『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  274

2014-05-16 08:12:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、この仕事に関する限り、失敗を極力避けたい。成功することよりも失敗しないことが肝要であるとして仕事を進めることにした。いずれ会議の場で説明の上、しかるべき担当を決めて遂行させると考えをまとめた。
 パルヌルスは、魚の件について、集散所における状況を彼なりに分析していた。そして、描いた。
 魚を売ろうとする自分を魚の売り場に立たせた。そこでの売りの場面を描いた。売りに対処する自分の姿を描いて、想起する売り場面、そして、結果を予測した。いい結果を得ることができない。大量に売れ残った魚を始末する哀れな自分の姿がそこにあった。そして、途方に暮れるみじめな肩を落とした自分に後ろ姿を見つめた。彼はいてもたってもいられなかった。彼は、このような事態を招かない仕事のあり方、あり様を出来るだけ多くの事例を設定して、考えたうえでの実施案をまとめた。
 一行が出航するときとなった。スダヌスが統領、そして、一同に声をかけて乗船を促した。スダヌスの船が浜を離れてキドニアを目指した。
 帆は風をはらんではいるが力が充分ではない、漕ぎかたが精を出して櫂で漕いで船を進めた。ニューキドニアの浜を離れて小一時間、キドニアの船溜まりに着いた。一行は集散所に向けて歩を進める。アヱネアスとイリオネスは、はじめて歩むキドニアの街区の家並みを見ながら歩む、スダヌスは二言三言、説明をしてアヱネアスに肩を並べて歩いた。程なく彼ら一行は集散所の前に立つ、アヱネアスは目線を各所に這わせて観察した。スダヌスが声をかける。
 『統領、どうぞ!私が案内しましょう』
 『ありがとう。先ずは、パンの売り場を見てみたい』
 『おう、それがいい。オロンテスさん、統領を、、、』といって、案内役をオロンテスに振った。
 オロンテスは、アヱネアスとイリオネスをパンの売り場へと誘った。
 『ほっほう、このようにして売っているのか。オロンテス、今、この時間、客足はこのようなものなのか、この時間で、この状態なら、今日の売れ行きは、いいほうか、よくないほうか?』
 『そうですな、いいほうです。このあとの客足次第で、早く売り切ってしまえるかです』
 『そうか、気をもむのはこのあとか、そうであろうな』
 そのように言ってアヱネアスは、集散所内を見まわした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  273

2014-05-15 08:44:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、スダヌスの意向を知った。
 『スダヌス頭、そのように考えられていたとは知りませんでしたな。我々は、全く逆の方向へと進んでいたわけですな。我々もこうしてこうすればこうなると判ってやっていたことではなく、やっていたらこうなったというわけです。我々も無我夢中で、この問題と取り組んだいた次第です。それも結果が時たまではなく、安定していい結果を持続させるにはに取り組んだようなわけです。それの答えが出そうなのです』
 やや謙虚に事の次第を離した。
 『そうか、それは恐れ入ったな。お前らのやっていることは全く漁師の上をいっている。俺は恐れ入った、全くだ。今、提案されたこと、真剣に考えようではないか。ええ~っ、ご一同!ということでいかがですかな。そのことを念頭に置いて集散所を見て廻りましょう、統領。ただ漫然と集散所を見て廻るのではなく、意図をもって見る、いいですね。判りました、いいカタチを考えます、では、朝食を終えたらさっそく出かけましょう』
 彼らの意志はここに決まった。スダヌスは座を立って、パンをほおばりながら、スダヌスの一行の朝食の場へと歩み向かった。
 『お~い、者ども、お前ら朝めしを終えたら、即刻、出航の準備を整えろ、判ったな。出来たら俺に連絡だ、いいな』
 『おうっ!諾っ!』
 スダヌスが戻ってくる。
 『いやいや、出航の準備手配ですわ。出来たら行きましょうや』
 『おう、判った』イリオネスが答える。スダヌスがパリヌルスに身を寄せてきた。
