はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part194 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第93譜

2020年12月31日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第93譜 指始図≫ 6五金打まで

指し手 △7七歩  ▲7五金



   [夜明けの空]

したいことが見つけられないから
急いだ振り 俯くまま

転んだ後に笑われてるのも
気づかない振りをするのだ

形のない歌で朝を描いたまま
浅い浅い夏の向こうに

冷たくない君の手のひらが見えた
淡い空 明けの蛍

 (ボーカロイド初音ミク楽曲『夜明けと蛍』作詞作曲 n-buna より 歌詞の一部抜粋)





<第93譜 曙光(一)>


≪最終一番勝負 第93譜 指始図≫ 8八玉まで

 後手 △7六金 に、▲8八玉(図)まで進んだところ。

 ここで後手「8六金」は、7五金と香を取る手があって無効。
 また「8六桂」は、7七歩、7八桂成、同金と進んでみると――(次の図)

変化8六桂図01
 後手に有効手がなく、困っている。8六金は7五金がある。
 7七金、同金、同香成、同玉、3一金と進むのなら、5四桂と打って、5三銀には、5一竜として次に4二銀をねらう。
 これは先手良しである。

変化8六桂図02
 「8六桂」に対しては、7五金(図)でも先手良しになる。
 以下7八桂成、同金、7五金上、同馬、同金、4二角と進んで―――(次の図)

変化8六桂図03
 これは、先手の戦力が強すぎて、後手に勝ち目がない。先手勝勢。

 ということで、≪指始図≫ では、後手は △7七歩 とする(次の図)



≪途中図1 7七歩まで≫

 △7七歩(図)と打って、銀を歩で取りにいく。
 もともとこの歩が打ちたいから、7五香~7六金と指してきたのであるから。

 ここで先手、どうするか。


変化8七銀図01
 △7七歩 には、8七銀(図)いう応手がある。これででどうなるか。
 実戦中、我々はこれでは負けだと判断し、この手を見送ったのであった。8七同金、同玉に、7八銀で勝てないと思ったからである(次の図)

変化8七銀図02
 ところが、戦後調査で、その判断は誤りでこれは「先手勝ち」の変化だ、ということが判明した!
 7八同金、同歩成に、8四馬 が有効手になるのだった!

 8四同銀に、3一銀、同玉、4二金、同玉とし、4三歩(次の図)

変化8七銀図03
 4三同玉なら、5四角以下、後手玉 “詰み” である。3四玉なら2五銀、同玉、3七桂以下、5三玉なら6二銀、4二玉、5一銀不成以下。
 よって4三同銀と取り、そこで「5一角」と打つのが大事な一手(「4三歩、同銀」を利かした効果で後手玉は4三から上部脱出ができなくなっている)
 以下3一玉、4二金、2二玉、3一銀、1一玉、8四角成(次の図)

変化8七銀図04
 “2度目の8四角(馬)切り” というのが面白い。
 この手が "詰めろ逃れの詰めろ" で決め手になる。このための「5一角」であった。

 つまり、8七銀 なら先手勝ち なのだった。




≪最終一番勝負 第93譜 指了図≫ 7五金まで 

 実戦では、先手は、▲7五金(図)とした。

  これは、「8七銀の勝ち筋をのがした」ということになるのだろうか。
 それとも、「7五金でも先手勝ち」となるのだろうか。


 実戦中、我々は、「勝ち」へと続く道筋の “光” が見えてきた気がしていた。



第94譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part193 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第92譜

2020年12月30日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第92譜 指始図≫ 6五金打まで

指し手 △6五同馬 ▲同金 △7六金 ▲8八玉



  [「違う!」と応えるために少女は海底に戻ってきた]

ある日、少女が戻ってみると
暗い海の底で 鏡が光っていました。

―――あれからずっと 
あなたは海底に沈んだままで

君は「A子ちゃん」のままなのだ。

「あの時、私は応(こた)えられなかったけれど もう言わなくちゃ」
そのために戻ってきたのだ。

少年「なんで僕が 君のこと好きなのか 教えてあげよう
それは 君は僕のことそんなに好きじゃないからだよ」

少女「違う!」

  ( 漫画『A子さんの恋人』 近藤聡乃作  KADOKAWA HARTA COMIX より)





<第92譜 決着は泥の中で(十)>


≪最終一番勝負 第92譜 指始図≫ 6五金打まで

 ▲5四歩△同馬 に、▲6五金打(図)の場面。

 ここは、我々――終盤探検隊――の戦う気持ちが入った場面であった。

 対して、後手7六香、5四金、7八香成、同玉の変化は、先手良し。
 4三馬と馬を引くのも、7五金寄、同金、同馬で、先手優勢。 

 後手の ≪ぬし≫ は、△6五同馬 と応じた(次の図)



≪途中図1 6五同馬まで≫

 ▲6五同金(図)に、7八香成の変化は、同金で、先手良し。

 ▲6五同金 には、△7六金と打つほうが手強い手。
 以下、▲8八玉 と進む(次の図)



≪最終一番勝負 第92譜 指了図≫ 8八玉まで

 ▲8八玉(図)まで進んだ。
 さあ、どうなっているか。



 この手で、「亜空間初形図」(下の図)より数えて、103手目になる。ついに100手を超えた。

亜空間初形図



第93譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part192 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第91譜

2020年12月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第91譜 指始図≫ 7五香まで

指し手  ▲5四歩  △同馬  ▲6五金打


   [描け!]

  ドンドンドンドンドン ガチャ
「おい、何をしよっとか、お前は」
「せ‥‥先生‥‥」
「ごめんアキちゃん お母さん 先生に 電話しちゃった」

  べりべりべりべり
「えっ」
「お母さん 鏡ありますか 大きいやつ」
「えっ あっハイ 鏡台なら‥」
「それ借りていいですか」

「よし 林! 自画像描け!」
「えっ や‥やだ‥ 自画像なんて ダサ‥」
「描けって! 余計なこと考えんでいいから 見たまんま描け」
「せん‥せ‥」
「ホラホラホラホラホラ―――ッ 描け描け描け鏡見て描け―――――――ッ
「ホラホラ早よッ 早よ描け早よ
「ホラホラホラ ホラ
「描けッ」

  (漫画『かくかくしかじか』 東村アキコ作 集英社 より)





<第91譜 決着は泥の中で(九)>


≪最終一番勝負 第91譜 指始図≫ 7五香まで

 後手の ≪ぬし≫ が選んだ指し手は △7五香(図) であった。

 形勢は、どうなっているのだろう?

 最新ソフト「水匠2/やねうら王」の評価は、「互角 +42 」
 一方、この戦争中に使っていたソフト「激指14」は、「互角 +150 」


 先手はここで、▲5四歩 と切り返すのだが、代えて「6五金 という変化」もあったので、その変化を見ておこう(次の図)

変化6五金図01
 6五金(図)に、7八香成(この変化のために7五に歩ではなく「香」を打った)
 7八同玉、7六銀と進む(次の図)

変化6五金図02
 そしてここで先手が何を指すか、という問題になる。
 〈p〉6八玉は、6五銀で後手優勢。
 〈q〉5四歩は良さそうな手であるが、8六馬、同飛、同桂、7八玉、6五銀で、やはりこの変化も後手良し。
 しかし、〈r〉6一竜があった。これで「互角」の勝負になる。
 以下6五銀、同竜、6四銀、3五竜、3四歩、4六竜、6五銀、6八玉が変化の一例(次の図)

変化6五金図03
 形勢不明。

 先手には、この変化を選ぶ権利があった。




≪途中図2 5四歩まで≫

 実戦の先手(終盤探検隊=我々)の手は、▲5四歩(図)

 以下、△5四同馬▲6五金打 と進んだ。

 後手が変化するなら、△5四同馬 に代えて、「6四馬」とする手があった。
 これは、以下6五銀と進む(次の図)

変化6四馬図01
 4二馬、4三歩、同銀、7七銀(次の図)

変化6四馬図02
 この変化も、形勢不明(互角)だ。
 これは後手に選ぶ権利がある変化だ。




≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 6五金打まで

 実戦は、△5四同馬▲6五金打(図)と進んだ。

 あいかわらず、“戦場” は、盤面左側である。
 しかし、後手の馬が前に出たので「4二」に打ちこみの “スキ” が生まれている。



第91譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part191 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第90譜

2020年12月25日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで

指し手  △7五香


   [僕の目ざめを待つ水仙の花]

 春のまだ浅いころ、或る朝、僕は思わぬ寝坊をした。冬のあいだあんなに短い睡眠に自分を馴(な)らしていたのに、時ならぬ暖かさが、心の弛(ゆる)みを作ったのにちがいない。画室の一隅(いちぐう)のソファ・ベッドの白いシーツの上に、僕は起き上がった。そのとき白い枕(まくら)のそばに、一茎の水仙が横たえられているのに気づいた。
 僕は怒ろうとしたが、思い止(とど)まった。枕のかたわらの水仙はいかにも自然に置かれていて、僕の目ざめをまっているかのようである。

  (『鏡子の家』 三島由紀夫著 新潮文庫 より)





<第90譜 決着は泥の中で(八)>


≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで

 今、先手(終盤探検隊)は、▲7六金(図)と、歩を払いながら金を寄って「8六」の地点を受けた。

 ここで後手はどう攻めるか。
 候補手は、たくさんある。
   〔い〕7五歩
   〔ろ〕7五香
   〔は〕9五金
   〔に〕9七歩成
   〔ほ〕6四銀
   〔へ〕8六桂
   〔と〕7七歩
   〔ち〕4三馬

 このような手が考えられる。

 それぞれの手についての調査研究の内容は、この「一番勝負」の勝負の決着を伝えたその後でじっくると伝える予定なので、ここもその解説は省く。

 実戦で、後手番の ≪ぬし≫ が採用したのは、〔ろ〕7五香である。



≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 7五香まで



第91譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part190 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第89譜

2020年12月21日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第89譜 指始図≫ 5九香まで

指し手 △7四桂 ▲5三香成 △同馬 ▲7六金




   [目ざめて]

 ――そして、けっきょく、ほんものの子猫(こねこ)になっちゃったんだ。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第89譜 決着は泥の中で(七)>


≪最終一番勝負 第89譜 指始図≫ 5九香まで

 先手は、▲5九香(図)と打った。

 この手は、攻めては5三香成と銀を取って後手陣を薄くできるし、5四歩と、後手の馬の利きを遮断する受けの用意もある。
 この香打ちは効果手な手には違いないが、しかし、△7四桂 と打つ手を許す。実際、後手の ≪ぬし≫ はそう指してきた。

 この△7四桂を打たせたくないのなら、▲5九香 に代えて、7五歩とすべきところだったかもしれない。
 それで「互角」だった。
 ▲5九香 は、実際どうなのだろう?



≪途中図1 7四桂まで≫

 △7四桂(図)に、先手(我々=終盤探検隊)は、▲5三香成 で “勝負” (次の図)



≪途中図2 5三香成まで≫

 △5三同馬、▲7六金 と進んだ(次の図)



≪最終一番勝負 第89譜 指了図≫ 7六金まで

 このあたり、勝負所なので、しっかり解説すべきところなのだが、最後にまとめて「何が勝負を分けたのか」をじっくり調べ考えたいと思うので、今はあえてさらっとながして手順を追っていくことにする。

 いま、「8六馬」の後手の狙い(以下8八玉、8七香、同銀、7七歩成で、先手玉詰み)を消して、▲7六金(図)としたところ。



第90譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part189 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第88譜

2020年12月19日 | 横歩取りスタディ
≪最終一番勝負 第88譜 指始図≫ 7七金まで

指し手 △7六歩 ▲6六金 △9六歩 ▲5九香



   [ゆすぶって]

 「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」

 そういいながらアリスは女王さまをテーブルからもちあげて、力いっぱい前後にゆすぶった。
 赤の女王さまはぜんぜんさからわない。ただひどく顔が小さくなり、目が大きく緑いろになってきてね。それでもゆすぶりつづけていると、女王さまはますますちぢんでいって――ふっくらして――ふわふわしてきて――まるまるしはじめて――そして――

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 こうして、ついに「赤の女王」は子猫に。




<第88譜 決着は泥の中で(六)>


≪最終一番勝負 第88譜 指始図≫ 7七金まで

 △7五歩 に、▲7七金(図)と受けたところ。

 ここしばらくの間、ずっと「盤面の左側」が戦場になっている。先手玉に近い。その分だけ、先手がしんどい闘いになっている。


 ≪指始図≫より、△7六歩 に、▲6六金 と進む。



≪途中図1 6六金まで≫

 ここで、後手 △9六歩
 だが、この手は “緩手” である。


変化7四桂図
 「代えて7四桂(図)なら後手良し」だった。

 あるいは「6四銀右」も有力手で、それでも後手が良かった。
 (このあたりの詳しい解説はここではしない。また後の譜であらためて行う)

 「△9六歩 は “緩手” 」というのは、そこで先手に7五歩と打つ手があるからである(次の図)


変化7五歩図
 7五歩(図)と打って、後手の7四桂の手を封じた変化。
 ただし、6四銀右がある。7五歩、6四銀右以下、難解な形勢。


 しかし、ここで終盤探検隊が選んだのは、その手ではなく―――(次の図) 



≪最終一番勝負 第88譜 指了図≫ 5九香まで

  ▲5九香(図)である。

 つまり、≪指始図≫ から、△7六歩▲6六金△9六歩▲5九香 と進んだ。



第89譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part188 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第87譜

2020年12月17日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第87譜 指始図≫ 7五歩まで

指し手 ▲7七金



   [子猫にしてやる]

「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 もともと「子猫」だった赤の女王に対して、「子猫にしてやる!」とアリスが叫んだ。
 これでアリスの「鏡の国」の冒険は終わる。
 「鏡の国」へ入る前のアリスは、黒の子猫(キティ)に対して「(チェスの駒の)赤の女王のマネをして」と命じていたのだが、「鏡の国」の中で「赤の女王」に出会ってからは、それらのことをすっかり忘れてしまっている。
 だから、「子猫に戻す」ではなく、「子猫にしてやる」なのである。
 それでも「子猫」だったことは、こころの表層では忘れていても、こころの底ではわかっていたということであろう。そうでなければ「あんたなんか、子猫にしてやる」なんて発想はでてこない。
 「わかっているのに、わからないふりをして遊ぶ」という、子供のすきな高度な遊びである。




