『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  18

2012-03-29 09:12:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは沿岸との距離を考えて進路を保った。レムノス島の南端の岬が視野に入ってきた。島影が海上に延びている、太陽が沈みかける低い位置にある。船上の者たちもこのときを迎えている。彼は、彼らがこの時を迎えている感慨を推し量った。
 『お~いっ!アミクス、来てくれ』
 船団は、湾内に入る最終の進路変更地点に到達していた。そこからはその身の半分を海に沈めた太陽が見えた。
 『アミクス、進路変更信号を発してくれ。進路目標は沈みつつある太陽だ。いいな、急げっ!櫂座の者たちには全力で漕げと指示しろ。操舵手には舵をきれと命令しろ。以上だ』
 『判りました!』
 『発信を終えたら直ちにここに戻れ。いいな、行け!』
 彼は船尾に飛んだ。
 船団は航跡を引いて進路の変更を行った。オキテスは戻ったアミクスに声をかけた。
 『アミクス、どうだ、うまくいったか』
 『全船、間もなく進路変更を終えます』
 『おっ、そうか。よしっ!次の信号は、『我が船に続いて着岸せよ』だ。いいな、いい頃合いをみて発信してくれ』
 『はい、判りました』
 つるべ落としに沈み行く太陽は、茜色を空に残して全身を海に沈めていた。
 オキテスは、体感で船速を測った。太陽が沈んだら時間をかけずに宵闇が訪れる、彼は呼吸で時を測っていた。