オキテスは、浜に居並ぶ者たちに向かい高く手を上げて別れを告げた。彼らにはもう二度とまみえることはないだろうと胸中の叫びが聞こえた。
パリヌルスは、惜別の情で胸が張り裂けんばかりの思いで浜を見回した。統領と軍団長は残る者たちと別れの言葉を交わしていた。こみ上げてくる万感の思いで言葉が思うように出てこない、目を潤ませて手を握り交わしての別れであった。
パリヌルスは二人に声をかけた。
『統領、乗船のときとなりました。まいりましょう』
『おう!』
三人は、押さえがたきを抑えて準備されていた小舟に乗った。振り飛ぶのではないかと思われるくらいに力の限り手を振った。
三人の乗る一番船は指呼の距離に停泊している。すでに船上にいるパリヌルス配下の者たちは、三人を船上に迎えた。
この頃には、夜が明けきり海上はいうに及ばず周りの風景が見通せた。三人はこのときになってようやく気がついた。
陽の出を間近にに控えた海上に20艘余りの小舟がいるではないか、トリタスと浜衆たちの小舟である。
東の地平に太陽が姿を見せようとしている。オキテスは、帆柱の最頂部に結び取り付けていた長いヒモ状の布切れに眼差しを注いでいた。わずかばかりであろうと、その変化を見逃さなかった。
彼の声が大気を裂いて通った。
『漕ぎ方用意っ!帆を上げっ!』
これを合図に各船がオキテスの二番船にならった。
太陽の最上部が顔を覗かせた。光の第一射が届いた。
船出の刻である。
『漕ぎかた 始めっ!』
二番船が静かであった海面を泡だてた。櫂が飛沫を飛ばした。
パリヌルスは、惜別の情で胸が張り裂けんばかりの思いで浜を見回した。統領と軍団長は残る者たちと別れの言葉を交わしていた。こみ上げてくる万感の思いで言葉が思うように出てこない、目を潤ませて手を握り交わしての別れであった。
パリヌルスは二人に声をかけた。
『統領、乗船のときとなりました。まいりましょう』
『おう!』
三人は、押さえがたきを抑えて準備されていた小舟に乗った。振り飛ぶのではないかと思われるくらいに力の限り手を振った。
三人の乗る一番船は指呼の距離に停泊している。すでに船上にいるパリヌルス配下の者たちは、三人を船上に迎えた。
この頃には、夜が明けきり海上はいうに及ばず周りの風景が見通せた。三人はこのときになってようやく気がついた。
陽の出を間近にに控えた海上に20艘余りの小舟がいるではないか、トリタスと浜衆たちの小舟である。
東の地平に太陽が姿を見せようとしている。オキテスは、帆柱の最頂部に結び取り付けていた長いヒモ状の布切れに眼差しを注いでいた。わずかばかりであろうと、その変化を見逃さなかった。
彼の声が大気を裂いて通った。
『漕ぎ方用意っ!帆を上げっ!』
これを合図に各船がオキテスの二番船にならった。
太陽の最上部が顔を覗かせた。光の第一射が届いた。
船出の刻である。
『漕ぎかた 始めっ!』
二番船が静かであった海面を泡だてた。櫂が飛沫を飛ばした。