<第87譜 決着は泥の中で(五)>


≪最終一番勝負 第87譜 指始図≫ 7五歩まで

 「最終一番勝負」はこう進んだ。
 我々の相棒、ソフト「激指14」の評価値は +92 。
 我々は「きっと勝ちがある」と割と楽観的に思っていた。根拠はなかったが。

 さて、ここで受けなければいけないが、7七香では、7六歩、同香、7五歩、7七歩、7六歩、同歩、7五歩となって、そこでまた受けがなく窮してしまう。
 では、どうするのか。

7五歩図(指始図)
 考えられる候補手は、次の4つ。
  [A]6八歩
  [B]5九香
  [C]8八玉
  [D]7七金 = 実戦の指し手

 上から順に、それぞれ、どうなるかを追っていく。


変化6八歩図00
 [A]6八歩(図)
 これは、7六歩に、5九香と打ち、6四銀右、7一竜と進む(次の図)

変化6八歩図01
 この7一竜(図)はおそらく最善手である。
 そして、ここで後手に手の選択肢がある。次の4つが考えられる。
 〔ア〕7五銀、〔イ〕7五桂、〔ウ〕1四歩、〔エ〕9六歩

 調査では、〔ウ〕1四歩と〔エ〕9六歩は、先手良しになる(解説は省略)
 〔イ〕7五桂は、9七玉以下、「互角」(これも解説は省略)

 〔ア〕7五銀が、後手最強手である。

変化6八歩図02
 〔ア〕7五銀に対し、このままだと後手7四桂と打たれて先手が苦しくなる。
 ここは、7五同竜(図)と応じるのが、その前の7一竜の意味。以下7五同金、同馬で、“二枚替え”。
 とはいえ、後手の飛車の入手も大きい。4七飛と打つ。
 先手は、5七金(次の図)

変化6八歩図03
 4九飛成、6九金打、7七桂(次の図)

変化6八歩図04
 7七同銀、同歩成、同玉、6四銀打(次の図)

変化6八歩図05
 6六馬、2九竜。
 次に6五銀とされると先手苦しくなるので、3五桂で勝負する。
 以下、3四馬、4三歩、同銀、4六金(次の図)

変化6八歩図06
 1九竜、8八玉、7二香、7六歩、1六竜、2六金(次の図)

変化6八歩図07
 1九竜、2五銀、8九馬、同玉、3二銀、5三香成、同銀、6五角(次の図)

変化6八歩図08
 5四香、5五金、8七桂、8八銀、7九桂成、同金、5九飛(次の図)

変化6八歩図09
 5四金、同銀、3四桂、同歩、4四馬、3三金、5四馬(次の図)

変化6八歩図10
 5四同飛成、同角、7八歩、同玉、7七歩(次の図)

変化6八歩図11
 7七同玉(代えて8七玉は7九竜、同銀、6九角で寄ってしまう)、5九竜、4三銀、5四竜、同銀成、7五歩(次の図)

変化6八歩図12
 後手優勢。7五同歩には6五角。



変化5九香図00
 [B]5九香(図)
 7六馬、8八玉、6七歩成、5三香成(次の図)

変化5九香図01
 5三同歩、4二金、2四歩、6一竜、6五桂(次の図)

変化5九香図02
 8七金、6六馬、9八玉、9六歩、同金、9五香、9七歩(次の図)

変化5九香図03
 7八と、同金、9六香、同歩、9七歩、同玉、9五歩、同歩、9六歩、同玉、9四歩(次の図)

変化5九香図04
 後手優勢。



変化8八玉図00
 [C]8八玉(図)
 7六歩、6八金(後手7七桂に対して7九飛のスペースをつくった意味もある)、6四銀右、7一竜、9六歩、5六香、6五銀、5七金打(次の図)

変化8八玉図01
 5六銀、同金、6四香、8七金、9七歩成、同香、9六歩、同香、9五歩(次の図)

変化8八玉図02
 9五同香、同金、4二歩、同銀、5四歩、7七香(次の図) 

変化8八玉図03
 6六金、同香、同馬、7八香成、同金、5四馬、5九香、6五金(次の図)

変化8八玉図04
 後手優勢。



7五歩図(指始図)
  [A]6八歩 → 後手良し
  [B]5九香 → 後手良し
  [C]8八玉 → 後手良し
  [D]7七金 = 実戦の指し手

 まとめると、こういう結果である。
 つまり今のところ「先手良し」になる手順は見つかっていない。

 実戦は、[D]7七金

 





≪最終一番勝負 第87譜 指了図≫ 7七金まで

 ▲7七金 が、実戦で我々の選んだ着手。
 これは、7六歩に、6六金と6筋の歩を払うという意味である。


第88譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part187 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第86譜

2020年12月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで

指し手 △4三馬 ▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩 


   [あんたなんかもう、こうやって――]

――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
 ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」


  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第86譜 決着は泥の中で(五)>


≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで

 「亜空間最終一番勝負」は、いま、先手を持つ我々終盤探検隊が、▲7六歩 と指したところ。
 だが、これは「悪手」であった。6七歩成 なら「後手良し」だった。
 ―――「だった」と書いたのは、実際はその手を後手の ≪ぬし≫ は見送ったからである。
 (この手が見えないはずはない。見えていて別の手を選んだのである)


 まずは「6七歩成 の変化」について、解説しておこう。



6七歩成 の変化]

変化6七歩成図00
 6七歩成(図)の変化。
 同銀、同馬、7七金と進む(次の図) 

変化6七歩成図01
 後手に7六馬を許すわけにはいかないので、7七金(図)と打つ。
 そこで後手は6六歩もあるが、以下6八歩、8九馬、同金、5九飛、7九桂のように進み、この「6六歩、6八歩」の手交換は、後手にとって少し損。
 なので、ここは単に8九馬といく。同金に、7六香(次の図)

変化6七歩成図02
 あっさりした攻撃手順だが、これが受けにくい。7六同金に、7五歩。
 そこで7七金は、4七飛、6八金、7六歩、同玉、7五銀、8七玉、7六歩で後手優勢になる。
 よって、7五同金と取るが、そこで6四銀右がうまい継続手になる(次の図)

変化6七歩成図03
 8四金(6四同銀)に、4七飛と打ち、7七歩、7六歩と進む(次の図)

変化6七歩成図04
 先手、支え切れない。9五歩と脱出に望みをかけるしかない。
 以下7七歩成、9六玉、8四歩、同馬、4六飛成、8五玉、7五銀打(次の図)

変化6七歩成図05
 後手優勢。

 つまり、後手が 6七歩成 を選んでいれば、後手がそのまま勝っていた―――ということになる。

 やはり先手の▲7六歩はキケンな選択だったのだ。
 しかし 6七歩成 を後手は選ばなかったのだから、結果的には先手の指した ▲7六歩 は正解手だったのかもしれない。


≪途中図1 4三馬まで≫

 実戦での後手の ≪ぬし≫ の指し手は、△4三馬
 後手の目には、この手が(6七歩成よりも)より魅力的に映ったということだ。

 先手(我々)は、▲6八桂 と打って「7六」を支えた。

 実戦は先手は ≪a≫6八桂 と指したわけだが、他の手もあったかもしれない。
 他に、≪b≫6八歩≪c≫8八玉≪d≫7七金  の “変化” も考えられたところなので、以下それらの手の検討手順を示していく。


変化6八歩図00
 ≪b≫6八歩(図)には、7六馬がある。以下8八玉に、6七歩成、同歩、6六歩が好手順(次の図)

変化6八歩図01
 この手があるので、どうやら後手良しになるようだ。
 6六同歩は、同馬で、次の7八歩成が厳しく、先手は支えきれない。
 したがって6六歩は取れず、ここで6八桂と受ける。以下6七馬に、6一竜。
 しかし8九馬、同玉、6二飛と応じられ―――

変化6八歩図02
 後手優勢。もう少し続けてみよう。
 6二同竜、同銀右。そのままだと6七歩成~7八歩成で、先手陣は崩壊するので3七飛と受けてチャンスが来るのを待つ。
 以下、5九飛、8八玉、2九飛成、4三歩(次の図)

変化6八歩図03
 4三歩(図)と打って、攻め味をつくる。4三同銀には6五角がある。また、6七桂は4二金で先手良しになる。
 後手は、1九竜、4二金、3一香はあるところだが、もっと早い決め手がある。
 「7八歩成、同銀に、6七桂」とする手順である。これなら、先手玉への詰めろになっている。
 以下8九金に、7七歩(次の図)

変化6八玉歩04
 7六歩、7八歩成、同金、7七歩、同玉、7九桂成、8八金、2八竜、5七飛、7六香(次の図)

変化6八玉歩05
 後手勝ち。7六同桂は6八銀があり、7六同玉は6八竜が6七銀以下の詰めろになる。


変化8八玉図00
 ≪c≫8八玉(図)には、[山]7六馬[川]7六香 とがある。どちらも有力。

 本筋は [山]7六馬 のほうと見るが、先に [川]7六香 から見ておく。

変化8八玉図01
 [川]7六香(図)には、6八歩として後手の6七歩成を消しておく。
 以下7八香成、同金、7七歩、同玉(代えて同金、7六歩、8七金、7七銀の変化は先手悪いと見る)、8二銀打(次の図)

変化8八玉図02
 8四馬、同銀、6一竜(8二竜は5五角で先手不利になる)、7五銀、8七金打(次の図)

変化8八玉図03
 「互角」の形勢。

 つまり、[川]7六香 は 「互角」。

変化8八玉図04
 さて、“本筋” の、[山]7六馬(図)の場合。

 ここは、【ラ】8七金、【リ】6八歩、【ル】6一竜 が候補手だが、正解手は【ル】6一竜 である。
 【ラ】8七金は、同馬、同玉、6七歩成、同銀、7七金、9八玉、6七金と進んで、その局面は後手良し。
 また、【リ】6八歩 だと、上の ≪b≫6八歩 の変化に合流する。それは後手良しだった。

変化8八玉図05
 ということで、[山]7六馬 に、【ル】6一竜(図)。 これが最善手。
 ここで (1)7七歩 でどうなるかが重要な変化。8七銀、同馬、同玉、7八銀(次の図)

変化8八玉図06
 先手は6五角と打つ手が後手玉攻略の期待の手で、3二角成以下の “詰めろ” になっている。
 当面は玉が王手されているが、9八玉だと8九銀不成と王手で取られ、同金、9六歩、8七金、7八歩成、6五角、4二飛で、先手悪い。
 9七玉が正解手で、後手は7九銀成とする(8九銀成は6五角、4二飛、8九金、7八歩成、9五歩、8九と、4三歩で、先手良し)
 そこで6五角と打つ(次の図)

変化8八玉図07
 6五角(図)は、3二角成、同玉、5二竜(6一竜とした意味の一つがこの手にある)以下の“詰めろ”
 これを受けるために後手は4二金とし、7九飛、7八歩成と進む。
 そこで9五歩、7九と、4三歩は、7四銀で後手優勢になる。9五歩~4三歩では遅い。
 3一金が剛速球の攻め手(次の図)

変化8八玉図08
 3一同玉に、1一銀、2二金。
 そこで5一金(次の図)

変化8八玉図09
 7九とに、4三桂(次の図)

変化8八玉図10
 4三同銀には、同角成で、受けが困難(たとえば3二金左には4二馬で詰む)
 よって4三同金、同馬、4二飛と後手は応じる。
 これには6五馬と引き返す。
 そこで9六歩、同玉、9五歩なら、8七玉としておいて、先手は一歩を得たので次に4三歩があって、先手良し。
 後手7八とには、4一金(4一同飛は2二銀成、同玉、3二馬、同玉、5二竜以下詰み)、同銀、5一金(次の図)

変化8八玉図11
 これで先手勝ち。5一金(図)と打って、後手玉に4一金、同飛、2二銀成、同玉、3二金以下の “詰めろ” を掛けた。5四桂なら、8四馬と金を入手した手が、4一金、同飛、4三桂以下の “詰めろ” になっている。4三桂には3五桂とすればよい。

変化8八玉図12
 6一竜に、(2)6四銀右(図)がある。次に6七歩成がある。
 ここで先手の候補手は、〈i〉6八歩 と 〈J〉8七金。
 〈J〉8七金を調べると、「千日手」の結果となった(解説は省く)
 〈i〉6八歩 以下を見ていく。
 これには、7七歩、6九銀(8七銀は同馬、同玉、7八銀で先手悪い。先手6五角が打てないため)で、次の図になる。

変化8八玉図13
 後手としては、ここで 6七歩成 、同歩、6六歩(同歩、同馬なら後手良し)で、攻め切りたい。
 しかし、6八桂、8六馬(6七馬は5四歩で先手良し)、8七金、8五金、8六金、同金、8七金、8五金、9八角(次の図)

変化8八玉図14
 千日手模様だったところを、9八角で打開。角筋が通れば3二角成~5二竜で後手玉に詰み筋ができる。こうなると先手良し。

変化8八玉図15
 ということで、〈i〉6八歩 に、後手は 6五馬(図)とすることになる。
 ここからは変化が多く、調べ切れない。
 「互角」を結論とするしかない。

 以上のような調査内容を経て、≪c≫8八玉 は、形勢不明(互角) とする。


変化7七金図00
 ≪d≫7七金 (図)は、7六香に、6六金と歩と消しながら逃げる手で対応する。
 以下7八香成、同玉、7六歩(次の図)

変化7七金図01
 ソフトの評価値は -350 くらいでやや後手寄り。ここから手も広いので実戦的にはこれからの勝負。
 以下、変化の一例を示しておく。
 6七玉、6四銀右、6一竜、6五銀打、4七金(次の図)

変化7七金図03
 先手は “右側” へ逃げるつもり。
 6六銀、同玉、6五馬。この「6五馬」の位置にいる馬が攻防の要となる。
 5七玉、7七歩成、4八玉、6七と、5九香、4五歩(次の図)