 『おう、パリヌルス、魚の売りさばきを俺に任せる、その真意はどういうことだ。あとでいい俺に聞かせろ』
 『おう、いいだろう。他意があっての事ではない。当然の成り行きなのだ』
 『当り前だ、そうであってしかるべきなのだ。それは、ちょっと、俺の思い上がりかな』
 『それは言えている、チョッピリ思い上がりだが、それが当然と思っての俺の結論だ。宜しく頼む。そいうことだ』
 『おう、判った。任せろ、餅は餅屋だ』
 一同は出航の身仕度を整えて浜へと向かった。
 イリオネスもパリヌルスに問いかけてきた。
 『パリヌルス、お前が思案した方策については理解した。魚の売りさばきは、パンの売りとはいささか違うことは判る。方策のなぜについて、いずれ説明してくれ』
 『判りました』
 パリヌルスは、この仕事が陽のあたる坂道を昇っていくことを強くイメージした。パリヌルス自身、この仕事に深く携われないと考えていた。それゆえの仕事手法を考えていたのである。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  272

2014-05-14 07:53:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『聞こう。魚に関する件がここにあるとは、俺はちっとも考えてはいなかった。その魚の件とやらを聞こうではないか、パリヌルス話してみてくれ』
 『スダヌス頭、話の要点は、魚の売りさばきに関することです。魚をやや大量に売りさばく、その売りさばき方です。どうすれば獲れた魚が売りさばけるかということです』
 『パリヌルス、大量の魚だと。どうして大量なのか。それが判らん。それを説明しろ』
 『スダヌス頭、貴方は、漁師です。実は我々も、ある日から漁師なのです。貴方がたのやっている漁とは、ちょっと違うところがあります。そのようなわけで我々の獲った魚の売りさばきをスダヌス頭にやってもらいたい、そのように考えているのです。我々が魚を獲る、魚が売れるように手を加える、これについてスダヌス頭の考えを聞かせていただきたいわけです。今、我々が手掛けたパンの加工販売、あのようにではなく、魚を売ることと魚を売れるようにすることを分けてやりたいと考えています。いかがなものでしょうか』
 『うっう~ん、むつかしい問題だな。何故、そのように考えるのだ』
 『漁獲の事ですが、その発端は、我々が魚の自給自足を考えたことが事の始まりです。それでどうすれば自足の量の魚が獲れるか、その結果が、我々が漁に出て一日に釣りあげる魚が少ない時で1000匹、多いときは2000匹に及ぶのです。それだけの量の魚を、あの集散所で売りさばくことが到底できないと考えられます。また、集散所に売り場を持つことも考えていません。だがこの仕事をやっていきたいと考えています』
 『何っ!少ない時で1000匹、多いときには2000匹、お前らそんなに魚を釣り上げるのか、大したもんだ。お前らのやっている漁をこの目で見てみたい。パリヌルス、お前の考えていることが判った。その魚の売りさばきの一切をこの俺に任せるだと、いいではないか。この俺でいいのなら引き受けようじゃないか。それから、魚をどうすれば売れるか、これについても考えろということか、判った、考えよう。俺が悩み考えていたこととは全く違う。俺が考えていたことは、お前らが消費する魚を、どうすれば調達することができるかであって、答えが出ないから話すこともできなかった次第だ。俺の考えていることとは反対であったとはな、ハッハッハ。これで俺が、昨夕、気にかけた疑念が吹っ飛んだわ。よし、真剣に考える。お前、ありがたい話をしてくれる、ありがとう。俺が、お前らの役に立てる。うれしいことだ』と話を結んだ。
 スダヌスは目線をアヱネアスの方に向けた。
 『統領に軍団長、いい話です、ありがとうございます。今日は、一同揃って集散所の方にまいりましょう。結論を出すまでに少々時間をいただきます、よろしいですね』
 『おう、いいですよ。いい方法を考えていただければ幸いです』
 アヱネアスは、よどみなく答えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  271

2014-05-13 07:35:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう。パリヌルス、もう、オロンテスたちは出かけたのか』
