hiyamizu's blog

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「非情人事」を読む

2008年08月15日 | 読書2
江上剛著「非情人事」、2008年5月発行、文春文庫を読んだ。

宣伝文句は以下。
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サラリーマンにとって会社人生は人事がすべてと言っても過言ではない。転籍人事にかちんと来た実力副社長、リストラを完遂した途端に自分の首を斬られた人事部長、合併銀行の派閥を背景にした熾烈な社長レースなど、「非情人事」を拝命した企業人の複雑な思いと行動を、鮮やかな筆致で描いた文庫オリジナル短篇集。
―――――

著者、江上剛(エガミ ゴウ)は、1954年生まれ。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。1997年第一勧銀総会屋事件に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。2002年「非情銀行」で小説家デビュー。築地各支店長を経て2003年に退行。


人事に翻弄されることになる5つの短編。
「五分の魂」は、NTTドコモの社長人事のスクープをめぐり新聞社の記者と上司の軋轢。

「引き際」は、信用金庫の3行合弁後の頭取人事の争い。

「非情人事」は、リストラを強要された人事部長が、泥をかぶらされてクビになる。

「悪い奴ら」は、闇金融の社員が貸出先の老人を自殺に追い込む。貸金業規制法を作った後藤田正純衆議院議員(妻は水野真紀)がイケメンの悪徳議員として出てくる。

「追い落とし」は、西武鉄道グループの不良債権を巡る持ち株会社傘下銀行のトップ達の争い。


とくにびっくりする話はない。ある程度の勤務経験のある会社員ならよくある話と言うだろう。
登場人物も類型的。企業小説が好きなひとは、典型的話が多いので、さらりと読める。文庫本でもあり、電車の中などで読むには最適かも。また、モデル企業を知っていれば、楽しめるかも。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)


個人的には、「五分の魂」が、事情を比較的良く知っていたので面白かった。小説は個人名を変えてあるが、ニュースなど覚えている人には、簡単に実名が分かる。

解説すると、NTT本体の言うことを聞かないNTTドコモにNTT本社は、副社長の立川敬二氏(現宇宙航空研究開発機構理事長)をドコモ社長として送り出した。ところが、立川社長は辞任に際し、ドコモの独自色を強めるべく、後任の社長として津田志郎ドコモ副社長を押し、新聞にまず確実と辞令が出た。

しかし、NTT本体の和田社長(当時)は、NTTグループから離れようとするドコモを引き止めるために、ドコモ生え抜きとも言うべき津田志郎氏の社長就任に反対し、結局、6年前にNTTからドコモの経理部長になった事務系の中村維夫( まさお)(現取締役相談役)をドコモの社長にした。
この結果、津田志郎氏は、ドコモ子会社のドコモエンジニアリング社長となった。

以上が事実で、小説も、新聞記者の話は創作だろうが、その他は、個人名以外はほぼ事実通り。しかし、この小説では、ここで終わっているのだが、この後もっと衝撃的ニュースがあった。


津田氏は、ドコモエンジニアリング社長就任から僅か2ヵ月後の2004年8月に退任。ドコモのライバルのボーダフォンに移り12月1日付で社長兼CEOに就任した。日本では珍しいトップのヘッドハンティングで、噂では、N年契約で、N億円との話だった。

しかしながら、業績低迷で僅か2ヵ月で会長に異動。さらに、ソフトバンクによるボーダフォン買収に伴い2006年4月、取締役を退任した。

事実は小説より奇なり??










コメント
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