変化7七金図04
 3七玉(対して4六歩には5六金とするつもり)、6六と、3八銀、4六金、同金、同歩、4二歩(次の図)

変化7七金図05
 4八歩と受けるのでは受け一方になって勝ち目がないと見て、4二歩(図)と攻める。
 4二同銀なら5二香成があって勝負形になる。
 後手は5六とで攻め合いになる。以下4一歩成、4七歩成、2六玉、2四歩、4七銀、同と、3一と、2八銀打(次の図)

変化7七金図06
 2八銀打(図)で、どうやら先手玉は捕まっている。
 しかし実戦的にはまだ “あや” がありそう。1七桂と受け、4六と。
 3六歩では4四銀があるので3五金と受けるが、2九銀成で―――(次の図)

変化7七金図07
 後手3四桂からの “詰めろ” で、これは後手の勝ちが決まった。

 ≪d≫7七金 の変化は、手が広いので実戦的な “あや” はあるが、後手に主導権がある局面が続き、正確に手を選ばれると先手が勝てない。



4三馬図(途中図1)
  ≪a≫6八桂 = 実戦の指し手
  ≪b≫6八歩 → 後手良し
  ≪c≫8八玉 → 互角
  ≪d≫7七金 → 後手良し

 この「4三馬図(途中図1)」の調査結果のまとめは、こうなる。
 つまり先手としては、≪c≫8八玉 を選ぶのもあった、ということだ。



≪途中図2 6八桂まで≫

 先手は、▲6八桂(図)として、7六に利かせた。

 以下、△7六香▲同桂△7五歩 と進んだ。




≪最終一番勝負 第86譜 指了図≫ 7五歩まで

 このまま放置すると、7六馬、8八玉、6七歩成で、先手不利になる。
 では、どう受けるか。


第87譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part186 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第85譜

2020年12月15日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第85譜 指始図≫ 3四馬まで

指し手 ▲7六歩 


   [さあ、あんたよ]

「さあ、あんたよ」アリスはすごいいきおいで赤の女王さまの方にむきなおる。だいたいこのさわぎの張本人は、こいつとしか思えない――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
 ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」


  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第85譜 決着は泥の中で(四)>


≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 3四馬まで

 ▲7九金 に、△3四馬 と馬を引いたところ。
 ここは形勢「互角」。「水匠2/やねうら王」評価値は +153 。


3四馬図
  〔S〕6八歩
  〔T〕5七金
  〔U〕6一竜
  〔V〕9五歩
  〔W〕6五金
  〔X〕7六歩 = 実戦の指し手

 ここでは、このような先手の候補手が考えられる。
 
 一つずつ、この順に解説していく。


変化6八歩図00
 〔S〕6八歩(図)と後手の6七歩成を受けた手。いちばん素直な手だ。
 これにはしかし、4三馬がある。それでどうなるか。
 次に6八桂成があるので先手は9七玉とし、以下9六歩、同玉に、9八歩がある(次の図)

変化6八歩図01
 同香ならもちろん6八桂成である。
 先手は8五歩。上部開拓をめざす。
 以下9九歩成、8四歩、8九と、8三歩成、7九と(次の図)

変化6八歩図02
 先手は「飛金香」を一気に取られてしまった。しかし先手には "入玉" の希望がある。
 ここで7三とは9九飛、8五玉(9七歩は、同飛成、同玉、8五金)、8一金、同竜、9三飛成で“入玉”ができなくなる。
 よって9五玉とするが、8一香(妙手)がある。
 8一同竜、5四馬、6一竜、9二歩、同馬、6四飛、同竜、同馬(次の図)

変化6八歩図03
 形勢不明の勝負(「水匠2/やねうら王」評価値は -371 )
 “入玉” できるかどうかの戦いになる。ソフト評価値的には後手良しとなるのだけど、"入玉" して先手玉が安全になれば、即、先手勝ちとなりそうな状況なので、評価値 -371 程度ならこれは「互角」の範囲である。


変化5七金図00
 〔T〕5七金(図)と打つ手もありそうに思えるが、これも今の変化と同じように、3四馬、9七玉、9六歩、同玉、9八歩、8五歩、9九歩成と進んでいくと―――

変化5七金図01
 こうなる。この場合も "入玉" してしまえばよいので、先手に勝ち目がないわけではないが、「5七金」と打った金がまったく働きのない無駄駒になっている分、はっきり損をしている(「水匠2/やねうら王」評価値は -670 )

 〔T〕5七金 は、先手不利、と見る。


変化6一竜図00
 〔U〕6一竜(図)は有効な手。
 今、“戦場”は6、7筋なので、6筋をしっかり受けるという意味の手だ(場合によっては5二竜も狙える)
 この手にも後手はやはり4三馬(次の図)

変化6一竜図01
 対して9七玉なら、ここでも9六歩、同玉、9八歩という将棋になる。
 それを避けて、「6五金」とできるのが6一竜の効果だ。
 しかし、対して、〔G〕6四銀右 が後手の好手(次の図)

変化6一竜図02
 (あ)6四同金は、6八桂成、6五金、7八成桂、同金、5六銀で、後手良し。
 (い)6六金と引く手にも、6八桂成。
 以下、8八玉、7九成桂と進む(次の図)

変化6一竜図03
 7九同飛、6五歩、6七金、9六歩(9七金の狙いがある)、8七金(次の図)

変化6一竜図04
 最新ソフト「水匠2/やねうら王」の評価値は -207 。「互角」の範囲だが、後手の手の選択肢が多いので厳密にはおそらく後手に勝ち筋があると思われる。
 しかしここで良さそうな後手5五銀には、3五桂、3四玉、4三歩、3五馬、5二竜の攻め合いもあるので、それでソフトの評価も互角なのである(調査上は後手良しになった)
 この図では5四馬として、次に7六歩、同歩、5五馬を狙う手もあり、現実的には後手持ちの評価となる局面だろう。

変化6一竜図05
 上の展開では先手不満。ということで、〔G〕6四銀右 に、(う)5四金打(図)の変化があり、この手に先手の期待がかかる。
 5四同銀に、6四金。
 そこで〈a〉5五銀 には “5四銀” がみえるが、以下3四馬で、これはその先を調べると後手良しになる。
 だが、5五銀には “6五金” と金を引いて受ける手があり、その変化なら互角。

 6四金に、〈b〉9六歩 が有力。この手は次に9七金以下の寄せを狙っており、だから先手は8五銀とそれを受ける(次の図)

変化6一竜図06
 8五銀(図)と受けて、逆に8四銀、同歩、同馬から先手玉が入玉できれば先手良しになる。
 後手は、5三歩、6二竜、5五銀と勝負する。以下8四銀に、5二金。
 5二同竜、8八桂成、9六玉、5二馬、6三金打(次の図)

変化6一竜図07
 激しいやりとりを経て、この図の形勢は互角(「水匠2/やねうら王」評価値 -194 )

変化6一竜図08
 〔H〕7四銀(図)の変化。これは6一竜の6筋の利きが通っている分、先手が6筋を受けやすいが、先手はこれには6六金と引くしかないので、先手の応手を限定できる。
 以下、6八桂成、8八玉、7九成桂、同飛。
 そこで7七香成、同玉と香車を成り捨て、「7五」への銀の進路をつくる。以下6五歩、6七金、7六歩、8八玉、7五銀。

 先手には5四歩で反撃する手がある(次の図)

変化6一竜図09
 先手はこのように攻め合いにもちこめる。ただし、ソフトの評価は「互角」である(「水匠2/やねうら王」評価値 -120 )
 5四同馬、5九香、6六歩、6八金、6四馬、8二馬、同馬、5三香成 が予想される。
 (ただし、この図では5四同銀と応じる手もある)

 この図を選ぶかどうかは後手の選択であるというところが、先手としては面白くないところだ(〔G〕6四銀右〔H〕7四銀 との選択は後手の権利)


変化9五歩図00
 〔V〕9五歩(図)は歩切れを補いつつ玉の可動スペースを広げた有効手である。
 そしてこの場合は、後手の4三馬には、9七玉で大丈夫。以下9八歩、同香、9六歩、同玉、6八桂成、同歩、9八馬は、8五歩で、先手良しだ。
 そのかわり、この手は後手6七歩成を許すことになる。以下同銀、同馬、7八金打(次の図)

変化9五歩図01
 3四馬と引くところだが、4五馬や5六馬も考えられる手。それには先手は6一竜とする。そして、もしも5六馬だったら次に4二歩、同銀、5二竜が有効な攻めになるし、4五馬だったら3七桂の手段も生まれ、4三歩の手がどこかで入る可能性も出てくる。
 なので3四馬まで引くのが妥当なところ。
 3四馬に、5四歩を入れる。4二銀に、やはりここも6一竜だ(次の図)

変化9五歩図02
 ここで後手が何をするか。7四銀としたいが、それには8二馬の活用が後手は嫌だ。
 後手6六歩が最善手か。これには同竜。
 そこで7四銀とすれば、ここで8二馬なら6五銀打で後手良し。
 先手は4三歩と切り返す。同馬(代えて同銀左は6一竜)に、5五金(次の図)

変化9五歩図03
 これは、これからの将棋。「互角」の形勢とみてよさそうだ。
 (「水匠2/やねうら王」評価値は -168 )

 〔V〕9五歩 は、この調査では最有力候補手である。


変化6五金図00
 〔W〕6五金(図)
 この手は7五金をねらっている。
 しかし、6七歩成、同銀、同馬で銀を献上することになる。
 そこでうっかり7八金打と受けると、6八桂成の後手の技が決まってしまう(次の図)

変化6五金図01
 6八桂成(図)を同歩と取ると、7六銀がある。
 したがってここは6七金と馬を取り、同成桂に、待望の7五金。
 同金、同馬、6六銀、6五馬、7五金(次の図)

変化6五金図02
 こうなって、後手優勢。
 先手としては3二馬、同玉、4三銀で、後手玉を詰ませたいが、同玉、4一竜、5四玉で、後手玉に詰みなし。
 よって、ここで1一角、同玉、3二角成とすることになりそうだが、5四角があり、同馬、7七銀成、9七玉、5四銀と進んで、逆に先手玉に “詰めろ” が掛かっている。

変化6五金図03
 そうなっては先手勝てないので、戻って、「6七歩成、同銀、同馬」に対し、7五金(図)とする。
 以下、同金、同馬となるが、そこで6六銀がある。以下7六馬に、同馬、同歩、7七金と進む(次の図) 

変化6五金図04
 先手には持駒が増えたので、なんとかここを凌ぎ切れば希望の光も見えてくるが――
 9七玉、7八歩、8八金、7九歩成、同飛、8八金、同玉、7八歩、同飛、6七金(次の図)

変化6五金図05
 どうやら、先手玉は捕まってしまった(「水匠2/やねうら王」評価値 -1022 )
 図以下、1八飛、7七銀成、9七玉、7九角、8八香、7八金で、後手勝ち。
 

3四馬図(再掲)
  〔S〕6八歩 → 互角
  〔T〕5七金 → 後手良し
  〔U〕6一竜 → 互角
  〔V〕9五歩 → 互角(最善手か)
  〔W〕6五金 → 後手良し
  〔X〕7六歩 = 実戦の指し手


 我々――終盤探検隊――が選んだ手は、〔X〕7六歩




≪最終一番勝負 第85譜 指了図≫ 7六歩まで

 我々(先手)は、▲7六歩 と桂馬を取った。
 指したかった手だが、形勢はどうなっているか。

 じつは、ここで後手6七歩成なら、後手有利。
 つまり、先手(我々)は、“悪い手” を選んでしまったのである。



第86譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part185 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第84譜

2020年12月13日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 4四歩まで

指し手 ▲7九金  △3四馬



   [もうがまんできないっ!]

 もういっときもぐずぐずしていられない。お客の何人かはすでにお皿の中にぶったおれているし、スープの杓子(しゃくし)がテーブルの上をアリスの席めがけてやってきて、じれったそうにそこをどけと合図している。
「もうがまんできないっ!」アリスは大声をあげて、とびあがると、テーブルクロスを両手でつかんで、ぐいっと引き、とたんに大皿も小皿もお客もローソクも、がらがら音たててころがりおちて、床につみかさなった。
「さあ、あんたよ」アリスはすごいいきおいで赤の女王さまの方にむきなおる。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第84譜 決着は泥の中で(三)>


≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 4四歩まで

 図は、後手が △4四歩(図)と指したところ。
 この手に代えて、6八桂成で後手良しになっていたことは、前回の譜で報告済みだ。しかしこの△4四歩も落ち着いた手で、どうもこれも先手が苦しそうに思える局面だ。先手は “歩切れ” になった。

 しかし、ここで 9五歩 であるいは先手に勝ち筋があったかもしれないと、“戦後” ではあるが、調べていて気がついた。
 まずそれをしっかり調べてみよう。



[変化9五歩 の研究]

変化9五歩図00
 ここで〔イ〕3四馬、〔ロ〕6八桂成、〔ハ〕9八歩 の変化を見ていく。

変化9五歩図01
 まず、〔イ〕3四馬 の変化。
 これは、5四歩、4二銀、6一竜(図)で、先手良し。

変化9五歩図02
 〔ロ〕6八桂成(図)の変化が怖いところなのだが、6七銀、同歩成、4三歩、7七と、9六玉、9四歩、5一竜(次の図)

変化9五歩図03
 こう進むと、先手良し。後手玉は3一角以下の“詰めろ”。
 ということなら9五歩はイケるのではないか―――と、思ったのだが‥‥

変化9五歩図04
 9五歩に、〔ハ〕9八歩(図)という工夫がある。
 もしもここで「あと一歩」があれば、5四歩、4二銀、4三歩で、先手が指せる将棋になっていた(そのことは前譜の変化で解説している)
 しかし後手7四香に対し、「7五歩、同香、7七歩」でその「一歩」を使ってしまった。

 この9八歩(図)に手を抜くなら、ここでは6一竜だが、9九歩成、同飛、6四香で、後手良し。

 ということで、9八同香と応じるしかない。
 すると結果が変わってくるのだ。6八桂成としたときに―――(次の図)

