に発表した処女小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞、2000年「きれぎれ」で芥川賞、2001年「土間の四十八滝」で萩原朔太郎賞、2002年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、2005年「告白」で谷崎潤一郎賞を受賞と輝かしい戦績。

この本の題名は、京都北白川あたりにあるというその上を歩いた者は必ずや破滅するという石畳から。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

多少ふざけた文章が苦手の人にはお勧めできないが、パンク歌手の名に恥じる(??)根は真面目な人のようで、本も良く読んでいるし、他人と違ったことをやろうとリスクをとる考え方も気に入った。

以前、付いていけなくて途中で投げ出した記憶があるが、もう一度この著者の本を読んでみたくなった。



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