≪最終一番勝負 第23譜 指始図≫ 8六歩まで
指し手 △5六と
[少年の不死者(ノスフェラトゥ)]
「エドガー、ガラスに写ってない!! ようし、それでいい。胸にクイを打ちこなれたくなかったら、つねに人間であるふりを忘れるな!」
「息をしているふり…、脈のあるふり…、鏡に写るふり、ドアに指をはさまれたらいたがるふり、それくらいできる、やってみせるよ」
(漫画『ポーの一族』萩尾望都作 より)
萩尾望都作の漫画『ポーの一族』は、1970年代に小学館の漫画雑誌『別冊少女コミック』に連載された。主人公のエドガー・ポーツネルは1740年生まれの「14歳」。―――永遠の14歳なのである。
14歳のときに彼は、「ポーの一族」の一員になった。すなわち「吸血鬼(ヴァンパイヤ)」=「不死者(ノスフェラトゥ)」となったのである。
「吸血鬼もの」の話としては、「少年のヴァンパイヤ」というのが新しい試みであったかもしれない。(少女のヴァンパイヤは19世紀の『吸血鬼カーミラ』がすでにある)
しかし、何十年、百年以上も生き続けていて、「14歳の少年」で時が止まったといっても、心は「14歳」のままでいられるのだろうか。(などと考えても架空の話なので無意味なのだが)
なおこの物語の設定では、この“ポーの一族”は、少なくとも1750年よりも千年前には存在していた。
小説としての「吸血鬼話」の始まりは、ジョン・ポリドリ著『吸血鬼』(1819年)になるようである。ただし詩としての形式では、ゲーテ『コリントの花嫁』(1797年)がもっと古い。
文学史上の“創作”としてはそうなるが、しかし、そもそも欧州では、「吸血鬼(ヴァンパイア)」や「不死者(ノスフェラトゥ)」の伝承自体はもっともっとずっと古くからあって―――2000年以上も前から存在していたという。
日本文化ではあまり強くない、「不死」を追求する文化が、欧州ではくっきりと存在していたようだ。
「不死者」としての「吸血鬼」の存在。
エジプトのミイラ。ミイラ自体が「不死」を求めるものだし、19世紀にエジプトの発掘が欧州人たちの手によって始まった時期に、ミイラの肉を食べると長生きするといううわさがあって、こっそり売られるということもあった。(つまり買い手があったということだ)
そして「錬金術師の作り出す賢者の石→不老不死」という発想。
「不死」というものに過剰にこだわる、欧州大陸の文化的特徴がみられる。
ところで、1970年頃の日本では、少女漫画雑誌の中の漫画作品のその半分は西洋を舞台にしたものであった。例を挙げると、『ベルサイユのばら』(池田理代子作)、『アラベスク』(山岸涼子作)、『ロリィの青春』(上原きみこ作)、『ガラスの城』(わたなべまさこ作)、『キャンディ・キャンディ』(水木杏子・いがらしゆみこ作)、『イブの息子たち』(青池保子作)、『ファラオの墓』(竹宮恵子作)など。 萩尾望都自身のもう一つの連載作品『トーマの心臓』も主人公はトーマという名のドイツ少年である。
1ドル=360円というような為替レートの問題もあり、簡単に海外へは旅行できない時代であったから、そうであればこそ、海外へのあこがれが日本人の特に女子の中に強くあったということだろう。
作家としては、西洋は現実とちがう“別世界”なので、西洋人を主人公にするほうが、のびのびと想像力を働かせることができたのかもしれない。
『ポーの一族』もリアルに考えれば、殺人が毎回出てくるような陰気な話(しかも主人公が人を殺すこともある)なのだけれど、“遠い世界”の話なのでその陰惨さが薄まっている。
21世紀になって萩尾望都は新たに『ポーの一族』の新作を発表した。その新作『春の夢』の物語の舞台は第二次世界大戦中のイギリス。続く『ユニコーン』は2016年のドイツ・ミュンヘンということなので、どうやらエドガー・ポーツネルは21世紀の今も生きているようだ。 あと約20年ほど時がたてば、エドガーは生誕300年になる。
<第23譜 後手5六とは最善の応手なのか(つづき)>
≪指始図≫8六歩まで
ここで「△5六と」 がコンピューターソフトが最善手と見ている手だが―――それはほんとうなのか、それ以外の手はどうなのか―――について調べているところだ。
〔J〕7五桂 → 先手良し
〔K〕6五桂 → 先手良し
〔L〕6六歩 → 先手良し
〔M〕5四銀 → 先手良し
〔N〕3二歩 → 先手良し
〔O〕3一歩 → 先手良し
前回の譜で、こういう結果が確認できた。 そして、いま、〔P〕7五銀 を調査中である。
7五銀、8七玉、6六銀左(これがおそらく最善)と進んで―――
6六銀図
ここでいろいろな候補手があるが、下のような結果になった。
[1]2六飛 → 後手良し
[2]9七玉 → 後手良し
[3]9八玉 → 後手良し
[4]7九香 → 後手良し
[5]4一角 → 後手良し
[6]5四歩 → 後手良し
ここまでが前譜(第22譜)での調査結果。
我々はこの結果から、「〔P〕7五銀以下は後手良し」と結論を出そうとしたが―――
もう一つ、調べるべき手があった。 その“7番目の手”とは?