変化9五歩図05
 ここで、上の順と同じように6七銀以下進めたときに、香車の位置が「9八」にあると、その分先手玉が狭い。だから先手玉が9六まで逃げたとき、後手9四歩が先手玉への詰めろになっていて、この順では先手がはっきり負けになるというわけ。

 では、ここで6八同歩と取って、どうか。
 結論から言うとそれでは先手勝てない。以下その手順を示す。
 6八同歩、7七香成、同銀、8九馬、7六歩(8八金は7六歩で先手不利になるので7六歩と工夫してみたが‥)
 7六歩には、7五歩と歩を合わせるのが急所の攻め手になる(同歩なら7六歩、同玉、9八馬)
 7五歩以下、8八金、7六歩(次の図)

変化9五歩図06
 結局、(一歩の違いはあるが)この図になる。これは先手が悪い。
 6六銀は、8八馬、同玉、6五歩で後手良し。
 7六同玉も、8八馬、同銀、7八飛で寄ってしまう。
 7六同銀はどうなるか。7五歩、6五銀、5七飛、7七歩、7四銀(次の図)

変化9五歩図07
 8九金なら6五銀。 7四同銀なら、8八馬、同玉、7六歩。
 後手良し。

変化9五歩図00(再掲)

 つまり、結論は、9五歩 は9八歩以下後手良し。



≪途中図 7九金まで≫

 というわけで、≪指始図=4四歩図≫ では、▲7九金(図)と打つことになる。

 この金を打つことで、後手の狙い筋である「6八桂成、同歩、7七香成」や「8八桂成、同玉、7六歩」が無効になる。

 ここで後手には選択肢がある。
  【X】5七馬【Y】5六馬【Z】3四馬、である。
 (【W】6四銀右 は9五歩で先手良し)




[変化【X】5七馬 の研究]

変化5七馬図00
 “5七馬” は、「7四香に、単に7七歩」の場合を、前譜(変化4四歩図12)で解説している。それは形勢互角の結論だった。
 この場合は、「7四香に、7五歩、同香、7七歩」として、「7九金、5七馬」である。
 「7五歩、同香」を入れることで先手は “歩切れ” になってしまったが、この変化の場合はこれは(微妙なところだが)少し得になっているようだ。

 【X】5七馬(図)の第一の狙いは7九馬、同飛、8八金。
 ここは7六歩と桂を取る。以下、6七歩成に、6八金打と頑張って、同と、同金と進める(次の図)

変化5七馬図01
 ここで6六馬なら7七金と上がり、以下5五馬には7六歩で先手良し。6五馬なら6六金打と厚く受けて、先手良し(こうした変化のときに後手が7五香の形になっているのが先手にとって少し得になる)

 5六馬にはどうするか。ここは6一竜とするのが良い(次の図)

変化5七馬図02(6一竜図)
 以下 [1]2九馬(他に[2]7六香や[3]6六金も有力で後述する)に、4三歩(次の図)

変化5七馬図03
 4三歩を〔a〕同銀なら、(4一竜ではなく)3五桂と打って、3四銀(3二銀なら4三金)、8四馬、同銀、5二竜、4二金、4三金で、後手玉を寄せることができる。
 また、〔b〕1四歩 も、8四馬、同銀、4二金、6二金、3二金、同玉、4二金、2二玉、2五桂で、寄り。

 ここでは、 〔c〕7六香〔d〕6二金 が後手の有力候補手になる。
  〔c〕7六香 は、同玉なら1九馬で後手有利になる。
 4二金、7四馬と進む(次の図)

変化5七馬図04
 7四馬(図)は、先手の3二金、同玉、5二竜の攻めを受けた手。
 この手に代えて6二金もあったところ。それには8四馬(同銀なら3一金打)として、6一金、7三馬、3一桂、6七銀で、先手良しになる。

 7四馬には、6六桂と打ってその馬を追う。以下7五桂があるが7六玉とし、6五歩、3二金、同玉、6三銀(次の図)

変化5七馬図05
 6三銀(図)と打って、再び5二竜の狙いが復活した。
 5五金(先手玉への詰めろ)なら、5七金と受けて大丈夫。
 6二金には、同竜、同銀右、7四銀成(次の図)

変化5七馬図06
 これで先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値は +1211)
 以下6六歩、7五成銀、7四金打、同成銀、同金、3五桂が予想される。

変化5七馬図07
 戻って、4三歩に、〔d〕6二金(図)の変化。
 5一竜、6五馬、4二歩成、7六香、3一金、7五桂(次の図)

変化5七馬図08
 9七玉、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7八香成、3二と(次の図)

変化5七馬図09
 3二同馬、同金、同玉、6五角、5四銀打、8四馬(次の図)

変化5七馬図10
 これで、先手勝ち。
 後手玉は5四角、同銀、4二金以下の“詰めろ”になっている。したがってここでは6五銀とすることになるが、7五馬で、これも “詰めろ” になっている。

変化5七馬図02(6一竜図 再掲)
 もぅ一度この図まで戻って、ここで[2]7六香(図)の変化を考える。これが手強い手だ。
 また、[3]6六金 もあるが、以下6七金打、7六金、同金、同香で、結局同じ変化に合流する。

変化5七馬図11
 [2]7六香(図)、7七歩、同香成、同金、7六歩、同金、7五歩と進む。
 5六に馬を置いたまま攻めてくる。先手の8九飛が狙われる駒になっているのがしんどい。
 ここで、先手5八香(次の図)

変化5七馬図12
 5八香(図)では、代えて7七金もあったところだが7六金がうるさい(形勢互角)
 5八香に、7八馬、同玉、7六歩。先手は7七歩と受ける(次の図)

変化5七馬図13
 ここで 〈m〉6五歩〈n〉6四銀右 が後手有力手。
 〈m〉6五歩、7六歩、6六銀、6八歩、7七歩、8七玉、9六歩、9八歩(次の図)

変化5七馬図14
 こう進むと先手に勝ち筋があるような気もする(「水匠2/やねうら王」評価値は +376 )

変化5七馬図15
 しかし、〈n〉6四銀右(図)がある。
 以下7六歩に、7五歩。同歩と取ると、7六金で先手負けになる。
 6七玉、7六歩、5三香成(次の図)

変化5七馬図16
 5三同銀、5七玉、7七歩成、6八歩(次の図)

変化5七馬図17
 6八歩(図)で先手の飛車が簡単には捕まらないようにした。
 形勢は互角。「水匠2/やねうら王」評価値は -202 。
 正しく指せば先手が勝てるかもしれないが、それが難しい局面になっている。実戦的には後手が勝ちやすいだろう。

変化5七馬図00
 【X】5七馬(図)の変化は、結論としては、「互角」。
 



[変化【Y】5六馬 の研究]

変化5六馬図00

 【Y】5六馬(図)には「6一竜」とする(次の図)

変化5六馬図01
 「6一竜」(図)。この手は後手6七歩成を防ぎつつ、6五馬の手も消している。
 「6、7筋を制する」ことが今は最も重要である。

 ここで後手は、〔1〕6四銀右〔2〕2九馬 が有力手となる。

 〔1〕6四銀右 とすれば、4七歩成の狙いが復活するし、6八歩とそれを防げば6五馬があって後手良しになる。
 〔1〕6四銀右 に、先手に「一歩」があれば5四歩がピッタリの返し技になるのだが先手は歩切れである。
 7六歩と桂を取るのは、4七歩成、同銀、同馬、7七金、8九馬、同金、7六香で、先手苦しい形勢。
 だが、ここは先手に良い手がある。9五歩である(次の図)

変化5六馬図02
 歩を補充して、9六玉(9七玉)のようなスペースを確保した(後手6五馬なら9七玉で先手良しだ)
 当然後手は6七歩成。同銀、同馬、7八金打、4五馬(先手の5四歩に備えた馬の位置) 
 ここで4三歩が好手(この手に代えて4二歩は5四馬、4一歩成、6八桂成で後手ペース)である(次の図)

変化5六馬図03
 4三同銀なら、(4一竜ではなく)4二歩と打って、5四馬、4一歩成、6八桂成、9六玉、7八成桂、3一とと攻め合うつもり。それで先手が攻め勝つ。
 4三歩(図)に、後手は5四馬。以下4二金(次に3二金、同玉、5二竜がある)、3一銀、同金、同玉、4二銀、同銀、同歩成、同玉、6三銀(次の図)

変化5六馬図04
 4三馬、8四馬、同歩、5四金、6五角、4三金、同銀、5二銀成、同銀、5一角(次の図)

変化5六馬図05
 以下4三玉に、6四竜。先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値 +692 )

変化5六馬図06
 戻って、「6一竜」に、〔2〕2九馬(図)の変化。
 ここで7六歩としたくなるが、それは同香、同玉、1九馬で、危険(形勢は互角)
 やはりここでも、9五歩が良い。対して後手1九馬なら4三歩で先手良し。
 後手6七桂で勝負する(次の図)
 
変化5六馬図07
 ここは正しく指せば、先手が勝てるようだ。
 ここで先手は2通りの「勝ち筋」がある。一つは「5四歩、4二銀、5二竜」と攻める手。
 もう一つは、「7六歩」と桂を取る手。
 
 「7六歩」以下を見ていこう。「7六歩」、7九桂成、同飛、7六香、7七歩、同香成、同銀、6二金(次の図)

変化5六馬図08
 6二金(図)と打って6筋の攻めをねらってきた。
 5一竜、7八歩、8九飛、6七歩成、7六銀、6六と、3五桂(次の図)

変化5六馬図09
 3五桂(図)と打って、攻めの拠点をつくる。4三金や2六香を次の狙いとする。
 以下、一例として、3九馬以下の変化を示しておく。3九馬、4三金、7六と、同玉、7五馬、6七玉、6六銀、5六玉、4三銀、同桂成、4五金、4七玉、6五馬(次の図)

変化5六馬図10
 3七玉に、4三馬で、成桂を払うことに成功したが―――
 4一竜、4二馬、4三香と進み―――(次の図)

変化5六馬図11
 これで先手勝ち。
 4一馬、同香成、3二玉が予想されるが、2四桂、同歩、3一金、2二玉、3二角で、後手玉を “必至” に追い込める。先手玉は詰まない。

変化5六馬図00(再掲)

 結論。【Y】5六馬 は 6一竜以下先手良し。




≪途中図 7九金まで≫
  【X】5七馬 → 互角
  【Y】5六馬 → 先手良し
  【Z】3四馬 = 実戦の指し手


 後手の ≪ぬし≫ は、【Z】3四馬 を選んできた。





≪最終一番勝負 第84譜 指了図≫ 3四馬まで

 △3四馬(図)と遠く引いて、次の6七歩成を次のねらいとする。
 形勢は「互角」である。「水匠2/やねうら王」評価値は +153 。



第85譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part184 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第83譜

2020年12月11日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第83譜 指始図≫ 7四香まで

指し手 ▲7五歩  △同香  ▲7七歩  △4四歩



   [てんやわんやの幕明け]

 まさにそのときだ(アリスがあとで説明したとおり)、ありとあらゆることがいちどに起こったんだね。ローソクがいっせいににょきにょき天井までのびて、てっぺんに花火のかがやく灯心草畑みたいになるし、瓶(びん)という瓶がお皿を二枚ずつ大いそぎで翼のかわりにくっつけ、フォークを足にしてばたばた、そこらじゅうとびまわるし、「まるでほんものの鳥みたい」と、ものすごいてんやわんやの幕明けのなかで、アリスはそれだけがんがえるのがやっとだった。
 このとき、そばでしゃがれ声でわらうのがきこえてね。アリスは白の女王さまがどうしたのかと思ってふりむくと、おやおや、女王さまの代りにさっきの羊の腿がいすにこしかけてるんだ。「わたしはここよ!」とスープ入れから声がして、またふりむいてみると、ちょうど女王さまのいかにも人の好さそうなお盆みたいな顔が、スープ入れの縁から一瞬、にこっとわらいかけるのが見えたかと思うと、たちまちスープの中に消えてしまった。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第83譜 決着は泥の中で(二)>


≪最終一番勝負 第83譜 指始図≫ 7四香まで

 後手は ▲7四香 と打った。

 その手に代えて、7八同馬と切る手(そう指せば後手良しだった)を逃し、形勢はほぼ互角。しかし、見ての通り戦いの中心は6、7筋になっている。その分、先手が神経を擦り減らされる展開で、先手は苦しい。


7四香図(指始図)
 さて、7四香(図)に対し、【光】「単に7七歩」 と、【風】「7五歩、同香、7七歩」のどちらを選ぶか、両者の違いがどう出るか―――を調査するのが、今回のテーマとなる。

 実戦では、我々は後者を選んだ(あらかじめ決めていたので迷いはなかった)
 しかし後になって思うのは、前者が正解だったかもしれないということで、だからきっちりそれを調べてみたいと思っていたのである。



【光】「単に7七歩」の変化]

変化7七歩図00

 ここで、<1>6八桂成<2>3四馬<3>4四歩―――が候補手となる。

変化6八桂成図01
 <1>6八桂成(図)は有力な手。
 これはギリギリの変化になり、結果は先手良し―――。
 まずは、それを前提として話を進めていく(あとで話が変わってくるのだが)


変化3四馬図01
 <2>3四馬(図)に対しては、5四歩(7筋の受けで一歩を温存したことでこの「5四歩」が打てた)、4二銀、6一竜とする(次の図)

変化3四馬図02
 これで後手の次の手が難しくなっている。
 このままなら6六竜が歩切れを補って効果的な手になるし、5二竜の攻めもある。4四歩なら6六竜で先手良し。
 7五金には5二竜だ。
 そして4四馬(8八桂成~6七歩成の攻めの狙いがある)なら、7六歩で、これも先手が良い。

 <2>3四馬 は、6一竜で、先手良し。


変化4四歩図01
 <3>4四歩(図)が、後手本命の手だ。
 さて、先手は一歩を持っている。もしも「二歩」あれば、5四歩、4二銀、4三歩で、即、先手良しになっているところ。
 だからここで〔A〕「5四歩、4二銀、9五歩」 でどうか(次の図)

