ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

ロマン

2010-06-20 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
わが身を危険に晒しつつ国王の娘になるのも「どうか?」と首を傾げ、やっぱ、お気楽なちっぽけな身分の自分が性に合い、丈の足りないと思しき自分が丁度良く、身丈身分相応だ…と思い直し、絵本「銀河鉄道999」を閉じた。
パタン…と、心まで閉じてつらつら考える事は、メーテルの飛び抜けた知能と群を抜く美貌と身長で妬まれる体の謎の解明には至ってないという事であり、私としては機械国の人 メーテルの体の神秘を解明解剖するより地球の人体構造の謎を解明する方が先決だろ!ということである。まったくっ!
筆者 松郷「あぁ、やだやだ…機械の体を妬むなんて…」
体質的な悩みの大きい筆者 松郷が機械の体に嫉妬して、メーテルに憧れて変な感情を生み出し、生身と純真な心を台無しにして胎黒にするくらいなら、そんな感情を持たない方が「ええわっ!」と人工的人為的機械から興味を外し、自然治癒に関心を向けた筆者 松郷だった。
しかし、人間の感情とは複雑なもので、一旦腹黒が治まっても再び浮き上がる機械への嫉妬心で、私の心に火が付いた。あれを見て。そうそれは、一部少年たちの憧れの的…
♪燃え上がれぇ!燃え上がれぇ!ガンダムっ!♪と燃えに燃えた憧憬ガンダムだった。
しかし、燃やすのは闘志だけである。ガンダムを燃やしてどうする?
そうやって、幼少の頃より機械に憧れ続けていた筆者 松郷は、ここでつまらない想像をした。
では、皆も想像してごらん…。
機械人メーテルのような美貌と弁慶並の6尺(185cm)でヨーガをしている筆者 松郷を…。
押し寄せるメーテルファンでヨーガスペースは埋め尽くされ、その近寄り難い美貌に近寄りはしないが真似する黒い団体ファ付き偽メーテルが増殖繁殖中。兎に角、外見から似せたい!
と?夏でも暑く苦らしい黒いコートにボンボンつけて「メーテル万歳!」と太陽礼拝?で王女の域を脱して神の領域まで到達したメーテルの髪の長さは床まで到達だった。
筆者 松郷「はっ!これでは…」いかんと改めて間違った想像だと気が付いた。
髪に気をとられて、集中できないヨーガとなる。想像の途中で気が付いてよかった。
では、次の妄想に入る。
では、皆も脳活性妄想してごらん。
ガンダムに搭乗した筆者 松郷「ニュータイプ 羊型ガンダム 行きますっ!」と宇宙でヨーガ。しかし、慣れないニュータイプの操縦で、しかも硬い関節で屈伸できず、準備運動している最中に敵襲攻撃で後ろを狙われ、ニュータイプは捕獲された。
筆者 松郷「みんな、後は…頼んだ」自主練…とヨーガ教室の意味がなくなってしまった。

再生・再建

2010-06-19 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
しかし、ひれ伏しているだけでは円盤は片付かない。お母の命令は絶対である。
撤退命令が下されたからには散乱する円盤を片付けなければならない。
つべこべ言わずに、さっさとべっこべこ円盤を片付けた。
片付け終えて「ふ…っ」と一休み、徐に一枚の円盤を手に取り、プレイヤーに乗せ、針を置く。そして、電源ONで円盤回し、耳を澄ます、と?
少年 鉄郎「め゛ーぇ゛ーーーーでーーーる゛ぅぅ…」と伸びた音でメーテルを呼び止め、
メーテル「でーづーろ゛ぉーーぉーー…」と、美しきメーテルから想像できない程の野太い声で少年 鉄郎に応えたメーテルの声が聞こえた。
イメージ内の鉄郎の声は置いといて(無関心)、美しきメーテルの容姿から想像していた声とはかけ離れた野太さにイメージ崩壊の危機到来。
筆者 幼少松郷「あ゛ぁ゛…」
音声が作り出すイメージの崩落で、それ以来、気分とイメージを害した筆者 幼少松郷はレコードプレイヤーにレコード盤を乗せる事はなかった。
その後、イメージ“再建”を図るのに苦労したことは言うまでもない。
よくよく思うのだが、例えば、漫画を読んでいて、その漫画がアニメ化になりました。で、そのアニメの第一回目の放送を見て、ガックリ来たという経験はないかな?
私はある!
私は漫画の登場人物の声をある程度想像しているので、自分のイメージとアニメの声優が不一致だった場合、かなり凹むのだ。
それだけ音声というはイメージを作るのに大切な役割を果たしていると私は考える。
つまりだ、メーテルはイメージをぶっ壊すほどの声となって“再生”された。
もう、決してレコードをべっこべこすまいと反省したが、もう再生する機械がなくなった。
時代はレコードからCDに変ってしまったというわけだ。
その後、ひっそりと部屋の片隅で絵本を黙読する筆者 幼少松郷がいた。
別に読み聞かせしてもらわなくても自分で読めるしな…と結論付けただけである。
全く読み聞かせの意味を成さないレコード付き絵本だったよ。読み聞かせを聞いたのは一回あるかないかで、最後まで聞いた試しもない。
そんな絵本の中の憧れのメーテルは、機械王国の国王の娘だった。私はその立派な肩書き[国王の娘]に変に捻じ曲がったネジの歪んだような憧れを抱いていた。しかし、その美貌と異様に長いまつ毛は、他の人(男女問わず)たちに妬み狙われることが多かった。

