1月。寒い今,我が家の前の道端でシロバナタンポポが花を付けています。
ふつうなら昆虫がほとんど訪れないこの季節に,どうしてかなと思ってしまいます。これはセイヨウタンポポにもいえることです。セイヨウタンポポは染色体数が3倍体なので,受粉を経ないで結実します。これを単為生殖(無性生殖)と呼んでいます。つまり,虫がいてもいなくても,とにかく一年中種子をつくり続けるという,たくましい戦略の持ち主なのです。
もっとも,単為生殖ばかりで種子ができても,遺伝子情報が単一化されるので,不利な環境に見舞われると全滅する恐れが出て来ます。主として生き延びるにはどんな環境にでも対応できるという柔軟さがいるでしょう。それには種として多様な形質を残さなくてはならないでしょうし,そのためには受粉による結実法が欠かせないのです。
シロバナタンポポもまったく同じです。染色体数が5倍体なので,昆虫の仲立ちがなくても単為生殖で種子をつくることができます。もちろん,昆虫の活動が活発な季節は受粉による結実が多くを占めます。
シロバナタンポポがめずらしい存在だったのに,今では東日本方面にも分布域を広げています。これは,気候の変動や交通網の発達以外に,そうした生き方のたくましさも関係しているのです。