変化4四歩図02(9五歩図)
 9五歩(図)と歩を補充して、次に4三歩の狙いがあるし、先手は9六に逃げるスペースもできた。これで先手勝ちなのではないか。
 ここで後手(あ)6八桂成(い)7八馬 の攻めはあるが、どちらも後手の攻めは届かず、先手が勝てるようだ。
 しかしここで(う)9八歩 というひと工夫した手がある(次の図) 

変化4四歩図03
 この 9八歩(図)の意味は、先手が9八同香と取れば、その分先手玉の可動域が狭くなり、6八桂成や7八馬の攻めが後手にとって有効に働くということだ。
 だから先手はここで4三歩と攻め合う。同銀直に、6七銀、9九歩成、4二金(次の図)

変化4四歩図04
 以下3一香、同金、8九と、4二金(後手玉への詰めろ)、8八桂成、9六玉で、先手勝ち。
 この変化は、「9五歩で歩を補充して4三歩と打つ」という先手の計画が見事にハマった。

変化4四歩図05
 ところが、実は「図」から、(え)8八桂成(図)が最有力手だった。最初に調べた時、この攻めは受け切れると判断したのだが、それは間違いだったと後でわかった。

 8八同飛は7六歩が厳しく後手良し(先手玉が狭い)
 よって8八同玉と取るが、7六歩、同歩、7七歩と攻めてくる(次の図)

変化4四歩図06(7七歩図)
 この攻めが厳しい。先手はここで、〔x〕“7七同銀”、〔y〕“6七銀”、〔z〕“8七銀”の3通りの応手があって、この図の形勢を見極めるのがたいへん。
 〔x〕“7七同銀”は、8九馬、同玉、6七歩成、8八金、7七と、同金、7五歩で、後手良しになるようだ。
 調査の最初では、〔y〕“6七銀”、同歩成、9七玉で先手が勝つと断じてしまっていた。しかし、以下7八歩成、4三歩、9五金と進み―――(次の図)

変化4四歩図07
 9六歩、8九と、9五歩、7七飛、8七金、8八銀、9六玉、8七飛成、同玉、9九と(次の図)

変化4四歩図08
 後手の “詰めろ攻撃” が振りほどけない。どうも先手が負けになっているようだ。
 図の9九とに、8八玉は9六香で先手負け。
 なので9六玉が考えられるが、8四香、8七金、7七と―――やはり、後手の攻めを振りほどけない。
 この変化で先手が勝てないとわかり、「先手良し」と思っていた(え)8八桂成 の変化を見直す必要が出てきた。

変化4四歩図06(7七歩図 再掲)
 戻って、〔z〕“8七銀” が最後の手段になる。
 〔z〕“8七銀” に、7六香なら7九歩で、これは先手良し。
 だから「8九馬、同玉、6七歩成」と進み―――その先がわからない(次の図)

変化4四歩図09
 ここで「8八金」は、9八歩、同玉、7八歩成、同銀、同と、同金、7六香、7七歩、同香成、同金、7六歩以下、千日手または後手良し。
 よって、先手は「7九金」と受ける。対して後手2八飛(次の図)
 
変化4四歩図10
 ここまでが調査の限界だ。形勢不明。
 2八飛に、3八歩(同飛成なら6五角)、7八歩成が予想される手順の一例だが、その後がまたわからない。

 つまり、<3>4四歩 に、〔A〕「5四歩、4二銀、9五歩」 と「9五歩図」に進めるのは、(え)8八桂成 以下、形勢不明、が結論となる。

 形勢互角とはいえ、先手は受けのミスが許されない展開なので、おもしろくない変化である。

変化4四歩図11
 ということで、<3>4四歩 に、別の手段――〔B〕7九金(図)でどうか。
 3四馬と引いてくれれば、5四歩、4二銀、6一竜で、先手が指せる。
 しかしここでは、5七馬がある(次の図)

変化4四歩図12
 この5七馬(図)は、7九馬、同飛、8八金を狙っている。
 よって7六歩と桂馬をはずし、以下6七歩成、6八金打、同と、同金、6六馬、7七金、5五馬、6六金打、1九馬、6五桂(次の図)

変化4四歩図13
 これも、形勢不明(互角)の戦い。

 すなわち、「互角」をこの道の結論とする しかない。



変化7七歩図00(再掲)
 さて、もう一度この図に戻る。
  <1>6八桂成 → 先手良し
  <2>3四馬 →先手良し
  <3>4四歩 →形勢不明


 実は今回この稿を書くために変化を確認している段階でわかったことだが、「<1>6八桂成 → 後手良し」と結論が覆ったのである。

 ということで、その内容を以下に記す。

変化6八桂成図01
  <1>6八桂成(図)は、同歩に、7七香成とするのが後手の狙いの攻め筋で、同銀、8九馬と飛車が取れる。
 先手も4三歩成の攻めがあり―――(次の図)

変化6八桂成図02
 これで先手の勝ちになっている―――というのが、もともとの見立てであった。
 4三同銀なら4一竜で、たしかに先手が勝てる。
 しかしここで後手7九飛として―――(次の図)

変化6八桂成図03
 調べてみると、ここから先手が勝つ順が見つからない。
 以下、3二と、同玉、8八金に、7六歩がある(次の図)

変化6八桂成図04
 6六銀、8八馬、同玉、7七歩成、同銀、7八金、9八玉、7七金(次の図)

変化6八桂成図05
 これは後手を詰めるか7七の金を消すしかないが‥
 4三銀、同玉、4一竜、4二銀打、4八香、4六歩(代えて4五歩なら3二角以下後手玉詰み)
 これを同香は、4五歩で不詰め。なので6五角と打ち(5四銀なら5五桂以下後手玉詰み)、5四銀打(次の図)

変化6八桂成図06
 5四銀打(図)と受けて、後手玉に詰みはない。
 4六香に、4五歩、同香、4四歩で受けるための歩の数もぴったり足りて、後手勝ちになる。



≪途中図1 7五歩まで≫
 実戦は、▲7五歩(図)と指した。
 △同香 に、▲7七歩 である。



 実戦は、【風】「7五歩、同香、7七歩」 の順に進んだ。
 これまで調べてきた【光】「単に7七歩」の変化と何が違うか。大きな違いは、先手に歩がなくなったことだが‥‥


≪途中図2 7七歩まで≫
 ここでも、6八桂成 なら後手良し となる。

変化6八歩成B図01
 この変化は上で調べた順のままに進めれば、同じ結果となる。


7四香図(指始図 再掲)
 ということで、【風】「7五歩、同香、7七歩」 でも、【光】「単に7七歩」でも、いずれにしても 6八桂成で後手良し なので、後手に最善手を指されれば先手が勝てないという事実は変わらない。
 つまり後手 7四香 としたこの図は、厳密には「後手良しの図」だったということなのである。


≪途中図2 7七歩まで≫
 ところが、じつは実戦のさ中、我々終盤探検隊は、▲7七歩(図)と打って、先手が受け切ったのではないか、と感じていたのである。
 そうであってほしい、という “願い” が心の半分を占め、そして相棒である「激指14」が、この図の評価値を「 +215 」と先手寄りに示していたからである。


 後手の ≪ぬし≫ は、6八桂成 を逃した。
 我々も 6八桂成 は見えていなかったが、≪ぬし≫ も見えていなかっということだろう。




≪最終一番勝負 第82譜 指了図≫ 4四歩まで

 ≪ぬし≫ は△4四歩(図)を選んだのであった。

 形勢はどうなっているか。 先の見えない、“泥沼の戦い” である。

 こうなってくるとしかし、先手に「歩がない」ことが影響してくるかもしれない。




第83譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊183 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第82譜

2020年12月07日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第82譜 指始図≫ 7八銀まで

指し手 △7四香



   [宙に浮くアリス]

 (「それに、あのひとたち、ひどく押すんですもの」と、これは後で姉さんにこの宴会のことを話したときのアリスのいいぶんだ。「あたしをぺちゃんこに押しつぶす気かと思ったくらい!」)
 じっさい、スピーチをしながらその場にがんばっているのはけっこう骨が折れた。なにしろ二人の女王が両側からやたらぎゅうぎゅう押すものだから、アリスは宙にういてしまいそうだ。「あたし、おれいを申しあげたくて、ここに立ちあがって――」ときりだしたけれど、なんと、それどころかほんとに数インチうきあがっちゃったんだね。でもテーブルのはしにつかまって、どうにか体をもとどおりに引っぱりおろした。
 「気をつけなさいよ!」白の女王さまが悲鳴をあげて、両手でアリスの髪の毛をつかんだ。「何か起こりそうだわ」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第82譜 決着は泥の中で(一)>


≪最終一番勝負 第82譜 指始図≫ 7八銀まで

 △6七馬 に、▲7八銀(図)と打ったところ。
 どうやらここで後手が良くなる順があった。だからその前の▲6九歩が失着だったということになる(代えて6九金か7九金なら先手良しだったことは前譜で解説した)

 また、ここは「銀」に代えて7八金もある。その「銀」と「金」の違いによる変化の “あや” は後で検証する。

 この ▲7八銀 に対しては、次のような手が候補手となり、その調査結果も書いておく。

7八銀図(指始図)
  【月】4四歩 → 先手良し
  【火】6二香 → 形勢不明
  【水】8八香 → 先手良し
  【木】7七歩 → 先手良し
  【金】3四馬 → 先手良し(実戦的には互角)
  【土】7八同馬 → 後手良し
  【日】7四香 = 実戦の進行(ほぼ互角)

 つまり、【土】7八同馬なら後手良し、だった。
 しかし後手は実戦では、【日】7四香を選んだということである。


 以下、【月】~【土】の6つの手について、調べた内容(戦後調査)を示しておく。


変化4四歩図00
 【月】4四歩(図)は、はっきり先手良しになる順がある。5四歩と打つのである。
 5四歩、4二銀、4三歩、同銀直、6七銀、同歩成、4二金(次の図)

変化4四歩図01
 後手玉に “詰めろ” を掛けて、先手良し。7八銀には7六玉から逃げるルートがある。
 3一銀なら、同金、同玉として、そこで8四馬がまた “詰めろ” になる。


変化6二香図00
 6筋に香車を据える【火】6二香(図)は、「互角(形勢不明)」の勝負になる。
 これには7七金が最善手と思われる(次の図)

変化6二香図01
 以下、3四馬、5七金と進む(次の図)

変化6二香図02
 ここで6七歩成、同金右、同香成、同金、4四馬、7七歩の進行は、我々の調査では先手良しになった。
 しかしここで4四馬で―――(次の図)

変化6二香図03
 ここで先手が優勢になる順が見つかっていない。形勢不明(互角)


変化8八香図00
 【水】8八香(図)という手もある。7九飛に、5七馬が継続手。
 これで一見、先手が困ったようにもみえるが、6八歩で先手有望の変化となる(次の図)

変化8八香図01
 6八同桂成は、4三歩成、7九成桂、3二と、同玉、4四歩、4二歩、1一銀で、先手勝ち。
 6八同馬のほうが先手玉に迫っているが、これには6九金としっかり受ける(次の図)

変化8八香図02
 7七歩なら、4三歩成で、先手良し。
 7九馬、同金、4七飛、7七金打、7五歩の進行が予想されるが、6一竜(次に5二竜がねらい)で、先手良しである。
 また、ここで後手4四歩なら、やはりここでも5四歩、4二銀、4三歩の攻めで、先手優勢となる。


変化7七歩図00
 【木】7七歩(図)には、6七銀、同歩成、4三歩成と進めて先手良し。
 以下7八歩成、7六玉(次の図)

変化7七歩図01
 桂を取って、後手玉には3四桂、同歩、3三金、同桂、3二と、同玉、2一角、同玉、4一飛成以下の “詰めろ” が掛かっている。
 先手優勢である。


変化3四馬図00
 【金】3四馬(図)と馬を引くのは後手にとって有力な手だ(「水匠2/やねうら王」評価値は +125)
 次に6七歩成や7七歩が後手の狙いになっている。
 それを防ぐ5七金には、6八桂成、同歩、7七歩、同玉、7四香の攻めがある。
 また、7七金と打つのは、7四香で、どうも後手が良さそう。

 ここは5四歩と攻める手が最善と見る。以下4二銀に、4三歩成(同馬なら7七歩で先手ペース)、同銀直、4二金(次の図)

変化3四馬図01
 先手には銀がないのでこの4二金ではまだ後手玉は詰めろになってはいないが、次に3一金打が詰めろになる。
 7七歩、同玉、7四香、5三歩成、同歩、7五歩、同香、9二馬(次の図)

変化3四馬図02
 9二馬で後手玉に“詰めろ”を掛けた。
 1四歩とそれを解除する手に、3五歩(次の図)

変化3四馬図03
 3五歩(図)が好手。4五馬なら、6六玉、7八馬、4三金、6二歩、3一銀と勝負に行く。このときに「3五歩」が残っていると1三玉~2四玉と逃げた時に後手玉が狭くなっている。
 よって3五歩に、後手は8八桂成と勝負する。以下6六玉、7八馬、4三金、6二歩、3一銀(次の図)

変化3四馬図04
 3一同玉、4二金打、2二玉、3二金入、1三玉、8四馬(次の図)

変化3四馬図05
 7七馬、5六玉、8四歩、3六金、7八馬、4七玉、4六歩、3七玉、4八銀(次の図)

変化3四馬図06
 2六玉、2四歩、8八飛、同馬、2二銀、2三玉、2一銀成、1三玉、2二成銀、8九馬、3四桂(次の図)

変化3四馬図07
 先手勝ちになった。

 ということで、【金】3四馬 には、5四歩、4二銀、4三歩成、同銀直、4二金で、先手良し。


変化7八同馬図00
 【土】7八同馬(図)
 問題はこの手である。
 7八同玉、8八銀(次の図)

変化7八同馬図01
 8八同飛、同桂成、同玉、6七歩成(次の図)

変化7八同馬図02
 ここまでは変化の余地がなさそう。
 ここで先手どう受けるかだが、受けが難しい。
 7九銀と打つ のも、8七金と打つのも4八飛で勝てそうにない。
 6八金が最善手のようだ。
 6八同と、同歩、4七飛、8七金、7四香、7六歩、同香、6七銀(次の図)