銀河へ

2010-06-18 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
病と向き合い、死期が近づく恐怖と生への憧れ、また孤独と焦燥感に苛まれた人生だった。
もし、太陽に当たり風を切って走れたら…、もし、丈夫な体で生まれていたら…、とそんな憧れを表すような「風の又三郎」である。
自分の死を悟ってか、[別れ]の寂しさを醸し出す。そんな向き合う死から、物語を描きつつ終着点が[別れ]になることが多かったのかもしれない。
人間は死を覚悟した時、心から微笑むという。体のガタガタと軋む音がフッと消え、いつも聞こえる心の呻き声と激痛の叫びが止まった時、
賢治「風が止んだ…」と無音に煌く壮大な銀河への切符を手に微笑んだのかもしれない。
あの“銀河鉄道”の誕生である。鉄道に乗って、旅に出たジョバンニ 賢治は憧れの宇宙へ旅立った。※ジョバンニとは、洗礼者ヨハネの意味。
なら!私も憧れの宇宙へ旅立とうと思い、
筆者 幼少松郷「皆、私が乗る銀河鉄道を見送ってくれ…」と手にしたのは「銀河鉄道999 by 松本零士」の絵本だった…。これは光の国が出版している絵本である。
それを買い与えられ、
筆者 幼少松郷「メーテル、まつ毛!長っ!」と長すぎるまつ毛が描かれた「銀河鉄道999」の絵にツッコんでいた。
当時、絵本の読み聞かせBy レコードというCD時代以前の読み聞かせがMyブームで、(筆者 幼少松郷は絵本が大好きだったのだ)、さほど絵本が大ブームという訳ではない兄と共にレコード盤はMyルーム(現 ヨーガスペース)から円盤型宇宙船に見立てて、放り投げる遊びが兄妹で大々ブームとなっていた。
投げられた円盤レコードは歪みに歪んで「お役御免…」とべっこべこの姿となり、聞ける様な代物ではなくなってしまった。もちろんだが、
母「片付けなさい!」と怒られた。
が!?
その前に、物を大切にしなさいと叱るべきだろう?と首を傾げた。
しかし、母にとっては外に散乱する円盤の数々が気に入らなかったようだ。
もしも…だが、地球に攻め込む無数の円盤型宇宙船があったなら、真っ先に怒るタイプだ。
母「地球から片付けなさい」と?円盤撤退命令が下された。
さすがは、我が地球のお母(かみ)だ!と母に畏怖の念を抱き、大地にひれ伏す、
筆者 幼少松郷「ははーー」と?