後手7五銀図37
[7]3三歩成(図)が、その7番目の候補手である。
この手は、同銀に、3九香が狙いの手だが、3四歩で、先手の手が続かないと思っていて、我々はそこで読みを打ち切っていた。
しかし良く調べると(この調査結果をまとめるために最後の手として念のため調べてみた)、そう簡単ではないとわかってきたのである。この手で、結論がひっくり返りそうな予感さえある有力な手だった。
あらためて、しっかりと調べていこう。
「3三同銀、3九香」(次の図)
後手7五銀図38
「3九香」(図)と打ったところ。これが先手の期待の手。
対する後手の手は、ここで銀取りを受ける (A)3四歩、受けないで攻める (B)6七と、それから (C)3二歩 の3つの手が考えられる。
まず結論が簡単な (C)3二歩 から示しておく。
3二歩、3三香成、同歩に、4一銀と打つ手がある(次の図)
後手7五銀図39
3一香と受けるのは、3二歩、同香、5二銀成がある。
4二金と受けてどうなるかだが、それには5二飛がある(次の図)
後手7五銀図40
同歩なら3二金以下玉が詰むので、3一香と受けるが、5一飛成で、先手優勢である。
(C)3二歩 は、3三香成以下、先手良し。
後手7五銀図41
(B)6七と(図)でどうなるか。
6七と、3三香成、同桂(次の図)
後手7五銀図42
そこで、〔u〕3四歩、〔v〕8四馬、〔w〕6一竜などが候補手。
正解は〔w〕6一竜だが、他の手ではなぜだめなのかを知るために、まず〔u〕3四歩から見ておく。
〔u〕3四歩は、最初に目につく手と思うが、これでは先手勝てない。
なぜなら、8六銀以下、先手玉が詰まされてしまうからである(次の図)
後手7五銀図43
8六同玉(7六玉と逃げても7五金、同馬、同銀右以下詰み)に、7七銀不成という手が見えにくい手だが、これで先手玉は仕留められている。
8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、9八玉、9七香、8七玉、7五桂(次の図)
後手7五銀図44
以下、7六玉に、6六とまでの“詰み”。
後手が「香」を入手した瞬間に、先手玉には“詰み”が生じていたのである。
後手7五銀図45
それなら、〔v〕8四馬(図)でどうだ。
これは“詰めろ逃れの詰めろ”なのだ!
8四同歩は、3一角以下、後手玉が詰む。3一角、同玉、1一飛、2一合、3二歩(次の図)
後手7五銀図46
3二同玉に、4一銀の筋で詰みである(4二玉なら4一金から、2二玉なら2一飛成、同玉、3一金以下。金二枚が持駒にあるとこの詰みが成立する)
後手7五銀図47
しかし〔v〕8四馬に、4二銀(図)として今の詰みを消して、この図はどちらが勝っているか。
9四馬と馬取りを避ける手は、8四香、8五歩、7六と、9五銀、7七銀不成という展開になり、これは先手勝てない。
3四歩 ならどうか。以下、8四歩、3三歩成、同玉(同銀なら3四桂以下後手玉詰みだった)、3四歩、4四玉(次の図)
後手7五銀図48
後手玉に詰みはない。
どうやら〔v〕8四馬は、4二銀と応じられて先手勝てないようだ。
どうも先手に希望がないように思えるが、〔w〕6一竜が残されていた。
後手7五銀図49(6一竜図)
「6一竜」(図)という手があった。
6筋に竜の利きがあるので、前述の「8六銀、同玉、7七銀不成」以下の詰めろを受けている。
そして、この手は後手玉への“詰めろ”なのである!!!
詰み筋は、5二竜、同歩、3一角、同玉、6一飛、4一合、2一金以下。
その詰めろを受けて 「4二銀」 が本筋の手になるが、その前に、6一竜に対しても「8六銀、同玉、7七銀不成」とやってきたらどうなるかを見ておこう。
後手7五銀図50
「8六銀」(図)と、後手が攻める順を検討する。
8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、8七玉(代えて9八玉は8八銀成、同玉、7七と以下の詰みがあるので選べない)、7五桂、7六玉、6六と(次の図)
後手7五銀図51
ここで、同竜があるので、先手は詰みを逃れていたというわけだが、それでどちらが勝っているか。
6六同竜、同銀成、同玉。 形勢は――――?
先手の「6一竜」の存在を、後手は手順に攻めながら消したので、後手は自玉にかかっていた“詰めろ”を解除できた
――――と思いきや、(先手の持駒が増えたので)実はまだ後手玉には“詰めろ”がかかっている。新しい、別の詰み筋が生まれていたのだ!!!
