2019年12月2日と3日に開催されたWHOのグローバル・ワクチン・サミットの2日目午前の最後のセッションでは、21世紀の2番目の10年間に問題となったワクチン副反応について議論しています。
2009年の新型インフルエンザワクチン、デング熱ワクチン、子宮頸がんワクチンです。
新型インフルエンザワクチンの良く知られた副反応のナルコレプシーは、北ヨーロッパでの発症が問題になりました。
会議では、フィンランドの保健省の女性が詳細な経過を報告しています。
問題となったワクチンは、グラクソスミスクライン製のパンデムリックスとアレパンリックスで、前者は欧州、後者はカナダで使用されました。
ナルコレプシーの発症は特に北欧で問題となったのですが、これは、北欧では60%以上の児童が接種され、南欧では10%程度だったためでした。
カナダではシグナルがあっても、疫学的に有意な発症増加ではなかったので、その後、アレパンリックスとパンデムリックスの違いなどの研究も行われましたが、結論は、バックグラウンドの発症数が小さいと、疫学的に有意な結果は得られないということになっています。
フィンランドでは、シグナルに気が付いた医師らが論文を投稿しようとしたのを、保健省が2ヵ月間止め、その後、保健省が論文をインパクトファクターの高い医学誌に投稿しようとしたとき、すべての出版社が「我が社の読者の興味範疇ではない」という理由で断っており、結局、オープンアクセスのPLOSに受理されたということです。
この薬害はフィンランドではものすごく拗れたのに、同様に発症したスウェーデンでは問題にならなかったのは、スウェーデン政府は被害者にとても同情的であった一方、フィンランド政府は科学的な解明を急ぎ、患者を無視したためだと分析しています。フィンランドでは他のワクチンの接種率も下がりました。
同じ被害が起きたアイルランドでは、未だに政府は被害を認めていないということです。
このセッションから学んだこと
ワクチンの副反応は、ある地域でもともと発症が少ない疾患の場合、疫学的に有意な結果は得られない
発症数の多い地域での統計では有意な結果が得られる
つまり、治験はそれぞれの国で独自に行わなくては意味がない
副反応が発症したとき、政府が患者に寄り添わないと、問題が拗れる
インパクトファクターの高い医学誌はワクチンの副反応に興味がない
岡部先生は何を学びましたか?