 『オロンテスは、今日はまだこちらにいますが。パンの担当一行は、もう浜を出るころです。軍団長、朝行事に行きましょう。朝めし前のスダヌス頭との話し合いにオロンテスもオキテスも立ち会う予定でいるはずです。オキテスの今日は、樹木調査隊の報告を受ける予定です。オロンテスと私は打ち合わせの後、統領と軍団長に同行の予定です。スダヌス頭の船でキドニアに行くことにしています』
 『そうか、判った。朝行事に行くか、あっ、統領も一緒だ、行こう』
 彼らは浜に向かった。スダヌスたちは一足先に来て朝行事の真っ最中であった。彼らは浜でスダヌスたちと朝のあいさつを交わした。
 『おう、皆さんおはようございます』スダヌスたちは、海に身を浸しながら声をかけてきた。
 『おう、おはよう。頭も朝が早いですな。我々より早いとは、、、』
 アヱネアスは、少々驚きの体であった。イリオネスらも彼らと朝のあいさつを交わした。スダヌスが海から上がって統領に話しかけてきた。
 『統領、おはようございます。いやあ~、何ですな。この季節ちょっと寒さを感じますな。これをやると身が引き締まる、朝すっきりですな。やめられませんな』
 スダヌスは、肌を鳥肌にして話している。
 『この浜の風は身を刺してくる。俺らの浜の風は肌を優しくなでて吹きすぎていく。そんなわけですわ』彼の偽らざる感想であった。
 『ところでパリヌルス、相談話をやるか』
 『朝めしを食べながらでもいいと思うのだが』
 『ほっ、そうか、それでいいならそうしよう』
 『話を朝めしのパンとともに腹に落とし込む、それでいかがですかな』
 『お前、うまく言うな。これで俺を丸め込もうというわけか。この面々で話し合うのか、オープンな話し合いだな。それがいい、判った』
 朝行事を終えた一行は広場へと向かった。イリオネスの計らいで朝めしの場が整えられていた。アヱネアスらとスダヌスの六人で朝めしの場を囲んだ。
 パリヌルスが話し合いの口火を切った。
 『話は、魚の件です』
 『ほっほ~、魚の件だと~』
 スダヌスの反応は、語尾がややあがった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  270 

2014-05-12 06:41:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスはイリオネスと話し込んでいる、スダヌスは、二人の酒杯に酒を注いだ。
 『俺は、小用だ』と告げて、女が身を消した暗がりに向けて歩を運んだ。
 『これこれ、お前の願いを達してやらねばならんのう』と独り言ちながら、おったっているいち物を夜風にさらして放尿を終えた。彼は暗闇を透かし見た。
 数メートル先に女がいる、スダヌスを手で招いている。身を寄せていく、女の方からスダヌスの唇を求めてきた。彼は女の口を思いを込めて吸った。互いの手が互いの股間をまさぐる女は吸われている口から嗚咽の声を漏らした。
 女がひざを折り、灌木の茂みに身を横たえた。スダヌスは女に体重をかけていく、けなげに受け入れる女、腰にまつわる布をめくり身を開いた。スダヌスはためらうことなく女の身を割った、女は姫どころにスダヌスのいち物を誘っていく、彼は矛先に力を込めていち物を女の姫どころを突き貫いた。
 声をあげる女、女の口を手でおさえるスダヌス、烈しく、ゆるやかに緩急自在に腰を動かした。女はよがった、よがりながら女も腰を使う、スダヌスの律動に同調して動く、スダヌスは天に駆けあがった、気分高らかに放射した。
 女はスダヌスを離そうとはしない、前にもまして腰を使ってくる。いち物は猛ったままである。彼は時間が気になった、がであった。彼は女の腰の動きに同調させて腰を動かした。女は力を込めてスダヌスに抱きついてくる、女がかわいい、女の顔を胸にいざなって、あげる声を抑えた。スダヌスは再び天に駆けあがった。
 女は、スダヌスの体重を受け、動きを止めた。身を離すスダヌス、闇の中の女の目は、スダヌスに『ありがとう』の目線を送った。
 彼は、何事もなかったといった風情で座に戻った。イリオネスが声をかけてきた。
 『スダヌス頭、明日の予定は朝食の場で打ち合わせましょう。それでいいですね』
 『おう、それがいい。パリヌルスとの打ち合わせは朝めし前にやる。どっちみち、集散所の状況確認もついて廻る話であろうと思う』
