はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part124 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第23譜

2019年06月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第23譜 指始図≫ 8六歩まで

 指し手  △5六と


    [少年の不死者(ノスフェラトゥ)]
「エドガー、ガラスに写ってない!!  ようし、それでいい。胸にクイを打ちこなれたくなかったら、つねに人間であるふりを忘れるな!」
「息をしているふり…、脈のあるふり…、鏡に写るふり、ドアに指をはさまれたらいたがるふり、それくらいできる、やってみせるよ」
      (漫画『ポーの一族』萩尾望都作 より)

 萩尾望都作の漫画『ポーの一族』は、1970年代に小学館の漫画雑誌『別冊少女コミック』に連載された。主人公のエドガー・ポーツネルは1740年生まれの「14歳」。―――永遠の14歳なのである。
 14歳のときに彼は、「ポーの一族」の一員になった。すなわち「吸血鬼(ヴァンパイヤ)」=「不死者(ノスフェラトゥ)」となったのである。
 「吸血鬼もの」の話としては、「少年のヴァンパイヤ」というのが新しい試みであったかもしれない。(少女のヴァンパイヤは19世紀の『吸血鬼カーミラ』がすでにある)
 しかし、何十年、百年以上も生き続けていて、「14歳の少年」で時が止まったといっても、心は「14歳」のままでいられるのだろうか。(などと考えても架空の話なので無意味なのだが)
 なおこの物語の設定では、この“ポーの一族”は、少なくとも1750年よりも千年前には存在していた。

 小説としての「吸血鬼話」の始まりは、ジョン・ポリドリ著『吸血鬼』(1819年)になるようである。ただし詩としての形式では、ゲーテ『コリントの花嫁』(1797年)がもっと古い。
 文学史上の“創作”としてはそうなるが、しかし、そもそも欧州では、「吸血鬼(ヴァンパイア)」や「不死者(ノスフェラトゥ)」の伝承自体はもっともっとずっと古くからあって―――2000年以上も前から存在していたという。
 日本文化ではあまり強くない、「不死」を追求する文化が、欧州ではくっきりと存在していたようだ。
 「不死者」としての「吸血鬼」の存在。
 エジプトのミイラ。ミイラ自体が「不死」を求めるものだし、19世紀にエジプトの発掘が欧州人たちの手によって始まった時期に、ミイラの肉を食べると長生きするといううわさがあって、こっそり売られるということもあった。(つまり買い手があったということだ)
 そして「錬金術師の作り出す賢者の石→不老不死」という発想。
 「不死」というものに過剰にこだわる、欧州大陸の文化的特徴がみられる。

 ところで、1970年頃の日本では、少女漫画雑誌の中の漫画作品のその半分は西洋を舞台にしたものであった。例を挙げると、『ベルサイユのばら』(池田理代子作)、『アラベスク』(山岸涼子作)、『ロリィの青春』(上原きみこ作)、『ガラスの城』(わたなべまさこ作)、『キャンディ・キャンディ』(水木杏子・いがらしゆみこ作)、『イブの息子たち』(青池保子作)、『ファラオの墓』(竹宮恵子作)など。 萩尾望都自身のもう一つの連載作品『トーマの心臓』も主人公はトーマという名のドイツ少年である。
 1ドル=360円というような為替レートの問題もあり、簡単に海外へは旅行できない時代であったから、そうであればこそ、海外へのあこがれが日本人の特に女子の中に強くあったということだろう。
 作家としては、西洋は現実とちがう“別世界”なので、西洋人を主人公にするほうが、のびのびと想像力を働かせることができたのかもしれない。
 『ポーの一族』もリアルに考えれば、殺人が毎回出てくるような陰気な話(しかも主人公が人を殺すこともある)なのだけれど、“遠い世界”の話なのでその陰惨さが薄まっている。

 21世紀になって萩尾望都は新たに『ポーの一族』の新作を発表した。その新作『春の夢』の物語の舞台は第二次世界大戦中のイギリス。続く『ユニコーン』は2016年のドイツ・ミュンヘンということなので、どうやらエドガー・ポーツネルは21世紀の今も生きているようだ。 あと約20年ほど時がたてば、エドガーは生誕300年になる。



<第23譜 後手5六とは最善の応手なのか(つづき)>

≪指始図≫8六歩まで
 ここで「△5六と」 がコンピューターソフトが最善手と見ている手だが―――それはほんとうなのか、それ以外の手はどうなのか―――について調べているところだ。
  〔J〕7五桂 → 先手良し
  〔K〕6五桂 → 先手良し
  〔L〕6六歩 → 先手良し
  〔M〕5四銀 → 先手良し
  〔N〕3二歩 → 先手良し
  〔O〕3一歩 → 先手良し
 前回の譜で、こういう結果が確認できた。 そして、いま、〔P〕7五銀 を調査中である。
 7五銀、8七玉、6六銀左(これがおそらく最善)と進んで―――

6六銀図
 ここでいろいろな候補手があるが、下のような結果になった。
   [1]2六飛 → 後手良し
   [2]9七玉 → 後手良し
   [3]9八玉 → 後手良し
   [4]7九香 → 後手良し
   [5]4一角 → 後手良し
   [6]5四歩 → 後手良し

 ここまでが前譜(第22譜)での調査結果。
 我々はこの結果から、〔P〕7五銀以下は後手良し」と結論を出そうとしたが―――
 もう一つ、調べるべき手があった。 その“7番目の手”とは?

後手7五銀図37
 [7]3三歩成(図)が、その7番目の候補手である。
 この手は、同銀に、3九香が狙いの手だが、3四歩で、先手の手が続かないと思っていて、我々はそこで読みを打ち切っていた。
 しかし良く調べると(この調査結果をまとめるために最後の手として念のため調べてみた)、そう簡単ではないとわかってきたのである。この手で、結論がひっくり返りそうな予感さえある有力な手だった。
 あらためて、しっかりと調べていこう。

 「3三同銀、3九香」(次の図)

後手7五銀図38
 「3九香」(図)と打ったところ。これが先手の期待の手。

 対する後手の手は、ここで銀取りを受ける (A)3四歩、受けないで攻める (B)6七と、それから (C)3二歩 の3つの手が考えられる。

 まず結論が簡単な (C)3二歩 から示しておく。
 3二歩、3三香成、同歩に、4一銀と打つ手がある(次の図)

後手7五銀図39
 3一香と受けるのは、3二歩、同香、5二銀成がある。
 4二金と受けてどうなるかだが、それには5二飛がある(次の図)

後手7五銀図40
 同歩なら3二金以下玉が詰むので、3一香と受けるが、5一飛成で、先手優勢である。

 (C)3二歩 は、3三香成以下、先手良し。


後手7五銀図41
 (B)6七と(図)でどうなるか。
 6七と、3三香成、同桂(次の図)

後手7五銀図42
 そこで、〔u〕3四歩、〔v〕8四馬、〔w〕6一竜などが候補手。
 正解は〔w〕6一竜だが、他の手ではなぜだめなのかを知るために、まず〔u〕3四歩から見ておく。

 〔u〕3四歩は、最初に目につく手と思うが、これでは先手勝てない。
 なぜなら、8六銀以下、先手玉が詰まされてしまうからである(次の図)

後手7五銀図43
 8六同玉(7六玉と逃げても7五金、同馬、同銀右以下詰み)に、7七銀不成という手が見えにくい手だが、これで先手玉は仕留められている。
 8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、9八玉、9七香、8七玉、7五桂(次の図)

後手7五銀図44
 以下、7六玉に、6六とまでの“詰み”。
 
 後手が「香」を入手した瞬間に、先手玉には“詰み”が生じていたのである。

後手7五銀図45
 それなら、〔v〕8四馬(図)でどうだ。
 これは“詰めろ逃れの詰めろ”なのだ!
 8四同歩は、3一角以下、後手玉が詰む。3一角、同玉、1一飛、2一合、3二歩(次の図)

後手7五銀図46
 3二同玉に、4一銀の筋で詰みである(4二玉なら4一金から、2二玉なら2一飛成、同玉、3一金以下。金二枚が持駒にあるとこの詰みが成立する)

後手7五銀図47
 しかし〔v〕8四馬に、4二銀(図)として今の詰みを消して、この図はどちらが勝っているか。
 9四馬と馬取りを避ける手は、8四香、8五歩、7六と、9五銀、7七銀不成という展開になり、これは先手勝てない。
 3四歩 ならどうか。以下、8四歩、3三歩成、同玉(同銀なら3四桂以下後手玉詰みだった)、3四歩、4四玉(次の図)

後手7五銀図48
 後手玉に詰みはない。
 どうやら〔v〕8四馬は、4二銀と応じられて先手勝てないようだ。

 どうも先手に希望がないように思えるが、〔w〕6一竜が残されていた。

後手7五銀図49(6一竜図)
 「6一竜」(図)という手があった。
 6筋に竜の利きがあるので、前述の「8六銀、同玉、7七銀不成」以下の詰めろを受けている。

 そして、この手は後手玉への“詰めろ”なのである!!!
 詰み筋は、5二竜、同歩、3一角、同玉、6一飛、4一合、2一金以下。

 その詰めろを受けて 「4二銀」 が本筋の手になるが、その前に、6一竜に対しても「8六銀、同玉、7七銀不成」とやってきたらどうなるかを見ておこう。

後手7五銀図50
 「8六銀」(図)と、後手が攻める順を検討する。
 8六同玉、7七銀不成、9七玉、8五桂、8七玉(代えて9八玉は8八銀成、同玉、7七と以下の詰みがあるので選べない)、7五桂、7六玉、6六と(次の図) 

後手7五銀図51
 ここで、同竜があるので、先手は詰みを逃れていたというわけだが、それでどちらが勝っているか。
 6六同竜、同銀成、同玉。 形勢は――――?
 先手の「6一竜」の存在を、後手は手順に攻めながら消したので、後手は自玉にかかっていた“詰めろ”を解除できた
 ――――と思いきや、(先手の持駒が増えたので)実はまだ後手玉には“詰めろ”がかかっている。新しい、別の詰み筋が生まれていたのだ!!!
 3一角、同玉、1一飛、2一合、3二銀、同玉、4一銀以下。

 6六同竜、同銀成、同玉以下の、手順の一例を示す。
 6八飛、5六玉、6七飛成、4六玉(次の図)

後手7五銀図52
 後手は攻め駒不足で、形勢は「先手良し」。 先ほど述べた“詰めろ”の他に、先手からは次に3四歩の手も有効手である。
 4五香、3五玉、3四歩、2六玉、6六竜、3六銀、4二金、3二歩(次の図)

後手7五銀図53
 先手勝勢である。

 「8六銀」 以下の攻めは、先手良しとわかった。

後手7五銀図54
 というわけで、「6一竜」に、後手はその詰めろを受けて 「4二銀」(図)だが、先手は3四歩(図)
 この3四歩(図)がまた“詰めろ”なのである。今度は「6一竜」の存在があるので、3三歩成、同玉のときに、この竜が働いてくるのだ。
 たとえばこの図から後手が “7七と”、9八玉、7六桂と攻めてきたとする。それには、3三歩成(次の図)

後手7五銀図55(3三歩成図)
 同玉同銀 がある。

 まず 同銀 以下の詰みを見ていこう。同銀に、3四桂と打つ。3四同銀に、そこで5二竜と竜を切る。
 5二同歩、1一角(次の図)

後手7五銀図56
 1一同玉に、3一飛以下の“詰み”となる。

 「3三歩成図」まで戻り、そこで 同玉 には、3四歩と打つ(次の図)

後手7五銀図57
 3二玉と引くのは、3三銀、同銀、同歩成、同玉、4五桂から詰む。
 2四玉は、2五銀、同玉、2六金以下。
 3四同玉は、5六角、4五桂、4六桂以下の詰み。
 4四玉には、4五銀と捨てて、同玉に、6五竜(次の図)

後手7五銀図58
 5五銀合は5六角、4六玉、4七飛以下、5五桂合には3六角、同玉、3七飛以下の“詰み”
 4六玉には―――(次の図)

後手7五銀図59
 4八飛(図)と打って“詰み”となる。

後手7五銀図60
 というわけで、先手の「3四歩」に、後手は受けなければいけないので、この図は “3一歩”(図)と受けた。
 以下3三歩成、同銀に、3四歩(次の図)

後手7五銀図61
 この3四歩(図)ももちろん“詰めろ”である。(3三歩成、同玉、4五桂以下)
 よって後手は3四同銀だが、先手は4一飛(次の図)

