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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  283

2014-05-30 13:27:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 深い眠りに落ちていく。海の底深く落ちていく感覚であった。パリヌルスは愛用の短槍を右手に海藻の茂みをかき分けて戦う相手を探索しているらしい。俺は何をやっているのだろう、ふと夢の中で考えた。身体に水の流れを感じた。闘うべき相手が目の前を泳ぎすぎていく。体の高さが自分の背丈と変わらない魚体幅の魚である。敵を認識するのに時間を要した。『あっ!そうか俺の対敵は魚であった』通り過ぎた敵が方向を転換して、こちらに向かってくる。互いに敵を認識したようである。彼は、何かを叫ぼうとしている、声をあげたらしい。耳にする音声がない。音のない世界であった。
 敵は大口を開けて迫ってくる、奴は俺を呑み込むつもりなのか。敵が身にまとう魚鱗の鎧は堅牢このうえない強固な装いである。彼の頭をよぎる思いは、『この槍で戦えるのか?』だが武器はこれしかない。敵とにらみ合った。両者の間合いが詰まってくる、槍の先がとどくであろう間隔に詰まった。彼は必殺の思いを込めて槍を突き出す、相手は身をよじって巧みにかわす、魚鱗の鎧がやり先を弾き返す。魚は大口を開けて一挙に間合いを詰めた。水流が起きる、身が引きよせられる、パリヌルスは、槍を振り回して辛うじて、飲呑み込まれそうになるのを辛うじて防いだ。何とか危難から逃れた
 逃れた彼は、考えを変えた。魚が大口を開けて水を吸い込む、水流を身に感じた。彼の身は魚の大口に吸い込まれた、魚の大口に吸い込まれた彼は、槍先を魚の口の内側から上に向けて突き上げた。槍は魚の上あごを刺し貫いた。
 上あごを刺し貫かれた魚は、衝撃を感じて、身を振り回してのたうった。パリヌルスは、槍の柄をしっかりつかみ、のたうつ魚から振り飛ばされぬようにたえた。
 おかしい、俺の身を引くやつがおるらしい、魚が身をよじりながらひかれていく、自分の身もグイグイひかれていく。身に水の抵抗を感じなくなった。魚とともに空中を遊泳した魚は前にもまして身をよじりまわる。どこかに着地したらしい、魚はのたうち回る。彼は、魚から身は離れ、感触のやわらかい地上に立っていた。それは人間の掌の感触であった。
 夢はそこで終わった。彼は目を開けて眼前の闇を見張った。一歩、歩を進める、前途寸前の暗闇を見透かしていた。