『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1286

2018-05-14 08:21:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『肩の凝るような話は避ける。奇想天外、笑える話をしようではないか』
 『おう、それでいこう』
 彼らの雑談は、小さな穴を穿ち、その穴から船舶の未来を覗き見るといった風な話である。壮大な夢ではなく、ささやかな構想に尾ひれつけて笑い合う。
 山の尾根道を用心して歩く、足にからまる大石小石が歩みを阻む、細く長く荒れた崩れそうな獣みち、風雨にさらされた道、越すに難儀するきれっと、行く手をさえぎる大岩、のりこえるか迂回するかに迷う、前面にはだかる岸壁、オーバーハング、進もうか、戻ろうか、話が終わる。
 『まあ~、ここらが話の終点か。昼を終えたらここに来る』と言って、パリヌルスが立ちあがる、場を去っていく。
 『オキテス隊長、では、昼を終えたらこちらへ来ます』
 『おう!』
 二人はうなずき合う、ドックスが場をあとにする。
 二人が去った場でオキテスは考える、時が流れる、考えている、それでいて何も考えていない自分に気づく、思考の道中で立ち止まっている。
 身の回りを眺める、眺める空間が広がっていく、どことなく彼方を見つめる、道は見えていない、海へ視線を転じる、伸びている水平線、たなびく雲。
 『何だ雲か!?』と思ったとたんに風景が変わる、風が吹き渡っていく草原、先へと続く一筋の道、森に突き当たって消えている、風景が変わる、大勢の人影が歓喜している。
 オキテスは、背中に人の気配を感じる、我に返る、振り向く。
 『オキテス隊長、客人が見えています。同行しています』
 客人に目線を移すオキテスが驚く。
 『ああ~っ!パキオテ頭領殿!ようこそ!』
 『オキテス殿、久しぶりだ!達者だったか?』
 二人はガシット肩を抱きあう、顔を見合わす、再び肩を抱き合う。二人はまじまじと見つめ合う、声がけを待つ風情、オキテスが声をかける。
 『パキオテ頭領殿、遠いところにようこそ来られました。道中いかがでしたか?海路はどちらからですか?』
 『おう、東からだ。テムノスのところで朝、目が覚めたら東から風が来ているではないか、お前を訪ねることを思い立ったてわけだ』
 『そうでしたか、ようこそおいでいただきました。大歓迎です!ゆっくりしてください』
 オキテスは、傍らにいる作業の者にアエネアスとイリオネスを呼びに行かせる。
 空を見上げる、陽の位置を確かめる。
 続けてもう一人、作業者を呼んで指示する。
 『おう、あのな、急いでパン工房へ行ってくれ!セレストスにすぐ、ここへ来るように言ってくれ』
 『解りました』
 指示を携えて走る作業者。
 オキテスは、パキオテ頭領と連れだって浜へと歩みだした。


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