 スダヌスは、動物的感性でパリヌルスの相談ごとを察していた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  269

2014-05-09 06:44:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスは、思うところがあって親切であった。皿の羊肉を手に取って串に刺す、塩を振りかけて焚き火にかざした。肉の焼ける臭いが鼻を突いてくる、五感を刺激した。スダヌスがガラガラ声にやさしさを込めて声ををかけた。
 『おう、姫子っ、まあ~、ちょっと腰を下ろせ。俺が座っている、お前が立っているでは、絵にならんだろうが。お~、焼けたぞ、うまいぞ、食べな』
 言われた女は、女は腰を下ろした。
 焼けた肉を手渡すスダヌスは、意趣を態度ににじませて女に手渡した。女は肉の串を手にする。焼けた肉を見つめ白い歯を見せ、野性を漂わせて肉に噛みついた。
 『うう~ん、旨いっ!この肉柔らか~い』
 スダヌスは手にしていた酒ツボを地面に置いた。女は、左手に酒杯、右手に焼いた肉の串、両手がふさがっている。女はスダヌスの左側に座っていた。
 スダヌスは今がチャンスと見た。スダヌスは、酒に酔った風を装って、左手を女の右足の太ももの上に置いた。辺りに目をやる、他人の目を気にしながら左手を女の股間に滑り込ませた。彼の手は気を込めて女の秘所をなぞった。
 女は控え目ながらおさえた声を口から洩らした。チョッピリ長めの一瞬である。指先にスキ心を込めて女の秘所をまさぐった。女は肉をほおばりながら、よがりの声をあげた。スダヌスは、惜しみながら手を引いた。
 『おいしかったわ、旨い肉だったわ。ねえ~、もう一串食べたい』
 『おう、旨かったか。そうか、よし!焼いてやる』
 スダヌスは女の注文に応えた。肉を串にさし、塩を振り、火にかざした。女は酒杯をスダヌスに返した。今度はスダヌスの両手がふさがった。女は体を乗り出して、右手をスダヌスの左足の太ももにおいて、スダヌスの前におかれた酒ツボを左手でとろうとした。女は他人の目を気にせず、右手を股間に滑り込ませて、おったっているスダヌスのぶっといいち物を握り、二度三度としごいた。彼は小さな声で『おう、気持ちいい』と呟いて、女の耳にささやいた。
 『気持ちいいことをしたいのう』
 女は首を縦に振り、スダヌスの顔を見つめた。
 『おう、肉が焼けたぜ』と言って、肉の串を女に渡した。女は旨そうに肉をほおばった。
 酒ツボを手にしている女は、スダヌスの酒杯に酒を注いだ。スダヌスは半分くらいを呑み、酒杯を女に手渡した。女は酒を呑みほした。女は小声で告げた。
 『私は、小用をたしに行く』
 女は、座から立ちあがり、暗がりの中へ身を消した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  268

2014-05-08 07:53:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『あなた方の釣った魚もそれなりにうまい。まあ~まあ~といったところだ。この魚は、どちらかというと大衆魚の部類に属する』
 『そうですか、高級魚の部類には入らないと。魚に関する認識を改めないといけませんな。ご忠告有難く受け止めます』
 安堵した表情で会話を交わした。
 『統領、いかがですか、明日、一緒に集散所へ出向きませんか、案内は私がやります』
 突然の誘いにアヱネアスは一瞬戸惑りイリオネスのほうへ顔を向けた。イリオネスは申し出を受けるようにとアヱネアスと目と目を合わせて伝えた。
 アヱネアスは、承諾した。
 『判りました。軍団長も同道しますがいいですかな』
 『あ~あ、結構ですとも』と答えて、スダヌスはパリヌルスの姿を求めて辺りを見回した。
 『お~、いたいた』
 スダヌスは大声をあげてパリヌルスを呼び寄せた。
 『お前の言っていた相談ごとだが、明朝早くからどうだ。統領と軍団長を集散所へ案内することになった。そういうことだ。お前の予定をそれに合わせろ、いいな』
 『判った。それで段取りする』と答えて自席に戻った。
