『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  276

2014-05-21 07:01:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、集散所の一巡を終えた。羊乳の加工、葡萄酒の醸造、オリーブ油搾り等の設備が集散所の一隅に設けられていた。集散所の一巡を終えた彼らは、どんな思惑があったのか、一同が目を合わせてうなづき合った。
 原始時代の食生活、食材を原形のまま口にする時代が変わろうとしていることを実感していた。
 集散所の敷地もかなり広い、建物もそれなりの規模を持ち、地方の統治運営の中心的機能を持っていた。(集散所の大きさは、児童数200~300人くらいの村の小学校スケールと想像してください)この時代のその地方の商業の中心的な役割を果たし、食材の加工、陶磁器の加工施設、青銅器の冶金加工の機能も有していた。そのうえ、その地方の産物、木材等に至るまで広範囲の物産の集散に関係して、交易の中心的な役割を果たしていた。そのようなわけで海に面していることが必須の条件でもあった。
 スダヌスは、末の息子のイデオスに言いつけてハニタスに連絡をとっていた。彼らは集散所の一隅に腰を下ろして、一時の休みをとった。ハニタスが姿を見せた。
 『お~お、これはこれは。統領、そして、ご一同、ようこそおいでくださいました。スダヌス浜頭が皆さんを集散所を案内していると連絡を受けました。どうぞ、ゆっくりしていってください。それにしてもパンの売り場の事ですが、なかなかの評判になっています、結構なことと喜んでいる次第です。この調子で10日も過ぎれば、安心の毎日になると考えています』
 『そうですか、そうなれば、パンの仕事に従事している者たちにとってうれしいことです。展望が開けてくるというもんです』
 『どうぞ、今日は、ゆっくりしていって下さい』
 ハニタスは、挨拶を終えて場を去っていった。
 スダヌスが口を開いた。
 『彼も彼なりに忙しいらしい。統領、もう、そろそろ昼めし時となります。広場のほうへ参りましょう』
 アヱネアスらを広場のほうへといざなった。
 広場では、二人の息子が昼めしの場を整えて待っていた。
 『おう、ご苦労。お前らも一緒に昼を過ごせ』
 一同は昼めしの場を囲んだ。羊乳を飲み、やや野暮ったいが、オロンテスたちが焼いたパンにブドウの香味を付けたオリーブ油をしみこませて口に運んだ。
 『お~お、これは気が利いていますな。いけますな。スダヌス頭、旨いっ!なかなかですな』
 ぶどう酒とブドウの果汁にオリーブ油を加えて煮詰めたものらしい。ほのかな甘みを感じさせるものであった。
 彼らは、ガヤガヤととりとめのない話に花を咲かせて昼めしを終えた。