変化7八同馬図03
 7七金、同金、同歩成、同玉、6六歩、同玉、6四銀右(次の図)

変化7八同馬図04
 こう進んでみると、先手まったく自信のない展開になっている。
 (「水匠2/やねうら王」評価値 -347)


 【土】7八同馬 は 後手良し、が結論である。


7八銀図(指始図 再掲)
  【月】4四歩 → 先手良し
  【火】6二香 → 形勢不明
  【水】8八香 → 先手良し
  【木】7七歩 → 先手良し
  【金】3四馬 → 先手良し(実戦的には互角)
  【土】7八同馬 → 後手良し
  【日】7四香 = 実戦の進行(ほぼ互角)

 つまり、後手が【土】7八同馬 を選べば、どうやら先手は不利だったということになる。




≪最終一番勝負 第82譜 指了図≫ 7四香まで

 しかし、実戦で、≪ぬし≫(後手番)は、【日】7四香(図)を選んできた。





[研究調査 7八銀に代えて7八金の変化]

変化7八金図00

 「7八銀」に代えて、「7八金」(図)の手も有力であった。これだとどう変わってくるのかについて、研究調査してみた。

 まず、「金」の場合は、ここで[ハ]3四馬[ヒ]6二香[フ]7四香 は、ハッキリ先手良しになる ということを書いておく。

変化7八金図01
 たとえば、[ハ]3四馬(図)の場合、5四歩、4二銀、4三歩成としたときに―――(次の図)

変化7八金図02
 4三同銀直に、4二金が“詰めろ”になるので、先手良し。
 「7八金」と受けた場合はこのときに「金金銀」の持駒が手にある。「銀が手にある」ことが大きく、4二金が “詰めろ” になるのである。

変化7八金図03
 [ヒ]6二香(図)の変化。
 これには、6七金、同歩成、4三歩成で先手が勝てる(次の図)

変化7八金図04
 「7八金」と受けて、その結果後手に渡す駒が「銀」ではなく「金」なので、7八銀のような王手飛車取りの手がない。なのでこの図では8八金と打つことになるが、同飛、同桂成、同玉、4八飛、6八歩、4三飛成、6七歩、4八竜、8七玉、6七香成、8八金(次の図)

変化7八金図05
 先手良し。後手は攻め駒が足らない。

変化7八金図00(再掲)
 そして、[フ]7四香 は、受けずに4三歩成で先手良しになる(解説は省略)
 つまり、[ハ]3四馬[ヒ]6二香[フ]7四香 は「先手良し」になる。

 しかし、ここで先手の恐れる手が2つある。
 [ヘ]7七歩[ホ]7八同馬 である。

変化7八金図06
 [ヘ]7七歩(図)の変化。
 この手には、6七金、同歩成と進めることになる。
 「7八銀」のときは、そこで4三歩成で先手良しになった。以下「7八歩成、7六玉」で先手勝ちだった(上の「変化7七歩図01」を参照)

 しかし同じように「7八歩成、7六玉」と進めて、この場合は後手持駒に「金」があるのが重要な違い。6六金と打たれて、8七玉、7七金、9八玉、8八と以下、先手玉が詰まされてしまう。
 したがって、「[ヘ]7七歩、6七金、同歩成」の次の手は、(4三歩成ではなく)この場合は7九歩の受けの手が正着となる(次の図)

変化7八金図07
 これで均衡のとれた勝負になる。
 厳密にはどちらが有望なのか。この先を続けてみる。
 後手8八香なら、4三歩成、8九香成、3二と、同玉、8四馬(後手玉詰めろ)で、先手良し。
 よってここは後手7八歩成、同歩、7七歩、同歩、7八金と攻める。以下7六玉、6二香、5五角(次の図)

変化7八金図08
 後手の7七とを防いで5五角(図)と打ったところ。7七と、同角という変化は先手良し。
 8九金なら、3四桂、同歩、4三歩成で先手良しになる。
 この図、どっちが勝っているだろうか。
 4四歩なら4二歩、同銀、4三歩で、これも先手良し。

 ここは4四銀がベストの手かもしれない。以下4二金、1四歩、8五歩、8九金、8四歩、7四銀、8五金、5六飛、6六桂(次の図)

変化7八金図09
 8五金~6六桂と受けて、かろうじて、先手良しになっているようだ。
 図以下5五飛、7四金、8五角、8六玉、7四角、同桂、8五金、8七玉、1三玉、2二銀、2四玉、4六角(王手飛車取り)、3四玉、5五角、同銀、3六飛が予想され、そう進むと先手勝ち。

 [ヘ]7七歩 は、ギリギリの変化だったが、なんとか先手良しの結果となった。

変化7八金図10
 よって、[ホ]7八同馬 と切る手が後手の最善手かもしれない。
 以下同玉に、8八金(次の図)

変化7八金図11
 この8八金(図)を、「同飛」、同桂成、同玉、6七歩成は、「変化7八同馬図02」に完全に合流する。それは「後手良し」だった(上の「変化7八同馬図01~04」の解説参照)

 ただしこの場合、ここで「7七玉」という変化がある。これがどうなるか。
 以下8九金、6六玉、4九飛(次の図)

変化7八金図12
 こう進んで、先手自信なし(最新ソフトの評価値的にはまだ互角だが)

 というわけで、[ホ]7八同馬 は 後手良し、とする。

 まとめると、次の通り。

7八金図(再掲)
 「7八金」(図)は、7八同馬以下後手良し。

 つまりこの場面は、「7八」に銀を打っても金を打っても、「同馬」と切られて、先手自信のない変化になるのである。
 しかし「相手を迷わせる」という意味では、「銀」のほうが正解だったということになるかもしれない。「金」ならば「7八同馬」か「7七歩」しかないが、「銀」なら(6二香や7四香や3四馬など)ほかの選択肢も魅力的なので、「7八同馬」と切る手を躊躇するかもしれない。

 実際、後手の ≪ぬし≫ は、7八同馬を選ばず、7四香を選んだのであった。




≪最終一番勝負 第82譜 指了図≫ 7四香まで

 ≪ぬし≫ が何を考えて △7四香(図)を選んだのか、それはわからない。

 先手にとって、厳しい戦いが続いていることは、間違いない。



第83譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part182 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第81譜

2020年12月03日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第81譜 指始図≫ 6六歩まで

指し手 ▲6九歩  △6七馬  ▲7八銀



   [プラム・プディング]

「いりませんとも」赤の女王さまはいやにきっぱりと、「紹介された相手を切るなんて、礼儀に反しますよ。腿肉をお下げ!」すると給仕たちがそれを運び去り、かわりに大きなプラム・プディングをもってきた。
「プディングには紹介していただかなくてけっこうよ」アリスはあわて気味だ、「でないと、何もごちそうにありつけないもの。すこしいかが?」
 けれども赤の女王さまはむっとしたようすで、「プディングさん、こちらアリスさんです。――アリスさん、こちらプディングさんです。プディングをお下げ!」給仕たちは、アリスが会釈をかえすいとまもあらばこそ、さっさとプディングを運び去ってしまった。
 それにしても、どうして赤の女王さまだけが命令を下すのかわからない。そこでアリスはためしに大きな声で、「給仕、プディングをもう一度持ってきて!」するとプディングは、まるで手品のように目のまえにもどってきた。それはそれは大きなプディングなので、アリスは腿肉のときみたいに少々気後れしちゃってね、それでも一生けんめい、ひるむ心にむち打って、一切れきりとって赤の女王さまにさしだした。
「なんて失礼なんだ」プディングがいいだした。「ぼくがあんたを一切れきったりしたら、どんな気がするかってんだ、畜生!」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



「プディング Pudding」
小麦粉、米、ラード、肉、卵、牛乳、バター、果物などの材料を混ぜて、砂糖、塩などの調味料や香辛料で味付けし、煮たり蒸したり焼いたりして固めた料理の総称。




<第80譜 なぜ6九歩を指してしまったのか>


≪最終一番勝負 第80譜 指始図≫ 6六歩まで

 △6六歩 に、どう受けるか(攻めの手4三歩成は詰めろになっておらず6七歩成で先手が負ける)

 ここは「6九金」または「7九金」が正着で、そう指せば、おそらく先手がそのまま後手を土俵の外まで押し切って勝てていただろう。
 まず、その2つの「正着」について、その内容を示しておこう。


[変化 6九金

6九金図
 「6九金」(図)と受けたところ。
 後手の候補手は次の3つ。

 〔ア〕6七歩成〔イ〕4四歩〔ウ〕6七馬

変化6九金図01
 〔ア〕6七歩成(図)。
 この手に対しては、「6八金、同桂成、4三歩成」が先手として正しい手順(次の図)

変化6九金図02
 ここで〈u〉7八成桂 と、〈v〉4三同銀 とがある。
 〈u〉7八成桂は、3二と、同玉、4三銀、同玉、4一竜、4二香、4九飛(次の図)

変化6九金図03
 4九飛(図)があって後手玉が詰んでいる(以下5四玉は4五角から詰む)
 つまり先手が6八の「角」を入手した瞬間、4三歩成が後手玉への詰めろになっているわけである。

変化6九金図04
 ということなら、後手は〈v〉4三同銀とするしかない。以下先手4一竜(図)
 ここで3二金なら3五桂や3四歩(同歩なら3三歩)があって先手勝勢になる。
 なので後手は3一金、4三竜、4二歩、5二竜として手番を握り、7八成桂で勝負(次の図)

変化6九金図05
 次に8九成桂が入ると先手玉は "受けなし" になる。
 ここはしかし先手にいく通りかの勝ち筋がある。一つは3四桂、同歩、5五角(受けに利かす)、3三桂打、3二歩、同金、4一銀という指し方。
 もう一つは、2四銀と打つ手がある(次の図)

変化6九金図06
 2四銀(図)は “詰めろ”(2三銀成と3三銀成の2通りの詰め方がある)
 そして2四同歩と取っても、2三銀、1一玉、1二銀成、同玉、2三金、同玉、4五角以下 “詰み”。
 1一玉と応じる手がある。これには2三銀成(1二成銀、同玉、2四桂以下詰めろ)、2二香に、3二銀で先手が勝てる(銀香を持たせると7七と、9八玉、9七銀以下先手玉に詰みが生じるのだが、後手が香を受けに使った場合は銀を後手に渡しても大丈夫)


変化6九金図07
 〔イ〕4四歩(図)の変化。
 これには、4二歩、同銀、4三歩、同銀直、4二金(次の図)

変化6九金図08
 6八に角の質駒もあるので、1四歩では後手玉は逃げられない。
 また2四歩には、3一銀、2三玉、6八金、同歩成、3九飛で捕まえられる。
 3一香と受けられた場合も、やはり6八金、同歩成として、3一金とする(次の図)

変化6九金図09
 3一同玉に、1一銀と打って、先手が勝てる。


変化6九金図10
 〔ウ〕6七馬(図)は飛車取りである。
 これには7八歩と受けるのが良い(7八金打と受けるのもあるが3四馬と馬を引いた後6七歩成が金取りになる分逆に負担になる)
 7八歩に、3四馬。
 そこで先手5一金がわかりやすい攻め方(次の図)

変化6九金図11
 5一金~4一金のこの攻めが間に合う。
 後手は7七歩と攻めてくるが、4一金、1四歩に、2六桂(次の図)

変化6九金図12
 3四の馬を攻める。5六馬なら、3一銀、1三銀、2五金で先手勝ち。
 なので3五馬とするが、「1五金、同歩、8四馬」が鮮やかな決め手になる(次の図)

変化6九金図13
 2四玉ならすぐには捕まらないが、7三馬として、先手玉の上部も相当安全なので、先手の勝ちは揺るぎようがない。

 「6九金」は 先手勝ちになった。
 しかもそれほどきわどい変化もなかった。



[変化 7九金

7九金図
 「7九金」(図)の場合。

 候補手はここでも、[A]6七歩成[B]4四歩[C]6七馬 があり、さらにこの場合は [D]7九同馬 も先手にとって警戒すべき手である。
 しかし、[A]6七歩成、および[B]4四歩 は、「6九金」のときの変化と同じに進めて、先手良し。
 したがって、ここで調査すべき手は、[C]6七馬[D]7九同馬 である。

変化7九金図01
 [C]6七馬(図)。
 この場合、気を付けなければいけないことは、ここで7八歩は8八香の手があって先手苦戦する可能性があるということである。「6九金」の場合は、8八香は7九飛と逃げられるので無効の攻めだったのだが、この場合は飛車を逃げられない。なので8八香、同金、同桂成、同飛、7六金となり、それは形勢不明の勝負になる。
 7九金はそもそも飛車と連結しているので、ここは受けないで4三歩成と攻めて行くのが正着である。これではっきり先手が良い。
 以下8九馬に、この手は王手ではないので、3二とが入る(次の図)

変化7九金図02
 3二同玉に、8九金と手を戻す。
 以下想定手順を示すと、5七飛、7七歩、6七歩成、7八銀、6八桂成、5一竜(次の図)

変化7九金図03
 5二竜以下の “詰めろ”。先手勝勢である(4二銀には6五角がある。以下4三歩なら2二金)


変化7九金図04
 [D]7九同馬(図)は、同飛、6七歩成、4三歩成と進む。
 そこで後手7七金(次の図)

変化7九金図05
 7七同飛、同と、同玉、4七飛、7六玉、4三飛成までほぼ一本道で進みそう。
 そこで4四歩が先手の好手である(次の図)

変化7九金図06
 4四同竜には、6六角と打つつもり。
 後手は5四竜とするが、そこで3四歩がまた好手である。同歩に、3三歩、同桂左、2六桂(次の図)

変化7九金図07
 後手は竜を引きつけて一瞬は堅くなっているが、持駒が豊富な先手が主導権を握れる展開になる。
 図以下、4四竜、5五角、7四香、8七玉(次の図)

変化7九金図08
 4七竜には7七歩と受けが利く。先手勝勢。

 このように、「7九金」も 先手勝ち。
 これも先手が不安になるような変化はなかった。


6六歩図
 つまり、ここで「6九金」または「7九金」なら、それで先手の勝ちが確定した可能性が高い。
 
 しかし、我々――終盤探検隊――は、それらの「勝ち筋」を逃してしまったのである。





≪途中図 6九歩まで≫

 本譜の進行は、▲6九歩(図)
 失着だった。
 なぜ我々はこの手を指してしまったのか(なぜ7九金または6九金を逃してしまったのか)