後手7五銀図62
 これで先手勝ち。次に1一角、3二玉、5二竜以下の“詰み”があるし、それを2一桂と受けても、4二銀で、後手玉は“必至”となる。


後手7五銀図49(6一竜図、再掲)
 後手が (B)6七と を選び、「3三香成、同桂、6一竜」と進めたこの図は、どうやら「先手良し」になっているようだ。
 (注: 4二銀、3四歩に、“6四歩” という手もあり、これは“詰めろ逃れの詰めろ”になっているが、3三歩成、同玉、1一角、2二桂、3五銀で先手勝ち。2二桂と受けさせたとき先手玉への詰めろは消えている)


後手7五銀図63
 「3九香」に、(A)3四歩(図)と受けて、どうか。
 ここで4一角で勝てればよいが、4二金、5一竜、4一金、同竜に、8六銀、同玉、6八角から先手玉が詰まされてしまう。
 しかし、「4一飛」がある。(次の図)

後手7五銀図64
 「4一飛」(図)と打ちこんで、次に3一角または3一金の狙いがある。
 それを防いで後手は「3一桂」が最善手(代えて4二銀右は5三歩、4二銀左は3三歩で先手良しになる)
 そこで先手「6一角」が、攻めの継続手(次の図)

後手7五銀図65(6一角図)
 「6一角」に、後手はどうするか。放置すると、5二角成で先手良しになる。
 ここは〔ア〕4二銀右と、〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金がある。

 〔ア〕4二銀右が本筋とみられる手。3一に利かせて、5二角成を、同歩と取れるようにした。
 先手5三歩が見えるが、この場合、6七と、5二歩成、7七と、9七玉、7六銀は、後手勝勢だ。
 他に手がないと先手困るところだが、ここでは「3四香」がある(次の図) 

後手7五銀図66
 3四同銀なら、5二角成、同歩、4二飛成で、先手成功。
 後手は「3二歩」と受ける。
 「3三香成、同玉(これ以外の手は5二角成で先手良し)」。 そこで先手は「3七桂」(次の図)

後手7五銀図67
 「3七桂」(図)が好手である。
 6七となら、5二角成が有効で、同歩なら、4二飛成、同玉、4一金、3三玉、4二銀以下、後手玉詰みだ。(6七とは先手玉への詰めろになっていない)
 それなら、後手はここで何を指すか。
 <1>2二玉、<2>4四歩、<3>1四歩、<4>2四歩をこの順に見ていく。

 <1>2二玉には、3三歩(次の図)

後手7五銀図68
 <1>2二玉に5二角成、同歩、4二飛成だと、6五角と打たれ、8八玉に7七銀成、同玉、7六銀以下、先手玉が詰まされて負けになる。
 3三歩(図)が正解手だ。これは詰めろではないが、次に5二角成、同歩、3二歩成、同玉、3三歩となれば、詰みだ。
 これよりも早い攻めが後手になく、この手で、先手優勢。

後手7五銀図69
 <2>4四歩には、3四歩(図)
 これを同玉は、4二飛成がある。
 2二玉は、5二角成、同歩に、3三金と打って“詰み”
 よって4三玉とするが……(次の図)

後手7五銀図70
 6五銀(図)と打つ。この手は、5三金からの“詰めろ”になっている(同玉なら7一馬、6二歩、5二角成以下)
 それを5三香と打って受けたつもりでも……(次の図)

後手7五銀図71
 5二角成で後手玉は寄っていた。5二同歩は5一竜である(角をわたしても6五銀が打ってあるので大丈夫)
 5二同玉には、6二金(図)と打って――――後手玉は“詰み”である。 

後手7五銀図72
 <3>1四歩(図)。 玉を広くして受けただけの手なので、先手が正しく指せば勝てる図になっているはず。
 勝ち方はいくつかあるが、ここでは5三歩を紹介する(次の図)

後手7五銀図73
 5三歩を同銀は3一飛成があるし、同金や6二金は、3四歩、2四玉、4二飛成(後手玉の詰めろになっている)で、先手勝ち。
 5三歩を手抜きして8六銀以下の攻め合いをめざすとどうなるか。以下、8六同玉に、7五銀、8七玉、8五香、8六歩(次の図)

後手7五銀図74
 8六歩、同香(代えて同銀は7六玉と逃げられる)、9八玉、7六銀、9七金、7七銀不成、8七歩、6二金

後手7五銀図75
 ここで手を戻した。先手に歩を使わせたので、3四歩と叩く歩がない。
 先手はどうするのが良いだろうか(次の図)

後手7五銀図76
 3五銀(図)がわかりやすい勝ち方。
 ここで8五桂は詰めろになっていないので、2五桂、2二玉、4二飛成で先手勝ち。
 7六桂には、8六金、8八桂成、9七玉と応じて大丈夫。

 6一金以下を示しておく。6一金、2五桂、2二玉、4二飛成、6六角、3三銀(次の図)

後手7五銀図77
 6六角で先手玉に“詰めろ”がかかったが、3三銀が返し技。
 以下、同桂、同桂成、同角、3四桂、2一玉、2二銀、同角、同桂成、同玉、3三角、2一玉、7七角成で、先手勝勢。

後手7五銀図78
 <4>2四歩にも、5三歩(図)が有効。
 後手は6二金とし、3四歩には2三玉と逃げてみる(次の図)

後手7五銀図79
 ここで4二飛成なら、6一金と角を取る手が後手の勝負手(角を取った手が6五角からの先手玉への詰めろ)
 6一同竜なら後手6五角を消しているが、6七角で形勢難解になる。
 この場合、4二飛成ではない、“決め手”がある(次の図)

後手7五銀図80
 3一竜(図)。 桂馬が“欲しい駒”だった。
 3一同銀に、3五桂から後手玉が詰んでいる。
 3五桂、3四玉、4五銀、3三玉、2三金、4二玉、4三角成、4一玉、4二歩、同銀、3二金まで。


後手7五銀図65(6一角図、再掲)
 以上のことから、〔ア〕4二銀右については「先手良し」と結論が出た。
 残る〔イ〕4二銀左、〔ウ〕4二金をつぶせば、「6一角で先手良し」が確定する。

後手7五銀図81
 「6一角」に〔イ〕4二銀左(図)。
 対して3四香は、後手3二歩。これは後手良しになる。
 先手はここで「3二歩」が良い。同玉なら、5二角成、同歩、3四香、3三歩、4二飛成以下、後手玉が詰む。
 よって後手は「3三玉」。中原への脱出を計る。
 先手は「4五金」(次の図)

後手7五銀図82
 2二桂では3一歩成で後手勝ち目がないということで、「3二玉」
 先手が金を4五に使ったので先ほどの5二角成~4二飛成が詰みにならない。
 しかしそれでも「5二角成」。 「同歩」に、「3三歩」が決め手になる。
 「同桂、3四香」(次の図)

後手7五銀図83
 角を渡したが、先手玉に詰みはない。
 そして後手玉は、3三香成、同玉、3一飛成以下の“詰めろ”である。
 4四角が攻防の手だが、その手も先手玉への詰めろにはなっていないので、8四馬と金を取れば、後手玉は4二飛成、同銀、4一銀以下“詰み”となる。
 先手勝ちである。

後手7五銀図84
 〔ウ〕4二金(図)。 この手には「5一飛成」。
 以下「1四歩」(代えて6七とでは4三角成で先手勝ちになる)、「5二角成」(ここで4三角成は4一歩で後手良し)、「4一桂」(次の図)

後手7五銀図85
 「4一同竜(4一同馬では、同金、同竜、6七とで後手勝勢)、同金、同馬、7六銀」(次の図)

後手7五銀図86
 7六同玉だと7七飛以下詰まされてしまう。 よって、「9八玉」が正着。
 以下、4二銀右、3二金、1三玉、1五歩、6八飛、8九玉(次の図)

後手7五銀図87
 6九飛成、7九桂、2四玉には、4二馬。
 4二同銀に、2五銀、同玉、1七桂、1五玉、2五金、1六玉、2六金(次の図)

後手7五銀図88
 先手勝ち。


後手7五銀図65(6一角図、再掲)
 以上の調査から、「6一角」と打ったこの図は「先手良し」という結果が出た。


6六銀左図
  [1]2六飛 → 後手良し
  [2]9七玉 → 後手良し
  [3]9八玉 → 後手良し
  [4]7九香 → 後手良し
  [5]4一角 → 後手良し
  [6]5四歩 → 後手良し
  [7]3三歩成→ 先手良し

 よってこの「6六銀左図」は、[7]3三歩成 を先手が選べば「先手良し」という結論となった。

 すなわち――――

≪指始図≫(8六歩図)(再掲)
  〔J〕7五桂 → 先手良し
  〔K〕6五桂 → 先手良し
  〔L〕6六歩 → 先手良し
  〔M〕5四銀 → 先手良し
  〔N〕3二歩 → 先手良し
  〔O〕3一歩 → 先手良し
  〔P〕7五銀 → 先手良し

 この「8六歩図」で、我々気にしていた〔P〕7五銀 を後手が選んで指してきても、「先手良し」になるとわかった。
 (ソフト「激指14」のこの図の評価値は-375、最善手は5六と)


 ≪亜空間戦争最終一番勝負≫で、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫が指した手は、△5六と である。


≪最終一番勝負 指了図≫ 5六とまで

 やはり、△5六と だった。

 終盤探検隊(先手番)は、これを本線に、手を読んでいた。
 そして、▲8七玉と指す予定だった。


第24譜につづく
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終盤探検隊 part123 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第22譜

2019年06月24日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第22譜 指始図≫ 8六歩まで


    [吸血鬼(ヴァンパイア)は鏡にうつらない]
 この城には、鏡というものがどこの部屋にもない。部屋のテーブルの上に化粧鏡さえないので、やむをえず自分は、顔を剃ったり髪をなでつけたりするのに、旅行鞄から小さなひげ剃り鏡を出して、それで用をすませているような始末だ。
   (中略)
 顔を剃ろうとおもって、ひげ剃り鏡を窓きわにかけて、ひげを剃りだしていると、ふいに肩に手がさわって、「おはよう」という伯爵の声がした。自分は思わずギョッとして目をみはった。自分が仰天したのは、ひげ剃り鏡のなかに、自分のうしろの部屋の中の全景は映っているのに、伯爵の姿がそのなかに映っていないからであった。
   (中略)
 伯爵は窓ぎわにかけてあったひげ剃り鏡を、いきなりムズと鷲づかみにつかむと、「まちがいを起こさせたのは、こいつじゃ。この鏡が曲者じゃ。鏡なんてものは、人間の虚栄のおもちゃみたいなもんじゃ。こんなものは捨ててしまえ!」というなり、伯爵はあの恐ろしい万力(まんりき)の手で、重い窓の戸をメリメリとこじあけると、手につかんだひげ剃り鏡をエイとばかり、叩きつけるように窓の外へ投げ捨てた。鏡ははるか下の中庭の石の上に落ちて、粉みじんに砕け散った。
   (中略)
 この城は、まぎれもない牢獄だ! 自分はそこの囚人なのだ!
         (『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー著 平井呈一訳より)


 『吸血鬼ドラキュラ』は1897年に発表されたアイルランド人ブラム・ストーカー作の有名な怪奇小説。
 読みごたえのある重厚な小説である。特に物語の導入部の不気味な描写は相当な迫力である。これは、ドラキュラ伯爵というおそろしい“怪物”と戦う物語であるが、この“怪物”は、「不死」であるだけでなく、蝙蝠にも狼にも変身できるし、鉄格子を曲げるような“怪力”を持っているというのだからとんでもない。
 ただし、ドラキュラには“弱点”がある。
 そう、今ではみんな知っているあの弱点―――「吸血鬼は銀の十字架とにんにくを嫌う」というアレである。
 さらに「太陽の光に弱く昼は活動できず棺のなかで眠っている」というのが致命的な弱点で、それがわかっていれば一般人でも戦える。
 小説『吸血鬼ドラキュラ』は、都会ロンドンに出て暴れようとたくらむ“怪物ドラキュラ伯爵”の正体に気づいた、5人の勇敢な男女がこの“怪物”に立ち向かう物語である。やがて形勢不利になったドラキュラ伯爵は故郷の城(東欧ルーマニアの地)まで退却するが、彼らはついにこの「不死者」を追い詰めて、眠っているその怪物の心臓に杭を突きさし勝利するのであった。

 「吸血鬼は鏡にその姿が映らない」という特徴はあるいはこの小説からはじまったのかもしれない。
 作者ブラム・ストーカーは1847年アイルランドのダブリンで生まれたが、24歳の時に愛読していた雑誌にに分載されていた小説『吸血鬼カーミラ』を読んで衝撃を受け、この時から「吸血鬼もの」の小説の構想を考えはじめた。『吸血鬼カーミラ』(1872年)は同じアイルランドの作家レ・ファニュの作品で、これも「吸血鬼もの」の名作である。
 ストーカーが『吸血鬼ドラキュラ』を発表したのは、それから25年後のことであった。
 しかしレ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』には、「吸血鬼は鏡にその姿が映らない」というエピソードはない。
 ストーカーが『ドラキュラ』を書きあげたもう一つのきっかけというのが、あるブダペスト大学教授と親しくなり、その人物から欧州(とくにトランシルシルヴァニア地方=ルーマニアの一地方)の「吸血鬼話」を教えてもらったからだという。おそらくその中に「吸血鬼は鏡にその姿が映らない」の話があったのであろう。
 (後日追記;『吸血鬼カーミラ』の中に「吸血鬼は鏡にうつらない」という記述があった)



