はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part146 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第45譜

2020年01月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第45譜 指始図≫ 9七玉まで


    [女王はおそろしく足が早い]

 アリスはちょっとのま、だまってそれを見送っていたけれど、きゅうにぱっと目をかがやかせて、「あら、見て見て!」とさけびだした。しきりになにか指している。「ほら、白の女王さまが原っぱをかけているわ。あっちの森からとびだしてきたとこよ。女王さまって、ずいぶん足が早いのねえ」
「きっと、敵に追われているんだろう」と、王さまは見向きもせずに、「森じゅう敵だらけだから」
「助けにとんでいってあげないの?」王さまの落着きはらったようすに、アリスはあきれ顔だ。
「むだ、むだ。妃(きさき)はおそろしく足が早いんだ。まるで万蛇砂魑(バンダスナッチ)をつかまえるみたいななものさ。だが、何なら妃のことをメモしておこうか。あれはなかなか愛(う)いやつであるとな」王さまはメモ帳を開きながら、おのろけ調でつぶやいている、「うい、は愛という字をあてればいいんだっけ?」
 このとき、ユニコーンが両手をポケットにつっこんだまま、ぶらぶらこっちにやってきてね。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 鏡のむこうの世界に入ったアリスは、巨大チェスの一員として参加したいと願い、「白のポーン」となった。
 そのアリスの「ポーン」の出発点は「g2」であった。
 そして、「g2」→「g4」→「g5」→「g6」→「g7」と進んできた。あと一歩進んで「g8」に行けば、アリスは念願の「女王」になれる。

 「g7(7マス目)」は、森であった。そこでアリスは、何千人といる兵隊に出会った。
 それを指揮していたのが「白の王さま」である。
 アリス自身は「白のポーン」であるから、アリスは白軍(先手番)であり、「白の王さま」を守って戦うのがこの「巨大チェス」での本来のアリスの役割である。
 (なお、敵の大将である「赤の王さま」には「g4」ですでにアリスは出会っており、「赤の王さま」はいびきをかいて寝ていた)
 「白の王さま」と話をしているとき、「白の女王さま」が原っぱを猛スピードでかけているのがみえた。敵に追われているらしい。
 アリスは「王さま」に、「助けにとんでいってあげないの?」と聞いたが、「王さま」は「むだ、むだ。妃(きさき)はおそろしく足が早いんだ」という。
 たしかに、チェスの場合、「女王(クイーン)」が最強の戦士で、「王(キング)」は一歩づつしか歩めない守られるべき駒なので、この「白の王さま」の態度は正しい。

 そこに、「ユニコーンが両手をポケットにつっこんだまま、ぶらぶらこっちにやってき」たのであった。




<第45譜 まだある>


≪最終一番勝負 第45譜 指始図≫ 9七玉まで

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、終盤探検隊は目下、研究調査中である。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桐〕9八玉 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行(先手良しの見込み)

 ここでの「候補手」はまだある。 ここまできたら、残さず全部調べてしまいたい。
 今回調査するのは、〔椎〕1五歩と、〔檜〕3八香。



[調査研究:〔椎〕1五歩]

1五歩基本図
 〔椎〕1五歩(図)は、1筋の攻めを狙う手。 1筋は後手の薄い場所なので理に適っている狙いだが―――間に合うかどうか、速度の問題になる。
 ここで後手は <あ>7五桂<い>7六歩 とが候補手だ。

 <あ>7五桂、9七玉、7七と、9八金(次の図)

研究1五歩図01(9八金図)
 9八金に代えて8九香もあるが、この場合それは7六歩(次に8七と、同香、7七歩成をねらう手)で、後手良しになる。
 9八金(図)に、後手は(A)7六桂。 以下8九香、6六銀に、ねらいの1四歩(次の図)

研究1五歩図02
 1四同歩に、1三歩、同香、1二歩(次の図)

研究1五歩図03
 1二同玉なら、3二角成がある。 先手成功の図である。


研究1五歩図04(7六歩図)
 (B)7六歩(図)が、代わる後手の有力手である。
 この図は、最新ソフトの評価値はほぼゼロ(互角)で、どちらが良いのかそれだけではわからない。
 1四歩 から攻めてみよう。
 1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩、6六銀、7八香(次の図)

研究1五歩図05
 6六銀は先手玉への“詰めろ”だった。先手は端攻めに歩を使ってしまい、受ける歩がないので7八香(図)と受けた(7九香は6九金が気になる。また8九香と受けるのは8七と、同香、7七歩成で後手良し)
 7八香を、同となら、1一歩成で先手良し。
 なので後手は、8七と、同金、同桂成、同玉で「金」を入手し、7五金と迫る(次の図)

研究1五歩図06
 6七歩の受けは、7七歩成、同香、7六金打で寄せられてしまう。
 しかし1一歩成、同玉に、6七歩はある。以下7七歩成、同香、同銀成、同玉、5八金、7五馬、7四香は、形勢不明。

 図より、7五同馬、同銀としてから1一歩成でどうなるか。以下同玉、3二角成に、2二金の受けがある。
 そこでしかし、先手にも2四桂という妙技がある(次の図)

研究1五歩図07
 先手は「飛金」と持駒を持っている。
 2四同歩、2三金、同金、同馬、1二金(2二金では3二飛で先手勝ち)、3三歩成、同銀、同馬、2二角、3一飛、3三角、3二金、2二金、3三金、同金、3四歩(次の図)