 それは多分、相棒である「激指」を頼りすぎてしまったからである。
 今回の「指始図(6六歩図)」を、われらの「激指14」に評価させると、その第1候補手に6九歩を示していたのである。6九歩が +300 くらい、そして6九金や7九金は -1 の評価値だった。「激指14」が6九金や7九金をあまり評価しなかった理由はどうやら6七歩成の変化を恐れていたからなのだが、しかしそれは上で検討したように「6八金、同桂成、4三歩成で先手良し」になるので、それがわかれば、この「激指の勘違い」も、“我々の読み” で修正できたはずなのだ。
 それを慎重にやらなかったのが、我々終盤探検隊の気のゆるみだったように思う。
 実際、「激指14」にその「指始図(6六歩図)」を数十分かけて読ませると、「最善手6九金」に変更して示してくるのであった。つまり「激指」は最初の5分くらいの間最善手を6九歩であると示し、それを “鵜呑み” にして信じてしまったのである。検討をおろそかにした我々の失敗だ。


 ここから形勢は、混とんを深めていく。これまで築いてきた「先手の少しばかりの優位」が、この一手の失着によって、フイになったのであった。

 △6七馬▲7八銀 と進む(次の図)



≪最終一番勝負 第81譜 指了図≫ 7八銀まで

 実戦的には「互角」、正確にはおそらくもう「後手良し」になっている。



第82譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part181 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第80譜

2020年12月02日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第80譜 指始図≫ 4四歩まで

指し手 △9五歩  ▲8七玉  △6六歩



   [羊の腿肉(ももにく)]

 ようやく赤の女王さまが口をひらいてね。「スープとお魚はすんじゃいましたよ。こんどはお肉よ」すると給仕たちが羊の腿肉(ももにく)をアリスのまえにおいた。アリスはこんな大きなかたまりを切ったことがないので、いささか心ぼそい思いでその肉を見やってね。
「あなた、おどおどしちゃってるみたいね。その羊の腿さんにご紹介しましょうか」赤の女王さまがいいだした、「アリスさん、こちらは羊さんです――羊さん、こちらはアリスさんです」羊の腿肉ははお皿の中で立ちあがると、アリスにかるく会釈(えしゃく)してね。アリスも会釈をかえしたけれど、おどろいたらいいか、面白がったらいいか、自分でもわからない。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 たしかに、羊の腿肉に会釈されても、これはどうしていいかわからない。




<第80譜 ここまでは順調だった>


≪最終一番勝負 第80譜 指始図≫ 4四歩まで

 先手の終盤探検隊は、▲4四歩 と打って、攻め合う姿勢を見せた。

 ここで、実戦では現れなかった〔a〕4四同歩、〔b〕7八馬、〔c〕7七馬 の変化を見ておく(実戦の進行は〔d〕9五歩)

 〔a〕4四同歩なら、4二歩と攻める。同銀に、4三歩と打ち、4三同銀に、4二歩(次の図)

変化4四同歩図
 先手良し。この後手陣は4筋をこのように攻めるのが基本なのだ。

変化7八馬図01
 〔b〕7八馬には、7九金(図)と受ける。
 以下8九馬、同金、4九飛に、6九歩(次の図)

変化7八馬図02
 6九同飛成なら7八銀、4九竜に、5一金と打てば先手が良い。
 4四歩なら4三銀、同銀、4一竜、4二銀打、6五角で先手勝勢になる。
 9五歩には、7七歩、9六歩、8七玉、6六歩、7八銀、6四香に、やはり5一金で先手良し(7七歩の手は後手の4七飛成に備えている意味もあるのであせって7六歩と桂を取らないほうが良い)

 〔b〕7八馬は7九金で先手良し。

変化7七馬図01
 〔c〕7七馬(図)には、8七金と打つ。以下4四馬と歩を払って、どういう展開になるだろうか。
 先手は7六金と桂馬を取る手がある。次に8五歩の狙いもあるので後手は7五歩とするが、6五金と出て、9五歩に、5五金打、3四馬、4五金打(次の図)

変化7七馬図02
 2四馬なら、3四歩、同歩、2六桂という攻めがある。
 4五同馬、同金、7八金と切り返して、どうか。
 以下は変化の一例だが、5五角、4四歩(4四銀には同金、同歩、4三桂)、3九飛、7六歩、3四歩、同歩、2六桂(次の図)

変化7七馬図03
 先手勝勢。5五の角が受けに利いている。


4四歩図
 〔a〕4四同歩、〔b〕7八馬、〔c〕7七馬 は、以上のようにして先手良しになる。

 後手の ≪ぬし≫ は、〔d〕9五歩 と指した。



≪途中図1 9五歩まで≫

 △9五歩(図)は、予想通りの手で、我々(終盤探検隊)はこの手に対しては ▲8七玉 と決めていたのでそう指した。おそらくそれが最善手。
 代えて、4三歩成とするのは、7八馬で後手勝ちになる。


 ただし、ここでは「7九金」もあるので、その変化がどうなるか、調べてみた。

変化7九金F図01
 「7九金」(図)に、9六歩なら、8七玉で、これは先手良しになる。
 ここは7七馬が後手の正着で、以下9五歩、9六歩、同玉、9四歩、同馬(次の図)

変化7九金F図02
 ソフトの評価値も後手がやや良い形勢と示しているが、図の9四同馬で実際はきわどい形勢だ。
 9四同金、同竜、7八歩、8七金(次の図)

変化7九金F図03
 8七同馬、同飛、8四金、4三歩成、同銀、4四歩(次の図)

変化7九金F図04
 この4四歩に、3二銀と引くと4三銀で先手良しになる(4二歩には1一角がある)
 よって、9四金(同歩は9五歩から先手玉が詰む)、8五歩、8四銀、8六金、4六飛と進む(次の図)

変化7九金F図05
 複雑な場面になってきたが、この4六飛(図)が好手で、どうやら後手良しになっているようだ。
 4三歩成なら、8五銀以下先手玉は詰む。
 6六歩なら、4四飛で、それは後手優勢の局面となる。

 後手の9五歩に「7九金」の変化は、きわどい変化になり、調査結果は後手良し。




≪途中図2 8七玉まで≫

 さて、実戦は ▲8七玉(図)と進んだ。

 対して、後手は △6六歩 と指してきたが、我々は「7四香」を警戒していた。


 その「7四香」の変化を見てみよう。

変化7四香図01
 「7四香」に、先手の受けがたいへんに難しい。
 7七歩は8八桂成、同玉、7七香成で意味がない。
 7九金は、同馬、同飛、8八桂成、同玉、7九香成で、後手良し。
 4三歩成と攻め合ってどうか。これはきわどい変化になる。しかし、4三歩成、8八桂成、同玉、7八香成、9八玉、8九成香、同玉の変化は、どうやらこれも後手良しだ。
 「7四香」に先手に勝つ手があるのかと不安になっていたところだ。

 だが、先手が勝つ手は2つ存在した。
 「6一竜」と「7八金」である。「6一竜」は互角に近い難解な変化になる。
 「7八金」を見ていこう。

変化7四香図02
 「7八金」(図)と受けたところ。
 以下7八同馬、同玉、8八桂成、6七玉(6八玉でも同じ)、8九成香、5八玉(次の図)

変化7四香図03(5八玉図)
 先手玉は“裸”で、後手は飛車を持っている。こうした展開はできれば避けたいところだが、しかしこの図はどうやら「先手良し」のようである。とはいえ最新ソフト(「水匠2/やねうら王」)の評価値も +104 だから、実戦の中でこれで先手良しと判断するのは難しい。
 だが、具体的に手を進めて調べてみると、この図は先手良しということがわかってくる。つまり、ここで後手からの有効な攻めがないのだ。
 ここで後手4四歩は、4二歩、同銀、4三歩の攻めがあって、先手が勝てる。
 だから後手は攻めるしかないのだが、攻めるとすれば3九飛だ(2八飛は後述)
 3九飛には、3七金が受けの好手(次の図)

変化7四香図04
 後手の3九飛は3八飛成を狙っており、3七金はそれを受けた手。
 3八飛成を受けるなら4八金が良さそうに見えるが、それは3一金で形勢不明の変化になる。先手は4三歩成から攻める予定なのだが、4筋の歩が切れたときに、後手4七歩の叩きが入るから。それを想定して、3七金と受けるわけだ。
 3七金に3一金なら、4三歩成、同銀、4四歩、3二銀、4三銀で先手良し。
 2九飛成なら4三歩成で先手優勢がはっきりする。
 ということでここで4四歩はしかたないが、4三歩と垂らしておく(4二歩、同銀、4三歩もあるが、同銀左、4一竜に、5一金の変化がややこしい)
 2九飛成に、5一竜(次の図)

変化7四香図05
 5一竜(図)は3一銀以下の “詰めろ”。先手優勢。

変化7四香図06
 「変化7四香図03(5八玉図)」まで戻って、そこで後手2八飛(図)にはどう対処するか。
 これには4八銀がよい。3八飛成には5六角(後手の4七金と6七金の狙いを両方防ぐ)で先手良し。
 3八金の追撃があるが、4三歩成、4八金、5七玉で―――(次の図)

変化7四香図07
 先手良し。後手玉には “詰めろ” が掛かっている。

 以上の調査により、後手「7四香」の変化は、7八金以下、先手良しとわかった。




≪最終一番勝負 第80譜 指了図≫ 6六歩まで

 実戦は、△6六歩 と進んだ。

 ここで7九金または6九金なら、先手が勝ちに一歩近づいていた。
 だが、この「一番勝負」の実戦はそう進まなかった。



第81譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

終盤探検隊 part180 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第79譜

2020年12月01日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第79譜 指始図≫ 6八角成まで

指し手 ▲4四歩


   [女王たちの宴]

 アリスは大広間をすすんでゆきながら、おそるおそるテーブルの方を見やると、そこには五十人ほどの、ありとあらゆる種類のお客さまがせいぞろいしていてね。鳥もいればけものもいるし、花でさえ何人かいるんだ。アリスの思うのに、「招待をまたずあつまってきてくれてよかったわ。だれを招(よ)べばいいかなんて、自分じゃとてもわかりっこなかったもの!」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 さあ、パーティーが始まった!




<第79譜 視界は良好!>


≪最終一番勝負 第79譜 指始図≫ 6八角成まで

 「亜空間戦争 最終一番勝負」はこうなっている。
 コンピューター・ソフト「激指14」の評価値は +297 ―――この値は、この「最終一番勝負」の先手にとっての最高値である。これまでずっとマイナス600くらいの値だった(それでも後で調べるとほとんど先手良しだったのだが)、それがついにプラスに転じたので、我々のこころは浮きたった。重苦しい雨雲が消えて、晴天の空が広がっているかのような‥‥
 後で振り返れば、浮わついていたようにも思う。

 さて、この図での候補手は次の通り。


6八角成図
  【1】8七銀
  【2】8七金 
  【3】7七歩
  【4】7九金
  【5】4二歩
  【6】5四歩
  【7】6一竜
  【8】3四歩
  【9】4四歩

 【1】~【4】が後手良し、【5】~【9】が先手良しになる。


6八角成図(再掲)
 ここで後手の手番ならば、9五歩の手が厳しく、さらに放置すれば次の7八馬で後手勝ちが決まる。7八馬を防ぐ7九金には8八香があり、9五歩に8七玉も6六歩や7四香で後手良し。
 ―――ということであれば、9五歩~7八馬が来る前に対処しなければ―――という考えになるが、その方法が難しいのである。

 【1】~【9】を、この順番で解説していく。


8七銀図
 【1】8七銀(図)と打って、後手の9五歩と7八馬に備えた。
 しかし、9五歩、同歩、9六歩、同銀、9四歩と進んで―――(次の図)

変化8七銀図01
 これは、先手が悪い形勢である。銀を受けに使っても、やはり「9五歩~7八馬」が厳しいという状況は脱していない。


8七金図
 それでは、【2】8七金(図)はどうだろう?
 これもしかし、9五歩、同歩、9六歩がある(次の図)

変化8七金図01
 9六同金、9四歩に、8七玉として、9五歩に、6九歩(代えて9七金は9六香で後手良し)
 以下6七馬に、7八金(次の図)

変化8七金図02
 馬を引いてくれれば9七金で頑張れるが、7八同馬、同玉、9六歩で、「金二枚」と交換される。
 次に6六金と打たれると先手玉は"受けなし"になるので、6七玉と右辺に逃げる。これで逃げ切れたようにもみえるが、8八金がある。飛車を取りに来る。
 しかしこの瞬間に攻める手はないか。
 「4二歩、同銀、5一銀」という攻めの手段がある。同銀、同竜まで進めば、次の8四馬の切り札があるので先手が勝てそうだ。
 しかし5一銀に、3一銀とかわされて、そこでどうするか。4二角と攻めをつなぐ(次の図)

変化8七金図03
 4二同銀、同銀成、1四歩、1一銀(同玉なら3二成銀で先手良し)、1三玉、3二成銀、8九金、3六銀、6二香(次の図) 

変化8七金図04
 3六銀の手に代えて2五金などでは6五飛で打った金を抜かれてしまう。3六銀と打って、後手玉に“詰めろ”を掛けつつ、後手からの4七飛を消したが、6二香(図)と打たれてみると、先手に勝ち目がない局面になっていることがはっきりする(6筋には歩合が利かない)
 頑張って後手玉を追い込んでみたが、これが限界だ。


7七歩図
 【3】7七歩(図)は良さそうな手である。
 〈ア〉7七同馬なら、8七金で先手有望。〈イ〉7八馬は7九金、これも先手が良い。
 また〈ウ〉6七馬には、6九飛、6八桂成と進むが、5四歩、4二銀、6一竜で―――(次の図)

変化7七歩図01
 先手が良い。6六歩なら5二竜がある。
 この図からは、6九成桂、6七竜、6八飛と進みそうだが、5七竜で、(まだ大きな差は開いていないが)先手リードの形勢。