<第22譜 後手5六とは最善の応手なのか>


≪指始図≫8六歩まで
 8六歩は“予定通り”ではあった。
 そして、「後手はここで5六とと指すだろう、それには8七玉~9七玉として、そこから勝負だ」――――と、これが我々の、終盤探検隊の、“読み”の本線であった。
 
 ところが、この8六歩まで来たとき、我々は急に、なにかしら言いようのない不安の雲を、脳裏に感じはじめたのであった。
 その“不安”の中身を後で分析すれば、それは「この局面はすでに先手が勝てない局面なのではないか」という直感的な感覚であったかもしれない。
 「△5六と」がここでの最有力手としてはコンピューター・ソフトは示しているし、それをメインとして対策を立てていたのだったが、ここで▲8六歩を指した後、あらためてこの図を眺めてみると、「他にも後手の有力手があるのではないか」、「とくに7五銀が厳しそうだがどう対処すればいいのか」、などと思いはじめてきたのである。
 この図まできてしまえば、もう先手の我々には選択権はないわけであり、後手の指し手を待つしかないのであるが、その状況がまた不安をかきたてるのである。

≪最終一番勝負 指了図≫ 5六と図
 「△5六と」 ―――これが予定の図。

 しかし、「後手5六とは最善の応手なのか」について、今回の譜では調査してみたい。

≪指始図≫(8六歩図)(再掲)
 ここで「△5六と」以外で考えられる後手の手は、
  〔J〕7五桂
  〔K〕6五桂
  〔L〕6六歩
  〔M〕5四銀
  〔N〕3二歩
  〔O〕3一歩
  〔P〕7五銀

 これらの手を一つ一つその価値を確かめていく。
 最大の強敵は最後の〔P〕7五銀で、対戦中に考えた限りでは、先手の勝ちが見いだせなかった。あるいは「△5六と」よりも、〔P〕7五銀のほうが優れているという可能性もあると思う。(それをこれから確かめていくのだ)

後手7五桂図01
 〔J〕7五桂は、先手玉の動きを制限する手。しかしこれに続く後手の厳しい手があるわけではないので、ここはすでに先手良し。
 ここは「8五歩」が後手7五桂の手の弱点を突き、一番先手の有利を拡大できそうな手。(7五桂を打たなかったら8五歩は7五銀で無効になる)
 「8五歩」、7四金、8六玉、8四歩(次の図) 

後手7五桂図02
 9五玉から先手玉がすんなり“入玉”できれば、先手勝勢になる。だから後手はそれを阻止しないといけない。
 9四馬、8三桂、8四歩、8五歩、9七玉、6七と、8三歩成、7七と、8八歩、6五銀、2六飛(次の図)

後手7五桂図03
 後手は先手の“入玉”を阻止できたが、二枚の桂馬を手放してしまったので、先手の2六飛(図)で、困っている。次に2五香や1五桂と打てば、後手は受けがない。


後手6五桂図01
 〔K〕6五桂 は、「7七」に効かせている。次に7五銀、8七玉、6七とで、次に7七桂成~7六銀と攻め込む手が見込める。
 先手は、2六飛と打つ(次の図)

後手6五桂図02
 後手は桂馬を手放してしまうと、受けに不安ができる。だからここで2六飛(図)が効果的になる。問題は、どちらの攻めが先かということである。
 2六飛、7五銀、8七玉、6七と、4一角、3二歩、2五香、3一桂(代えて2四桂と受ける手には同香、同歩、3五桂)、2三香成、同桂、2四金(次の図)

後手6五桂図03
 後手“受けなし”。 先手の2六飛の攻めのほうが早かった。
 後手は桂馬を早く手放すと、先手の「2六飛~2五香」の攻めが有効になる。  


後手6六歩図01
 〔L〕6六歩。歩の攻め。次に7五銀、8七玉、6七歩成と、桂馬を温存して「と金」で攻めようという手。
 対して先手はどう対応するか。
 4一角と攻めたいが、その前に、“5四歩”と叩きを入れるのが効果的(次の図)

後手6六歩図02
 5四同銀に、5三歩と打つ(5三同銀上なら3三香、3二歩、同香成、同玉、1一飛で先手良し)
 以下6五銀左、8七玉に、5三銀引なら、4一角、3二歩、3三歩成(次の図)

後手6六歩図03
 3三同銀、5二角成(同歩なら3一飛で先手良し)、4二銀右、4一飛(次の図)

後手6六歩図04
 先手良し。

後手6六歩図05
 今の順で、8七玉に、7五桂と攻めるのもある。
 これは以下、9七玉、7六銀、9八角(次の図)

後手6六歩図06
 9八角(図)としたが、代えて9八金では先手負ける。渡す駒は角のほうが先手玉を攻めにくい。
 図以下、8七銀成、同角、同桂成、同玉、6九角、9七玉、5三銀引(先手玉への詰めろの継続手がないので受けにまわる)、3三桂(次の図)

後手6六歩図07
 3三桂と打ちこむのが速い攻め。
 同桂、同歩成、同銀に、1一銀という手がある。同銀に、3一飛(次の図)

後手6六歩図08
 2一合駒に、3二金と打って、後手玉は“受けなし”。
 先手玉は詰まないので、先手の勝ちになっている。

後手6六歩図09
 戻って、先手の5四歩に、6七歩成としたのがこの図。5三の銀は取らせる方針で攻める。
 これでどうなるのか。
 5三歩成、6六銀(詰めろ)、8七玉、7七と、9七玉、5三銀引(ここで手を戻す)、4一角、3二歩、3三香(次の図)

後手6六歩図10
 3三同桂、同歩成、同玉(同銀は5二角成)、3五飛、3四香、2五桂、2四玉、6五飛(次の図)

後手6六歩図11
 先手勝ち。

 〔L〕6六歩 は、「5四歩」で先手良し。


後手5四銀図01
 上の手順を学べば、〔M〕5四銀 には、5三歩(図)で、「先手良し」ということは明らかだろう。


後手3二歩図01
 〔N〕3二歩
 先手玉が「8七玉~9七玉」と2手かけて逃げれば、後手は「6七と~7五桂~7七と」で3手かけて“詰めろ”に追い込むことができる。比較してここで後手が5六ととし、「5六と~6六と~7六と~7五桂」という攻めだと“4手”かかっていて、効率はよくないのである。だから“5六と以外に価値の高い良い手はないだろうか”ということも考えてみたくなるわけである。
 そこで、〔5〕3二歩 という受けの手も候補手として浮上してくる。ここで8七玉と早逃げすれば、後手の思惑通りで、後手が良くなる。
 だから先手はここで、8七玉以外の手で、後手に迫る手が必要になるところ。
 しかし2六飛も4一角も勝てないようだ。

 だが、「4一飛」と打つ手があった(次の図)

後手3二歩図02
 「4一飛」と打って、後手の4二の銀が移動すれば、3一に駒を打ちこむことができる。
 この図は先手「4一飛」に、「5六と、3三歩成」と進んだところで、この図は先手良し。
 3三歩成を、“同桂”ならもちろん1一銀だ。
 “同歩”は、1一角がある。同玉に、3二金で先手勝ちになる。
 “同銀”は、3一金、1四歩、2一金、1三玉、2六香で、先手勝勢。
 “同玉”が最善だろうが、しかし、2一飛成、4四玉、2三竜の展開は先手が良い。

 「4一飛」に対する後手の候補手は、(朝)7五銀(夕)3一桂 とがある。

 (朝)7五銀、8七玉、6六銀左に、先手は5四歩(次の図)
 
後手3二歩図03
 後手6六銀左に3三歩成は、同歩と取られ、今度1一角は、同玉、3二金に、8六銀、同玉、6八角から詰まされてしまう。
 だから先手は5四歩(図)と攻めた。
 この5四歩を、同銀なら、5三歩、同銀、3一金で先手が勝てる。4四銀や6二銀なら、5三香で先手良し。
 なので後手は6四銀とする。そこで5三香でも同じに見えるが、そうではない。5三香には6七とで後手良しになる。6七とと寄った手が、8六銀、同玉、7五銀上以下、先手玉への“詰めろ”になっているからだ(8六銀に9八玉も8七銀成、同玉、7七銀成以下詰む)
 そこで先手は8九香とする(次の図)

後手3二歩図04
 この8九香(図)が好手で、この図は、先手有利になっている。
 ここで3一桂と受けにまわっても、6三金があって後手は守り切れない。
 なので6七とと攻めあう。以下9八玉、8六銀、3三歩成(次の図)

後手3二歩図05
 ここで3三歩成(図)が決め手。 同銀なら、3一金。同玉なら1一角。いずれも先手優勢。
 したがって同歩だが、6三金と打つ手がある(次の図)

後手3二歩図06
 先手勝勢。(3三歩成、同歩と利かさずに6三金だと、同金、4二飛成、9七金で先手とん死負けになるので注意が必要なところだった)

後手3二歩図07
 先手の「4一飛」に、後手 (夕)3一桂(図)の場合。
 さて、先手に継続手は?(次の図)

後手3二歩図08
 6一竜(図)がある。次の狙いは、「5四歩、同銀、5二竜、同歩、4二飛成」である。その攻めが間に合うかどうか。
 6一竜は、受けにもよく利いている。
 手番は後手だ。後手がどう攻めてくるかが問題である。「7五銀」が考えられる手。
 以下8七玉、6六銀左、7九香(次の図)

後手3二歩図09
 この7九香に代えて「5二竜、同歩、4二飛成」だと、7七銀成、同玉、6七飛以下先手玉が詰んで負けになるところだった(7八玉に、6八飛成、8七玉、7六銀、同玉、7八竜、7七合、6四桂以下)
 7九香(図)といったん受けるのが正着手。
 後手陣には有効な受け手はないので、6七と攻めるくらいだが、そこで「5二竜、同歩、4二飛成」がついに発動する(4二飛成の手は3三角以下の詰めろ)
 以下、3六飛(詰めろ逃れの詰めろ)、4六歩、3八飛成、4八金、3四竜、4一金(次の図)

後手3二歩図10
 先手勝ち。(以下3三銀には、3一竜、1一玉、4五桂)

後手3二歩図11
 6一竜に、「5六と」(図)ならどうだろう。
 以下、5四歩に、6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7七と。
 先手玉に“詰めろ”がかかった。これを先手9八金と受け(8九香もあるがあえて金で受ける)、後手は5四銀と手を戻す。
 飛車を渡すと8七飛で先手玉が詰んでしまうので5二竜とはいけない。
 しかし、ここで7九香と打つのが好手になる(次の図)

後手3二歩図12
 この7九香が後手を困らせるうまい手で、先手良しがはっきりする。
 ここで8七と、同金、同桂成と清算するのは、次に先手から狙いの「5二竜、同歩、4二飛成」が有効になって先手勝勢。
 6七桂成も「5二竜、同歩、4二飛成」でよい。
 8七とでだめなら、後手はこの図では6六銀しかなさそうだが、6四竜、5五銀上、5四竜で、これも先手優勢である。

 〔N〕3二歩 は、「4一飛」で先手良し。


後手3一歩図01
 〔O〕3一歩

後手3一歩図02
 これには3九香(図)と打つ。放っておけば3三歩成、同銀、同香成で先手が良くなるので後手は 3二歩とする(代えて 4四銀引 は後述する)
 そこでやはり「4一飛」と打つ。
 これで先手はゼロ手で3九香を打ったことになる。しかし“香車を受けに使う手がなくなった”というマイナスもあるわけで、得したかどうかはまだわからない。
 
 「4一飛」に、7五銀、8七玉、6六銀と行くと、3三歩成、同歩に、3四歩と歩を合わせる手があり、同歩に、3三歩(次の図)

後手3一歩図03
 先手優勢になる。同桂は1一角から詰みだし、同玉は1一角で先手良し。
 同銀も3一金で受けがない。

 なので後手は「4一飛」には、3一を埋めて、3一桂と受けることになる(次の図)

後手3一歩図04
 「4一飛、3一桂」と進んで、そこで先手「5四歩」(図)と打つ。
 同銀 なら―――(次の図)

後手3一歩図05
 6二金(図)と打つ手がある。(3九香と打った手を生かすためには早く攻めていくのがよい)
 後手に受けはないので、後手も攻めてくる。
 6五銀左、8七玉、7五桂、9八玉、7六銀、5二金、8七桂成、8九玉、6七と、3三角(次の図)

後手3一歩図06
 先手の攻めが一歩早かった。3三同桂、同歩成、同銀に、3一飛成、同玉、5一竜以下“詰み”となる。

後手3一歩図07
 戻って、先手の「5四歩」に、6二銀(図)と引く手にはどうするか。
 (なお、「5四歩」に 4四銀 には、4五歩、同銀、6二金と攻めて先手良し)
 6二銀 には、6三歩と叩く。6三同銀、7三歩成、同銀、5三歩成、同銀、8四馬(次の図)

後手3一歩図08
 8四の金を取って、後手玉は、3三金、同歩、同歩成、同桂、1一角、同玉、3一飛成以下の“詰めろ”になっている。先手勝ち。

後手3一歩図09
 「3九香」に 3二歩 では「4一飛」以下、先手良しとなった。
 それなら、4四銀引(図)ならどうか。(代えて4四銀上には5三歩がある)
 この手には、4五歩、同銀、3三歩成、同桂、3七桂が先手面白い手(次の図)

後手3一歩図10
 3四銀に、3五歩、同銀、7三歩成で、3四歩を狙って、先手良し。

 〔O〕3一歩 は、3九香以下、先手良し。


≪指始図≫8六歩まで (再掲)
 さて、この図から、〔J〕7五桂〔K〕6五桂〔L〕6六歩〔M〕5四銀〔N〕3二歩〔O〕3一歩 と見てきたが、すべて「先手良し」とわかった。

 しかし我々終盤探検隊が、恐れていた手が次の 〔P〕7五銀 である。


後手7五銀図01
〔7〕7五銀
 我々は、▲8六歩 を指して、後手番の≪ぬし≫が考えている間に、もし 〔P〕7五銀 を指されたらどうするかと、その手への対策を用意しようと考えていたのだが、それが結局、見つからなかったのだった。
 〔P〕7五銀 が2番目に良い手で、「△5六と」 がそれ以上の手ならば、8六歩の局面はもう「先手が悪い」のかもしれない。そういう不安に陥りつつあったのだ。
 対戦中は結論まではとても出せなかったのだが(我々の後手予想手はあくまで5六歩であったのでそちらを本線に考えていた)、〔P〕7五銀 以下は、実際のところどうなっているのだろう? 真実を確かめたい―――ということで、戦いの終わった今、調べているところである。

後手7五銀図02(6六銀図)
 〔P〕7五銀、8七玉、6六銀左(図)とすすんだところ。(6六銀左に代えて6七ともあるが、6六銀左のほうが優っているようである)
 この「6六銀図」で先手が何を指すか。それが問題である。
 これから検討していく候補手は次のとおり。
  [1]2六飛
  [2]9七玉
  [3[9八玉
  [4]7九香
  [5]4一角
  [6]5四歩

後手7五銀図03
 「6六銀図」から、[1]2六飛、6七と、2五香、3一桂、4五角、7七と、9八玉、1一桂(図)と進んだところ。
 後手の“二枚の桂”で先手の攻めが止まり、この図は先手の有効手がまったくなく、後手良し。
 ここから攻めを続けるなら、2三香成、同桂左、2四金だが、1一玉と先逃げされて、先手は指す手がない。「金」を渡すと先手玉があっけなく詰んでしまうから。

 [1]2六飛 では先手に勝ちはない。(後手が桂を二枚手に持っていると2六飛は攻めは簡単に受け止められてしまう)

後手7五銀図05
 [2]9七玉 には、6七と(図)と来る。
 そこで、4一角、3二歩、3三歩成が狙いの攻め筋で、以下3三同銀に、5二角成、同歩、6一飛と進むが……(次の図)

後手7五銀図06
 8六銀(図)、同玉、7五銀以下、先手玉は詰まされてしまう。 先手負け。

後手7五銀図07
 それを踏まえて、[3]9八玉(図)ではどうか。(これなら、先ほどの8六銀からの詰み筋はない)
 6七と、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成(次の図) 

後手7五銀図08
 5二同歩、6一飛、8一桂(次の図)

後手7五銀図09
 8一桂(図)という受けがあった。同竜なら、5四角(王手竜取り)である。
 といってここで3一金(詰めろ)は3四銀で後手優勢。
 8九香と受ける手も、7七とで次に6七角が厳しい手になる。
 結局8一同竜と桂馬を取るしかなさそうだ。以下、5四角、8七桂、8一角、3一金、3四銀、8一飛成、5八飛、8八香、3三玉となって、これも後手優勢の将棋である。

後手7五銀図10
 [4]7九香 と受ける手はどうなるか。
 6七と、9七玉、6五桂、5四歩、7七と、5三歩成、7六銀(次の図)

後手7五銀図11
 以下、9八金には、7五桂がある。
 結局、後手の攻めは切れず、先手は“速度負け”してしまう。

 7九香と受けても、9七玉や9八玉と早逃げしても効果がないとなれば、「攻め」に活路を見出すしかない。

後手7五銀図12
 「6六銀図」からすぐに攻めるなら、本筋は [5]4一角 である。対して3二歩(図)と後手が受けたところ。
 ここで3つの候補手がある。 「3三歩成」「3三香」「5四歩」 である。

 順に見ていく。まず 「3三歩成」 は、同銀、5二角成、同歩、6一飛、8六銀(次の図)

後手7五銀図13
 8六銀(図)で詰まされてしまう。
 8六同玉に、6八角、9七玉、8五桂、9八玉、8六桂、8九玉、7八桂成(次の図)

後手7五銀図14
 7八同玉に、7七桂成、8九玉、7九角成、同玉、6八と以下“詰み”。
 図で9八玉には、9七桂成、同玉、7九角成、8七玉、8八角成、7六玉、7五銀、6五玉、6六馬まで。
 先手負けになった。 この形、先手は角を渡せないのだ。

後手7五銀図15
 「3三香」(図)はどうか。
 同桂は5二角成で先手良し。 同銀も、同歩成、同玉、4五金で先手が良い。
 よって、後手は「3一銀」と応じる(次の図)

後手7五銀図16
 そこで単に5二角成は同歩ではっきり先手が悪い。すると、他に良い手があるかどうかが問題になる。
 8四馬 と、3七桂 とがある。

 8四馬、同歩、5二角成(次の図)

後手7五銀図17
 今度5二角成を同歩は、3二香成、同玉(同銀は2一竜)、3三金、同桂、3一竜、同玉、6一飛以下、後手玉詰みとなる。(これが金を一枚歩補充した効果)
 ここで8六銀、同玉、6八角は、(8四の金がいないので)7六玉で逃れている。
 しかし後手陣は、このまま放置なら、先手が「飛金金金」と持っていても、後手玉は詰めろはかかっていない。だから後手の先手玉への攻めは“詰めろ以上の攻め”で間に合う。
 6九角と打たれ、9七玉に、7六銀で“詰めろ”である(次の図)

後手7五銀図18
 こうなって、先手負けが確定した。
 ただし、7六銀に代えて7七銀成なら、4三馬で“形勢逆転”で先手良しになるところだった(将棋は最後まで気が抜けない)

後手7五銀図19
 後手「3一銀」に、3七桂(図)も有力な手。次に8四の金を取って、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三金から、後手玉を詰ますのがねらいだ。
 6七と、8四馬、4四銀(次の図)

後手7五銀図20
 8四同歩では、先に述べた順で後手玉が詰んでしまうので、後手は4四銀(図)とそれを受けた。
 この4四銀は、「3三」に利かせたのと同時に、後手玉の詰み筋から逃れるための脱出路として「5三」を開けた意味もある。よってここで先手2五桂は詰めろになっておらず、8四歩と角を取られ先手が負ける。
 この図から、9四馬は、7七銀成、9七玉、4二金、6三角成、7六銀が予想されるが、後手勝勢。
 4五桂(これは詰めろ)、同銀、3五飛(詰めろ)という手段もあるが、3四銀、同飛、3三歩以下、これも後手優勢。

 どうやら「4一角~3三香」では先手に勝ちはないようである。

後手7五銀図21
 次は、「4一角、3二歩」に、3つ目の手段「5四歩」(図)である。
 対して後手6四銀上が強い応手で、この手はこの銀を攻めに使おうとしている。
 そこで5三香で先手勝てればよいが、6七とが先手玉への“詰めろ”になっていて、5二香成が間に合わない。すなわち、5二香成には、8六銀、同玉、7五銀上、9七玉、8五桂、9八玉、8六桂、8九玉、7八とまでの“詰み”。(8六銀に9八玉も8七銀成以下詰み)
 5三香ではだめなので、先手は3三香とこちらで勝負。これには後手3一銀(この一手)
 先手3五飛(次の図) 

後手7五銀図22
 3五飛(図)と打って、後手玉への“詰めろ”の攻めを続ける(飛車の横利きで受けに利かせた意味もある)
 詰めろを受ける4二金に、5一竜。
 以下4一金、同竜は、先手良しになる。先手好調に見える。
 しかし、「1一玉」という手があった(次の図)

後手7五銀図23
 4二竜なら、8六銀、同玉、7五銀上、8七玉、8五桂で、後手良し(4二竜は後手玉への詰めろになっていないのだ)
 なので、3二香成、同金、8四馬、同歩、3二角成で勝負する(次の図)

後手7五銀図24
 3二同銀なら、2二金、同玉、3三金で、後手玉が詰むので、先手勝ちになる。
 しかし7七銀成、同玉、6六角、7八玉、3二銀と応じられて―――(次の図)

後手7五銀図25
 今度は6六角の利きがあって後手玉が詰まず、どうやら後手勝ちの図になっている。

 以上のことから、[5]4一角 では、先手勝ちがない、というのが結論である。

後手7五銀図26
 「6六銀図」で、[6]5四歩(図)
 これを同銀なら5三歩、同銀、4一飛、3一歩、3三香で、先手優勢。
 4四銀または6二銀なら、5三香で先手が良くなる。
 したがって、[6]5四歩 には、6四銀上が最善手。
 そこで4一角は、先ほどの図に合流して、それは「後手良し」の結果になった。
 ということなら、先手は他の手を選ばなければ勝ちの目が出ないことになる。
 有望な手は、「4一飛」である(次の図)

後手7五銀図27
 ここで “6七と” なら、「9八玉」とする(後手8六銀、同玉、7五銀上以下の詰み筋を避ける意味)
 以下、8六銀には―――(次の図)

後手7五銀図28
 8四馬(図)。 同歩なら、3三角と打って、後手玉が詰む。
 よって後手は馬を取らず3一歩とする。
 以下、8五馬、3二玉、7三歩成、7七銀成、3三香(次の図)

後手7五銀図29
 詳しい説明は省くが、この順は「先手良し」

後手7五銀図30
 先手「9八玉」の手に、(8六銀では勝てないので)後手3一歩(図)とした場合。
 これには、次の“ねらいの一手”がある(次の図)

後手7五銀図31
 6二金(図)が決め手になって、先手勝ち。次に5二金で、後手は“受けなし”である。
 ここで8六銀にはいったん8九香と受けておけば問題ない(8六銀にうっかり5二金は8七銀成、同玉、7七銀成以下、とん死する)

後手7五銀図32
 先手が「4一飛」と飛車を打ったところまで戻って、そこで“3一歩”(図)ならどうなるか。
 そこで「6二金」で勝てればよいのだが、それは8六銀、同玉、7五銀上、8七玉、6七とと対応され-――(次の図)

後手7五銀図33
 後手の攻めのほうが早い。受けても“一手一手”になり、先手勝てない。

後手7五銀図34
 なので、「6一竜」とし、5二竜を狙うとともに、6筋に利かす。
 そこでも後手「8六銀~7五銀上」はあるが、8七玉、6七と、3三銀以下形勢不明の戦い。
 それよりも後手は「3二玉」(図)が優る。
 その手でどうやら先手が苦しい形勢。6二金が最善のがんばりと思われるが、以下8六銀、同玉、7五銀上、8七玉、8五桂、7九香、6七と、1一角(次の図)

後手7五銀図35
 7七銀成、同香、同と、同角成、同桂成、同玉、4四角(次の図)

後手7五銀図36
 勝負はまだこれからだが、「後手良し」の形勢である。(後手は飛車の入手が確実)

 [6]5四歩 は、6四銀、そこで4一飛が有力手だったが、すぐに3一歩と応じられ、先手の勝ちは出てこなかった。


後手7五銀図02(6六銀図)
 こういう結果になった。
  [1]2六飛 → 後手良し
  [2]9七玉 → 後手良し
  [3]9八玉 → 後手良し
  [4]7九香 → 後手良し
  [5]4一角 → 後手良し
  [6]5四歩 → 後手良し

 以上の調査により、〔7〕7五銀 は「後手良し」、と我々は結論を下そうと思った。(やはり実戦中の感触通り7五銀で先手悪いのだ、と)

 しかし、この「6六銀図」で、もう一つ、効果を確認していない手があった。
 最後に“その手”を―――と調べてみると、“その手”は、我々の想像を超える力を持った手だったのである。 つまり、結論が逆になる可能性がある。

 よって、まだ、この調査を終えることはできない。 “その手”とは?



第23譜につづく
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終盤探検隊 part122 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第21譜

2019年06月13日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第21譜 指始図≫ 8四金まで

 指し手  ▲8六歩


    [まったく別の物ですね]
中井広恵 (チェスは)将棋とは感覚がまったく違うって聞いたんですけど、そうなんですか?
羽生善治 そうですね。覚えるのは簡単だし入りやすいんですけど、ええ、まったく別の物ですね。
中井 でも将棋をやってチェスもっていうのは、どうみても疲れそうなんですけど。
羽生 ええ、疲れますね(笑)
中井 なのにどうしてチェスなんですか。
羽生 そうですね。あまり品のいい言い方じゃないんですけど、将棋は直接的に殴り合っている感じで、チェスはボディブローで打ち合っているような感じなんですね。徐々に効いてくる感じ……。だから同じ疲れでも、ちょっと種類が違うんです。
       (女流棋士中井広恵対談集『鏡花水月』より)



 どっちも疲れるが、疲れる場所が違うので、チェスは気分転換になるのだと羽生善治は説明している。



<第21譜 不安がよぎった>


≪指始図≫ 8四金まで
 「最終一番勝負」はここまで進んだ。
 後手9四歩に対し、先手9六歩と応じ、後手が8四金と打ったところ。この金は先手の8五玉からの“入玉”を防いだ手で、この一手である。
 ここで、どう指すか。

 この図における、最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」の候補手(評価値)は、次の通り。
5四歩(-260)、8六歩(-266)、8六玉(-307)、2五香(-340)、3三歩成(-376)、3七桂(-382)、2六飛(-400)、4一角(-546)、6一竜(-620)、2六香(-690)

 また「激指14」は8六歩(-379)を最善手としている。


≪指始図≫(8四金まで、再掲)
 我々終盤探検隊は決めていた。選んだ手は、「激指」の奨め通りの手、「8六歩」である。
 6六角と打って9三角成と進めた時に、ここまではそう指そうと決めていた順であった。

 ただ、実際には、ここではそれ以外の手―――「2五香」や「4一角」も、可能性があると感じて立ちどまって検討してもみた。しかしそれで「先手勝ち」までたどり着けなかったので、結局は「8六歩」を選ぶことになったのだった。

 しかしここでは改めて“その他の手”についての、我々の検討内容を以下にまとめておきたい。
 研究対象は、次の手である(5つ)
  「2五香」「2六香」「8五金」「4一角」「5四歩」


2五香基本図
 「2五香」(図)は、次に「2六飛と打つ」、そして「2三香成、同玉、4五角」と攻める狙いがある。
 もしもここで6六歩や5六となら、2六飛、3一桂、4一角、3二歩、2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂となって、先手良しになる。

2五香図01
 だが、後手は8四金と打った手を生かして、7五銀からの攻めがある。
 7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、6七と、2三香成、同玉、5六角(次の図)

2五香図02
 「2三香成、同玉、5六角」が決まって、この図は先手良し。
 2二桂(3四に利かせた)の受けに、2五飛がある。2四歩に、3三歩成、同玉、2三金、4四玉、8四馬(次の図)

2五香図03
 「5六角」と打てたのでこの攻めが成功した。
 ただし、これが「4五角」だったらうまくいかない。
 5六に角を打てたのは後手が6七ととしたからだが、その手に代えて後手8五桂と攻めるのは、2六飛、1一桂、4五角に、後手の受けがなく、先手良し。

2五香図04
 だから、後手の最善手は6七とに代えて、3一桂(図)と自陣に打つ手になる。先手の攻めを先受けするのである。
 これなら、先ほどの「2三香成」の攻めはないし、また2六飛と打つ攻めには、6七と、4五角、1一桂で、先手の攻めはうまくいかない。後手には次に6七との確実な攻めがあるので、桂二枚を受けに使っても先手玉を寄せる手は続くのである。そして先手は駒を渡すととたんに自玉が危なくなる。

 しかしここで、3三歩成、同銀、3二歩、同玉、3四歩という攻めの手段が、まだ先手にはあった(次の図)

2五香図05
 この3四歩(図)には、同銀が正着(理由は後で明らかになる)
 3四同銀、1一角、2二桂、7二飛、6二歩、7三歩成(次の図)

2五香図06
 7三歩成(図)とと金をつくって、先手は次に6三とまたは7四とのような手が狙いである。
 6七と、6三と、7七と、9七玉、2五銀(次の図)

2五香図07
 先ほど、「3四同銀が正着」としたのは、この2五銀(図)と香車を入手する手があるからである。これで後手有望の勝負となる。
 図以下、5三と、8五香、9八銀、7六銀(次の図)

2五香図08
 後手勝ち。(7八金の受けには7五歩)

 「2五香」 は、「7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3一桂」で、後手勝ちとなった。
 

2六香基本図
 しかし今と同じに進むのなら、「2五」に打つのではなく、「2六香」が良いのではないか。(結局2六飛と打つことはなかったわけだし)
 というわけで、次は「2六香」(図)以下の検討である。

2六香図01
 同じ手順をたどって、7三歩成(図)と進んだとき、先ほどは2五銀で「香」を取ることができたが、今度はその手がない。これは大きな違いではないか。
 後手は7六歩と打ち、以下7八歩、7七歩成、同歩、6七と、6三と、7七と、9八玉、7六銀、9七金と進む(次の図)

2六香図02
 9七に金を打って受けたので、先手の持駒は歩一枚になった。手番は後手だが、しかし後手の有効手は9五歩か6七銀直成くらい。9五歩は、5二と、9六歩、8六金で先手良し。
 6七銀成以下を見ていく。それには、7九歩と最後の一歩で受ける手がある。
 さらに後手が攻めるとすれば7八歩くらいだが、それでは5二と、同歩、7一飛成で先手勝ちがはっきりする。
 よって、後手は6三金とと金を払うが、5一竜、3三玉に、3五歩(次の図) 

2六香図03
 3五歩(図)は、同銀に、3一竜、4四玉、2二角成、3三歩のときに、2三馬と馬の活用をみている。
 この展開は、先手優勢である。

 「2六香」 ならば、今度は逆に先手良しとなった。

 今度はしかし、後手が手順を改良する番だ。

2六香図04
 先手が「1一角」(図)と打ったところまで戻る。
 ここで上では“2二桂”と受けたのだが、代えて「4四歩」という手がある(次の図)

2六香図05
 「4四歩」(図)の意味は、4三~5四という玉の脱出路を開いたということ。
 2二飛、4三玉、2一飛成、5四玉、3一竜、4三金、3五桂、7六銀(次の図)

2六香図06
 先手は四枚の大駒が敵陣で生きているが、先手玉はあぶない。
 予想される手順は、8九桂、7五桂、8六金、8五金、7五金、同金、4三桂成、6七と(次の図)

2六香図07
 後手勝勢である。(5三成桂には6五玉と逃げる)

 結局、「2六香」 も後手良しとなった。


8五金基本図
 「8五金」(図)はどうだろうか。
 これを同金と取ってくれれば、同玉、8四金、同馬、同歩、9四玉で、これは先手の思惑通りとなり、先手良し。
 しかしそうはならないだろう。「8五金」には、7四歩とし、8四金、同歩、同馬と進む。
 そして、この場合は“7三桂”という好手があるのだ(次の図)

8五金図01
 “7三桂”(図)、これは前に後手9四歩と打った手と連動した好手で、この9四の歩がなければ、7三桂には8六玉~9五玉と入玉を計って先手が指せるところだった。
 結論を言うと、この図は「後手優勢」である。(ただし、先手は持駒が多いし手は多いので勝負的にはまだまだもつれそうな図にはなっている)
 ここで5七馬は、7五銀、同馬、同歩、同玉、5七角、7四玉、7二金で、後手良し。

 変化の一例として、7四馬以下を示しておく。
 7四馬には、6五銀がある(次の図)

8五金図02
 6五同馬には、8五金があって、7七玉、6五桂と下に落とされて寄せられてしまう。
 それでは勝ち目がなさそうなので、ここでは7五玉としてみるが、以下7四銀、同玉、9二金(次の図)

8五金図03
 9二同竜には4七角、8一竜には6三角がある。
 よって7一竜と逃げることになるが、それには6四銀上として、先手玉はほぼ捕まっている。

 「8五金」 は、後手良し。

4一角基本図
 ここでの「4一角」(図)は、この≪亜空間最終戦争一番勝負≫の戦闘中、我々が期待をかけてこの先を考慮してみた手である。
 4一角、3二歩と進み、そこで〈紅〉3三香〈白〉5二角成 とがある。(我々が考えたのは5二角成のほう。3三香は見えていなかった)

4一角図01
 まず、〈紅〉3三香(図)から。
 7五銀、7七玉に、そこで8五桂(次の図)

4一角図02
 ここで(1)8八玉と(2)7八玉とがある。
 (1)8八玉は、7六桂、9八玉、3三桂、同歩成、同銀と進む(次の図)

4一角図03
 後手は「香」を入手したので、先手玉に、9七香、8九玉、7七桂不成、7八玉、6八と、7七玉、6六銀左までの“詰めろ”がかかっている。
 よって先手はここで、8九桂とその詰みを受ける(これ以外によい受けがなさそう)
 以下、9五歩、5二角成、4二銀左(次の図)

4一角図04
 5二角成のときに、後手玉に2一金、同玉、3一金以下の“詰めろ”が逆にかかっていたので、後手はそれを4二銀左(図)で解除したところ。
 こう進むと、後手の勝ちになっている。(5三馬、同銀、5一竜は、9七香、同桂、同桂成、同玉、7九角で先手玉詰み)

4一角図05
 「8五桂」に、(2)7八玉(図)の場合。
 先と同じように3三桂、同歩成、同銀とすると、5二角成で、今度は先手良しになる。
 なのでここで後手は「3一銀」と受ける(次の図)

4一角図06
 ここから先手に“好手”があって勝ちになるかどうか。
 「7一馬」では攻めが遅く、6六桂、8八玉、7六銀で後手が良い。

 「5二角成、同歩、4一飛」が有力な攻め。
 これは4二銀引なら同飛成、同銀、3二香成以下詰むし、4二角と受けるのも、3一飛成、同角、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、2一金、同玉、3三桂、1一玉、2一金までの詰み。
 つまり“受けなし”に思えるが…

4一角図07
 6七角(図)で、後手良し。
 7九玉に、3四角成と歩を払いつつ角を成って、3一飛成には3三玉を用意して、後手勝勢である。

4一角図08
 これは後手「3一銀」とした「4一角図06」から、「5二角成、同歩、8四馬」と進んだ図。
 “8四同歩”なら、3二香成、同玉、3三金、同桂、3一竜、同玉、6一飛(次の図)
 (途中、3二香成を同銀は、2一竜、同玉、4一飛以下詰み)

4一角図09
 6一飛(図)と打って、なんと、後手玉が詰んでしまうのだ!

4一角図10
 だから8四馬は同歩とは取らず、“6七角”(図)と打つことになる。
 対して、7九玉なら3四角成、7五馬、7七桂成で後手良しなので、先手は8八玉とする。
 8八玉に、単純に4二銀引の受けでは、7五馬で先手良しになるので後手は何か工夫が必要だ。(3四角成でも7五馬で先手良し)
 後手7七桂成。 これを7七同玉、6六銀左、8八玉、3四角成だと後手良しになる。
 よって先手は9七玉と逃げる。
 以下、8七成桂、同玉、7六角成、8八玉、4二銀引、2五桂(次の図) 

4一角図11
 後手は7五の銀を助けることには成功したが、2五桂と打ったこの図は、どうやら「先手良し」になっている。
 この桂打ちは3二香成、同銀、3三金以下の“詰めろ”。 それを4四銀引と受けても、7五馬、同馬と銀を一枚補充すれば、やはり3二香成、同銀、3三金以下の“詰み”がある。
 また図で6六馬は7七金で先手良し。
 5一桂は、同竜、同銀、3二香成から“詰み”。

 「5二角成、同歩、8四馬」で、先手勝ちになった。
 しかしまだ、後手には手順改良の余地がある。

4一角図12
 5二角成 を同歩と取らず、6六桂(図)と攻める。
 以下8八玉に、7六銀と迫って、“詰めろ”。

4一角図13
 これには7九飛(図)しか受けがない。これでどうなるか。
 後手は(先手が飛車を受けに使ったのをみて)5二歩と馬を取る。
 先手は7六飛と銀を取って、後手玉には3二香成、同玉、4一銀以下の“詰めろ”がかかった。
 4二銀引と後手はそれを受ける。
 以下、4一竜、6七と、8四馬(次の図)

4一角図14
 4一竜から8四馬が先手苦心の攻めの継続手順で、8四同歩なら、3二香成、同銀、3三金から後手玉が詰む。
 後手は7八と、同飛、同桂成、同玉、7六飛と攻めあう。以下、6八玉、7七角、5七玉、5六飛、4七玉、4六銀、3六玉、3三桂―――(次の図)
 どっちが勝っているのだろう?

