飼育下のトノサマバッタが産卵するのを観察するのは,そうむずかしくはないでしょう。これに対して,自然界で同じ風景を見ることができるのはかなり珍しいと思われます。珍しいこの場面に,この程偶然出合いました。
日曜日,公園の歩道での目撃です。道には小さな砂利が敷き詰められています。時折ここを来園者が通り過ぎていきます。たまたまわたしはそこを通りかかりました。すると,前方地面をトノサマバッタが歩いていたのです。警戒心の強いバッタなのに,変だなあと感じながらしばらく見ていると,飛び去る気配がまったくありません。それどころか,なにか目的意識を持ったようにゆっくり歩いている様子。
「もしや,これは!」。もちろん,産卵ではないかという予感です。だって,これまで,虫の目写真でトノサマバッタを撮影するときは,警戒心がはっきり現れて失敗続きだったので,逃げないのがふしぎな程だったからなのです。
見ていると,ある場所に来ると,腹端をぐっと地中に突き刺すといった感じで入れました。からだは静止しているわけでなく,細かな動きが続きました。とくに腹部は。
至近距離で撮影しても,まったく気にしていません。それ程懸命なのです。
産卵を終えると,近くに移動してそこでもまた産卵。
時間をかけて,ゆっくりと産卵していました。
また歩いてほんのすこしだけ移動。そこでも産卵を始めました。腹部の様子から,相当深くに産付しているみたいです。
通路の端。もちろん,そこを来園者が通りかかります。それでも産み続けます。
この卵がどんなふうに産み付けられているのか,気になります。このときは時間がなく,確かめられませんでした。近く,掘って見届けたいと思っています。トノサマバッタは2化性で,秋に産み付けられた卵はそのまま越冬するということ。もう冬越しの準備に入ったのです。