悲劇の裏

2010-06-17 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
一方、その頃、高館の悲劇の裏 喜劇では、義経ら三人は北上川を北上し盛岡へ向っていた。
海尊「はい、じゃんじゃん♪盛岡わんこっ!はい、じゃんじゃん♪」
義隆「犬子は食わんっ!!盛岡冷麺だ!」
義経「犬じゃない、蕎麦だぞ、ワンコ…。ま、俺はじゃじゃ馬を食う!」
義隆「じゃじゃ麺だろっ!」と、盛岡三大麺を目指していた。
すると、
どっどど どどうど どどうど どどう…風がまたどうと吹いて来て…
赤い髪を振り乱して走ってくる。
海尊「髪赤くて…おかしやつだな」
すると、真っ黒く焦げたマントを羽織って、どう…と走り去った。
義隆「あ!?爺ぃだ!」
海尊「ええ!?」
義経「ま、まさか…!?」
そのまさかで、赤い髪を振り乱した爺ぃは消えてしまった。
義経「皆に挨拶する暇がなかったのだ…」
3人はしばらくつ立ったまま、兼房の安否を探るように顔を見合わせた。

風はまだやまず…木々がガタガタ鳴っていた。

その後、兼房は髪を赤くした風の又三郎と称して宮沢賢治の作品で登場することになる。
もちろん、上記の文章は「風の又三郎」のちょいパクリだった。
後ろを振り返ることが許されない義経らは、風と共に前へ、前へ歩み続けるしかなかった。
兼房の安否を確かめる術もなく、否応なく流れる時と共に過ぎてしまった[花巻]、宮沢賢治の故郷である。花巻は温泉街、賢治も病んだ体を癒した事だろう。

『雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋※ラズ イツモシヅカニワラッテヰル…』
そういうものに 私はなりたい…と闘病中に認めた手帳が残っている。
※瞋(しん)とは、仏教語で怒るの意味。
賢治37歳、早すぎる死だった。

高館 炎上

2010-06-16 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
義経「爺、郷の事…頼んだぞ」と何も気付かない義経は格好つけて決め台詞を言った。
義隆「行って来るよっ、爺!」をじぃと見つめた。何か不安を覚えた義隆だった。
海尊「体に気をつけろよ」と、老体を労わった。
兼房は郷の父 河越 重頼の重臣で現役を退いてからは河越家の相談役となり、郷が嫁いでからは義経の許で力を尽くしてくれた人物である。
兼房「達者で…」
年齢よりも老けて見えるのは気苦労耐えない人生を物語る白髪のせいだろうか、痩せた顔に寄せられた無数のシワのせいだろうか…。そのシワをさらに深くして目を細めて微笑えみ、三人を送り出してくれた。この微笑みが三人にとって兼房の最期の姿となった。
それから二日後、1189年 4月30日、郷のいる高館に泰衡軍勢が奇襲を仕掛けられた。郷らは義経が不在を隠蔽するため、
郷「爺ぃ、早く高館に火を放て!」松明を持つ兼房に放火を命じた。
しかし、その日は運が悪く、強風で乾燥した日だった。火の手が早く予想以上に早く高館は炎に包まれた。その業火に包まれる高館に秀衡軍の敵将 長崎兄弟が現れ、
長崎 兄「義経を逃がしたな…」
長崎 弟「秀衡様に報告しに行く」
ここで秀衡に義経の生存がバレては困る、そう考えた兼房は長崎兄弟に向って襲い掛り、白髪振り乱し奮闘した。昔は名高い武将でも、今は老いぼれ…そんな体では刃を避けることすら困難だった。次第に白髪が赤く染まっていった。
兼房「郷ぉ…す、すまん…」死んではならぬという郷の言いつけだったが、「義経…さらば…」
最後の力を振絞り、長崎兄弟を炎の中へと引きずり道ずれに消えていった。
その後、誰に名づけれらたか、義経と兼房が別れた湧き水に[卯の花 清水]と名が付いた。
兼房の白髪頭が空木(ウツギ)の白花 卯の花が風に舞う様子が湧き水の飛沫と重なって見えたのだろう。白髪の爺や 兼房が亡くなって500年余り過ぎた時、ここを旅した松尾芭蕉のお供 河合曾良はこう詠んだ。
『卯の花の 兼房みゆる 白髪かな』
曾良には奮闘する白髪の雄姿が見えていたのかもしれない。その炎に包まれた老体の慰霊を潤し続けた「卯の花 清水」は、今は渇水してしまっているが、ここを旅する者たちの喉の渇きを潤し、心を満みたしてくれるように、と地元民が飲み水を引いて卯の花の再現を行った。白髪の爺やの思いは卯の花と共に引き継がれている。白髪の爺 増尾 兼房、享年66。