研究1五歩図08
 これは、先手の攻めが成功しているようだ。

研究1五歩図09
 しかし先手2四桂のところまで戻って、そこで後手に8六銀(図)という切り返しがあった。
 同玉に、6八角と打つのである。以下、8五玉、2四角成となり、これは「形勢不明(互角)」である。
 互角ではあるが、しかしこの変化は先手が好んで飛び込んでいく道ではなないように思われる。

研究1五歩図04(再掲 7六歩図)
 後手の(B)7六歩(図)に、1四歩 以外の手がないものか。
 研究の結果、我々は、ここでは 7八歩 と打つのがベストではないかと判断した。

研究1五歩図10
 7八歩(図)と打って、7八同とに、2五飛と打つ。このまま次に2六香と打たれると後手は困るので、後手は6二金。
 そこで3三香とする(次の図)

研究1五歩図11
 3三同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、5五飛(次の図)

研究1五歩図12
 これは先手良し。
 (B)7六歩には、7八歩、同と、2五飛で先手が勝てるとわかった。


研究1五歩図13(6六銀図)
 (A)7六桂でも(B)7六歩でも、「先手良し」になった。
 そこで後手(C)6六銀(図)が第3の候補手である。
 ここで 1四歩 なら、6七銀不成とし、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成、7八銀(詰めろ)、8八香、8九銀不成(次の図)

研究1五歩図14
 後手優勢。 これが後手(C)6六銀のねらい。

研究1五歩図13(再掲 6六銀図)
 このようにここで 1四歩 では先手負けになる。
 ではどう指すか。先の7六歩の場合と同じように 7八歩 と指すのは、7六とでも、8七とでも形勢不明の戦いになる。
 2六飛 と打つのが良いようだ(次の図)

研究1五歩図15
 2六飛(図)は次に2五香のねらいで、6七銀不成には2五香で先手勝ちとなる。
 よって、後手は6二金。これなら2五香には3一玉で後手良しになる。また、6二金に6六飛も、3一玉で後手良し。
 他に手がなければ先手が不利ということになるが、3三香がある。以下、同桂、同歩成、同銀に、そこで6六飛と銀を取る(次の図)

研究1五歩図16(6六飛図)
 この局面、最新ソフト(「dolphin1/orqha1018」)の評価値は-348とやや後手に傾いていたが、この先を調査すると、結局は「先手良し」ということになった。
 ここで先手5一竜を許さないために、4二銀右 または 6一歩 が後手の候補手になる。以下の変化を見ておく。

 4二銀右 は、3四歩、同銀、3三歩、同玉、2六桂とする。これは発見の難しそうな手順で、3三歩、同玉を利かすことで、後手の3一玉(角取り)の手を防ぎつつ攻めている。
 後手は7六桂と攻め、先手は7九銀とこれを受ける(次の図)

研究1五歩図17
 8九銀では8七香があるので7九銀(図)と受けた。
 ここで3五銀には3七桂とはね、次に6五飛をねらって先手が指せる。
 7九銀には7八歩がある。これで負けなら7九銀はもともとない手になるが。
 7八歩以下、3四桂、同玉に、8四馬、同銀、4五銀(次の図)

研究1五歩図18
 4五同玉に、3七桂と跳ね、以下、4四玉、4五金、3三玉、3六飛、2二玉、3二角成、1一玉、4二馬となって、先手勝ち。

研究1五歩図19
 6一歩 と後手が受けた場合。
 これには2五桂と打ち、以下4四銀右に、3四歩と打つ。この攻めも、3三桂成としないで3四歩と打つのは思いつきにくい攻め方である。
 3四同銀に、3三歩と攻める。同銀に、2一銀(次の図)

研究1五歩図20
 2一銀が先手のねらいの寄せで、これを同玉は3三桂成で先手良し。
 よって後手は、8七桂成、同金、同と、同玉、4二金と受けるが、3三桂成、同玉、3二銀成、同金、3五歩(次の図)

研究1五歩図21
 3五同銀は3四歩がある。4五銀は3七桂がピッタリ。
 4二玉が最善手と思われるが、3二角成、同玉、3四歩で、やはり先手良し。7五桂には9七玉で、先手玉に詰みはない。
 
 (6一歩以下、この部分の変化について「追加調査による変更」がある。末尾に加えておいた)

研究1五歩図16(再掲 6六飛図)
 よって6六飛としたこの図は「先手良し」ということになり、すなわち、(C)6六銀 には 2六飛 以下、先手良しになるとわかった。

研究1五歩図22
 戻って、この図は 後手<あ>7五桂 に 9七玉としたところ。
 実はここで 7七ととしたのが後手にとっての“悪手”だった のである。「7五桂と7七とはワンセット」のような意味合いがあり、後手としては素早く先手玉に詰めろを掛けたいという意図があったので、当然のように「7五桂、9七玉、7七と」と指してしまうところだが、9八金と受けたその場面はもう「先手良し」となっていたのである。
 ここで「7六歩」として、“二枚目のと金”を作るのが、後手の正着だったのだ。
 しかしここで「7六歩」とするなら、7五桂を打つのは後でもよい。


研究1五歩図23(7六歩図)
 ということで、<い>7六歩(図)の解説に移る。(先手の〔椎〕1五歩に7六歩としたところ)
 ここで7八歩と受けるのは7五桂、9七玉、7八とで後手良し。
 そうであれば、先手は攻めるしかない。しかし3三香は3一銀で先手悪い。2五飛も、7七歩成、9七玉、7五桂で後手良しがはっきりする。

 どうやら、ここは「1四歩」と攻める以外になさそうだ。
 1四歩、7七歩成、9七玉、1四歩、1三歩、同香、8九香、7五桂、1二歩(次の図)

研究1五歩図24
 1二同玉なら3二角成。 3一銀なら、3三歩成、同桂、5二角成。
 6二金なら、3三歩成、同桂、1一歩成。 いずれも先手良し。
 しかし、8七と、同香、7七との攻めがある。これがと金を二枚つくった効果だ。
 以下、9八金、6六銀、1一歩成と進む(次の図)

研究1五歩図25
 8七と、同金、同桂成、同玉、1一玉、3二角成、2二金(次の図)

研究1五歩図26
 2二金(図)と受けられ、これは4一馬といったん逃げるしかないようだ。
 後手は7五金と金を攻めに使う。9八玉、7六金に、1二歩と先手は攻めを続ける。
 以下1二同玉、1四香、同香、1三歩、同玉(次の図)

研究1五歩図27(1三同玉図)
 先手は、後手の7七銀成の詰めろがくる前に後手玉を仕留めなければいけない。
 ここで、2五桂 と、1一飛 が候補手となる。
 2五桂 は、2四玉、6六馬、同金、3三歩成、同銀、同桂成、同桂、2六飛(次の図)

研究1五歩図28
 2五香、6六飛、7四桂、4六飛、4四香(次の図)

研究1五歩図29
 後手良し。
 図以下、(3六飛は5四角があるので)4五歩、同香、3六飛が考えられるが、6五角、9七玉、3五歩、3七飛、4七香成の展開になり、どうも先手に勝ち目がなさそうである。

研究1五歩図30
 1一飛(図)の変化。
 以下、2四玉、3七桂(次の図)

研究1五歩図31
 8四銀、5二角成、3五玉、6三馬、5四香(次の図)

研究1五歩図32
 5二馬から6三馬としたところでは先手がうまくやったようにも思えるが、依然として後手7七銀成がある。8三馬、7七銀成、7九桂、8七歩では、先手が負け。
 4七金は、7七銀成、7九桂、9三銀が、後手9七香、同玉、8七金、同桂、7九角以下の詰めろになっていて、これも後手勝ち。
 ということで、後手は8四馬、同歩、4七銀とするが―――8七金、同玉、6五角の返し技がある。以下、9七玉、4七角成(次の図)

研究1五歩図33
 後手良し。
 この変化は、先手にはまだ三枚の大駒があり、まだ“勝負のあや”はありそうではある。しかし、玉の安全度に大きな差があり、形勢は後手優勢ではっきりしている。

 これで、<い>7六歩 の変化は後手良し、と証明された。


1五歩基本図

 結論はこうなる。 〔椎〕1五歩 は、7六歩以下後手良し




[調査研究:〔檜〕3八香]

 3筋に香を据える「香車ロケット」はどうだろう。

3八香基本図
 〔檜〕3八香 は、3筋をねらう手。
 この手には、【U】7六歩 と、【V】7五桂 がある。
 (なお、この場合は3九香と打っても3六香と打っても同じ変化になりそう。それらを代表して〔檜〕3八香として調べていく)

 【U】7六歩 から見ていこう。


研究3八香図01
 【U】7六歩(図)に、7八歩は、7五桂、9七玉、7八とで、後手良しになる。
 したがって先手はここで、3三歩成と攻める。 以下、同銀、同香成、同玉、3七桂と進む(次の図)

研究3八香図02
 3七桂(図)で、後手玉の上空を押さえる。次に3一飛がねらいになる。
 その手をくらうと困るので、後手は7七歩成、9七玉として、4二玉とする。
 そこで2二金が好手。
 以下、3一香、3三歩、同桂、1一飛(次の図)

研究3八香図03
 5四銀、3一飛成、5三玉、7一竜(次の図)

研究3八香図04
 7一竜として、7三竜をねらう。 6二銀なら、8四馬、同歩、5二角成、同歩、4二銀、4四玉、3四金(図)となって―――(次の図)

研究3八香図05
 後手玉詰み。 3四同玉に、3六香、3五合、2五金、同桂、3二竜以下。

研究3八香図06
 しかし、7一竜に、6三銀が後手の好手で、 これで形勢はまだはっきりしない。 7三竜なら5四玉で後手ペースになる。
 ここで先手の指し手が難しい。実質的に「互角」の局面といえる。
 どうやら、3二角成が先手の最善手。
 以下6二銀に、そこで4四歩と攻める(3二角成と4四歩は発見の難しい手だ)

研究3八香図07
 4四歩が好手で、同銀なら6五銀で先手勝ちになる。
 7一銀、4三歩成、5四玉、5三と、4四玉、7一馬、8七飛(次の図)

研究3八香図08
 先手の3二の馬が、いつのまにか自陣に利いている。これが3二馬~4四歩の効果の一つ。
 8九飛のような手なら、5四と以下後手玉は詰んでしまう(6二歩は同馬で無効)
 だから、8七飛(図)と打って、後手はこの馬を消去して玉のピンチを脱出しようとする。
 8七同馬、同と、同玉、7五桂、9七玉、5六銀、3三竜、5五玉、5二と、6六玉、8八飛、7八歩、4八銀(次の図)

研究3八香図09
 結果は、「先手やや良し」(「dolphin1/orqha1018」評価値は+500くらい)


研究3八香図10(7五桂図)
 【V】7五桂(図)なら、どうなるか。
 9七玉、7七とに、9八金は、9五歩で後手ペースになる。
 しかしこの場合は、3三歩成、同銀(同桂ならいったん9八金と受けて先手良し)、同香成、同玉、3七飛がある(次の図)

研究3八香図11
 3七飛(図)に、後手は3四香と応じる。
 以下、7七飛、7六歩(次の図)

研究3八香図12
 ここで、〔赤〕7九飛〔紫〕5七飛 がある。
 まず、〔赤〕7九飛 から(次の図)

研究3八香図13(7九飛図)
 〔赤〕7九飛(図)に、ここで 5八金 は3五歩で先手ペースの戦いになる。
 6六銀 は考えられるが、それは―――(次の図)

研究3八香図14
 7八歩(図)と受けて先手が指せるようだ。かんたんに7七歩成でと金をつくらせない。

 だから、〔赤〕7九飛には、6七歩 が後手の有力手だ。 5九飛なら、7七歩成で後手優勢。
 しかし、先手には、3五歩の好手がある(次の図)

研究3八香図15
 3五同香は、5二角成、同歩、4五金で、先手勝ちが決まる。
 よって、6八歩成、3四歩、4二玉と進む(3四歩に4四玉は4八香で先手良し)
 以下、5二角成、同玉、7二銀と攻め続ける(次の図)

研究3八香図16
 どうやら先手が良くなったようだ。
 “詰めろ”を受ける6二銀左に、8四馬、同歩、5四香、4二玉、2二金(次の図)

研究3八香図17
 先手勝ちになった。

 しかし、これで先手良し――とは決まらない。

研究3八香図18
 「7九飛図」に戻って、6九金(図)という手があるからだ。
 6九同飛に、7七歩成で、金を押し売りして、その代わりに攻めの主導権を取る指し方。
 以下、9八金、6七歩(次の図)

研究3八香図19(6七歩図)
 結論から言うと、これで「後手良し」。
 図の6七歩に代えて、6二銀左の受けの手(5一を強化して次に4二金や4二玉を狙う)が後手のより手堅い手で、これも後手有望。
 ここでは、6七歩(図)以下を解説しておく。

 先手は、(1)3五歩と(2)6一竜が有力手。

研究3八香図20
 (1)3五歩(図)。
 これを同香なら、先手が良くなる。その手順は、3五同香に、6一竜、6八歩成、3四歩、同玉、4九飛(次の図)

研究3八香図21
 これで先手良し(手順中、6一竜が好手で、これは後手の4二玉をあらかじめ牽制した意味がある)

研究3八香図22
 (1)3五歩に4二玉(図)ならどうか。
 これは以下、2二金、4一玉、8四馬(次の図)

研究3八香図23
 8七桂成、同金、同と、同玉、7六角、8八玉、8七金、8九玉、6二金、7五馬、7七歩、7九歩、5二玉、6三歩(次の図)

研究3八香図24
 6三同玉に、6五歩と指す。先手良しになった。
 これは、後手が応手を誤ったからである。

研究3八香図25
 先手(1)3五歩には、後手は6八歩成(図)としなければいけなかった。これが後手の“正着”である。
 対して4九飛なら、4二玉で後手勝勢になる。
 8九飛と逃げるのが最善だが、今度は4二玉には、2二金、4一玉、8四馬で先手がやれる。この変化のときに8九飛が受けに役立っているのだ。
 8九飛には、後手は7八と寄が正着になる。 以下、3四歩、4二玉(次の図)

研究3八香図26
 8九とと飛車を取られるともう先手は負けなので、その前に先手はここで後手玉を攻め切るしかない。
 2二金、5四銀、6一竜、8九と、5二角成と勝負にいく。以下、同歩に、5一銀、5三玉、7一馬、6二歩(次の図)

研究3八香図27
 6二同竜、4四玉、6四竜、6二歩、4九香、4五角(次の図)

研究3八香図28
 先手の攻めが続かず、後手勝ちがはっきりした。
 (1)3五歩では勝てないとわかった。

研究3八香図29
 それでは、(2)6一竜(図)ならどうなるだろうか。これは後手の4二玉の筋をけん制しつつ、次に3五歩を打とうという意味である。
 これには、4二金が後手の正確な応手である。以下、6三角成、6八歩成、4九飛に、6二銀右とし、4五馬、4四銀引と進む(次の図)

研究3八香図30
 以下、4六馬、7八と寄、3五歩、7六歩(詰めろ)、3四歩、2二玉(次の図)

研究3八香図31
 後手勝勢である。
 先手玉に“詰めろ”が掛かっているので、8九香と受けることになるが、同と、同飛、7八とで、先手に勝ち目がない。


研究3八香図32
 後手7六歩に、〔赤〕7九飛6九金 という手があって、後手良しになった。
 それなら、〔紫〕5七飛(図)に期待をするしかない。
 これには「6六銀」が正着だ。
 これを誤って6九金とすると、3五歩、5六銀、3四歩、4二玉、3一金のような展開になり――(次の図)

研究3八香図33
 この変化は、先手良しになる。

研究3八香図34
 だから後手は、〔紫〕5七飛 に、「6六銀」(図)とするのが正しい。
 以下、5九飛、7七歩成、9八金と進む(次の図)

研究3八香図35(9八金図)
 この図がどちらの勝ちになっているか、それが重要だ。
 ここで後手の有力は候補手が複数あって、最新ソフトの“答え”もコロコロ変わる(評価値は-400くらい)
 調査研究の結果、我々終盤探検隊の出した結論は、次に示す手で、後手良し(次の図)

研究3八香図36
 6七銀不成(図)で、どうやら後手良しになっている。
 この手は、次に7六銀成や7八銀不成を狙う厳しい攻めで、そうなると受けが難しくなる。
 先手の攻めは、やはり3五歩になる。これを同香なら、5五飛で、先手良しになるが―――(次の図)

研究3八香図37
 3五歩に、4二金(図)が後手の好手である。
 以下、3四歩に、2二玉、3三歩成、同歩で、次の図になる。

研究3八香図38
 ここで5三飛成という手がある。同金なら、3一銀で後手玉が詰むが、しかし5三飛成に4一金と応じられて、後手良しである。角を持たれると7九角があるし、それを先受けして8八香と打っても、8九角で"受けなし"になる。5三飛成では先手勝てない。
 また、8四馬として、これを同歩(同銀)なら、3二金、同金、同角成、同玉、4一銀、同玉、5一竜、同玉、5三飛成以下後手玉が詰む。しかし、8四馬に、8七桂成、同金、同と、同玉、4一金と応じられると、逆に先手玉のほうが“詰めろ”になっていて、後手勝ちとなる。

 なので、どうやらここは「6三角成」とするしかないが、8七桂成、同金、同と、同玉、7六銀成、7八玉、7七歩、6九玉、6七成銀、5八飛、5六桂と進んで―――(次の図)

研究3八香図39
 先手が勝てない。5九玉とすればまだ粘れるが、5八成銀、同玉、6八飛、4七玉、4八桂成、3七玉、6三飛成と進んで、後手優勢ははっきりしている。

 〔紫〕5七飛 も、後手良しになった。


 これで、結論が出た。


3八香基本図(再掲)

 〔檜〕3八香 は、7五桂以下、後手良し




6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桐〕9八玉 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行(先手良しの見込み)
  〔椎〕1五歩 → 後手良し
  〔檜〕3八香 → 後手良し


 〔椎〕1五歩も、〔檜〕3八香も、ともに後手陣の急所を攻める手で惜しいところもあったが、後手に正確に対応されると「後手良し」となるとわかった。
 まだ、未発表の候補手は残っている。


第46譜につづく






[追加調査による変更:〔椎〕1五歩について]

研究1五歩図16(6六飛図)
 この図は、〔椎〕1五歩に7五桂、9七玉、7七と以下の一変化で、この上では6六飛(図)で先手良しという結論になっている。
 6六飛に、後手は4二銀右6一歩だったが、どちらの手も後手玉の攻略ができた。

 しかしあらためて調査して、6一歩以下の変化に “訂正”が必要な個所が発見された。
 6一歩に、2五桂と攻めるのだが、対して、「4二銀右」とするのが、後手の“変更”点だ(次の図)

追加研究図a
 2五桂、4四銀右、3四歩、同銀、3三歩、同銀、2一銀と攻めて先手良し―――というのが本編での手順と結論。
 しかし、この図のように、2五桂に「4二銀右」と銀を引いて受けるとどうやら事情が変わるとわかった。
 そこで同じように3四歩、同銀なら、3三歩以下同じようにこの後手玉を攻略できる。
 ところが、この場合は、3四歩に、「2四銀」がある(次の図)

追加研究図b
 これで先手に継続手がないのだ。
 もしもこれが後手4四銀型なら、4五歩があったので、攻略できた。ところがこの場合は4二銀と引いて受けているので、その手がない。
 ここで6三歩は、2五銀、6二歩成、7六香(詰めろ)で、後手勝ち。他に良い手も見つからず、この図は「後手良し」

 ということで、「6六飛図」は、「先手良し」→「後手良し」 に結論が変わった
 つまり、〔椎〕1五歩に対して、「7五桂、9七玉、7七と」という手順でも、「後手良し」となるということになる。

 しかし、〔椎〕1五歩は(7六歩で)後手良し」という全体の結論に変更はない。 
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終盤探検隊 part145 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第44譜

2020年01月23日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第44譜 指始図≫ 9七玉まで


    [不誕生日のプレゼント]

「あら、きれいなベルトしてらっしゃるのねえ!」
   (中略)
「いえまってよ」アリスは考えなおし、「きれいなネクタイよね、そういったつもりで――いえ、ベルトっていおうとして――ああ、ごめんなさい!」アリスは、しどろもどろだ。
   (中略)
「だって首だかウエストだか見分けがつかないんだもの」と、これはアリスのひとりごとだ。
   (中略)
「ネクタイだよ、きみ。きみのいうとおりきれいなネクタイさ。白の王さまとお妃(きさき)がくださったんだよ、ほらね」
「ほんとう?」とアリス。結局いい話題だったんだと思って、うれしくてしかたない。
「ぼくにくださったんだよ」ハンプティ・ダンプティはしみじみとした口調でいって、膝を組みなおし、両手でかかえこみながら、「くださったんだよねえ――不誕生日のプレゼントに」
「え、なんですって?」アリスはきょとんとした顔だ。
「きいたってかまわんよ」とハンプティ・ダンプティ。
「あのう、不誕生日のプレゼントって、なにかと思って」
「誕生日でない日にもらうプレゼントだよ、もちろん」
   (中略)
「自分のいってることがわかっちゃいないんだねえ」ハンプティ・ダンプティは声をあらげ、「一年はいったい何日か?」
「三百六十五日」とアリス。
「じゃあ誕生日は何日か」
「一日」
「三百六十五から一をひくと、のこりは?」