変化7七歩図02
 【3】7七歩 には、〈エ〉9五歩(図)がこの場合も最強の一手である。
 7六歩では7八馬で先手負け。ここは8七玉が最善手。
 対して6六歩が厳しい手。桂を取る7六歩なら、6七歩成、8八金、8五金、同歩、8六香で後手良し。
 先手はここは6九歩が最善の頑張り。以下6七馬、7八金(次の図)

変化7七歩図03
 ここで4五馬なら、5四歩(同馬なら7六歩で先手良し)、4二銀、6一竜(後手6七歩成を受けながら次に5二竜の攻めのねらい)で、先手良し。
 7八同馬、同玉、6四香、7六歩、6七歩成、8七玉、7七金、9八玉、7八とと進む(次の図)

変化7七歩図04
 一目、先手勝てそうにない図に見えるが、5五角(3四桂以下後手玉詰めろ)と打って、4四歩に、6一竜で、まだ勝ち筋は残っている(次の図)

変化7七歩図05
 ここで8九と、7七角、7八飛、8七玉の展開は、きわどいながらも先手有望の筋がある(内容は省略)
 しかし6六歩が冷静な一手。
 4四角が勝負手(同銀なら4二金で先手勝ちになる)だが、8八とが切り返し。同飛、同金、同玉、4八飛(次の図)

変化7七歩図06
 以下6八金、4四飛成となった図は、後手やや良しの形勢。

 【3】7七歩 も先手が良くなる道はないようだ。


7九金図
 【4】7九金(図)と受ける手は考えたいところ。
 4六馬のような手なら、先手に攻めの手番が来て、たとえば4四歩、同歩、4二歩、同銀、4三歩、同銀直、4二歩で、先手が勝てる。
 またここで9五歩はあるが、8七玉で、先手有望の展開になる。
 先手にとって問題は、ここで8八香という手があることである(次の図)

変化7九金図01
 8八同金、同桂成、同飛、7八金、同飛、同馬、8八金、同馬、同玉、5八飛。
 5八飛に7八歩では7七歩で後手良しがはっきりする。
 9七玉が最善だが、後手は「9五歩」(次の図)

変化7九金図02
 ソフトの評価値はほぼゼロ(互角)
 ここは9五同歩6七銀が考えられる。
 9五同歩、9六歩、同歩、9四歩、7七角(次の図)

変化7九金図03
 7七角(図)と打って後手玉に詰めろを掛けた(代えて6六角は5五金、7七角、7六歩で後手良しになる)
 後手4四歩に、6七銀と打つ。以下5七飛成(2八飛成なら5四歩で先手良し)、6八金(次の図)

変化7九金図04
 6七竜、同金、7八銀(詰めろ)、8五歩、6七銀成(次の図)

変化7九金図05
 8四歩、7七成銀となれば、はっきり後手優勢。
 5五角と逃げると9五金以下先手玉は詰んでしまう。
 なのでここは5九角だが、7四銀があり、以下8四歩、8五金、9七玉に7六歩で、これも先手が苦しい。

変化7九金図06
 「9五歩」に、6七銀(図)の変化。
 5九飛成、7七角(詰めろ飛車取り)、6六歩(次の図)

変化7九金図07
 5九角、6七歩成、9五歩、7六歩。
 以下は変化の一例。7九香、9五金、9六歩、8四銀(次の図)

変化7九金図08
 後手良し。9五歩は9三銀(次に6九角が詰めろになる)
 8三馬は、7七歩成、同香、8六金、同玉、8五歩。
 8二馬は、9六歩、同竜、9五歩。
 そして8四同馬は、同歩、9五歩に、4六角で、後手優勢(9五歩に代えて9五竜は、7七歩成、同香、7六歩で後手優勢)

 後手の7六歩に7九香と受けた手に代えて8八金とするなど、先手に変化の余地はあるが、先手が勝てる筋は見当たらない。


6八角成図(再掲)
  【1】8七銀  → 後手良し
  【2】8七金  → 後手良し
  【3】7七歩  → 後手良し
  【4】7九金  → 後手良し
  【5】4二歩
  【6】5四歩
  【7】6一竜
  【8】3四歩
  【9】4四歩

 以上、【1】~【4】の手を調べてきたが、いずれも「後手良し」となった。
 どうやら、受ける手は先手に勝ちがないようである。

 それでは、先手が勝つための “正解” をこれから紹介しよう。“正解” はいくつかある。


4二歩図
 「6八角成図」から先手が勝つための最も明快な手は、【5】4二歩(図)である。
 4二同銀に、5一銀がある(次の図)

変化4二歩図01
 3一銀には4二金。5三銀には5四歩で、寄せきれる。
 「5一同銀、同竜」と進んだ場合、そこで3一銀なら、4二金、同銀、同竜、3一金に、1一銀があるので攻めが続く。
 したがって、「5一同銀、同竜、1四歩」が想定される展開(次の図)

変化4二歩図02
 ここで3一銀が打てる。1三玉なら2五金と打って(1四金以下詰めろ)、2四銀に、1四金、同玉、2六金で、後手玉を “必至” に追い込める。
 だから3一銀は同玉。そこで銀がもう一枚あれば1一銀なのだがあいにくそれはない。4二金と打って、2二玉、3二金、同玉と進む。
 そこで “次の一手” が決め手だ(次の図)

変化4二歩図03
 1三銀(図)と打つ。逃げ道封鎖の一手。
 1三銀に代えて1一銀は3四歩でこの場合はうまくいかない。この1三銀に3四歩なら、4四金がある(4四同歩なら5二竜で詰み)
 ただし、ここから先もまだ警戒すべき落とし穴がある。それを読み切ればゴールだ。
 1三同馬なら、4二金、2二玉、3二金、1一玉、8四馬。同銀に、2一金、同玉、4一竜以下後手玉詰み。

 1三同香は、4二金、2二玉と進む。
 そこでうっかり4一竜だと7九馬以下詰まされて先手負ける(これが “落とし穴” だ)
 ここは3二金打、1二玉と後手玉を追い込んで、8四馬が正解である(次の図)

変化4二歩図04
 これなら、7九馬、同飛、8八銀、8七玉、7七金、同飛、同銀成という詰み筋にも、8四馬が受けに利いていて大丈夫。つまり8四馬は、"詰めろ逃れの詰めろ" だった。
 先手勝ち。



 【6】5四歩(図)も、基本的には【5】4二歩 の場合と同じ攻め筋で、先手が勝てる。
 違いは、持歩の数と、「5四歩」が盤上に残るということである。この場合はこの歩はないほうが先手にとって都合がよく、その分、この 【6】5四歩 は読まないといけない変化が多くなる。
 【6】5四歩 には、4二銀だが、以下5一銀、同銀、同竜と進む。
 そこで1四歩は、【5】4二歩 の場合と同じように、「3一銀、同玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、1三銀」で寄せることができる。
 問題は、ここで後手2四歩の場合である(次の図)

変化5四歩図01
 「5四歩」が盤上になかったら、ここは5二竜が詰めろになり、先手良しがはっきりしていた。
 ところがこの場合は、「5四歩」がジャマをして竜を5四や5五に引けないので、5二竜は詰めろになっていない。なので5二竜では8八銀で後手勝ちになってしまうのである。
 しかしここは別の勝ち方がある。3一銀と打つのである。2三玉と逃げれば、3五歩、同馬、3六歩で先手勝勢(3六同馬なら3九飛)
 よって3一銀は、同玉。
 以下4二金、2二玉、3二金、同玉、5二竜、4二香、2二金(次の図)

変化5四歩図02
 2二同玉、4二竜、3二銀、3一銀、2三玉、3二竜、3四玉、5六金、4五金、4二銀成(次の図)

変化5四歩図03
 このような感じで後手玉を上下から挟んで寄せて、先手勝勢。


6一竜図
 【7】6一竜(図)は、受けに利かした意味と、それだけでなく、攻めの含みがある。たとえばここで後手 [L]7七歩 なら、4二歩、同銀、5二竜、3一銀、4二金と攻めて先手良しだ。

 [M]9五歩 が、ここでも後手の有力手だが、この場合はどうなるだろうか。
 この手には、先手は8七玉とする(次の図)

変化6一竜図01
 8七玉(図)に、7四香が厳しい追撃だが、そこで先手3四歩が急所の一手(次の図)

変化6一竜図02
 3四同歩なら6七金と打って、先手は角を入手する展開になるので、どこかで5五角のような王手が有効になる。これが3四歩の意味。
 8八桂成、同玉、7七香成、9八玉、7八馬、3三歩成(次の図)

変化6一竜図03
 3三同銀、8八金、9六歩、7八金、同成香、3四桂(次の図)

変化6一竜図04
 3四同銀、6六角、3三歩、8七玉、8九成香、4一竜、3一金、5二竜、4二銀、3二歩(次の図)

変化6一竜図05
 先手優勢である。
 これは変化の一例にすぎないが、[M]9五歩 に対し、正確に指せば、先手が良くなると思われる(ただし変化は多い)

変化6一竜図06
 【7】6一竜 に、[N]7八馬(図)が、調べておくべきもう一つの変化である。
 この手には7九金と受ける。8九馬、同金、4九飛、6九歩、2九飛成、7七歩の進行は、先手良し。
 7九金に7七歩がしぶとい手。これには8七銀と受け、先手玉はこれで受かっている。
 それでも勝ちたい後手は8八香と食い下がる。
 そこで先手は4二歩(次の図)

変化6一竜図07
 4二同銀と銀を下がらせておけば、後で5四桂などの攻めが有効になる。
 4二同銀に、8八金、同馬、同飛、同桂成、同玉(次の図)

変化6一竜図08
 こうなって、先手の模様が良い。しかしここで後手の手が広く、実戦的にはまだまだ油断がならない。
 ここで2八飛なら、7七玉、2九飛成、5四桂で先手優勢。
 他に先手には5五角(次に3四桂)の狙いもある。
 それらの攻め筋を考えて、この図で、5八飛と打つ変化を見ていこう。
 5八飛、6八金、7八金、同銀、同歩成、同玉、7七歩、同玉、7六歩、同玉、5九飛成、6九歩、7四銀、8七玉、7六歩、7八金打(次の図)

変化6一竜図09
 ここで後手が困っている。2九竜は5四桂が入るし、7七銀と打ちこむのは清算して続きの攻めがない。
 7五銀としたいが、それは先手6五金と打って次に7五金で9三の馬も働いてくる。
 1四歩と待つ手なら、5八香と打って、5二香成から攻めて行けばよい。
 先手優勢。

 以上の通り、【7】6一竜 は、変化が多いが、どうやら先手良しになるようである。


6八角成図(再掲)
  【1】8七銀  → 後手良し
  【2】8七金  → 後手良し
  【3】7七歩  → 後手良し
  【4】7九金  → 後手良し
  【5】4二歩  → 先手良し
  【6】5四歩  → 先手良し
  【7】6一竜  → 先手良し
  【8】3四歩  
  【9】4四歩  = 実戦の指し手  


3四歩図
 【8】3四歩(図)と打つ手も有力手で、これも先手良しになる。以下、その内容を示す。
 3四歩に7八馬は3三歩成、同桂、7九金、8九馬、同金、3四歩、7七歩が変化の一例で先手良し。
 3四歩に9五歩も有力だが、3三歩成、同玉(同桂は1一銀、同玉、4一竜以下後手玉詰み)、8七玉、7七歩、7九金で、やはり先手良し。後手玉が露出しているので、先手に有効手が多くなる。
 というわけで後手は3四同歩と応じる。
 そこで3三歩と打って、同桂に、4四歩(次の図)

変化3四歩図01
 4四歩に代えて7九金もあるところ(この場合8八香は、同金、同桂成、同飛、7八金に2六桂があって先手良し。ただし7九金に9五歩が少々たいへん)
 ここでは4四歩(図)以下の変化を見ていく。
 4四同歩なら、4三銀と打つ手があって、先手勝ちになる(4三同銀は2一金以下詰み)
 後手は9五歩(代えて7八馬なら7九金で先手良し)とし、先手4三歩成と進む(次の図)

変化3四歩図02
 以下7八馬が先手玉への “詰めろ” だ。受けはない。
 3二と、同玉、2一銀(同玉は詰み)、4二玉、4三歩、同玉、4一竜、4二歩、4九飛(次の図)

変化3四歩図03
 まだ変化が多いが、読み切れば先手が勝てる。
 4四銀は、4二竜、同玉、4四飛以下詰み。
 4四香も、3二銀不成、5四玉、5九飛以下詰み。
 4五香も、3二銀不成、4四玉、3六桂、5四玉、5九飛以下詰みがある。
 4五桂が難しい。しかし4五桂には、8五歩の好手があって先手が勝てる。8五同金なら9三馬の利きが通って、後手玉に詰みが生じる。

 5四玉にはどうするか。5九飛、5五香、同飛、同玉、5九香(次の図)

変化3四歩図04
 飛車を切って、5九香で先手が勝てる。以下6五玉に、6一竜、6二歩、6六歩、同玉、5七金、7七玉、6七金打、同馬、同金、同玉、5八銀以下、先手勝ち。

 このように、【8】3四歩 は 先手良し。


6八角成図(再掲)
  【1】8七銀  → 後手良し
  【2】8七金  → 後手良し
  【3】7七歩  → 後手良し
  【4】7九金  → 後手良し
  【5】4二歩  → 先手良し
  【6】5四歩  → 先手良し
  【7】6一竜  → 先手良し
  【8】3四歩  → 先手良し
  【9】4四歩  = 実戦の指し手(先手良し

 【9】4四歩 も、先手良しになる。実戦で終盤探検隊は、この【9】4四歩 を選んだ。
 つまり5つあった “正解” のうちの一つを選んだのである。




≪最終一番勝負 第79譜 指了図≫ 4四歩まで

 先手の我々は、▲4四歩 を選んで指した。
 「激指14」がこの手を第一候補手として推していた。

 この ▲4四歩 を同歩なら、4二歩、同銀、4三歩、同銀直、4二歩で、先手良しになる。
 しかし当然、後手は別の手を指してくる。おそらく、9五歩だろう。



第80譜につづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする