≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 4四歩まで
指し手 ▲7九金 △3四馬
[もうがまんできないっ!]
もういっときもぐずぐずしていられない。お客の何人かはすでにお皿の中にぶったおれているし、スープの杓子(しゃくし)がテーブルの上をアリスの席めがけてやってきて、じれったそうにそこをどけと合図している。
「もうがまんできないっ!」アリスは大声をあげて、とびあがると、テーブルクロスを両手でつかんで、ぐいっと引き、とたんに大皿も小皿もお客もローソクも、がらがら音たててころがりおちて、床につみかさなった。
「さあ、あんたよ」アリスはすごいいきおいで赤の女王さまの方にむきなおる。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第84譜 決着は泥の中で(三)>
≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 4四歩まで
図は、後手が △4四歩(図)と指したところ。
この手に代えて、6八桂成で後手良しになっていたことは、前回の譜で報告済みだ。しかしこの△4四歩も落ち着いた手で、どうもこれも先手が苦しそうに思える局面だ。先手は “歩切れ” になった。
しかし、ここで 9五歩 であるいは先手に勝ち筋があったかもしれないと、“戦後” ではあるが、調べていて気がついた。
まずそれをしっかり調べてみよう。
[変化9五歩 の研究]
変化9五歩図00
ここで〔イ〕3四馬、〔ロ〕6八桂成、〔ハ〕9八歩 の変化を見ていく。
変化9五歩図01
まず、〔イ〕3四馬 の変化。
これは、5四歩、4二銀、6一竜(図)で、先手良し。
変化9五歩図02
〔ロ〕6八桂成(図)の変化が怖いところなのだが、6七銀、同歩成、4三歩、7七と、9六玉、9四歩、5一竜(次の図)
変化9五歩図03
こう進むと、先手良し。後手玉は3一角以下の“詰めろ”。
ということなら9五歩はイケるのではないか―――と、思ったのだが‥‥
変化9五歩図04
9五歩に、〔ハ〕9八歩(図)という工夫がある。
もしもここで「あと一歩」があれば、5四歩、4二銀、4三歩で、先手が指せる将棋になっていた(そのことは前譜の変化で解説している)
しかし後手7四香に対し、「7五歩、同香、7七歩」でその「一歩」を使ってしまった。
この9八歩(図)に手を抜くなら、ここでは6一竜だが、9九歩成、同飛、6四香で、後手良し。
ということで、9八同香と応じるしかない。
すると結果が変わってくるのだ。6八桂成としたときに―――(次の図)
変化9五歩図05
ここで、上の順と同じように6七銀以下進めたときに、香車の位置が「9八」にあると、その分先手玉が狭い。だから先手玉が9六まで逃げたとき、後手9四歩が先手玉への詰めろになっていて、この順では先手がはっきり負けになるというわけ。
では、ここで6八同歩と取って、どうか。
結論から言うとそれでは先手勝てない。以下その手順を示す。
6八同歩、7七香成、同銀、8九馬、7六歩(8八金は7六歩で先手不利になるので7六歩と工夫してみたが‥)
7六歩には、7五歩と歩を合わせるのが急所の攻め手になる(同歩なら7六歩、同玉、9八馬)
7五歩以下、8八金、7六歩(次の図)
変化9五歩図06
結局、(一歩の違いはあるが)この図になる。これは先手が悪い。
6六銀は、8八馬、同玉、6五歩で後手良し。
7六同玉も、8八馬、同銀、7八飛で寄ってしまう。
7六同銀はどうなるか。7五歩、6五銀、5七飛、7七歩、7四銀(次の図)
変化9五歩図07
8九金なら6五銀。 7四同銀なら、8八馬、同玉、7六歩。
後手良し。
変化9五歩図00(再掲)
つまり、結論は、9五歩 は9八歩以下後手良し。
≪途中図 7九金まで≫
というわけで、≪指始図=4四歩図≫ では、▲7九金(図)と打つことになる。
この金を打つことで、後手の狙い筋である「6八桂成、同歩、7七香成」や「8八桂成、同玉、7六歩」が無効になる。
ここで後手には選択肢がある。
【X】5七馬、【Y】5六馬、【Z】3四馬、である。
(【W】6四銀右 は9五歩で先手良し)
[変化【X】5七馬 の研究]
変化5七馬図00
“5七馬” は、「7四香に、単に7七歩」の場合を、前譜(変化4四歩図12)で解説している。それは形勢互角の結論だった。
この場合は、「7四香に、7五歩、同香、7七歩」として、「7九金、5七馬」である。
「7五歩、同香」を入れることで先手は “歩切れ” になってしまったが、この変化の場合はこれは(微妙なところだが)少し得になっているようだ。
【X】5七馬(図)の第一の狙いは7九馬、同飛、8八金。
ここは7六歩と桂を取る。以下、6七歩成に、6八金打と頑張って、同と、同金と進める(次の図)
変化5七馬図01
ここで6六馬なら7七金と上がり、以下5五馬には7六歩で先手良し。6五馬なら6六金打と厚く受けて、先手良し(こうした変化のときに後手が7五香の形になっているのが先手にとって少し得になる)
5六馬にはどうするか。ここは6一竜とするのが良い(次の図)
変化5七馬図02(6一竜図)
以下 [1]2九馬(他に[2]7六香や[3]6六金も有力で後述する)に、4三歩(次の図)
変化5七馬図03
4三歩を〔a〕同銀なら、(4一竜ではなく)3五桂と打って、3四銀(3二銀なら4三金)、8四馬、同銀、5二竜、4二金、4三金で、後手玉を寄せることができる。
また、〔b〕1四歩 も、8四馬、同銀、4二金、6二金、3二金、同玉、4二金、2二玉、2五桂で、寄り。
ここでは、 〔c〕7六香 と 〔d〕6二金 が後手の有力候補手になる。
〔c〕7六香 は、同玉なら1九馬で後手有利になる。
4二金、7四馬と進む(次の図)
変化5七馬図04
7四馬(図)は、先手の3二金、同玉、5二竜の攻めを受けた手。
この手に代えて6二金もあったところ。それには8四馬(同銀なら3一金打)として、6一金、7三馬、3一桂、6七銀で、先手良しになる。
7四馬には、6六桂と打ってその馬を追う。以下7五桂があるが7六玉とし、6五歩、3二金、同玉、6三銀(次の図)
変化5七馬図05
6三銀(図)と打って、再び5二竜の狙いが復活した。
5五金(先手玉への詰めろ)なら、5七金と受けて大丈夫。
6二金には、同竜、同銀右、7四銀成(次の図)
変化5七馬図06
これで先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値は +1211)
以下6六歩、7五成銀、7四金打、同成銀、同金、3五桂が予想される。
変化5七馬図07
戻って、4三歩に、〔d〕6二金(図)の変化。
5一竜、6五馬、4二歩成、7六香、3一金、7五桂(次の図)
変化5七馬図08
9七玉、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7八香成、3二と(次の図)
変化5七馬図09
3二同馬、同金、同玉、6五角、5四銀打、8四馬(次の図)
変化5七馬図10
これで、先手勝ち。
後手玉は5四角、同銀、4二金以下の“詰めろ”になっている。したがってここでは6五銀とすることになるが、7五馬で、これも “詰めろ” になっている。
変化5七馬図02(6一竜図 再掲)
もぅ一度この図まで戻って、ここで[2]7六香(図)の変化を考える。これが手強い手だ。
また、[3]6六金 もあるが、以下6七金打、7六金、同金、同香で、結局同じ変化に合流する。
変化5七馬図11
[2]7六香(図)、7七歩、同香成、同金、7六歩、同金、7五歩と進む。
5六に馬を置いたまま攻めてくる。先手の8九飛が狙われる駒になっているのがしんどい。
ここで、先手5八香(次の図)
変化5七馬図12
5八香(図)では、代えて7七金もあったところだが7六金がうるさい(形勢互角)
5八香に、7八馬、同玉、7六歩。先手は7七歩と受ける(次の図)
変化5七馬図13
ここで 〈m〉6五歩 と 〈n〉6四銀右 が後手有力手。
〈m〉6五歩、7六歩、6六銀、6八歩、7七歩、8七玉、9六歩、9八歩(次の図)
変化5七馬図14
こう進むと先手に勝ち筋があるような気もする(「水匠2/やねうら王」評価値は +376 )
変化5七馬図15
しかし、〈n〉6四銀右(図)がある。
以下7六歩に、7五歩。同歩と取ると、7六金で先手負けになる。
6七玉、7六歩、5三香成(次の図)