 全員こぞっての夕めしの場はにぎわった。オキテスは樹木調査隊の者たちの労をねぎらっている。パリヌルスはトピタスらを、オロンテスはパンつくりに精を出している面々を、アレテスは魚釣りをやった者たちを、ギアスは舟艇の漕ぎかたの連中を、それぞれの立場で彼らの労をねぎらっている風景が焚き火の炎に照らし出されていた。皆がそれぞれで夕めしを楽しんだ。
 女たちは、酒ツボをもって酒を注ぎに場をあちこちと行き来している。スダヌスは一人の女に目をとめた。例の女である。際立った美人ではないが目鼻立ちがくっきりとしている。スダヌスの気に入りの風情を漂わせた女であった。女は統領、軍団長と酒を注いで、スダヌスの前に立った。
 女は酒ツボをかかげて見せる、スダヌスは手にしている酒杯を突き出す、女は酒を注ぐ、女はスダヌスと目を合わせた。スダヌスは注がれた酒を一気に呑み干した。空にした酒杯を女に渡した。
 『おう、お前か。まあ~一杯呑め!』と言って、女から酒ツボを受け取り、女の持つ酒杯に酒を注いだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  267

2014-05-07 07:03:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集落のあちこちからから皆が集まってくる、女たちの声も聞こえる、広場がにぎわってきた。
 アレテスたちの光景を目にしたスダヌスは驚いた。
 『これは、いったい何だ!俺たち漁師の株を奪いやがって!事の詳細を質さにゃならん』
 『軍団長、これは、どういうことです』
 スダヌスは、気色ばんだ声音でイリオネスに言葉を投げた。
 『まあ~まあ~、スダヌス頭、今日は朝から我ら一同こぞって釣りに出かけて獲った魚です。出来れば夕めしの肴にと考えての事です。何卒、よろしく了解のほどを、、、』
 『ほう~、そういうことですか、判りました。しかし、あなたたちもやりますな、一同、総出で魚を釣りに出るとは恐れ入りました。では今宵は、ひとつ、あなたたちの釣った魚を賞味しますかな』
 『そう願えれば、私らの心が通じたものと嬉しさの極みです』
 スダヌスは、頭を傾げながらイリオネスの話を聞いていた。彼は納得いかなかった。浜に着いたときの様子では、そのような雰囲気が感じられなかった。彼は、少なからず疑念を抱いた。『まあ~、様子を見てみよう』ということにした。
 夕食会は始まった。スダヌスが持参した羊肉は、数人分だけであったがオロンテスが調理して焼いた。彼は『これでもか』という心情で焼いた。
 アヱネアス、イリオネス、そして、スダヌスは、オロンテスの『これでもか』を味わった。
 スダヌスの開口一番、彼は大声で『やややっ!旨いっ!これは旨いっ!二人ともどうだ』と二人の息子たちに声をかけた。
 『いやいや、感動ですわ!』とアヱネアスとイリオネスの顔を見た。アヱネアスもイリオネスも焼かれた羊肉のうまさを堪能した。アヱネアスは、スダヌスに声をかけた。
 『スダヌス頭、貴方のおかげで、うまい羊肉を味わっている。ありがとう』
 イリオネスは『さあ、どうぞ!』と言って酒をスダヌスの酒杯に満たした。
 そこへオロンテスが、今日釣った魚を丁寧に焼き上げて持ってきた。
 『おお~、今日、釣った魚かな。どれどれ、、、』と言って、スダヌスは身をのり出してきた。彼は串を握った。
 『おう、この魚うまく焼いてあるな』と言いながら、傍らの皿の塩を少しばかりつまんだ。香ばしさが鼻を衝く焼けた魚に振りかける、おもむろに噛みついた。
 『これも、旨い!』と一言ほめた。先ほど胸に抱いた疑念がどこかに消えていた。
 女たちがサービスに姿を見せた。スダヌスは淡い期待を胸に湧き起こした。『この前の女が来ないかな』であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  266

2014-05-06 05:58:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスが礼を述べた。
 『これはこれは、スダヌス頭、ありがたく頂戴いたします。いま、夕食の支度をしております。今夕は、ゆっくりとくつろいでください。私が我々一同に変わって厚く礼を申し上げます』
 『それは、ありがたい。ゆっくりさせてもらいますぞ』
