冬に花咲く野草はわずか。タンポポはその,わずかなうちの一つ。黄色の花が目に付きます。なにを思って咲くのかわかりませんが,どう感じて開くのかさっぱりわかりません。とはいえ,どんな環境下でも生き延びようとしている一例であって,少々酷な条件でも「なにくそ!」と立ち向かうように見えるところがあっぱれです。
そんなわけで,ついついタンポポに目が向き,「いったいどんな昆虫が訪れるのか」と気になります。気になるので,タンポポの話題は必然的に繰り返し取り上げることになります。
すこし離れたところから見ると,なんだか黒い小さなものが付いているようです。近寄って確認すると,昆虫のようです。これは珍しいと思い,写真に撮ってから再生してみると,どうやらカメムシの幼虫のようです。翅が小さくて,飛べそうにありません。
蕊の林を動き回りながら,ときには口吻を立てている模様。花汁を吸っているようです。こんな風景を見たのは初めて。初めて経験する場面というのは,とても新鮮です。
近くのタンポポに,ツマグロキンバエが来ていました。この種はほんとうに元気です。環境への適応性にすぐれているのでしょう。
雲の間から陽が射して,タンポポの黄色が輝きました。そこにクロヒラタアブが訪れました。口器が吸盤でもあるかのように,広がっています。いかにも,効率よく餌を口にできそう。
また別の花に,ハナバエのなかまがいました。タネバエでしょうか。ときどきゆっくり動いて,しばらく止まって。また動いて。この繰り返し。これはまちがいなく餌を求めている行動です。
おやおや,この花ではヒメクチナガガガンボが口器を蜜源に向けています。体長と口吻が同じ長さ! 大きく見えますが,実際は体長7mm。堂々とした格好を支えるのはスマートな脚。
さらに別の花を見ると,いのちを失ったハエが蕊の谷間で横たわっていました。からだは花粉だらけ。もしかすると,クモに襲われたのかもしれません。
タンポポの花が描く冬物語はそう単純なものではなさそうです。