変化5七馬図16
5三同銀、5七玉、7七歩成、6八歩(次の図)
変化5七馬図17
6八歩(図)で先手の飛車が簡単には捕まらないようにした。
形勢は互角。「水匠2/やねうら王」評価値は -202 。
正しく指せば先手が勝てるかもしれないが、それが難しい局面になっている。実戦的には後手が勝ちやすいだろう。
変化5七馬図00
【X】5七馬(図)の変化は、結論としては、「互角」。
[変化【Y】5六馬 の研究]
変化5六馬図00
【Y】5六馬(図)には「6一竜」とする(次の図)
変化5六馬図01
「6一竜」(図)。この手は後手6七歩成を防ぎつつ、6五馬の手も消している。
「6、7筋を制する」ことが今は最も重要である。
ここで後手は、〔1〕6四銀右 と 〔2〕2九馬 が有力手となる。
〔1〕6四銀右 とすれば、4七歩成の狙いが復活するし、6八歩とそれを防げば6五馬があって後手良しになる。
〔1〕6四銀右 に、先手に「一歩」があれば5四歩がピッタリの返し技になるのだが先手は歩切れである。
7六歩と桂を取るのは、4七歩成、同銀、同馬、7七金、8九馬、同金、7六香で、先手苦しい形勢。
だが、ここは先手に良い手がある。9五歩である(次の図)
変化5六馬図02
歩を補充して、9六玉(9七玉)のようなスペースを確保した(後手6五馬なら9七玉で先手良しだ)
当然後手は6七歩成。同銀、同馬、7八金打、4五馬(先手の5四歩に備えた馬の位置)
ここで4三歩が好手(この手に代えて4二歩は5四馬、4一歩成、6八桂成で後手ペース)である(次の図)
変化5六馬図03
4三同銀なら、(4一竜ではなく)4二歩と打って、5四馬、4一歩成、6八桂成、9六玉、7八成桂、3一とと攻め合うつもり。それで先手が攻め勝つ。
4三歩(図)に、後手は5四馬。以下4二金(次に3二金、同玉、5二竜がある)、3一銀、同金、同玉、4二銀、同銀、同歩成、同玉、6三銀(次の図)
変化5六馬図04
4三馬、8四馬、同歩、5四金、6五角、4三金、同銀、5二銀成、同銀、5一角(次の図)
変化5六馬図05
以下4三玉に、6四竜。先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値 +692 )
変化5六馬図06
戻って、「6一竜」に、〔2〕2九馬(図)の変化。
ここで7六歩としたくなるが、それは同香、同玉、1九馬で、危険(形勢は互角)
やはりここでも、9五歩が良い。対して後手1九馬なら4三歩で先手良し。
後手6七桂で勝負する(次の図)
変化5六馬図07
ここは正しく指せば、先手が勝てるようだ。
ここで先手は2通りの「勝ち筋」がある。一つは「5四歩、4二銀、5二竜」と攻める手。
もう一つは、「7六歩」と桂を取る手。
「7六歩」以下を見ていこう。「7六歩」、7九桂成、同飛、7六香、7七歩、同香成、同銀、6二金(次の図)
変化5六馬図08
6二金(図)と打って6筋の攻めをねらってきた。
5一竜、7八歩、8九飛、6七歩成、7六銀、6六と、3五桂(次の図)
変化5六馬図09
3五桂(図)と打って、攻めの拠点をつくる。4三金や2六香を次の狙いとする。
以下、一例として、3九馬以下の変化を示しておく。3九馬、4三金、7六と、同玉、7五馬、6七玉、6六銀、5六玉、4三銀、同桂成、4五金、4七玉、6五馬(次の図)
変化5六馬図10
3七玉に、4三馬で、成桂を払うことに成功したが―――
4一竜、4二馬、4三香と進み―――(次の図)
変化5六馬図11
これで先手勝ち。
4一馬、同香成、3二玉が予想されるが、2四桂、同歩、3一金、2二玉、3二角で、後手玉を “必至” に追い込める。先手玉は詰まない。
変化5六馬図00(再掲)
結論。【Y】5六馬 は 6一竜以下先手良し。
≪途中図 7九金まで≫
【X】5七馬 → 互角
【Y】5六馬 → 先手良し
【Z】3四馬 = 実戦の指し手
後手の ≪ぬし≫ は、【Z】3四馬 を選んできた。
≪最終一番勝負 第84譜 指了図≫ 3四馬まで
△3四馬(図)と遠く引いて、次の6七歩成を次のねらいとする。
形勢は「互角」である。「水匠2/やねうら王」評価値は +153 。
第85譜につづく
指し手 ▲7九金 △3四馬
[もうがまんできないっ!]