3一角、同玉、1一飛、2一合、3二銀、同玉、4一銀以下。
6六同竜、同銀成、同玉以下の、手順の一例を示す。
6八飛、5六玉、6七飛成、4六玉(次の図)
後手7五銀図52
後手は攻め駒不足で、形勢は「先手良し」。 先ほど述べた“詰めろ”の他に、先手からは次に3四歩の手も有効手である。
4五香、3五玉、3四歩、2六玉、6六竜、3六銀、4二金、3二歩(次の図)
後手7五銀図53
先手勝勢である。
「8六銀」 以下の攻めは、先手良しとわかった。
後手7五銀図54
というわけで、「6一竜」に、後手はその詰めろを受けて 「4二銀」(図)だが、先手は3四歩(図)
この3四歩(図)がまた“詰めろ”なのである。今度は「6一竜」の存在があるので、3三歩成、同玉のときに、この竜が働いてくるのだ。
たとえばこの図から後手が “7七と”、9八玉、7六桂と攻めてきたとする。それには、3三歩成(次の図)
後手7五銀図55(3三歩成図)
同玉 と 同銀 がある。
まず 同銀 以下の詰みを見ていこう。同銀に、3四桂と打つ。3四同銀に、そこで5二竜と竜を切る。
5二同歩、1一角(次の図)
後手7五銀図56
1一同玉に、3一飛以下の“詰み”となる。
「3三歩成図」まで戻り、そこで 同玉 には、3四歩と打つ(次の図)
後手7五銀図57
3二玉と引くのは、3三銀、同銀、同歩成、同玉、4五桂から詰む。
2四玉は、2五銀、同玉、2六金以下。
3四同玉は、5六角、4五桂、4六桂以下の詰み。
4四玉には、4五銀と捨てて、同玉に、6五竜(次の図)
後手7五銀図58
5五銀合は5六角、4六玉、4七飛以下、5五桂合には3六角、同玉、3七飛以下の“詰み”
4六玉には―――(次の図)
後手7五銀図59
4八飛(図)と打って“詰み”となる。
後手7五銀図60
というわけで、先手の「3四歩」に、後手は受けなければいけないので、この図は “3一歩”(図)と受けた。
以下3三歩成、同銀に、3四歩(次の図)
後手7五銀図61
この3四歩(図)ももちろん“詰めろ”である。(3三歩成、同玉、4五桂以下)
よって後手は3四同銀だが、先手は4一飛(次の図)
後手7五銀図62
これで先手勝ち。次に1一角、3二玉、5二竜以下の“詰み”があるし、それを2一桂と受けても、4二銀で、後手玉は“必至”となる。
後手7五銀図49(6一竜図、再掲)
後手が (B)6七と を選び、「3三香成、同桂、6一竜」と進めたこの図は、どうやら「先手良し」になっているようだ。
(注: 4二銀、3四歩に、“6四歩” という手もあり、これは“詰めろ逃れの詰めろ”になっているが、3三歩成、同玉、1一角、2二桂、3五銀で先手勝ち。2二桂と受けさせたとき先手玉への詰めろは消えている)
後手7五銀図63
「3九香」に、(A)3四歩(図)と受けて、どうか。
ここで4一角で勝てればよいが、4二金、5一竜、4一金、同竜に、8六銀、同玉、6八角から先手玉が詰まされてしまう。
しかし、「4一飛」がある。(次の図)
後手7五銀図64
「4一飛」(図)と打ちこんで、次に3一角または3一金の狙いがある。
それを防いで後手は「3一桂」が最善手(代えて4二銀右は5三歩、4二銀左は3三歩で先手良しになる)
そこで先手「6一角」が、攻めの継続手(次の図)
後手7五銀図65(6一角図)
「6一角」に、後手はどうするか。放置すると、5二角成で先手良しになる。
ここは〔ア〕4二銀右と、〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金がある。
〔ア〕4二銀右が本筋とみられる手。3一に利かせて、5二角成を、同歩と取れるようにした。
先手5三歩が見えるが、この場合、6七と、5二歩成、7七と、9七玉、7六銀は、後手勝勢だ。
他に手がないと先手困るところだが、ここでは「3四香」がある(次の図)
後手7五銀図66
3四同銀なら、5二角成、同歩、4二飛成で、先手成功。
後手は「3二歩」と受ける。
「3三香成、同玉(これ以外の手は5二角成で先手良し)」。 そこで先手は「3七桂」(次の図)
後手7五銀図67
「3七桂」(図)が好手である。
6七となら、5二角成が有効で、同歩なら、4二飛成、同玉、4一金、3三玉、4二銀以下、後手玉詰みだ。(6七とは先手玉への詰めろになっていない)
それなら、後手はここで何を指すか。
<1>2二玉、<2>4四歩、<3>1四歩、<4>2四歩をこの順に見ていく。
<1>2二玉には、3三歩(次の図)
後手7五銀図68
<1>2二玉に5二角成、同歩、4二飛成だと、6五角と打たれ、8八玉に7七銀成、同玉、7六銀以下、先手玉が詰まされて負けになる。
3三歩(図)が正解手だ。これは詰めろではないが、次に5二角成、同歩、3二歩成、同玉、3三歩となれば、詰みだ。
これよりも早い攻めが後手になく、この手で、先手優勢。
後手7五銀図69
<2>4四歩には、3四歩(図)
これを同玉は、4二飛成がある。
2二玉は、5二角成、同歩に、3三金と打って“詰み”
よって4三玉とするが……(次の図)
後手7五銀図70
6五銀(図)と打つ。この手は、5三金からの“詰めろ”になっている(同玉なら7一馬、6二歩、5二角成以下)
それを5三香と打って受けたつもりでも……(次の図)
後手7五銀図71
