『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 ５７

　パリヌルスは、敵情偵察の者たちを送り出した。矢は放たれた。
　アレテスは、パリヌルスのやっていることに携わって、事の成り行きと何が目論まれているかを知った。
　『パリヌルス隊長、いま、我々がやろうとしていること、それが何かが判りました』
　『おう、アレテス、そうか。君たちに未だ事の詳細と作戦計画を伝えていなかった。統領と土豪との打ち合わせが終わらなければ、はっきりしない一事がある。だが、もういい、事態がここまで進展してきている。我々だけで打ち合わせをやる。俺自身、思考がまとまらず、作戦計画が明確になっていなかったこともあるのだ。ここに向かっている途中に結論に到達したありさまだ。これから簡単に打ち合わせをやる。アレテス、言っておくが未だ極秘扱いだ、いいな。統領、軍団長が帰って、事情がはっきりするまでは、誰にも言ってはならん。アレテス、撃剣のトレーニングの場に行って、カイクスとリナウス、そして、お前の副長役のトピタスを連れてきてくれ。俺はここで待っている、打ち合わせと言ってもほんのチョイの間だ。矢は、すでに舷をはなれている。いそいでくれ』
　『判りました』
　アレテスは、トレーニングの場に向かって走った。時をおかず、四人がパリヌルスのもとに姿を見せた。
　『おう、お前らご苦労。アレテスには伝えてあるが未だ極秘扱いだ。各船に先駆けて、１番船と２番船、そして、舟艇は、今夜、夕めしのあと少々の間をおいて、この浜を離れる。先駆け出航だ。先に出航して何をするか。築砦予定地の真向かいに小島がある。この小島は海賊の巣窟である。この海賊をせん滅する。いいな、判ったな。もうすでに、攻撃のタイミングを知らせる看視偵察隊が出発した。矢は弦を放れた。全員に知らせるのは、出向の直前だ。それまで極秘だ。はっきりしない事情が一つだけあるのだ。その事情は夕めし前には判る。そこで夕めしの直後にもう一度打ち合わせをやる。君たちにやってもらいことだが、お前らの信頼できる腕のたつ者を各船について８人づつ準備するのだ。判ったな。舟艇のほうは俺が責任を持つ。お前らは、その者たちを引き連れて、夕めしの直後、ここに集合だ、打ち合わせをやる。いいな』
　『判りました』
　四人は力強くうなづいた。