4一角図15
 この手順の途中、4六銀に3八玉とすると、8四歩と角(馬)を取る手があって後手勝ち。
 3六玉に8四歩は悪手で、以下3二香成、同銀、3三金、同銀右、同歩成、同玉のときに、3六玉が攻めの拠点となり後手玉が詰んでしまう。
 しかし3六玉には、この図の“3三桂”が、後手に勝利を引き込む手になる。同歩成は同角成で後手勝勢。
 先手は7五馬でどうなるか(次に4二馬が狙い)
 それには5八飛成。これは次に4七竜以下詰めろなので4八歩と受けるが、5六竜と元の位置に戻る(次の図)

4一角図16
 5六竜と戻って、次に4七銀成以下の“詰めろ”になっている。2六歩と受けても、3五銀以下、わかりやすい寄せがある。
 「後手勝ち」が確定した。

 結論。「4一角〈紅〉3三香」の攻めは、後手良し。
 激戦にはなるが、正確に応じられると先手が勝てないとわかった。

4一角図17
 「4一角、3二歩」に、〈白〉5二角成(図)。
 実戦では、我々(終盤探検隊)は、この手が成立しないかと精力をそそいで考えていた。
 5二同歩に、4一飛と打つ(次の図)

4一角図18
 だが、結論を言うと、先手の勝ち筋は見つからなかった。以下は一例として手順を示す。
 7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、5一桂(次の図)

4一角図19
 ここで3三歩成とし、同玉と進む。
 そこで2一飛成はあるが、それは7六銀、7九香、6七と、8九桂、6六角で後手勝ちが決まる。
 だが、“3七桂”という手段がある(次の図)

4一角図20
 ここでの“3七桂”(図)がなかなかの手なのだ。
 対して7六銀だと、3六香で先手の勝ちになる。3六香、2二玉、2一飛成、同玉、5一竜、同銀、3二香成、同玉、3三歩、同玉、2五桂打以下なんと後手玉は詰んでしまう。3六香に3四角、同香、2二玉なら詰まないが、それでは後手に勝ち目はない。
 ここは5六角と打つのが良い手になる(次の図)

4一角図21
 今度3六香は4四玉と逃げて大丈夫だ。(以下4五金、同角、3五金、5四玉、4五金、6五玉は後手勝勢)
 先手は4五歩。この手に7六銀なら、やはり3六香がある。2二玉に、2一飛成、同玉、2二金、同玉、3四桂、3三玉、2五桂、2四玉、1五金まで詰み。
 それを受けて後手4四歩(次の図)

4一角図22
 4四歩(図)で、3六香には4三玉と逃げる道をつくった。
 どうやらここで先手に良い手段がない。後手の勝ちがはっきりしてきたようだ。
 5一竜という手はあるが、7七桂成、同玉、8九角成(次の図)

4一角図23
 後手勝勢。 先手玉に受けがなく、後手玉に詰みはない(3六香には4三玉)

4一角図24
 先手5一竜に代えて、6一竜の場合。これには7六銀(図)で、やはり後手勝勢となる。
 (この場合は7七桂成~8九角成は後手まずい。3六香には4三玉とは逃げられないので、今度は2二玉と逃げるが、その時に3四桂と打つ桂馬が先手にあれば後手玉が詰む)
 図で7九香と受けるのは、6七と、7六香、7七と、9八玉、7八角成で、後手勝ち(金金銀歩の持駒では後手玉に詰みはない)

 「4一角〈白〉5二角成」も、しっかり対応されると、先手に勝ちがないとわかった。


5四歩基本図
 「5四歩」は最新のソフト「dolphin1/Kristallweizen」が、最善手として推している手である。
 「5四歩」同銀 だと、“先手良し”になる。まずその順を見ておこう。
 5四同銀、4一角、3二歩、5二角成、同歩、4一飛(次の図)

5四歩図01
 これが「5四歩」 以下の狙いだ。今度は4二銀が浮いているため3一桂や5一桂の受けが利かない。
 7五銀、7七玉、8五桂と攻めてくるが、8八玉と逃げて、7六桂、8九玉(9八玉は9七桂成、同玉、7九角でとん死)、3一角(次の図)

5四歩図01
 3一角(図)。 角を受けに使うのは後手にとってつらいところ。
 とはいえ、ここで先手も攻めの手がないとまずい。次は7七桂成が来る。7九香の先受けは6八と、7六香、同銀、2五桂、5一香で後手良し。
 先手は早い攻めが必要な場面。
 3六香と3筋に香車を打つ手が有効手。次に3三金、同歩、同歩成、同桂、3一飛成、同銀、1一角以下の“詰めろ”になっている。
 これを後手は4四銀と受けるが、そこで7一馬とする(次の図)

5四歩図02
 7一馬(図)も、4四馬、同歩、3三金以下の“詰めろ”。 それを後手がどう受けるか。
 5三歩は、同馬(同銀引に3三金)で、無効。
 1四歩は1五歩がある。これも“詰めろ”になっており、1五同歩と取っても、やはり4四馬、同歩、3一飛成、同銀、3三金、同歩、同歩成、同桂、1一角以下、“詰み”。
 というわけで、後手は5五銀直と受けるが、その手には、6二馬とする。この手も“詰めろ”なのだが、もう後手には受けの手段がない。
 すなわち、先手勝ちが決まった。

 6二馬に、後手1四歩と受けても、詰みがある。3一飛成、同銀、同竜(次の図)

5四歩図03
 3一同玉に、4二金、同玉、5一銀、3一玉、4二金、2二玉、3一角、1一玉、4四馬、同歩、2二銀まで。

5四歩図04
 後手は「5四歩」を、“同銀” とした手が失着だったのである。
 代えて、7五銀 としたのがこの図。
 以下、7七玉、8五桂。
 そこでやはり〈a〉8八玉と〈b〉7八玉とが考えられる。

 〈a〉8八玉は、7六桂、9八玉、9五歩と進む(次の図)

5四歩図05
 以下、5三歩成、9六歩、8九玉、7七桂成(次の図)

5四歩図06
 後手勝勢。(図で3八飛は考えられる攻防の手だが、後手玉への詰めろにはなっていないので6八とで後手勝ち)

5四歩図07
 8五桂に、〈b〉7八玉なら、6六桂(図)
 以下、8八玉に7六銀で後手の攻めのほうが早い。後手玉に駒を渡さず詰めろを継続してかける手段がないので先手が困っている。受けも難しい。7九香なら、6七と、7六香、7七と、9八玉、7八桂成で、後手勝ち。

 このように、「5四歩」7五銀 以下、後手勝ちとなる。


≪指始図≫(8四金まで、再掲)
 以上の結果、この図で「2五香」「2六香」「8五金」「4一角」「5四歩」について、いずれも「後手良し」とわかった。

 (なお、[追記]として、「8六玉」の戦後研究を末尾に示しておく)




≪最終一番勝負 指了図≫ 8六歩まで

 そして我々は、予定通り、▲8六歩 を指した。

 ここではこの手以外になかったようだが、しかし8六歩としたこの図は、「先手勝ち筋」があるのだろうか? 我々の選んだ道は正しかったのだろうか。
 わずかに、脳裏のどこかを不安がよぎった瞬間でもあった。


第22譜につづく




[追記;「8六玉」の研究]

変化8六玉基本図
 上に書いた通り、この「8六玉」(図)は、最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」が、3番目の候補手として示していた手である。この手の効果を知るために、研究調査してみた。

 図より、7五銀、9七玉、8五桂、9八玉が想定される手順。
 7五銀に“9七玉”と逃げることができるのが、「8六玉」の特徴だが、その効果はどれくらいのものか。

変化8六玉図01
 ここで〔ア〕9五歩(端玉には端歩を突け)が考えられるが、その手はこの場合は、2五香、3一桂、2六飛の攻めが効果的でで先手良し。(4一角、3二歩、3三香でも先手良し)
 またこの図で後手〔イ〕3二歩は、3三歩成として、同銀に、4一飛と打って、これも先手良しになる。(以下、4二銀右なら5三歩、4二銀左には3三歩がある)
 他に〔ウ〕7七桂成と、〔エ〕7六銀が考えられる手。
 (〔オ〕6七とや〔カ〕6六銀左は、やはり2五香~2六飛の攻めが速く先手が良い)

 〔ウ〕7七桂成は、7九香、7六銀、7七香、同銀成と進むと、そこで3三桂がある(次の図)

変化8六玉図02
 3三同桂、同歩成、同銀と応じるのは、3四歩、同銀、2六桂で先手が良い。
 なので後手は3二歩と受けるが、2一桂成、同玉、3三桂、同歩、4一角で攻めが続く(次の図)

変化8六玉図03
 3一香の受けに、3三歩成、同銀、3二歩、同香、5二角成(次の図)

変化8六玉図04
 先手優勢である。
 以下、4二銀右には、5一竜、3一歩、4一金で、先手勝ち。
 4二銀左には、3三歩で先手勝勢(次に5一竜、3一歩、3二歩成、同玉、3四香以下の詰めろ)

変化8六玉図05
 後手は〔エ〕7六銀(図)とするのが良い。
 次に7七桂成と7五桂を指されると先手は支えきれなくなる。よって、ここは「7九香」。
 「7九香」に、7七桂成なら、先ほどの7七香、同銀成、3三桂の変化に合流して先手良し。
 しかし、このタイミングで「9五歩」が後手の好手順になる(次の図)

変化8六玉図06
 先手に「7九香」と香車を使わせたので、先手からの2五香~2六飛や、4一角~3三香の早い攻めがなくなっているので、「9五歩」が間に合ってくるという計算である。
 ここで(1)7六香、(2)8六歩、(3)4一角、(4)7一馬などの手が考えられる。順に見ていく。

 まず(1)7六香は、9六歩、8九玉、6七と、3三歩成、同銀、4五角(攻防の手)、7七と、3八飛、9七歩成(次の図)

変化8六玉図07
 後手勝勢。

変化8六玉図08
 (2)8六歩(図)の場合。桂馬を取りきれば、3三桂など攻めに使える。
 しかし、6七と、8五歩に、8六桂がある(次の図)

変化8六玉図09
 9七玉なら8五金、8八玉には6六銀で、先手敗勢である。

変化8六玉図10
 (3)4一角(図)はどうなるか。
 3二歩、3三歩成、同銀、5二角成(同歩なら3一飛で先手良し)、9六歩、5三馬(次の図)

変化8六玉図11
 9七歩成、同馬、同桂成、同玉、9六歩、9八玉、8五桂、8九桂、6七と(次の図)

変化8六玉図12
 ここまで進んでみると、これは後手優勢の図になっている。
 7六香は、9七歩成、同桂、同桂成、同玉、8五桂以下、先手玉に詰みがある。
 先手はここで5一竜としたいが、それには4二角がピッタリの攻防手になる。

 ここから3四歩以下、手順の一例を示しておく。3四歩、4二銀、4一飛、7五角、8八銀、7七と(次の図)

変化8六玉図13
 後手勝勢である。

変化8六玉図14
 (4)7一馬(図)。
 「9六歩」、同竜、9七歩、8八玉に、7五金として、どうか(次の図)

変化8六玉図15
 7六香には、8四桂を用意して、後手好調に見える。
 ところがここで先手に好手順がある。3三歩成、同銀、4一飛、3一歩、3四歩(次の図)

変化8六玉図16
 こう進んでみると、先手有望の図になっているのである。
 4二銀左に――――(次の図)

変化8六玉図17
 5三馬(図)。 先手優勢。
 5三同銀なら、3三銀と打って、同桂、1一角以下、後手玉詰み。

変化8六玉図18
 (4)7一馬に、後手は「9六歩」として今の変化になったのだが、その手に代えて「3一歩」 としたのが、この図。先手からの3三歩成、同銀、4一飛のような攻めを先に受けた手である。
 結論を言えば、この図は「後手良し」。

 ここで〈a〉2五飛は、6六銀、4一角、3二桂で攻めが続かない。
 〈b〉3七桂と〈c〉7六香の変化の例を以下に示しておこう。

 〈b〉3七桂は遅い手に見えるが、そうではない。後手は6七ととするが、そこで5三馬が狙いの一手(次の図)

