日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

玉葉和歌集の鑑賞

2010年08月10日 | 日記
私自身の短歌は『古語短歌集 花の風[読み仮名・現代語訳付]』(まぐまぐマーケット)でご覧いただくことにして、これからしばらく玉葉和歌集の名歌を鑑賞したいと思います。
玉葉集は隠れた歌集で、人によっては最大限に評価されることもあります。特徴は、自然観照が長時間持続して、歌の中に時空が凝縮されるものが多いことです。叙景のピークと言ってよいでしょう。

春の歌下から2首。空と大地の間で、静謐な光と影が交錯しています。ここには、人事や人間くさい感情の入る余地はありません。

雲にうつる 日影の色も 薄くなりぬ 花の光の 夕ばえの空(藤原為顕)
さそひゆく 花のこずゑの 春風に くもらぬ雪ぞ 空にあまぎる(前右兵衛督為教)

すぐ近くにある次の歌は、古今集的な陳腐な風体で、これと比べることで、前の2首の境地のすぐれていることが、わかるのではないでしょうか。

雲となり 雪と降りしく 山桜 いづれを花の 色とかも見ん(常磐井入道前太政大臣)


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