増尾兼房

2010-06-15 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
郷「(女の毒牙には)気をつけて…行ってらっしゃいませ」と義経から視線を逸らした。
理解されない男心で、視線すら合わせてもらない義経だった。
その時、ぼぉーーーん…と法螺吹きが響いた。
義隆「弁慶の法螺吹きっ!」
中尊寺周辺で見張りをしている弁慶が出立を急かしている。どうやら藤原泰衡軍勢が動き始めたようだ。郷は法螺の響きを聞いて、気を引き締めた。とうとう出立の時が来た。
義経らは藤原泰衡 軍勢を避けるために、裏道を通って平泉からの脱出を計る事になっていた。
郷「海尊の言うことだけは、しっかり聞くのよ」と義隆に言い聞かせ、くるりと義経に背を向けた。
義経「…あの、俺の言うことは聞かんでいいが?」と、郷に声を掛けたが、彼女は振り返りもしなかった。いつもの天然調子の郷ではなく、少々不安を覚えた義経は元気いっぱいに、
義経「郷っ!いつか一緒に金鶏、拝むぞぉ!なら、行って来るからなぁー!」と郷の背中に向って呼びかけた。が、それも逆効果だった。
それはそのはず、夫の浮気をじっと我慢し続て5年。郷には、義経が“元気いっぱい”で浮気旅に行って来るよぉ~♪と言っているようにしか思えない。そういう風に目に映っても然るべき。そんな郷の心に気が付かない義経だけが何も知らない。義経脱走計画の真相と郷の覚悟を…。
郷の肩は小さく揺れ、目からは大きな光の雫がポロポロと落ちていた。
しかし、義経からは郷が肩で笑って頷いている?ようにしか見えず、彼女の涙とその意味は義経には伝わっていなかった。
義経「おっ♪やっと機嫌が直った?」とのん気に思っただけだ。
そんな郷の強い覚悟を知っている白髪頭の御老体が「湧き水の所まで送ろう…」と、義経に歩み寄った。この白髪頭の老体は、増尾兼房(ますお かねふさ)という郷お付きの爺やである。義隆が生まれてからは義隆お付きの爺やとなっていた。年の功で知識が広く、幾度も義経の危機を救っている。郷が河越から嫁いだ時から義経に忠義を尽してくれる、郷にとっては亡き父 河越重頼のような存在で、さらに口が堅い事から郷の愚痴聞き役を担っていた。
白髪の爺やは、ポンと義経の肩を軽く叩き、
兼房「ほれ、行くぞ…」と出立を促した。もうここにいてはアッカーン!!と思ったのだろう。高館の西のほとりにある湧き水の所まで送ってくれた。その湧き水を竹水筒に入れて義隆に渡し、義経と海尊には同じく水を入れた瓢箪を持たせてくれた。

下心

2010-06-14 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
大きな荷物を持った義経と大きなお荷物 義隆を負ぶった海尊のいっぱし男三人旅で、
義経「なんで、俺だけこんな大荷物なわけ?」と三十過ぎたいっぱし男 義経はブーたれた。
義経はゲームに負けた罰として弁慶にまとめさせた荷物の中身をこそっと見た。
すると、繭玉がいっぱい敷き詰められていた。
義経「なんだぁ??この繭玉ぁ!」と、びっしり詰まった繭玉。それをごっそり置いていこうとしたら、繭玉の下から出るわ出るわのいっぱし(一丁前)メンズのコスメグッズ ForダMenS 義経&海尊専用で、それらを見て、
郷「シェービングりフォーム、がンダム ギャツB、スライディング・ヘッド For Men、お口クチュクチュみのもんダミンは…まぁ良いとして…山伏ドリンク By BEN-Kって何?」
義経「え!?…ああぁ、あ、繭玉、入れとこぉっと♪」
郷がわざと名を変えたことすら気付かず話を逸らす義経で、弁慶特製 山伏ドリンク12本入りはしっかり繭玉の下に隠し入れた。
郷「…(やっぱ持って行くんだ)」と、ドリンクを詰め込む義経に冷ややかな視線を送った。
義経「いやぁ、その…あのね、弁慶がさ、なんだ、ほら、あいつって、よく気がついてよく気が利くだろう。あははっ。小さい子(義隆)を連れての長旅だから、それ(ドリンク)…疲れないようにって。その怪力無双マムシドリンクって山伏連中皆飲んでるんだぞ。弁慶のように強くなれるって評判でさぁ♪」
郷「ドリンク名、変ってる!」とツッコんだ。
義経「あ…えぇ??あっ!あぁ…」
いきなりのツッコミにボケられない義経で、言い訳すればするほど怪しくなるドリンクだった。どんな味か知らないが、飲みたいとは思わないドリンクである。
それに簡単なツッコミも出来なれば、ボケて返す言葉も見つからない義経に、
郷「ふぅ…」深い溜息をつく。
どれもこれも浮気も分かっていたはずなのに、それをひた隠し天然装っていた自分…そろそろ我慢と忍耐の限界である。浮か浮かと浮かれる浮気癖はもう病気末期で手遅れに近い義経とそんな男魂を受け継いだ海尊が一緒に温泉街に行くと鼻息を荒くして、見たくなくても頭の中が見えてくる。もちろん、郷は読心術の出来る類の祈祷師ではなく、普通のトトロ術師であり、義経の頭の中が遊女と遊郭でいっぱいである事は、その態度を見ただけで分かるというもの。おそらく、郷だけでなく大概の普通一般女性なら健康そのものの男性の頭の中くらい読まなくても見えているはず。

