『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  274

2014-05-16 08:12:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、この仕事に関する限り、失敗を極力避けたい。成功することよりも失敗しないことが肝要であるとして仕事を進めることにした。いずれ会議の場で説明の上、しかるべき担当を決めて遂行させると考えをまとめた。
 パルヌルスは、魚の件について、集散所における状況を彼なりに分析していた。そして、描いた。
 魚を売ろうとする自分を魚の売り場に立たせた。そこでの売りの場面を描いた。売りに対処する自分の姿を描いて、想起する売り場面、そして、結果を予測した。いい結果を得ることができない。大量に売れ残った魚を始末する哀れな自分の姿がそこにあった。そして、途方に暮れるみじめな肩を落とした自分に後ろ姿を見つめた。彼はいてもたってもいられなかった。彼は、このような事態を招かない仕事のあり方、あり様を出来るだけ多くの事例を設定して、考えたうえでの実施案をまとめた。
 一行が出航するときとなった。スダヌスが統領、そして、一同に声をかけて乗船を促した。スダヌスの船が浜を離れてキドニアを目指した。
 帆は風をはらんではいるが力が充分ではない、漕ぎかたが精を出して櫂で漕いで船を進めた。ニューキドニアの浜を離れて小一時間、キドニアの船溜まりに着いた。一行は集散所に向けて歩を進める。アヱネアスとイリオネスは、はじめて歩むキドニアの街区の家並みを見ながら歩む、スダヌスは二言三言、説明をしてアヱネアスに肩を並べて歩いた。程なく彼ら一行は集散所の前に立つ、アヱネアスは目線を各所に這わせて観察した。スダヌスが声をかける。
 『統領、どうぞ!私が案内しましょう』
 『ありがとう。先ずは、パンの売り場を見てみたい』
 『おう、それがいい。オロンテスさん、統領を、、、』といって、案内役をオロンテスに振った。
 オロンテスは、アヱネアスとイリオネスをパンの売り場へと誘った。
 『ほっほう、このようにして売っているのか。オロンテス、今、この時間、客足はこのようなものなのか、この時間で、この状態なら、今日の売れ行きは、いいほうか、よくないほうか?』
 『そうですな、いいほうです。このあとの客足次第で、早く売り切ってしまえるかです』
 『そうか、気をもむのはこのあとか、そうであろうな』
 そのように言ってアヱネアスは、集散所内を見まわした。