もういっときもぐずぐずしていられない。お客の何人かはすでにお皿の中にぶったおれているし、スープの杓子(しゃくし)がテーブルの上をアリスの席めがけてやってきて、じれったそうにそこをどけと合図している。
「もうがまんできないっ!」アリスは大声をあげて、とびあがると、テーブルクロスを両手でつかんで、ぐいっと引き、とたんに大皿も小皿もお客もローソクも、がらがら音たててころがりおちて、床につみかさなった。
「さあ、あんたよ」アリスはすごいいきおいで赤の女王さまの方にむきなおる。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第84譜 決着は泥の中で(三)>
≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 4四歩まで
図は、後手が △4四歩(図)と指したところ。
この手に代えて、6八桂成で後手良しになっていたことは、前回の譜で報告済みだ。しかしこの△4四歩も落ち着いた手で、どうもこれも先手が苦しそうに思える局面だ。先手は “歩切れ” になった。
しかし、ここで 9五歩 であるいは先手に勝ち筋があったかもしれないと、“戦後” ではあるが、調べていて気がついた。
まずそれをしっかり調べてみよう。
[変化9五歩 の研究]
変化9五歩図00
ここで〔イ〕3四馬、〔ロ〕6八桂成、〔ハ〕9八歩 の変化を見ていく。
変化9五歩図01
まず、〔イ〕3四馬 の変化。
これは、5四歩、4二銀、6一竜(図)で、先手良し。
変化9五歩図02
〔ロ〕6八桂成(図)の変化が怖いところなのだが、6七銀、同歩成、4三歩、7七と、9六玉、9四歩、5一竜(次の図)
変化9五歩図03
こう進むと、先手良し。後手玉は3一角以下の“詰めろ”。
ということなら9五歩はイケるのではないか―――と、思ったのだが‥‥
変化9五歩図04
9五歩に、〔ハ〕9八歩(図)という工夫がある。
もしもここで「あと一歩」があれば、5四歩、4二銀、4三歩で、先手が指せる将棋になっていた(そのことは前譜の変化で解説している)
しかし後手7四香に対し、「7五歩、同香、7七歩」でその「一歩」を使ってしまった。
この9八歩(図)に手を抜くなら、ここでは6一竜だが、9九歩成、同飛、6四香で、後手良し。
ということで、9八同香と応じるしかない。
すると結果が変わってくるのだ。6八桂成としたときに―――(次の図)
変化9五歩図05
ここで、上の順と同じように6七銀以下進めたときに、香車の位置が「9八」にあると、その分先手玉が狭い。だから先手玉が9六まで逃げたとき、後手9四歩が先手玉への詰めろになっていて、この順では先手がはっきり負けになるというわけ。
では、ここで6八同歩と取って、どうか。
結論から言うとそれでは先手勝てない。以下その手順を示す。
6八同歩、7七香成、同銀、8九馬、7六歩(8八金は7六歩で先手不利になるので7六歩と工夫してみたが‥)
7六歩には、7五歩と歩を合わせるのが急所の攻め手になる(同歩なら7六歩、同玉、9八馬)
7五歩以下、8八金、7六歩(次の図)
変化9五歩図06
結局、(一歩の違いはあるが)この図になる。これは先手が悪い。
6六銀は、8八馬、同玉、6五歩で後手良し。
7六同玉も、8八馬、同銀、7八飛で寄ってしまう。
7六同銀はどうなるか。7五歩、6五銀、5七飛、7七歩、7四銀(次の図)
変化9五歩図07
8九金なら6五銀。 7四同銀なら、8八馬、同玉、7六歩。
後手良し。
変化9五歩図00(再掲)
つまり、結論は、9五歩 は9八歩以下後手良し。
≪途中図 7九金まで≫
というわけで、≪指始図=4四歩図≫ では、▲7九金(図)と打つことになる。
この金を打つことで、後手の狙い筋である「6八桂成、同歩、7七香成」や「8八桂成、同玉、7六歩」が無効になる。
ここで後手には選択肢がある。
【X】5七馬、【Y】5六馬、【Z】3四馬、である。
(【W】6四銀右 は9五歩で先手良し)
[変化【X】5七馬 の研究]
変化5七馬図00