変化8六玉図19
 5三同銀なら3三銀から後手玉が詰むというわけである。
 5三同金なら4一飛、5二金という展開になり、それでも後手が良いが、ここは7七とで決着をつけに行く手がある。以下、8六馬に、7五金(次の図)

変化8六玉図20
 後手優勢である。

変化8六玉図21
 〈c〉7六香と銀を取る手には、そこで9六歩(図)。
 以下、同竜に、6七と、8六銀(次の図) 

変化8六玉図22
 9五歩、8五竜、同金、同銀、7七と(詰めろ)、9七玉、7六と、3五桂(次の図)

変化8六玉図23
 3五桂(図)は、後手7七飛なら2三桂成、同玉、2六飛、2五歩、7六飛とと金を消す狙いがある。
 ここは後手1一桂が手堅い。
 それでも2三桂成、同桂、2四金と攻めてくる。
 そこで後手は7七飛(次の図)

変化8六玉図24
 8八金の受けが見えるが、7九飛成、8九飛、9六香の展開は、先手に勝ち目がないと判断するなら、2三金以下突進することになる。
 2三金、同玉、2六飛。
 これに対する正しい受けは、2五歩、同飛、2四金である(次の図)

変化8六玉図25
 2四金(図)と受けるのが正着手。
 これを2四香では、1五桂、3二玉、2三角、2二玉、1二角成以下、後手玉は詰んでいた。
 図の2四金なら、1五桂、3二玉、2三角には同金と取って、以下同飛成に、4一玉と逃げて後手勝ちである。ここにきて先ほどに打っておいた「3一歩」が役立ってきた形だ。

 後手勝勢である。 この図から、2四飛、同玉、6八角はあるが、4六飛の切り返しがある。

変化8六玉基本図
 ということで、「8六玉」の研究結果は、「7五銀、9七玉、8五桂、9八玉、7六銀」以下「後手良し」、が結論である。(ただし実戦的には互角に近い戦いになることもわかった)
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終盤探検隊 part121 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第20譜

2019年06月09日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第20譜 指始図≫ 9四歩まで

 指し手  ▲9六歩  △8四金


    [円鏡=レンズ]
 アフサンもそのかたわらに身を横たえて、ノヴァトと尻尾をからみあわせた。もうへとへとだった。二頭はすぐに眠りにおちた。
 世界は破滅に近づいているかもしれない。
 だが、それを心配するのは明日にしておこう。

 そして、明日はやってきた―――夜明けからずいぶんたって目をさましたのに、それでも早すぎるような気がした。ワヴ=ノヴァトはだいぶ前に起きたらしく、せっせと遠見鏡につけた屈折硝子の調節をしていた。
   (『占星師アフサンの遠見鏡』ロバート・J・ソウヤー著 内田昌之訳 より)



 「遠見鏡(とおめがね)」とは「望遠鏡(ぼうえんきょう)」の別名である。日本では昔は「遠見鏡(とおめがね)」と呼んでいて、今は「望遠鏡(ぼうえんきょう)」と呼ぶ。
 だが、疑問に思うのは、これらになぜ「鏡」の文字が使われているのだろう、ということである。
 シンプルな形状の「望遠鏡」には実際は鏡は使われていないというのに。(かならず使われているのはレンズである)

 そういえば、「顕微鏡」にも「鏡」の字が使われている。これはたしかに鏡も使用されていることが多いが…、この装置の重要な部分はしかし、レンズのほうである。
 (英語では「望遠鏡」は「telescope」だし、「顕微鏡」は「microscope」で、「鏡」は「mirror」である)

 また、メガネも漢字で書くと「眼鏡」。やはり「鏡」の字が使われている。
 なぜだろうか。
 (英語ではメガネは「glasses」、これは「ガラス(glass)×2」の意味である。他に“光景”を意味する「spectacles」を使うこともある)

 おそらく、「レンズ」に「鏡」の文字が使われていたからである。
 昔、「レンズ」にはどうやら「円鏡」の文字が当てられていた。明治・大正時代のいくつかの書にはたしかにそれが使われている。
 ところがなぜか、「円鏡」と書いて「レンズ」と読むというシステムはやがて廃れてしまった。
 「レンズ」=「円鏡」と考えれば、「眼鏡」「望遠鏡(遠見鏡)」「顕微鏡」などに「鏡」の文字が使用されていることへの疑問も氷解する。
 日本ではレンズのようなまるく平べったい形状は、「鏡餅(かがみもち)」の例もあるように「鏡」をイメージするものであった。

 西洋の「レンズ(lens)」という呼び名は、元をたどれば、“レンズ豆”からきている。古くからあったレンズ豆に「レンズ」の形状が似ていたからだ。豆のほうが“先住民”なのである。

 天文学・物理学の分野で有名なガリレオ・ガリレイ(イタリアのピサの生まれ)が自作の望遠鏡を使って、木星の4つの衛星――ガニメデ、イオ、カリスト、エウロパ――を見つけたのは、西暦1600年頃。
 その少し前にだれかが「レンズ」を発明した。それが天文学を大きく前進させたのは間違いないが、その功労者である“「レンズ」の最初の発明者”がだれなのか、はっきりわかっていない。


 ロバート・J・ソウヤー著『占星師アフサンの遠見鏡』の原題は『Far-Seer』である。この「far-seer」という語はおそらく「遠見鏡(望遠鏡)」のことを指すと思われるが、そのような英単語は実用英語にはないようなので、たぶんこの作者の小説のための造語であろう。
 「far-seer」には、他に「遠い未来を予見する」という意味も掛け合わさっていると思われる。
 この物語は、ある星で恐竜(知性をもつ恐竜の種族)の少年アフサンが、「遠見鏡」という新しい道具を手にして、宇宙の正しい姿を見つけていくという話である。(恐竜なので牙と大きな尻尾があり肉食である)
 そしてアフサンは、自分たちの住んでいる世界は、「惑星」の周囲を周回する「月」の位置にあり、そして数百年の未来にはこの大地である「月」は、粉々に砕けて「惑星の輪」になってしまうだろうと未来を予見し警告を発するのである。
 「SF」という小説の分野によく現れていた古典的な展開――ロケットをつくって宇宙へ脱出する――というこの恐竜族(キンタグリオ)の未来への序章となる話である。
 この『占星師アフサンの遠見鏡』は、1990年代に「キンタグリオ・シリーズ」として作者のソウヤーが発表した三部作のその第一作目の書になる。
 ところがなぜか、米国ですでに発表されている第二、第三作目の書は日本では翻訳されていない。今後も翻訳される気配はなさそうで、続きを読むには、英語の本を読むしかなさそうだ。
 この恐竜の子孫たちは、おそらくロケットをつくって、<神の顔>と呼んでいた美しい「惑星」へと移住するのであろう。



<第20譜 再び“まぼろしの2五香ロケット”>

≪指始図≫ 9四歩まで

 終盤探検隊vs亜空間の主(ぬし)の最後の戦いはここまできた。先手9三角成に後手の≪ぬし≫が9四歩(図)と応じたところ。
 これは予想通りの手で、我々はその次の手を9六歩と決めていた。だからここはほとんどノータイムで指した。

 だが――――、ちょっと待て。


[研究:2五香ロケット2号]

2五香テーマ図
 ここで、「2五香」 があったのではないか。
 これが今回の研究テーマである。

 しかしチャンスは思わぬところに眠っているものだ(ここに“可能性”が潜んでいたとは!!)
 我々(終盤探検隊)は、「激指」(13、14)を使ってこの≪亜空間戦争≫を戦っているが、ここでの「2五香」は「激指14」では見つからない(8~10番目の候補手として瞬間的に時々現れることはあった)

 にもかかわらず、(戦後ではあるが)我々がここでの「2五香」を調べてみようと思ったのは、最新ソフト「dolphin1/orqha1018」が、この「2五香」を評価していたこと(評価値+12)、そして戦後研究で「4手前の2五香」(2五香ロケット砲)が「先手良し」と判明したので、それなら、ここでの「2五香」も調べる価値があると考えたからである。(4手前の2五香ロケットの研究調査はこちら→第15譜第17譜

 さて、ここで後手の指し手が問題である。


変化8四桂図01
 まずこの手――〔1〕8四桂(図)。 後手としてはこれが一番指したい手のはず。
 〔1〕8四桂 に7七玉で後手良し―――これが後手の目論見だが―――
 しかし、この場合は8四同馬があるのだ!
 以下、同歩に、2三香成、同玉、2五飛(次の図)

変化8四桂図02
 これで先手勝ちとなる。後手玉はこの2五飛(図)以下、詰んでいるのだ。(桂馬を入手すればこの詰みがある)
 さて、ほんとうに詰んでいるかどうか確認しておこう。
 3四玉なら、2四金、4四玉、3六桂、5四玉、4五角まで。
 よって2五飛には、2四合いだが、何を合駒しても、1五桂と打つ。2四金合が一番長くなるのでそれを示しておく。
 2四金合、1五桂、3二玉(3四玉は2三角、同金、3五金、3三玉、2三飛成まで)、2三角、2二玉、1二角成(次の図)

変化8四桂図03
 3一玉に、2二馬、同玉、2四飛以下、“詰み”である。


変化7四歩図01
 後手〔2〕7四歩(図)の場合。
 この手は先手が香車を捨てて攻めてきたときに7五香と打つのが一つの狙い。他には後手7三桂のような手も狙いとしてある。

変化7四歩図02
 〔2〕7四歩 には、8五玉(図)で、先手が良い。
 8四金なら、同馬、同歩、9四玉で先手玉が安全になる。7三銀なら9四玉だ。
 もしも後手が7四歩としていなかったら8五玉に9五金と打って追い返すこともできたが、この場合は9五金には7四玉とできる。つまり後手の7四歩が8五玉を好手にしたのである。


変化8四金図01
 〔3〕8四金(図)。 これは、先手の馬を封じ込めつつ先手玉の入玉を阻止した手。
 対して先手8五金は、7四歩なら、8四金、同歩、同馬で、先手有望だが、8五金に6五銀という手がある。以下、同玉に、5六銀、7六玉、6四桂以下、後手優勢となる。
 また、図で8六歩は有力だが、3一桂といったん受けておかれると、そこで先手の有望手が見つからず、先手が苦戦である。

 〔3〕8四金 に対しては、次の手が良いようだ(次の図)

変化8四金図02
 「7七玉」(図)とする。この場合はこれがベストの指手のようだ。
 この手は、後手の金銀の圧力から逃れ、さらに8八玉~9八玉と逃げる道を確保した手である。

 ここで後手はどうするか。勝負どころである。
 〈a〉6六歩、〈b〉7五銀、〈c〉3一桂、〈d〉6五桂が有力手。
 
 まず〈a〉6六歩でどうなるか。
 これには先手2通りの勝ち方がある。「2六飛」と、それから「2三香成、同玉、4五角」である。

 まず「2六飛」から見ていく。この図から、6六歩、2六飛、1一桂、8八玉、6七歩成、2三香成と進む(次の図)

変化8四金図03
 2三同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化8四金図04
 これで後手に受けはない。(3二金としても、4一角があるので)
 そして「金香」の持駒では、8八にいる先手玉は寄らない。よって先手勝ち。

変化8四金図05
 「7七玉」とした「変化8四金図02」から、「2三香成、同玉、4五角」としたのがこの図である。
 これでも先手が勝ち。
 3二玉なら3三歩成、同銀、2三金、4二玉、8四馬。4四歩には、3三歩成、同玉、2三飛、3二玉、2二金、4一玉、8四馬。(8四に金の質駒がある)
 また、図で2二桂(3四に利かせた)には3五飛がある。

変化8四金図06
 「7七玉」に、〈b〉7五銀(図)の場合。
 これに対しても、「2三香成、同玉、4五角」が有効である。
 以下3一銀が後手苦心の手だが…

変化8四金図07
 3五飛(図)と打って、先手勝勢である。(以下、3二玉に、3三歩成、同桂、3四歩)

変化8四金図08
 それではと、先手の「7七玉」に、〈c〉3一桂(図)と後手が2三を先受けした場合。これなら「2三香成、同玉、4五角」の攻めはない。
 では、「2六飛」でどうなるか。
 後手は「7五銀」。(1四桂もあるところでその変化は後述する)
 以下、8八玉、6六銀左と進む(次の図)
 
変化8四金図09
 ここで2三香成と攻めていくと先手失敗となる。まずその順を見ておこう。
 2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂、2五歩、同飛、2四歩(次の図)

変化8四金図10
 後手の2四歩~2五歩の連打は、2四同飛で意味ないように見えるが、この歩の連打は先手の飛車の横利きをなくすための歩打ちだった。2四飛となると、飛車の5段目、6段目の横利きがなくなる。
 そこで、後手の攻めがある。7七銀成、同玉、7六銀(次の図)

