『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  267

2014-05-07 07:03:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集落のあちこちからから皆が集まってくる、女たちの声も聞こえる、広場がにぎわってきた。
 アレテスたちの光景を目にしたスダヌスは驚いた。
 『これは、いったい何だ!俺たち漁師の株を奪いやがって!事の詳細を質さにゃならん』
 『軍団長、これは、どういうことです』
 スダヌスは、気色ばんだ声音でイリオネスに言葉を投げた。
 『まあ~まあ~、スダヌス頭、今日は朝から我ら一同こぞって釣りに出かけて獲った魚です。出来れば夕めしの肴にと考えての事です。何卒、よろしく了解のほどを、、、』
 『ほう~、そういうことですか、判りました。しかし、あなたたちもやりますな、一同、総出で魚を釣りに出るとは恐れ入りました。では今宵は、ひとつ、あなたたちの釣った魚を賞味しますかな』
 『そう願えれば、私らの心が通じたものと嬉しさの極みです』
 スダヌスは、頭を傾げながらイリオネスの話を聞いていた。彼は納得いかなかった。浜に着いたときの様子では、そのような雰囲気が感じられなかった。彼は、少なからず疑念を抱いた。『まあ~、様子を見てみよう』ということにした。
 夕食会は始まった。スダヌスが持参した羊肉は、数人分だけであったがオロンテスが調理して焼いた。彼は『これでもか』という心情で焼いた。
 アヱネアス、イリオネス、そして、スダヌスは、オロンテスの『これでもか』を味わった。
 スダヌスの開口一番、彼は大声で『やややっ!旨いっ!これは旨いっ!二人ともどうだ』と二人の息子たちに声をかけた。
 『いやいや、感動ですわ!』とアヱネアスとイリオネスの顔を見た。アヱネアスもイリオネスも焼かれた羊肉のうまさを堪能した。アヱネアスは、スダヌスに声をかけた。
 『スダヌス頭、貴方のおかげで、うまい羊肉を味わっている。ありがとう』
 イリオネスは『さあ、どうぞ!』と言って酒をスダヌスの酒杯に満たした。
 そこへオロンテスが、今日釣った魚を丁寧に焼き上げて持ってきた。
 『おお~、今日、釣った魚かな。どれどれ、、、』と言って、スダヌスは身をのり出してきた。彼は串を握った。
 『おう、この魚うまく焼いてあるな』と言いながら、傍らの皿の塩を少しばかりつまんだ。香ばしさが鼻を衝く焼けた魚に振りかける、おもむろに噛みついた。
 『これも、旨い!』と一言ほめた。先ほど胸に抱いた疑念がどこかに消えていた。
 女たちがサービスに姿を見せた。スダヌスは淡い期待を胸に湧き起こした。『この前の女が来ないかな』であった。


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