“5七馬” は、「7四香に、単に7七歩」の場合を、前譜(変化4四歩図12)で解説している。それは形勢互角の結論だった。
この場合は、「7四香に、7五歩、同香、7七歩」として、「7九金、5七馬」である。
「7五歩、同香」を入れることで先手は “歩切れ” になってしまったが、この変化の場合はこれは(微妙なところだが)少し得になっているようだ。
【X】5七馬(図)の第一の狙いは7九馬、同飛、8八金。
ここは7六歩と桂を取る。以下、6七歩成に、6八金打と頑張って、同と、同金と進める(次の図)
変化5七馬図01
ここで6六馬なら7七金と上がり、以下5五馬には7六歩で先手良し。6五馬なら6六金打と厚く受けて、先手良し(こうした変化のときに後手が7五香の形になっているのが先手にとって少し得になる)
5六馬にはどうするか。ここは6一竜とするのが良い(次の図)
変化5七馬図02(6一竜図)
以下 [1]2九馬(他に[2]7六香や[3]6六金も有力で後述する)に、4三歩(次の図)
変化5七馬図03
4三歩を〔a〕同銀なら、(4一竜ではなく)3五桂と打って、3四銀(3二銀なら4三金)、8四馬、同銀、5二竜、4二金、4三金で、後手玉を寄せることができる。
また、〔b〕1四歩 も、8四馬、同銀、4二金、6二金、3二金、同玉、4二金、2二玉、2五桂で、寄り。
ここでは、 〔c〕7六香 と 〔d〕6二金 が後手の有力候補手になる。
〔c〕7六香 は、同玉なら1九馬で後手有利になる。
4二金、7四馬と進む(次の図)
変化5七馬図04
7四馬(図)は、先手の3二金、同玉、5二竜の攻めを受けた手。
この手に代えて6二金もあったところ。それには8四馬(同銀なら3一金打)として、6一金、7三馬、3一桂、6七銀で、先手良しになる。
7四馬には、6六桂と打ってその馬を追う。以下7五桂があるが7六玉とし、6五歩、3二金、同玉、6三銀(次の図)
変化5七馬図05
6三銀(図)と打って、再び5二竜の狙いが復活した。
5五金(先手玉への詰めろ)なら、5七金と受けて大丈夫。
6二金には、同竜、同銀右、7四銀成(次の図)
変化5七馬図06
これで先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値は +1211)
以下6六歩、7五成銀、7四金打、同成銀、同金、3五桂が予想される。
変化5七馬図07
戻って、4三歩に、〔d〕6二金(図)の変化。
5一竜、6五馬、4二歩成、7六香、3一金、7五桂(次の図)
変化5七馬図08
9七玉、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7八香成、3二と(次の図)
変化5七馬図09
3二同馬、同金、同玉、6五角、5四銀打、8四馬(次の図)
変化5七馬図10
これで、先手勝ち。
後手玉は5四角、同銀、4二金以下の“詰めろ”になっている。したがってここでは6五銀とすることになるが、7五馬で、これも “詰めろ” になっている。
変化5七馬図02(6一竜図 再掲)
もぅ一度この図まで戻って、ここで[2]7六香(図)の変化を考える。これが手強い手だ。
また、[3]6六金 もあるが、以下6七金打、7六金、同金、同香で、結局同じ変化に合流する。
変化5七馬図11
[2]7六香(図)、7七歩、同香成、同金、7六歩、同金、7五歩と進む。
5六に馬を置いたまま攻めてくる。先手の8九飛が狙われる駒になっているのがしんどい。
ここで、先手5八香(次の図)
変化5七馬図12
5八香(図)では、代えて7七金もあったところだが7六金がうるさい(形勢互角)
5八香に、7八馬、同玉、7六歩。先手は7七歩と受ける(次の図)
変化5七馬図13
ここで 〈m〉6五歩 と 〈n〉6四銀右 が後手有力手。
〈m〉6五歩、7六歩、6六銀、6八歩、7七歩、8七玉、9六歩、9八歩(次の図)
変化5七馬図14
こう進むと先手に勝ち筋があるような気もする(「水匠2/やねうら王」評価値は +376 )
変化5七馬図15
しかし、〈n〉6四銀右(図)がある。
以下7六歩に、7五歩。同歩と取ると、7六金で先手負けになる。
