『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第4章  船出  84

2012-03-05 06:58:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団は、二番船を先頭に船出していく、帆にはらむ風は弱く風をはらんだ様子だけを見せていた。オキテスはグットこらえた。
 動き出した船団は、明けの陽光を左横に浴びて海洋の面を割った。
 突如、海上の小舟群から、ドット喊声が湧き上がった。喊声は、建国の壮途に出て行く者たちの魂をゆすぶった。彼らの心を鼓舞し躍らせた。
 続いて三番船が波を割り始めた。間をおいて四番船が続く、各船が続いて、波を割り白い航跡を引いて進んで行く。
 小舟の上のトリタスや浜衆たちは、その情景に目を見張っている。感動と興奮が極みに昇ってくる、声を張り上げた。彼らを見送った。見送られる者たちは手を振ってこれに答えた。半年の間ともに過ごした別れのときであった。
 陸からの風は、少しづつではあったが力を増してきつつあった。追い風にはあと少しである。船上の彼らは、風の力を乞い願った。風が力を増してくる、帆のはらみがカタチになってきた。波頭が白く風に飛ぶようになってきた。
 『漕ぎかた、止めっ!』
 全船が櫂を上げた。
 各船は、80メートルくらいの間隔を保ちながら航走している。船団は順風満帆の風力航走に移った。
 船上の者たちにふりかえる余裕が出てきた、彼らは遠ざかる陸地に目をやった。胸のうちにこみ上げてきたのは、もう帰るところがない、しかし、行くところがある。一抹の寂しさと希望であった。
 このときになって、イリオネスは、袋の中から方角時板の鉄の棒を取り出した。