真意

2010-06-13 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
大姫の細く美しく文字を見て、
郷「もしかしたら…」いろはの意味を知っているのではと思った。それは、文の墨が所々にじんでいるからだ。

『色は匂い香り立つ、そんな美しき若花もやがて散ってゆく。
なんと、この世の諸行は無常なのでしょうか。
世に生きる誰しもが向える死…いつまでも生き続けられるものではない。
必ず滅する命の定め…それが訪れる日はいつであるか…誰も知らない。
人生…迷い谷に入っては這い上がり、険しい山を登っては乗り越えつつ、生を全うする。

悟りの世界は、儚く消えることの無い世界なのでしょうか?
夢の世界は、安らかに暮らして生ける世界なのでしょうか?』

夢の世界に行けたなら、安らかになれるのだろうか。
生まれた時代が違えば、穏やかに過ごるのだろうか。
源氏平家の勢力争いのない時代が平和なのだろうか。
病に侵されなければ、それが「幸せ」なのだろうか。
しかし、考えても仕方のないことだった。
現に頼朝の子として生まれた大姫は病に侵され、訪れる死を待つだけの体。それが命の定め…寿命だった。生まれ落ちた瞬間に与えられる命の定めと出生は変らない。
しかし、変えられるものがある。
変えなければ…
静が頼朝に問うた言葉“昔を今に成す良しもがな(繰り返すのですか?)”で逆に問われる立場になる。
大姫は無実、頼朝に誅殺された義高も郷の父 河越 重頼も、海に投げ落とされた静の子も、何も罪はない。
生まれてきたことが「罪」となるなら、なぜ命を与えられるのだろう。
最初から生まれてこなければ「悲劇」にならないなら、なぜこの世に生を受けるのだろう。
郷「変えられるはず…」と、強い決意で臨む[歴史裏街道義経逃亡]なのだが、郷の思いなど露知らず、義経ら男三人は温泉旅行に浮かれに浮かれていた。