6七玉、7六歩、5三香成(次の図)
変化5七馬図16
5三同銀、5七玉、7七歩成、6八歩(次の図)
変化5七馬図17
6八歩(図)で先手の飛車が簡単には捕まらないようにした。
形勢は互角。「水匠2/やねうら王」評価値は -202 。
正しく指せば先手が勝てるかもしれないが、それが難しい局面になっている。実戦的には後手が勝ちやすいだろう。
変化5七馬図00
【X】5七馬(図)の変化は、結論としては、「互角」。
[変化【Y】5六馬 の研究]
変化5六馬図00
【Y】5六馬(図)には「6一竜」とする(次の図)
変化5六馬図01
「6一竜」(図)。この手は後手6七歩成を防ぎつつ、6五馬の手も消している。
「6、7筋を制する」ことが今は最も重要である。
ここで後手は、〔1〕6四銀右 と 〔2〕2九馬 が有力手となる。
〔1〕6四銀右 とすれば、4七歩成の狙いが復活するし、6八歩とそれを防げば6五馬があって後手良しになる。
〔1〕6四銀右 に、先手に「一歩」があれば5四歩がピッタリの返し技になるのだが先手は歩切れである。
7六歩と桂を取るのは、4七歩成、同銀、同馬、7七金、8九馬、同金、7六香で、先手苦しい形勢。
だが、ここは先手に良い手がある。9五歩である(次の図)
変化5六馬図02
歩を補充して、9六玉(9七玉)のようなスペースを確保した(後手6五馬なら9七玉で先手良しだ)
当然後手は6七歩成。同銀、同馬、7八金打、4五馬(先手の5四歩に備えた馬の位置)
ここで4三歩が好手(この手に代えて4二歩は5四馬、4一歩成、6八桂成で後手ペース)である(次の図)
変化5六馬図03
4三同銀なら、(4一竜ではなく)4二歩と打って、5四馬、4一歩成、6八桂成、9六玉、7八成桂、3一とと攻め合うつもり。それで先手が攻め勝つ。
4三歩(図)に、後手は5四馬。以下4二金(次に3二金、同玉、5二竜がある)、3一銀、同金、同玉、4二銀、同銀、同歩成、同玉、6三銀(次の図)
変化5六馬図04
4三馬、8四馬、同歩、5四金、6五角、4三金、同銀、5二銀成、同銀、5一角(次の図)
変化5六馬図05
以下4三玉に、6四竜。先手良し(「水匠2/やねうら王」評価値 +692 )
変化5六馬図06
戻って、「6一竜」に、〔2〕2九馬(図)の変化。
ここで7六歩としたくなるが、それは同香、同玉、1九馬で、危険(形勢は互角)
やはりここでも、9五歩が良い。対して後手1九馬なら4三歩で先手良し。
後手6七桂で勝負する(次の図)
変化5六馬図07
ここは正しく指せば、先手が勝てるようだ。
ここで先手は2通りの「勝ち筋」がある。一つは「5四歩、4二銀、5二竜」と攻める手。
もう一つは、「7六歩」と桂を取る手。
「7六歩」以下を見ていこう。「7六歩」、7九桂成、同飛、7六香、7七歩、同香成、同銀、6二金(次の図)
変化5六馬図08
6二金(図)と打って6筋の攻めをねらってきた。
5一竜、7八歩、8九飛、6七歩成、7六銀、6六と、3五桂(次の図)
変化5六馬図09
3五桂(図)と打って、攻めの拠点をつくる。4三金や2六香を次の狙いとする。
以下、一例として、3九馬以下の変化を示しておく。3九馬、4三金、7六と、同玉、7五馬、6七玉、6六銀、5六玉、4三銀、同桂成、4五金、4七玉、6五馬(次の図)
変化5六馬図10
3七玉に、4三馬で、成桂を払うことに成功したが―――
4一竜、4二馬、4三香と進み―――(次の図)
変化5六馬図11
これで先手勝ち。
4一馬、同香成、3二玉が予想されるが、2四桂、同歩、3一金、2二玉、3二角で、後手玉を “必至” に追い込める。先手玉は詰まない。
変化5六馬図00(再掲)
結論。【Y】5六馬 は 6一竜以下先手良し。
≪途中図 7九金まで≫
【X】5七馬 → 互角
【Y】5六馬 → 先手良し
【Z】3四馬 = 実戦の指し手
後手の ≪ぬし≫ は、【Z】3四馬 を選んできた。
≪最終一番勝負 第84譜 指了図≫ 3四馬まで
△3四馬(図)と遠く引いて、次の6七歩成を次のねらいとする。
形勢は「互角」である。「水匠2/やねうら王」評価値は +153 。
第85譜につづく