5二角成で後手玉は寄っていた。5二同歩は5一竜である(角をわたしても6五銀が打ってあるので大丈夫)
5二同玉には、6二金(図)と打って――――後手玉は“詰み”である。
後手7五銀図72
<3>1四歩(図)。 玉を広くして受けただけの手なので、先手が正しく指せば勝てる図になっているはず。
勝ち方はいくつかあるが、ここでは5三歩を紹介する(次の図)
後手7五銀図73
5三歩を同銀は3一飛成があるし、同金や6二金は、3四歩、2四玉、4二飛成(後手玉の詰めろになっている)で、先手勝ち。
5三歩を手抜きして8六銀以下の攻め合いをめざすとどうなるか。以下、8六同玉に、7五銀、8七玉、8五香、8六歩(次の図)
後手7五銀図74
8六歩、同香(代えて同銀は7六玉と逃げられる)、9八玉、7六銀、9七金、7七銀不成、8七歩、6二金
後手7五銀図75
ここで手を戻した。先手に歩を使わせたので、3四歩と叩く歩がない。
先手はどうするのが良いだろうか(次の図)
後手7五銀図76
3五銀(図)がわかりやすい勝ち方。
ここで8五桂は詰めろになっていないので、2五桂、2二玉、4二飛成で先手勝ち。
7六桂には、8六金、8八桂成、9七玉と応じて大丈夫。
6一金以下を示しておく。6一金、2五桂、2二玉、4二飛成、6六角、3三銀(次の図)
後手7五銀図77
6六角で先手玉に“詰めろ”がかかったが、3三銀が返し技。
以下、同桂、同桂成、同角、3四桂、2一玉、2二銀、同角、同桂成、同玉、3三角、2一玉、7七角成で、先手勝勢。
後手7五銀図78
<4>2四歩にも、5三歩(図)が有効。
後手は6二金とし、3四歩には2三玉と逃げてみる(次の図)
後手7五銀図79
ここで4二飛成なら、6一金と角を取る手が後手の勝負手(角を取った手が6五角からの先手玉への詰めろ)
6一同竜なら後手6五角を消しているが、6七角で形勢難解になる。
この場合、4二飛成ではない、“決め手”がある(次の図)
後手7五銀図80
3一竜(図)。 桂馬が“欲しい駒”だった。
3一同銀に、3五桂から後手玉が詰んでいる。
3五桂、3四玉、4五銀、3三玉、2三金、4二玉、4三角成、4一玉、4二歩、同銀、3二金まで。
後手7五銀図65(6一角図、再掲)
以上のことから、〔ア〕4二銀右については「先手良し」と結論が出た。
残る〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金をつぶせば、「6一角で先手良し」が確定する。
後手7五銀図81
「6一角」に〔イ〕4二銀左(図)。
対して3四香は、後手3二歩。これは後手良しになる。
先手はここで「3二歩」が良い。同玉なら、5二角成、同歩、3四香、3三歩、4二飛成以下、後手玉が詰む。
よって後手は「3三玉」。中原への脱出を計る。
先手は「4五金」(次の図)
後手7五銀図82
2二桂では3一歩成で後手勝ち目がないということで、「3二玉」
先手が金を4五に使ったので先ほどの5二角成~4二飛成が詰みにならない。
しかしそれでも「5二角成」。 「同歩」に、「3三歩」が決め手になる。
「同桂、3四香」(次の図)
後手7五銀図83
角を渡したが、先手玉に詰みはない。
そして後手玉は、3三香成、同玉、3一飛成以下の“詰めろ”である。
4四角が攻防の手だが、その手も先手玉への詰めろにはなっていないので、8四馬と金を取れば、後手玉は4二飛成、同銀、4一銀以下“詰み”となる。
先手勝ちである。
後手7五銀図84
〔ウ〕4二金(図)。 この手には「5一飛成」。
以下「1四歩」(代えて6七とでは4三角成で先手勝ちになる)、「5二角成」(ここで4三角成は4一歩で後手良し)、「4一桂」(次の図)
後手7五銀図85
「4一同竜(4一同馬では、同金、同竜、6七とで後手勝勢)、同金、同馬、7六銀」(次の図)
後手7五銀図86
7六同玉だと7七飛以下詰まされてしまう。 よって、「9八玉」が正着。
以下、4二銀右、3二金、1三玉、1五歩、6八飛、8九玉(次の図)
後手7五銀図87
6九飛成、7九桂、2四玉には、4二馬。
4二同銀に、2五銀、同玉、1七桂、1五玉、2五金、1六玉、2六金(次の図)
後手7五銀図88
先手勝ち。
後手7五銀図65(6一角図、再掲)
以上の調査から、「6一角」と打ったこの図は「先手良し」という結果が出た。
6六銀左図
[1]2六飛 → 後手良し
[2]9七玉 → 後手良し
[3]9八玉 → 後手良し
[4]7九香 → 後手良し
[5]4一角 → 後手良し
[6]5四歩 → 後手良し
[7]3三歩成→ 先手良し
よってこの「6六銀左図」は、[7]3三歩成 を先手が選べば「先手良し」という結論となった。
すなわち――――
≪指始図≫(8六歩図)(再掲)
〔J〕7五桂 → 先手良し
〔K〕6五桂 → 先手良し
〔L〕6六歩 → 先手良し
〔M〕5四銀 → 先手良し
〔N〕3二歩 → 先手良し
〔O〕3一歩 → 先手良し
〔P〕7五銀 → 先手良し
この「8六歩図」で、我々気にしていた〔P〕7五銀 を後手が選んで指してきても、「先手良し」になるとわかった。
(ソフト「激指14」のこの図の評価値は-375、最善手は5六と)
≪亜空間戦争最終一番勝負≫で、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫が指した手は、△5六と である。
≪最終一番勝負 指了図≫ 5六とまで
やはり、△5六と だった。
終盤探検隊(先手番)は、これを本線に、手を読んでいた。
そして、▲8七玉と指す予定だった。
第24譜につづく
指し手 △5六と
[少年の不死者(ノスフェラトゥ)]
「エドガー、ガラスに写ってない!! ようし、それでいい。胸にクイを打ちこなれたくなかったら、つねに人間であるふりを忘れるな!」
「息をしているふり…、脈のあるふり…、鏡に写るふり、ドアに指をはさまれたらいたがるふり、それくらいできる、やってみせるよ」
(漫画『ポーの一族』萩尾望都作 より)
萩尾望都作の漫画『ポーの一族』は、1970年代に小学館の漫画雑誌『別冊少女コミック』に連載された。主人公のエドガー・ポーツネルは1740年生まれの「14歳」。―――永遠の14歳なのである。
14歳のときに彼は、「ポーの一族」の一員になった。すなわち「吸血鬼(ヴァンパイヤ)」=「不死者(ノスフェラトゥ)」となったのである。
「吸血鬼もの」の話としては、「少年のヴァンパイヤ」というのが新しい試みであったかもしれない。(少女のヴァンパイヤは19世紀の『吸血鬼カーミラ』がすでにある)
しかし、何十年、百年以上も生き続けていて、「14歳の少年」で時が止まったといっても、心は「14歳」のままでいられるのだろうか。(などと考えても架空の話なので無意味なのだが)
なおこの物語の設定では、この“ポーの一族”は、少なくとも1750年よりも千年前には存在していた。
小説としての「吸血鬼話」の始まりは、ジョン・ポリドリ著『吸血鬼』(1819年)になるようである。ただし詩としての形式では、ゲーテ『コリントの花嫁』(1797年)がもっと古い。
文学史上の“創作”としてはそうなるが、しかし、そもそも欧州では、「吸血鬼(ヴァンパイア)」や「不死者(ノスフェラトゥ)」の伝承自体はもっともっとずっと古くからあって―――2000年以上も前から存在していたという。
日本文化ではあまり強くない、「不死」を追求する文化が、欧州ではくっきりと存在していたようだ。
「不死者」としての「吸血鬼」の存在。
エジプトのミイラ。ミイラ自体が「不死」を求めるものだし、19世紀にエジプトの発掘が欧州人たちの手によって始まった時期に、ミイラの肉を食べると長生きするといううわさがあって、こっそり売られるということもあった。(つまり買い手があったということだ)
そして「錬金術師の作り出す賢者の石→不老不死」という発想。
「不死」というものに過剰にこだわる、欧州大陸の文化的特徴がみられる。
ところで、1970年頃の日本では、少女漫画雑誌の中の漫画作品のその半分は西洋を舞台にしたものであった。例を挙げると、『ベルサイユのばら』(池田理代子作)、『アラベスク』(山岸涼子作)、『ロリィの青春』(上原きみこ作)、『ガラスの城』(わたなべまさこ作)、『キャンディ・キャンディ』(水木杏子・いがらしゆみこ作)、『イブの息子たち』(青池保子作)、『ファラオの墓』(竹宮恵子作)など。 萩尾望都自身のもう一つの連載作品『トーマの心臓』も主人公はトーマという名のドイツ少年である。
1ドル=360円というような為替レートの問題もあり、簡単に海外へは旅行できない時代であったから、そうであればこそ、海外へのあこがれが日本人の特に女子の中に強くあったということだろう。
作家としては、西洋は現実とちがう“別世界”なので、西洋人を主人公にするほうが、のびのびと想像力を働かせることができたのかもしれない。
『ポーの一族』もリアルに考えれば、殺人が毎回出てくるような陰気な話(しかも主人公が人を殺すこともある)なのだけれど、“遠い世界”の話なのでその陰惨さが薄まっている。
21世紀になって萩尾望都は新たに『ポーの一族』の新作を発表した。その新作『春の夢』の物語の舞台は第二次世界大戦中のイギリス。続く『ユニコーン』は2016年のドイツ・ミュンヘンということなので、どうやらエドガー・ポーツネルは21世紀の今も生きているようだ。 あと約20年ほど時がたてば、エドガーは生誕300年になる。
<第23譜 後手5六とは最善の応手なのか(つづき)>
≪指始図≫8六歩まで
ここで「△5六と」 がコンピューターソフトが最善手と見ている手だが―――それはほんとうなのか、それ以外の手はどうなのか―――について調べているところだ。
〔J〕7五桂 → 先手良し
〔K〕6五桂 → 先手良し
〔L〕6六歩 → 先手良し
〔M〕5四銀 → 先手良し
〔N〕3二歩 → 先手良し
〔O〕3一歩 → 先手良し
前回の譜で、こういう結果が確認できた。 そして、いま、〔P〕7五銀 を調査中である。
7五銀、8七玉、6六銀左(これがおそらく最善)と進んで―――
6六銀図
ここでいろいろな候補手があるが、下のような結果になった。
[1]2六飛 → 後手良し
[2]9七玉 → 後手良し
[3]9八玉 → 後手良し
[4]7九香 → 後手良し
[5]4一角 → 後手良し
[6]5四歩 → 後手良し
ここまでが前譜(第22譜)での調査結果。
我々はこの結果から、「〔P〕7五銀以下は後手良し」と結論を出そうとしたが―――
もう一つ、調べるべき手があった。 その“7番目の手”とは?
後手7五銀図37
[7]3三歩成(図)が、その7番目の候補手である。
この手は、同銀に、3九香が狙いの手だが、3四歩で、先手の手が続かないと思っていて、我々はそこで読みを打ち切っていた。
しかし良く調べると(この調査結果をまとめるために最後の手として念のため調べてみた)、そう簡単ではないとわかってきたのである。この手で、結論がひっくり返りそうな予感さえある有力な手だった。
あらためて、しっかりと調べていこう。
「3三同銀、3九香」(次の図)
後手7五銀図38
「3九香」(図)と打ったところ。これが先手の期待の手。
対する後手の手は、ここで銀取りを受ける (A)3四歩、受けないで攻める (B)6七と、それから (C)3二歩 の3つの手が考えられる。
まず結論が簡単な (C)3二歩 から示しておく。
3二歩、3三香成、同歩に、4一銀と打つ手がある(次の図)
後手7五銀図39
3一香と受けるのは、3二歩、同香、5二銀成がある。
4二金と受けてどうなるかだが、それには5二飛がある(次の図)
後手7五銀図40
同歩なら3二金以下玉が詰むので、3一香と受けるが、5一飛成で、先手優勢である。
(C)3二歩 は、3三香成以下、先手良し。
後手7五銀図41
(B)6七と(図)でどうなるか。
6七と、3三香成、同桂(次の図)
後手7五銀図42
そこで、〔u〕3四歩、〔v〕8四馬、〔w〕6一竜などが候補手。
正解は〔w〕6一竜だが、他の手ではなぜだめなのかを知るために、まず〔u〕3四歩から見ておく。
〔u〕3四歩は、最初に目につく手と思うが、これでは先手勝てない。
なぜなら、8六銀以下、先手玉が詰まされてしまうからである(次の図)
後手7五銀図43
8六同玉(7六玉と逃げても7五金、同馬、同銀右以下詰み)に、7七銀不成という手が見えにくい手だが、これで先手玉は仕留められている。
8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、9八玉、9七香、8七玉、7五桂(次の図)
後手7五銀図44
以下、7六玉に、6六とまでの“詰み”。
後手が「香」を入手した瞬間に、先手玉には“詰み”が生じていたのである。
後手7五銀図45
それなら、〔v〕8四馬(図)でどうだ。
これは“詰めろ逃れの詰めろ”なのだ!
8四同歩は、3一角以下、後手玉が詰む。3一角、同玉、1一飛、2一合、3二歩(次の図)
後手7五銀図46
3二同玉に、4一銀の筋で詰みである(4二玉なら4一金から、2二玉なら2一飛成、同玉、3一金以下。金二枚が持駒にあるとこの詰みが成立する)
後手7五銀図47
しかし〔v〕8四馬に、4二銀(図)として今の詰みを消して、この図はどちらが勝っているか。
9四馬と馬取りを避ける手は、8四香、8五歩、7六と、9五銀、7七銀不成という展開になり、これは先手勝てない。
3四歩 ならどうか。以下、8四歩、3三歩成、同玉(同銀なら3四桂以下後手玉詰みだった)、3四歩、4四玉(次の図)
後手7五銀図48
後手玉に詰みはない。
どうやら〔v〕8四馬は、4二銀と応じられて先手勝てないようだ。
どうも先手に希望がないように思えるが、〔w〕6一竜が残されていた。
後手7五銀図49(6一竜図)
「6一竜」(図)という手があった。
6筋に竜の利きがあるので、前述の「8六銀、同玉、7七銀不成」以下の詰めろを受けている。
そして、この手は後手玉への“詰めろ”なのである!!!
詰み筋は、5二竜、同歩、3一角、同玉、6一飛、4一合、2一金以下。
その詰めろを受けて 「4二銀」 が本筋の手になるが、その前に、6一竜に対しても「8六銀、同玉、7七銀不成」とやってきたらどうなるかを見ておこう。
後手7五銀図50
「8六銀」(図)と、後手が攻める順を検討する。
8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、8七玉(代えて9八玉は8八銀成、同玉、7七と以下の詰みがあるので選べない)、7五桂、7六玉、6六と(次の図)
後手7五銀図51
ここで、同竜があるので、先手は詰みを逃れていたというわけだが、それでどちらが勝っているか。
6六同竜、同銀成、同玉。 形勢は――――?
先手の「6一竜」の存在を、後手は手順に攻めながら消したので、後手は自玉にかかっていた“詰めろ”を解除できた
――――と思いきや、(先手の持駒が増えたので)実はまだ後手玉には“詰めろ”がかかっている。新しい、別の詰み筋が生まれていたのだ!!!