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 「6マス目」で、アリスはハンプティ・ダンプティに出会う。大きなタマゴ形の怪人物で、なぜか高い塀の上にこしかけている。
 会話がめんどくさい方向にすすみそうだったので、アリスは話題を変えようと、彼のベルトをほめた。それを口にしたとたん、あ、間違えた、ネクタイだったかと思いなおした。なにしろハンプティ・ダンプティの全体は「タマゴ形」だったから、首と腹の区別がつかない。
 ネクタイが正解だった。
 そのネクタイは、なんと「白の王さま」と「白の女王さま」にもらった「不誕生日のプレゼント」だという。
 それをきいて、アリスは「あたしはやっぱり誕生日のプレゼントのほうがいい」というと、ハンプティ・ダンプティはアリスの考えちがいを正そうとするのだ。
 理屈はこうだ。誕生日は一年に「一日」しかないが、不誕生日なら「三百六十四日」ある。だから、「不誕生日プレゼント」をもらえる日のほうが圧倒的に多いので、だからどっちがいいかは明らかだと、そのタマゴ形怪人はいうのだった。
 ハンプティ・ダンプティは、こんなめんどくさい奴だ(鏡の世界の人物はこんなのばかりだが)
 この卵型体型の怪人物は、相手を言い負かすことを第一に会話しているようである。しかし7歳の少女アリスを相手に、全力で「言い負かす」ことをやっていると思うと、おもしろい男だとも思えてくる。



<第44譜 9八玉はどうだ>


≪最終一番勝負 第44譜 指始図≫ 9七玉まで

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 ついに、“戦後調査”によって、この「6七と図」における「先手の勝ち筋」は10コとなった。

 さて、まだ未調査の〔桐〕9八玉 はコンピューター・ソフトの評価が高い手だった。たとえば「激指14」は3番目の候補手だったし、最新ソフトも5番目くらいの候補に挙げていた。
 実戦中は採用するつもりがなかったので、それ以上調べなかったこの手だが、実際どうなのかと気になってはいた。
 今回は、この手、〔桐〕9八玉 の調査結果を報告する。




[調査研究:9八玉]

9八玉基本図
 〔桐〕9八玉(図)は、一見、後手に角があると5四角の筋に入るので、悪い手にみえる(だから我々は実戦ではこの手を候補手から排除したのだった)
 たとえばここから7七とに、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛と攻めると、8一桂、同竜、5四角の「王手竜取り」が成立する。この変化ははっきり後手良しとなる。
 その筋を避けるために「9七玉」とする手が考えられるところなのだが、それをわざわざ「9八玉」にするのは、なにかメリットがあるのだろうか。
 実は、メリットはある。 7七とと迫られたとき、後手に「角桂」とあったとしても、「9八玉型」ならば先手玉は“詰めろにはならない”のだ(8七角なら9七玉で、7六角には8九玉で不詰)
 これが「9七玉型」なら、7九角で詰んでしまうところ。

 さて、ここで後手の手が問題だ。
 まず【1】7七と から。


研究9八玉図01
 【1】7七と(図)には、「7八歩」が正着手になる(次の図)

研究9八玉図02
 「7八歩」(図)に、7六と なら、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛のときに、8一桂としても、5四角が王手竜取りにならない。以下8一同竜、8七と、同玉、5四角なら竜が取れるが、6五歩、8一角、同飛成で、先手勝勢である。 と金を捨ててしまっては、飛車だけでは先手玉が捕まらないというわけだ。
 7六と は、3三歩成以下、先手良しになる。

 すると、ここで考えられる後手の手は、7八同と か、7六歩 である(次の図)

研究9八玉図03
 7八同と(図)とと金を移動させることで、これで先手玉は角以外に金や飛車を渡してもまだ詰まない形になっている。
 さて、具体的には、「2五香」(図)と攻めるのがわかりやすい。
 7六桂のような手なら、2六飛、8八桂成、9七玉、3一桂、2三香成、同桂、2四金で、これは先手勝ちになっている。

 よって、後手は「6二金」とする。
 それでも「2六飛」。 対して2四桂なら、同香、同歩、3五桂、3一玉、5二金で先手勝勢だ。
 「1一桂」の受け(次に3一玉が後手の狙い)に、「3三歩成」がある。
 3三同桂なら、2三香成、同桂、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、3二角成で、先手勝ち。この変化は後手に7八ととさせた手が生きている(金香を後手に渡しても先手玉は不詰。7八ととさせた効果である)
 また、3三同銀は、5一竜、4二銀右、3四金で寄っている。
 よって後手は「3三同玉」と応じる。

 すなわち、この図(2五香)から、「6二金、2六飛、1一桂、3三歩成、同玉」と進んで―――
 そこで「3七桂」が、“詰めろ”になる(次の図)