 スダヌスと二人の息子、身近の者、そして、パリヌルスとオキテスは、統領を囲んでの歓談の場へといざなった。話題は集散所の事が話題になり話に花が咲いた。アヱネアスもイリオネスも、オロンテスからの報告にあがってこないことやパンについての巷のうわさなど、彼らの知らないことなどが話になった。また、地元の豪族ガリダが集散所に姿を見せたことなども語られた。
 『いやいや、私は驚いた、一日であのように話題になったことも、ここ数年なかった。貴方がたもなかなかやるね。感心の一語に尽きますな』
 パリヌルスは、広場を横切ってくるギアスの姿を目にした。彼は座を離れてギアスのほうに向かった。
 『して、どうであった、ギアス』
 『隊長、喜んでください。漁は、いい結果だそうです』
 『そうか、それはよかった。アレテスは、もう、来るかな?』
 『はい、間もなく来ます』
 『よし、ギアス。アレテスに伝えてくれたな。皆、総あげで来るようにと』
 『はい、伝えました』
 『それでは、浜の者たちもみんなで来るようにしてくれ。アレテスの漁の獲物を運ぶのに手を貸してやってくれ。アレテスの持ってくる魚の事だが、各シマに分けて配る指示をお前がやるのだ、判ったな』
 『判りました。では、行きます』
 ギアスは浜に向かった。パリヌルスは、夕食の場を作っている者の一人を呼んでオロンテスへの伝言を託した。
 『ーーーーーということだ。急いでオロンテスに伝えてくれ。俺への伝言があれば、俺はここにいる』
 『判りました』従卒はオロンテスの許へ走った。
 焚き火の薪の山は、いつものように30余りが作られている。夕食の場の各シマの薪の山に火が入れられていく、炎が上がり始めた。
 オロンテスが姿を見せた。彼は準備の整った広場を見渡す、首を縦に振る。『いいだろう!』と独り言ちて、樹の枝に吊り下げられている木板を打ち鳴らした。
 くぐもった響きだが高らかに鳴り渡った。
 アレテスを先頭に小島の者たち、浜の者たちが連れだってやってくる。彼らは、魚を入れた籠を肩にしてやって来た。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  265

2014-05-05 06:44:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『なにっ!俺に残れ!この俺に相談事とは』
 『いろいろとある』
 『いい相談事か。困りごとの相談ならお断りだ』
 『判っている。いい相談事だ』
 『判った!乗ろう』
 二人の用談は決着した。
 『では、俺の用件をかたずける』
 『判った。では、めしの席で待っている』と言って、パリヌルスは浜を離れた。スダヌスは乗ってきた自船へと帰っていく。クリテス兄弟が話し合っている。スダヌスは三人の息子たちを眺めた。
 『おっ、クリテス、元気であったか』
 『はいっ、元気にやっています。父上こそ、元気でしたか』
 『見ればわかるだろうが、元気そのもだ。見てわかることは聞かずともいい。仕事の方はきちっとこなしているのか』
 『それは、まあ~といったところです。このあと三、四日後には島の東地区に出かけることになっています。スオダには立ち寄らないだろうと思います』
 『そうか、クリテス、何でもいい与えられた役務に力を尽くせ。時代は変わるぞ。この集団は、クレタに足跡を残すぞ、俺はそのように感じている』
 『判りました、これで私は行きます』
 『おっ、そうか、またな』
 スダヌスは、一同に言いつけて、積んできた荷を下ろした。4頭分相当の羊肉と野菜類も葉物を中心にたっぷりと積んできていた。
 『お前らいいか、行くぞ』
 彼らは荷を肩に担ぎ広場への道をたどった。
 広場には、アヱネアスとイリオネスが待っていた。二人のかたわらには、オロンテス、オキテス、パリヌルスの三人が立っている。アヱネアスと幹部連がスダヌスを出迎えた。
 スダヌスに歩み寄るアヱネアス、互いに目を合わせて、手を差し伸べる、固く握り合った。
 『やあ~、スダヌス頭。遠いところへようこそ』
 『統領殿、いやいや、沙汰なしで過ごしていました失礼を許してください。お元気が何よりです』
 『おう、ありがとう。頭も元気そうで何よりだ』
 『ありがとうございます』と言いながら目線をイリオネスのほうへ転じて、
 『軍団長も元気そうで何よりです』
 二人とあいさつを終えたスダヌスは、パリヌルスら三人のほうへ歩み寄り声をかけた。
 『やあ~、皆さんも壮健の様子何よりです。これを笑納ください』
 と言って、運んできた荷を渡した。