3一角、同玉、1一飛、2一合、3二銀、同玉、4一銀以下。
6六同竜、同銀成、同玉以下の、手順の一例を示す。
6八飛、5六玉、6七飛成、4六玉(次の図)
後手7五銀図52
後手は攻め駒不足で、形勢は「先手良し」。 先ほど述べた“詰めろ”の他に、先手からは次に3四歩の手も有効手である。
4五香、3五玉、3四歩、2六玉、6六竜、3六銀、4二金、3二歩(次の図)
後手7五銀図53
先手勝勢である。
「8六銀」 以下の攻めは、先手良しとわかった。
後手7五銀図54
というわけで、「6一竜」に、後手はその詰めろを受けて 「4二銀」(図)だが、先手は3四歩(図)
この3四歩(図)がまた“詰めろ”なのである。今度は「6一竜」の存在があるので、3三歩成、同玉のときに、この竜が働いてくるのだ。
たとえばこの図から後手が “7七と”、9八玉、7六桂と攻めてきたとする。それには、3三歩成(次の図)
後手7五銀図55(3三歩成図)
同玉 と 同銀 がある。
まず 同銀 以下の詰みを見ていこう。同銀に、3四桂と打つ。3四同銀に、そこで5二竜と竜を切る。
5二同歩、1一角(次の図)
後手7五銀図56
1一同玉に、3一飛以下の“詰み”となる。
「3三歩成図」まで戻り、そこで 同玉 には、3四歩と打つ(次の図)
後手7五銀図57
3二玉と引くのは、3三銀、同銀、同歩成、同玉、4五桂から詰む。
2四玉は、2五銀、同玉、2六金以下。
3四同玉は、5六角、4五桂、4六桂以下の詰み。
4四玉には、4五銀と捨てて、同玉に、6五竜(次の図)
後手7五銀図58
5五銀合は5六角、4六玉、4七飛以下、5五桂合には3六角、同玉、3七飛以下の“詰み”
4六玉には―――(次の図)
後手7五銀図59
4八飛(図)と打って“詰み”となる。
後手7五銀図60
というわけで、先手の「3四歩」に、後手は受けなければいけないので、この図は “3一歩”(図)と受けた。
以下3三歩成、同銀に、3四歩(次の図)
後手7五銀図61
この3四歩(図)ももちろん“詰めろ”である。(3三歩成、同玉、4五桂以下)
よって後手は3四同銀だが、先手は4一飛(次の図)
後手7五銀図62
これで先手勝ち。次に1一角、3二玉、5二竜以下の“詰み”があるし、それを2一桂と受けても、4二銀で、後手玉は“必至”となる。
後手7五銀図49(6一竜図、再掲)
後手が (B)6七と を選び、「3三香成、同桂、6一竜」と進めたこの図は、どうやら「先手良し」になっているようだ。
(注: 4二銀、3四歩に、“6四歩” という手もあり、これは“詰めろ逃れの詰めろ”になっているが、3三歩成、同玉、1一角、2二桂、3五銀で先手勝ち。2二桂と受けさせたとき先手玉への詰めろは消えている)
後手7五銀図63
「3九香」に、(A)3四歩(図)と受けて、どうか。
ここで4一角で勝てればよいが、4二金、5一竜、4一金、同竜に、8六銀、同玉、6八角から先手玉が詰まされてしまう。
しかし、「4一飛」がある。(次の図)
後手7五銀図64
「4一飛」(図)と打ちこんで、次に3一角または3一金の狙いがある。
それを防いで後手は「3一桂」が最善手(代えて4二銀右は5三歩、4二銀左は3三歩で先手良しになる)
そこで先手「6一角」が、攻めの継続手(次の図)
後手7五銀図65(6一角図)
「6一角」に、後手はどうするか。放置すると、5二角成で先手良しになる。
ここは〔ア〕4二銀右と、〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金がある。
〔ア〕4二銀右が本筋とみられる手。3一に利かせて、5二角成を、同歩と取れるようにした。
先手5三歩が見えるが、この場合、6七と、5二歩成、7七と、9七玉、7六銀は、後手勝勢だ。
他に手がないと先手困るところだが、ここでは「3四香」がある(次の図)
後手7五銀図66
3四同銀なら、5二角成、同歩、4二飛成で、先手成功。
後手は「3二歩」と受ける。
「3三香成、同玉(これ以外の手は5二角成で先手良し)」。 そこで先手は「3七桂」(次の図)
後手7五銀図67
「3七桂」(図)が好手である。
6七となら、5二角成が有効で、同歩なら、4二飛成、同玉、4一金、3三玉、4二銀以下、後手玉詰みだ。(6七とは先手玉への詰めろになっていない)
それなら、後手はここで何を指すか。
<1>2二玉、<2>4四歩、<3>1四歩、<4>2四歩をこの順に見ていく。
<1>2二玉には、3三歩(次の図)
後手7五銀図68
<1>2二玉に5二角成、同歩、4二飛成だと、6五角と打たれ、8八玉に7七銀成、同玉、7六銀以下、先手玉が詰まされて負けになる。
3三歩(図)が正解手だ。これは詰めろではないが、次に5二角成、同歩、3二歩成、同玉、3三歩となれば、詰みだ。
これよりも早い攻めが後手になく、この手で、先手優勢。
後手7五銀図69
<2>4四歩には、3四歩(図)
これを同玉は、4二飛成がある。
2二玉は、5二角成、同歩に、3三金と打って“詰み”
よって4三玉とするが……(次の図)
後手7五銀図70
6五銀(図)と打つ。この手は、5三金からの“詰めろ”になっている(同玉なら7一馬、6二歩、5二角成以下)
それを5三香と打って受けたつもりでも……(次の図)
後手7五銀図71
5二角成で後手玉は寄っていた。5二同歩は5一竜である(角をわたしても6五銀が打ってあるので大丈夫)
5二同玉には、6二金(図)と打って――――後手玉は“詰み”である。