研究9八玉図04
 次に3六飛以下、後手玉は“詰み”がある。 2二玉には3三歩がある。
 4四歩には、3六飛、4三玉、3二角成、5二玉、5四歩。
 先手勝勢である。

研究9八玉図05
 戻って、「7八歩」に、7六歩(図)の変化。
 7六歩と打たせて、これで後手5四角の筋がなくなった。よって、3三歩成、同銀、5二角成といく。
 5二同歩なら、3一飛で先手良しになる。
 よってここで後手7五桂だが、それには8九香と受ける(次の図)

研究9八玉図06
 この形も「9八玉型」が生かされている。もしも「9七玉型」なら、5二歩と角を取られ、その手が7九角以下の詰めろになっていた。この場合は、5二歩なら、3一飛が先手で入り、先手が勝てる。
 よって後手は4二銀右と受ける。それには4一馬としておく。
 以下7八と、3四歩、7七歩成(詰めろ)、3三歩成、同銀、3一銀、1一玉、3八飛(詰めろ逃れの詰めろ)、8七桂成、同香、8八と寄、同飛、同と、同玉、3八飛、9七玉(次の図)

研究9八玉図07
 先手に手番が回れば、3二馬がある。
 図より、2二銀が予想される。以下、同銀成、同玉、8九金、7六桂、7八歩(次の図)

研究9八玉図08
 先手勝ち。

 これで、【1】7七と は先手良しとはっきりした。


研究9八玉図09(7五桂図)
 【1】7七と には、「7八歩」があって、先手良しになった。
 そこで、【2】7五桂(図)が、後手の次の候補手となる。
 7五桂と打って、 次に7七とが“詰めろ”になる。

 <x>「3三歩成、同銀、5二角成と行くのは、どうなるだろうか。
 5二同歩に、3一金とするのが良い手になり、8一桂、同竜、5四角、6五歩、8一角、7一飛となれば、先手良し。
 しかし5二同歩ではなく、「7七と」とするのが後手の正着。
 以下、「4三馬」(次の図)

研究9八玉図10
 「4三馬」(図)で、持駒をたくさん持っている先手が良さそうにも思えるが、そうではない。 ここは7六桂と桂を活用する手があって、後手が良い。 7六桂は先手玉への“詰めろ”である。
8九香と受けるが、そこで4二歩(次の図)

研究9八玉図11
 これで、後手優勢。 2五馬のように馬筋をそらして8七桂成、同香、8八桂成から詰める狙い。
 7六馬と切るしかなさそうだが、同ととした局面は、次に後手8七角の寄せがあって後手優勢。

研究9八玉図12
 <x>「3三歩成、同銀、5二角成は先手勝てないということであれば、<y>「8九香(図)と先受けする手が考えられる。
 この図の最新ソフトの評価は、ほぼ「互角」である。
 <y>「8九香には、7六桂が最善か。
 次の7七との手に備えて先手は9七玉。
 以下7七と(代えて後手6六銀も有力→形勢互角)に、7八歩、同と、8五歩とする(次の図)

研究9八玉図13
 7四金なら、8六玉の上部脱出が先手のねらい。
 後手は7四銀とするのが最善。 以下8四歩、8八桂成、同香、同と、同玉、6六銀と進む(次の図)

研究9八玉図14
 後手8五香の手があり、先手厳しいと思われる局面になっている(最新ソフトの評価値は-250くらい)
 9四馬として、どうか。以下、8五香を同馬と取って、同銀に、2六香が返し技。 2六香は、2三香成、同玉、2五飛以下の“詰めろ”である。
 しかし、後手にも返し技がある。 4四角だ(次の図)

研究9八玉図15
 4四角(図)が、"詰めろ逃れの詰めろ"である。
 しかし、9七玉と逃げて、形勢ははっきりしない。
 この変化はここで打ち切り、<y>「8九香は 「互角」としておく。

研究9八玉図16
 「研究9八玉図09(7五桂図)」まで戻って、<z>「3三香(図)があった。 我々終盤探検隊の研究ではこの手が最善手である。
 後手の応手は、3三同銀と、3一銀がある。
 まず3三同銀から。 同歩成、同玉に、6一竜が好手である(次の図)

研究9八玉図17(6一飛図)
 6一竜(図)は、後手の4二玉の筋を無効にした手。この手に代えて4五金では、4二玉で後手良しになるところだった。
 6一竜としておいて、次に4五金をねらう。図で4四玉なら、3七桂で先手良し。
 7七と が後手の指したい手だが、それには、3七飛がある(次の図)

研究9八玉図18
 以下、4四玉、7七飛、7六歩、4七飛、4五香、9七飛(次の図)

研究9八玉図19
 6六歩、6八歩、5八金、3二角成、6八金、6五金、6七歩成、3六歩(次の図)

研究9八玉図20
 これが変化の一例だが、先手勝勢になった。

研究9八玉図21
 6一竜に、 7七と では3七飛で「と金」を消されて後手不利になるということであれば、後手は他の手を指すしかない。
 それなら、5四銀(図)ならどうか。 この銀は先手のねらう4五金を消しながら、6五~7六銀という攻めへの活用も狙っている。
 この手に対しても、3七飛と打つのがよい。後手の7七とをけん制する意味がある。
 以下、3四香、3五歩、4六銀、3四歩、4四玉、4八香(次の図)