変化8四金図11
 7六同玉は、7五香、6五玉、7四金、6六玉、5六金までの“詰み”。
 8八玉と逃げても、7七金、8九玉、8八香以下、やはり詰んでいる。
 「2三香成」からの攻めは、先手が負けになった。

 今の手順中、4一角と打って、後手に3二歩と受けさせれば、後手の歩は一枚になるので2四歩~2五歩の連打はない。しかし…

変化8四金図12 
 “連打”でなくともこの図のように「2四歩」で先手の攻めを止められてしまう。2四飛と取れないようでは、先手の分が悪い。

変化8四金図13
 しかし、改良案がある。「変化8四金図09」(後手6六銀左)で、9八玉(図)と先逃げするのである。
 ここで後手7七銀成としたいところだが、それには5五角がある。(そのために先手は角は手駒に持っておくべき)
 また、7六銀には、6六飛がある。
 なのでこの図では、後手は6七としかなさそうだ。そこで2三香成と攻めていく。
 6七と、2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化8四金図14
 後手“受けなし”である。3二金には4一角があるし、3一玉には、2三桂成、6二金、3二角で先手勝ち。
 今度は2四歩は同飛で、何ら問題がない。

 「2六飛」に、「7五銀」は、先手勝ちになった。

変化8四金図15
 「2六飛」に、「1四桂」(図)ならどうなるか。これは3一桂と先受けした手を生かした手。
 先手はここで2三香成、同桂、2五飛もあるが、3六飛がより堅実な手で、これで先手が良い。
 3六飛以下、7五銀、8八玉、6六銀左、9八玉、6七と、3三角(次の図)

変化8四金図16
 玉を9八まで移動しておいて、3三角(図)と打ちこむ。
 3三同桂、同歩成、同銀に、3四歩と打つ。以下4四銀には、3三金、1一玉、8四馬で、先手勝勢である。

変化8四金図17
 今の一直線の手順だと先手勝ちになったので、後手は6七とに代えて、3二歩と受けた場合。
 それには先手1五歩(図)
 以下、6七と、1四歩、同歩、1三歩、同香(同桂には2六桂と打ち以下2五桂、1四桂、同香、同香は先手勝ち)、1二歩、同玉、4五角(次の図)

変化8四金図18
 4五角(図)と打って、次に2四桂、同歩、3三歩成の“詰めろ”。
 なので図では2二玉だろうが、3五桂と打てば、後手にもう受けがない。先手勝ちになった。

 ということで、〈c〉3一桂は「2六飛」以下先手勝ち、と結論する。

変化8四金図19
 〈d〉6五桂(図)と攻める手はどうか。
 以下、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成。これには8九金と受ける。
 そこで後手2四歩(次の図)

変化8四金図20
 後手の攻撃的な指し回しである。後手は二枚の桂を攻めに使ったので、先手に2六飛と打たれるともう受けがない。なのでその2六飛が来る前に、2四歩(図)から先手の香車を除去しようというのである。
 2四同香には2三歩、これは先手悪い。
 ここでは4五角が正着。2五歩なら8四馬、同歩、2四飛で、先手勝ちになる。
 4五角には、4四歩が後手最強の応手。以下、2四香、2三歩、3三歩成、同玉、2三角成、4三玉、3七飛(次の図)

変化8四金図21
 3七飛(図)は3二馬までの“詰めろ”。
 なので後手は3三桂とし、5七飛、6七歩、6六歩と進む(次の図)

変化8四金図22
 この6六歩(図)は後手玉を捕らえるための拠点になる手で、次に5九飛で金を取った後、5五飛、同銀、3四銀、5四玉、3二馬、4三銀、同馬、同金、6五金、6三玉、6一竜(以下詰み)という寄せを狙っている。
 6九金と金を逃げても、8四馬から5五飛で、やはり同じ攻めがある。
 ということで、図の6六歩を後手は同銀と取ることになる。以下、5九飛、5五銀上、6九歩(次の図)

変化8四金図23
 先手良し。(ただしまだ勝つまでには大変)
 図以下は、6八歩成、同歩、同桂成、3九飛、6七銀不成が予想され、以下3四歩、5四玉、3三歩成、7六銀成、8八金打、同成桂、同金、7七金、8九桂―――これは、“正確に指せば”という条件付きで先手が勝てる。

 以上の調査結果から、〔3〕8四金 の変化は、先手良し。


変化3一桂図01
 「2五香」 に対し、〔4〕3一桂(図)も有力な手である。
 「2三」を先に受けておいたので、たとえばここで先手が2六飛なら、8四桂で後手良しになる。
 先手は5七馬とするのが最善だろう(次の図)

変化3一桂図02
 先手5七馬(図)とと金を払いながら馬を自陣に引きつけた。
 ここで8四桂は8六玉で先手良し。また6五桂は9三馬と戻っておいて、これも先手が良い。
 後手の最善手はおそららく6六歩である(次の図)

変化3一桂図03
 次に後手6五桂がありこれは“詰めろ馬取り”になる。先手、どうするか。
 最新ソフトの評価値もここは「互角」。ここでの先手の最善手がはっきりしない。
 我々の調査研究の結果、「7九馬」は5六銀で後手良し。「3五馬」も、4四銀上が好手で、以下2六馬、5六銀で後手良しという結果になった。

 苦心して見つけた先手の有望手は、「4八馬」または「8六歩」である。
 「8六歩」以下を見ていく。

変化3一桂図04
 「8六歩」(図)。 この手は最新ソフト(dolphin1/Kristallweizen)の評価の低かった手で、その理由はおそらく「8六歩」には8四桂 と打たれる手があるからである。
 しかし 8四桂 に8七玉として、その後を調べてみると、「先手良し」の結論となった。

変化3一桂図05
 8七玉(図)としたところ。ここから後手はどう迫ってくるか。
 7六金、9八玉、6七歩成が考えられるところだ。(他に7五銀および6七歩成があり、後述する)
 以下、先手は2三香成とし、同桂に、2四馬と、敵玉に迫って行く(次の図)

変化3一桂図06
 2三馬、同玉、2五飛以下の“詰めろ”になっている。
 それを受ける手もなく、先手勝ちが確定となる。

変化3一桂図07
 7六金に代えて、7五銀(図)としたところ。
 「2三香成、同桂、2四馬」と、同じように攻めてみよう。
 以下、7六銀、9八玉、8七金、8九玉、8八香、7九玉、6七歩成(次の図)

変化3一桂図08
 実はこの図は“後手良し”である。
 後手玉には、2三馬、同玉、2五飛、2四合、1五桂の“詰めろ”がかかっていたはずだが…
 「2四合」のところで、「2四角」とすれば、これが“逆王手”になる。対して3五桂の返し技はあるが、3四玉、2三角、3三玉で、後手玉は詰まず、先手が負けになるのである。(1五桂なら詰むが、3五桂では詰まないのだ)
 先手玉を「7九」まで誘導することで、この“逆王手”が実現した。

 この図で3八飛(詰めろ逃れの詰めろ)があるが、7八と、同飛、同金、同玉、6六銀で後手優勢。

変化3一桂図09
 しかし修正案がある。「2三香成、同桂」の次に「2四金」(図)と打つのである。

 以下8六銀の勝負手には9八玉と逃げておく(8六同玉もあるが8五香以下きわどい)
 さらに8七金、8九玉、7七銀成なら、2三金、同玉、4一角から後手玉が詰む。
 よって、後手は3二金と受ける。これには4一角と打って、これも“詰めろ”である。
 仮に後手8五香なら、3二角成、同玉、2三金、同玉、2五飛、3二玉、2四桂(次の図)

変化3一桂図10
 2三玉に、1二桂成以下、“詰み”。 先手勝ち。

変化3一桂図11
 6七歩成(図)の場合。
 これには、2三香成、同桂の後、8四馬が面白い(2四馬でも先手良し)

変化3一桂図12
 8四馬で桂馬を入手して、後手玉が3二飛、同玉、2四桂以下の“詰めろ”になっている。
 以下は一例を示す。1四歩(詰めろを受けた)、9四馬、6六と、2四桂、3二歩(先手3二飛の防ぎ)、1二桂成、同玉、1五歩(次の図)

変化3一桂図13
 先手優勢。

 このように、後手8四桂以下は「先手良し」となる。

変化3一桂図14
 「8六歩」に、6五桂(図)。 こちらのほうが、実は手強い。
 先手は4八馬とかわす(6八馬も有力だが5六銀以下難解な変化になる。4八馬なら5六銀には6六馬がある)
 以下、7四歩(代えて6七歩成は9四竜で先手良し)に、8五玉(次の図)

変化3一桂図15
 8五玉(図)が面白い手。“入玉”を見せて、後手に8四金と打たせる意味。
 8四金に、7六玉と戻っておく。
 そこで6九金なら、2六飛と打って、次に2三香成、同桂、2四金を狙って先手良し。また7五銀は6五玉があって無効。
 7五歩、8七玉、6七歩成、5九馬、7六歩、1五馬(次の図)

変化3一桂図16
 金を一枚補充して1五馬と出たこの図は、3三金以下の“詰めろ”になっている。
 7七歩成、9八玉で、次に7八と左が先手玉への詰めろになるが、先手の攻めが一歩早い。
 後手3二歩と受けるくらいだが、2三香成、同桂、2五飛で、次の図となる。 

変化3一桂図17
 この2五飛(図)も、2三飛成、同玉、3五桂以下の“詰めろ”。
 3一玉と逃げても、2三飛成、2二歩、1二竜で、これもまた2三桂、4一玉、2一竜、3一香、3三桂以下の“詰めろ”になっている。 先手勝ち。
 (ここまでの手順で、先手の1五馬を防いで1四歩と先に受けるのは2六飛からの攻めが間に合って先手良し)

 どうやら、〔4〕3一桂 も「先手良し」と結論してよさそうだ。


2五香テーマ図(再掲)
  この図から、〔1〕8四桂〔2〕7四歩〔3〕8四金〔4〕3一桂 の4つの手を調べたが、すべて「先手良し」と出た。

 他に考えられる手としては、〔5〕4四銀上 がある。この手には、3七桂と応じ(2三香成以下詰めろ)、以下3一桂の受けに5七馬として、この変化も先手良しになる(解説は省略)
 また〔6〕6三桂 は、2六飛、3一桂、4五角、1一玉、9四馬で、先手勝勢。

 後は、〔7〕6六歩、それから 〔8〕5六と が考えられる。


変化6六歩図01
 〔7〕6六歩(図)。
 ここで「2六飛」は、3一桂ではっきりしない形勢になる(おそらく先手が悪い)
 「2三香成、同玉、4五角」は、この場合は“暴発”になる。 後手に7五香と打たれ、以下同馬、同銀、同玉、6四銀上、8五玉、5八角、6七歩、9五金以下先手負け。

 〔7〕6六歩 には、次の手が良い(次の図)

変化6六歩図02
 「9六歩」(図)である。これで先手が局面をリードできる。
 「9六歩」には、後手8四金の一手(先手に8五玉からの入玉を許しては後手の勝ち目はない)
 そこで、「2六飛」と打って、後手の3一桂に、4一角、3二歩、2三香成(次の図)

変化6六歩図03
 2三同桂に、2四金と攻めていく(もう何度も見てきた攻め筋だ)
 以下、3一桂に、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化6六歩図04
 「金香」を渡しても、9六歩を突いておいた効果もあって、先手玉は寄らない。
 一方、後手玉は“受けなし”だ。(3一玉には5二角成)
 先手勝ちが確定した。


変化5六と図01
 〔8〕5六と に対しても、「9六歩」(図)。
 以下8四金に、「2六飛」から同じ攻めで先手が勝てる。
 〔7〕6六歩 との違いはここで6六とのような手があることだが、その手には8五玉で先手勝勢になる。


2五香テーマ図(再掲)
 これまでの調査研究によって、ここで 「2五香」 と打った図は、「先手良し」とわかった。

 以上が「2五香ロケット2号」の研究である。




≪最終一番勝負 9六歩まで≫

 さて、「亜空間戦争最終一番勝負」は、「2五香」の手は素通りして、▲9六歩(図) と進んだ。



≪最終一番勝負 第20譜 指了図≫ 8四金まで

 9六歩には、△8四金(図) である。

 ここで8六歩が予定であった。
 だが、2五香もあるかもしれないとここでは立ちどまって考えた。相棒の「激指」が6番目の候補手として挙げている。だが、評価値は[ -933 ]――――あまりよくない。(2五香に6六歩や5六となら、今回の研究に合流し先手良しになるはずだが)
 なお、8六歩のほうの「激指」評価値は[ -379 ]である。


第21譜につづく
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