後手7五銀図72
<3>1四歩(図)。 玉を広くして受けただけの手なので、先手が正しく指せば勝てる図になっているはず。
勝ち方はいくつかあるが、ここでは5三歩を紹介する(次の図)
後手7五銀図73
5三歩を同銀は3一飛成があるし、同金や6二金は、3四歩、2四玉、4二飛成(後手玉の詰めろになっている)で、先手勝ち。
5三歩を手抜きして8六銀以下の攻め合いをめざすとどうなるか。以下、8六同玉に、7五銀、8七玉、8五香、8六歩(次の図)
後手7五銀図74
8六歩、同香(代えて同銀は7六玉と逃げられる)、9八玉、7六銀、9七金、7七銀不成、8七歩、6二金
後手7五銀図75
ここで手を戻した。先手に歩を使わせたので、3四歩と叩く歩がない。
先手はどうするのが良いだろうか(次の図)
後手7五銀図76
3五銀(図)がわかりやすい勝ち方。
ここで8五桂は詰めろになっていないので、2五桂、2二玉、4二飛成で先手勝ち。
7六桂には、8六金、8八桂成、9七玉と応じて大丈夫。
6一金以下を示しておく。6一金、2五桂、2二玉、4二飛成、6六角、3三銀(次の図)
後手7五銀図77
6六角で先手玉に“詰めろ”がかかったが、3三銀が返し技。
以下、同桂、同桂成、同角、3四桂、2一玉、2二銀、同角、同桂成、同玉、3三角、2一玉、7七角成で、先手勝勢。
後手7五銀図78
<4>2四歩にも、5三歩(図)が有効。
後手は6二金とし、3四歩には2三玉と逃げてみる(次の図)
後手7五銀図79
ここで4二飛成なら、6一金と角を取る手が後手の勝負手(角を取った手が6五角からの先手玉への詰めろ)
6一同竜なら後手6五角を消しているが、6七角で形勢難解になる。
この場合、4二飛成ではない、“決め手”がある(次の図)
後手7五銀図80
3一竜(図)。 桂馬が“欲しい駒”だった。
3一同銀に、3五桂から後手玉が詰んでいる。
3五桂、3四玉、4五銀、3三玉、2三金、4二玉、4三角成、4一玉、4二歩、同銀、3二金まで。
後手7五銀図65(6一角図、再掲)
以上のことから、〔ア〕4二銀右については「先手良し」と結論が出た。
残る〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金をつぶせば、「6一角で先手良し」が確定する。
後手7五銀図81
「6一角」に〔イ〕4二銀左(図)。
対して3四香は、後手3二歩。これは後手良しになる。
先手はここで「3二歩」が良い。同玉なら、5二角成、同歩、3四香、3三歩、4二飛成以下、後手玉が詰む。
よって後手は「3三玉」。中原への脱出を計る。
先手は「4五金」(次の図)
後手7五銀図82
2二桂では3一歩成で後手勝ち目がないということで、「3二玉」
先手が金を4五に使ったので先ほどの5二角成~4二飛成が詰みにならない。
しかしそれでも「5二角成」。 「同歩」に、「3三歩」が決め手になる。
「同桂、3四香」(次の図)
後手7五銀図83
角を渡したが、先手玉に詰みはない。
そして後手玉は、3三香成、同玉、3一飛成以下の“詰めろ”である。
4四角が攻防の手だが、その手も先手玉への詰めろにはなっていないので、8四馬と金を取れば、後手玉は4二飛成、同銀、4一銀以下“詰み”となる。
先手勝ちである。
後手7五銀図84
〔ウ〕4二金(図)。 この手には「5一飛成」。
以下「1四歩」(代えて6七とでは4三角成で先手勝ちになる)、「5二角成」(ここで4三角成は4一歩で後手良し)、「4一桂」(次の図)
後手7五銀図85
「4一同竜(4一同馬では、同金、同竜、6七とで後手勝勢)、同金、同馬、7六銀」(次の図)
後手7五銀図86
7六同玉だと7七飛以下詰まされてしまう。 よって、「9八玉」が正着。
以下、4二銀右、3二金、1三玉、1五歩、6八飛、8九玉(次の図)
後手7五銀図87
6九飛成、7九桂、2四玉には、4二馬。
4二同銀に、2五銀、同玉、1七桂、1五玉、2五金、1六玉、2六金(次の図)
後手7五銀図88
先手勝ち。
後手7五銀図65(6一角図、再掲)
以上の調査から、「6一角」と打ったこの図は「先手良し」という結果が出た。
6六銀左図
[1]2六飛 → 後手良し
[2]9七玉 → 後手良し
[3]9八玉 → 後手良し
[4]7九香 → 後手良し
[5]4一角 → 後手良し
[6]5四歩 → 後手良し
[7]3三歩成→ 先手良し
よってこの「6六銀左図」は、[7]3三歩成 を先手が選べば「先手良し」という結論となった。
すなわち――――
≪指始図≫(8六歩図)(再掲)
〔J〕7五桂 → 先手良し
〔K〕6五桂 → 先手良し
〔L〕6六歩 → 先手良し
〔M〕5四銀 → 先手良し
〔N〕3二歩 → 先手良し
〔O〕3一歩 → 先手良し
〔P〕7五銀 → 先手良し
この「8六歩図」で、我々気にしていた〔P〕7五銀 を後手が選んで指してきても、「先手良し」になるとわかった。
(ソフト「激指14」のこの図の評価値は-375、最善手は5六と)
≪亜空間戦争最終一番勝負≫で、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫が指した手は、△5六と である。
≪最終一番勝負 指了図≫ 5六とまで
やはり、△5六と だった。
終盤探検隊(先手番)は、これを本線に、手を読んでいた。
そして、▲8七玉と指す予定だった。
第24譜につづく