『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  10

2012-03-19 09:30:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は、ひとふう変わった用具を袋から取り出した。船出を数日後に控えた風がやや強めに吹く日に造った自称『風向風力感知器』であった。
 『よし!試してみよう』
 感知器の主体は、木枠で作った風洞構造である。風洞は下部が細くなった三角構造である。この風洞を風が通るとき風洞内に設けた板を風力によって、板の下部が上部方向におしあげられる。風の強さによる板の傾き具合で風力のランク付けができるようにしたものであった。また、風向きを感知する矢印板は風動木枠上部に取り外し自由のカタチで、あらかじめ設けた穴に心棒を差し込んで使う構造にしてあった。
 風力のランク付けは、彼の裁量によって決められていた。感知器の握り手を右手で握り、向かい風にかざした。風向矢印板の指し示す方向と平行方向に風洞を向けた。そして、風力の強さを確かめた。次は、帆に受けている風向、風力を知るべく、帆桁に垂直方向に感知器をかざした。帆をはらませている風の風向きと風力を確かめた。それによって斜め後方からの風の力がまともに受ける風の力の3分の2以下であることを知った。
 『ほっ、ほう、そういうことか。このような場合は帆に受ける風力のダウンはこのようになるのか』
 彼はうなづいた、自分の造った道具がこのように便利なものなのかと己に感動した。