『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第4章  船出  82

2012-03-01 07:04:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 行動に移った彼らを目で送ったパリヌルスは、自分の部下たちを準備しておいた小舟5艘に配置した。
 『オロンテス、アンテウス、いいか。五番船、六番船の乗船を開始する。乗船者を小船で運ぶ。直ぐやるっ!急げっ!』
 『判りました。配慮、有難う』
 オロンテスは短く礼を言って、即、行動に移った。
 荷を船倉に積んでいる五番船、六番船は、軍船より離れて沖合いに停泊している。そのことに対するパリヌルスの配慮であった。浜ではこの地に残る者たちが、この情景に見入っていた。オキテスがパリヌルスに近づいてくる。
 『パリヌルス、うまくいっているか。陽の出までには少ないが、まだ間がある。大丈夫だ。ユールス、アンキセス、アカテスは、俺が五番船に乗船させた。統領と軍団長とお前は、最後になる。よろしく頼む。舟艇は航海中のこともあるから、オロンテスの五番船に曳かせる、それでいいな』
 舟艇には15人余りが乗り組んでいた。彼らの懸念は、外洋の大波に翻弄されるであろうと思われることであった。
 『おっ!そこまでやってくれたか、有難う。ところで風の具合はどのようだ』
 『お~お、それか。いまのところ、陽が出てからでないと判らん。期待だけかも知れん』
 『判った。手漕ぎで出航だ。お前、全船に指示しておいてくれ』
 『判った。それから、統領と軍団長とお前は、小舟で乗船だ。残る者たちの中から6人を波打ち際に待機させてある。以上だ。俺は行くぞ!陽の出がまもなくだ』
 オキテスは緊張している、語尾が締まっていた。