≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで
指し手 △7五香
[僕の目ざめを待つ水仙の花]
春のまだ浅いころ、或る朝、僕は思わぬ寝坊をした。冬のあいだあんなに短い睡眠に自分を馴(な)らしていたのに、時ならぬ暖かさが、心の弛(ゆる)みを作ったのにちがいない。画室の一隅(いちぐう)のソファ・ベッドの白いシーツの上に、僕は起き上がった。そのとき白い枕(まくら)のそばに、一茎の水仙が横たえられているのに気づいた。
僕は怒ろうとしたが、思い止(とど)まった。枕のかたわらの水仙はいかにも自然に置かれていて、僕の目ざめをまっているかのようである。
(『鏡子の家』 三島由紀夫著 新潮文庫 より)
<第90譜 決着は泥の中で(八)>
≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで
今、先手(終盤探検隊)は、▲7六金(図)と、歩を払いながら金を寄って「8六」の地点を受けた。
ここで後手はどう攻めるか。
候補手は、たくさんある。
〔い〕7五歩
〔ろ〕7五香
〔は〕9五金
〔に〕9七歩成
〔ほ〕6四銀
〔へ〕8六桂
〔と〕7七歩
〔ち〕4三馬
このような手が考えられる。
それぞれの手についての調査研究の内容は、この「一番勝負」の勝負の決着を伝えたその後でじっくると伝える予定なので、ここもその解説は省く。
実戦で、後手番の ≪ぬし≫ が採用したのは、〔ろ〕7五香である。
≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 7五香まで
第91譜につづく
指し手 △7五香
[僕の目ざめを待つ水仙の花]
春のまだ浅いころ、或る朝、僕は思わぬ寝坊をした。冬のあいだあんなに短い睡眠に自分を馴(な)らしていたのに、時ならぬ暖かさが、心の弛(ゆる)みを作ったのにちがいない。画室の一隅(いちぐう)のソファ・ベッドの白いシーツの上に、僕は起き上がった。そのとき白い枕(まくら)のそばに、一茎の水仙が横たえられているのに気づいた。
僕は怒ろうとしたが、思い止(とど)まった。枕のかたわらの水仙はいかにも自然に置かれていて、僕の目ざめをまっているかのようである。
(『鏡子の家』 三島由紀夫著 新潮文庫 より)
<第90譜 決着は泥の中で(八)>
≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで
今、先手(終盤探検隊)は、▲7六金(図)と、歩を払いながら金を寄って「8六」の地点を受けた。
ここで後手はどう攻めるか。
候補手は、たくさんある。
〔い〕7五歩
〔ろ〕7五香
〔は〕9五金
〔に〕9七歩成
〔ほ〕6四銀
〔へ〕8六桂
〔と〕7七歩
〔ち〕4三馬
このような手が考えられる。
それぞれの手についての調査研究の内容は、この「一番勝負」の勝負の決着を伝えたその後でじっくると伝える予定なので、ここもその解説は省く。
実戦で、後手番の ≪ぬし≫ が採用したのは、〔ろ〕7五香である。
≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 7五香まで
第91譜につづく