いろは歌

2010-06-12 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
大姫は、義高の一件から、笑うこともなくなってしまった。また、もう一つ気掛かりな事に、彼女は病に伏せるようになってしまった。義高のことで気に病んでいるだけだという者もいたが、実は彼女の体は病に蝕まれていたのだ。
大人たちは大姫の気が紛れるように?様々な祈祷を施し、彼女の回復を願った。しかし、願って回復するような不治の病なら、とっくの昔に不治の名前を返上し完治している大姫の体であり、それを知りつつ悶々としていた郷であったが、そんなある日、急に持ち上がった義経との結婚である。これを助言したのは母 比企尼だった。比企尼の“先見の明”である「トトロの術」が、いかんなく発揮される所である。伊豆へ流罪となった頼朝に目をつけ、逸早く近づき乳母となり、さらに、義経の手腕を買い、頼朝に娘の郷を嫁がせるよう助言したのも“大姫を天皇の后にする”ように進言したのも郷の母 比企尼と考えられている。そんな母の目論見を知りつつも、さらに、頼朝の命は絶対であり、巷で広がる浮気癖 義経がイヤと言えば、頼朝だって浮気症で、それが理由なら気分を害し「打ち首!」になるのが目に見えているから、特に強く反対することが出来ず、義経の許へ嫁ぐことになってしまった。
当時、女子たちの結婚で「浮気症と浮気癖だけはイヤ!」という、それだけの理由では意義申し立てなど出来ない時代だったのだ。
そこで、お互い苦労するよね…と、思い付いたのが「文通」だったのだ?
大姫は郷の文を楽しみに待つようになり、次第に気持ちが晴れて体も快方に向った。しかし、その回復も大姫にとっては不運を招くだけとなってしまった。頼朝は次の婚儀に向けての着々と準備を進めたのだ。娘の体よりも朝廷と外戚になり源氏を安泰に計ることの方が先決だったのだ。それだけ地盤が揺らぐ頼朝政権で、地盤固めに奮闘していた小心 頼朝だった。
大姫の思いやそれを危惧する郷の心、二人の間を行き来する鳩の事など知る良しもない。
大姫は幼少から体が丈夫ではなく、部屋に篭もり書を読み書きすることが多かった。
それ故に7歳にしては美しく整った文字を書く。その繊細さを物語る彼女の文で一番印象的だったのは、平安末期に流行した平仮名覚え歌「いろは歌」を認めた文だった。
大姫の文より---
いろはにほへと ちりぬるをわか よたれそつねな
らむうゐのおく やまけふこえて あさきゆめみし ゑひもせすん
ひふみ よいむなや こともちろらね
しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか
うおえ にさりへて のますあせゑほれけん---

大姫

2010-06-11 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
一の谷の合戦から5年後、「壇ノ浦の合戦」で快勝した義経の許に嫁いでいる。二羽の鳩と共に京へ向った。しかし、二羽の鳩が京に行った事は聞いていない頼朝は激怒。
頼朝「鳩は大姫に与えようと思っていたのにっ!!」と、自分の鳩でもないのに変な言い掛かりを付けて来た。
その大姫とは頼朝と政子の間の長女で、早くに夫を亡くし未亡人となっていた。彼女は頼朝と木曾義仲※の間で取り交わされた和睦のために、義仲の長男 木曾義高(源 義高)と婚姻関係を結んでいた。
※木曾義仲(源 義仲)は越中 砺波山の[倶利伽羅峠の合戦]で平家を打ち破った武将であり、頼朝と義経とは従兄弟にあたる。
結婚後、義高は鎌倉で過ごしていた。つまり、和睦のための人質だった。しかし、大姫と義高が結婚してすぐ頼朝と義仲との間の不和が生じ、戦が起こり、義高にも誅殺指令が飛んだ。その指令を密かに聞いた女中は政子や大姫にそれらのことを告げた。そこで義高を武蔵国の縁者(比企氏)へ逃そうとした。しかし、牙を向いた頼朝は義高を武蔵狭山の山中で捕らえ、家臣によって殺させた。当時、義高11歳。
(彼の慰霊は、武蔵 狭山(さやま)の「清水八幡神社」で弔われている)
幼い大姫にとって5つ年上の義高は、4つ違いの兄 頼家のような存在だった。次第に義高に心開くようになり、二人で遊ぶ姿が見られるようになっていた矢先の出来事だった。
なぜ、義高を殺さねばならなかったのか…。
その理由は、頼朝の胎で渦巻く大きく膨らんだ野望にあった。“大姫を天皇の后にする”
そのことで朝廷との親族関係を結ぶ魂胆だったのだ。今まで平家がそうだった様に頼朝もお家安泰を図りたい。そのためには、大姫を朝廷に嫁がせる必要があった。そのための義高暗殺だったのだ。
親の野望に子を利用され、振り回され…。大姫は、巷ではこんな風に言われていた。
「罪人の子は罪人…」「頼朝の操り人形…」
ただ頼朝の子として生まれただけなのに影で蔑まれ、冷たい視線を向けられ続け、そんな環境に置かれた大姫は、大人が作り上げた環境の変化にとても敏感になっていた。
心打ち解ける相手もなく一人で部屋に篭もることが多くなり、巷の噂話を耳にしては心を痛めていた。郷の母である比企尼は頼朝の長男 頼家の乳母をしていたので、頼家と共に大姫を武蔵の実家に連れて来る事が多かったので、郷も頼家や大姫の面倒を見ていた。郷は義高との経緯を知っているだけに、塞ぎ込む大姫を気に掛けていた。