研究9八玉図22
 以下、“4五銀”には、3六銀(次の図)

研究9八玉図23
 5五玉、4五銀、同玉、7六銀(次の図)

研究9八玉図24
 先手良し。 以下3六銀、4六香、同玉、5五銀、同玉、3六飛が予想され、そう進むと先手勝ち。

研究9八玉図25
 4八香に、“5五玉”(図)が後手最善手のようだ。
 4六香、7六歩、7八歩、6六玉。
 ここで、7一竜が好手(次の図)

研究9八玉図26
 7一竜(図)は“7筋に竜を利かす”という意図がある。
 6二銀なら7五竜、同金、同馬、同玉、6七飛で、先手勝勢になる。これが7一竜の狙い。
 よって、後手は6二金と受ける。
 以下、5一竜、5二歩、6八歩、5七と、4八金、5六と、8五歩(次の図)

研究9八玉図27
 8五同金なら、6二竜が決め手になる(同銀に、5七銀以下後手玉詰み)
 4六とが粘りのある手だが、5七銀、同と、同金、6五玉、8四歩と進んで―――(次の図)

研究9八玉図28
 後手玉を押し戻して、先手勝勢がはっきりした。 8三馬以下の“詰めろ”。
 後手5五銀なら、3五飛がわかりやすい決め手になる。

研究9八玉図29
 <z>「3三香に、3一銀(図)の場合。
 これには、5二角成といく。
 そこで7七とは、4三馬でこの場合は先手良し。4三馬の手が、3三香が入っているために後手玉への“詰めろ”になっているので、今度は後手7六桂のような攻めは入らないから。だから4三馬には8七桂成、同馬、同と、同玉と進むが、先手優勢である。
 ということで、5二馬を後手は同歩と取り、先手は4一飛と打つ(次の図)

研究9八玉図30
 これでほとんど後手陣に受けが利かない。4二銀引は同飛成、同銀、3二香成以下詰み。4二角と打っても、3一飛成、同角、3二香成、同玉、4一銀以下詰みなので意味がない。
 しかし、7六角と打って、8九玉、7八と、同玉、6七角成、8八玉に、3四馬という手段があった(次の図)

研究9八玉図31
 この図は、最新ソフトの評価値的にも+400~600くらいの値で、先手良しとなっている。
 以下は変化の一例を示しておく。
 3一飛成、3三玉、4五歩、7六桂、9七玉、3五馬、7八金(次の図)

研究9八玉図32
 4五馬、4一竜左、4四玉、3二竜右、5四銀、7一馬、6二歩、7二馬(次の図)

研究9八玉図33
 7二馬(図)で、後手玉は4三竜直、同銀、4五馬以下の“詰めろ”になっている。 6三歩は同馬で無効。6三香と受ける手には、7三馬と銀を取って、この手も3五銀、同馬、5五馬以下の詰めろになっている。
 また図で3三歩の受けには、3七桂がピッタリの決め手になる。代えて3三香には、4六歩、同銀、6五銀のように、やはり「4五」を目標に攻めていく。
 先手勝勢である。

 【2】7五桂 は、<z>「3三香で先手良しとわかった。


研究9八玉図34(7六桂図)
 〔桐〕9八玉 に、【3】7六桂(図)が後手工夫の手。
 【3】7六桂 に(ア)3三香では、今度はうまくいかない。 その手順をまず示しておく。
 (ア)3三香、3一銀、5二角成、7七と(次の図)

研究9八玉図35
 ここで4三馬が"詰めろ逃れの詰めろ"だが―――
 8八桂成、9七玉、8七成桂(次の図)
 
研究9八玉図36
 この場合は、6四にいた桂馬を使って8七成桂(図)と先手の馬を差し違えることになった。持駒の桂は使わないでまだ手に持っている。
 8七同馬、同と、同玉、7五桂。 温存した桂をここで使えるのが大きい。
 以下、9七玉、6九角、8八金、9五歩(次の図)

研究9八玉図37
 後手良し。

研究9八玉図34(再掲 7六桂図)
 また、【3】7六桂(図)に、(イ)3三歩成、同銀、5二角成と攻めるのも、7七とで後手良しになる(この順の解説は省略する)

 では、どうすればよいか。

研究9八玉図38(3七飛図)
 【3】7六桂 には、(ウ)3七飛(図)が正解手である。

 そこで後手が何を指すか。
 (ま)6六銀 なら、そこで3三香と打ちこむ。 以下同桂、同歩成、同銀、3四歩、4二銀、8四馬(次の図)

研究9八玉図39
 8四馬と金を補充して、後手玉は3二角成、同玉、3三金以下の詰みがある。 先手勝勢。

研究9八玉図38(再掲 3七飛図)
 7八と や、7五桂 にも、今と同じように、3三香で先手が勝てる。
 他に考えられる手としては、(み)4四銀上(む)4四銀引 がある。

研究9八玉図40
 (み)4四銀上 と自陣を受けた場合。
 「7七と」と指せないので、後手は先手玉に“詰めろ”をかける手がない。速い攻めがないので、後手は受けを強化したということだ。
 この手に対しては6七飛(と金を取る)もある。 それでも先手良しだが、もっと勝ちの早い攻めがある。
 5三歩と叩く手である。 同金(5一の利きを減らすことに成功)に、3三香と打ちこむ(次の図)

研究9八玉図41
 3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩、4四銀上 に、3三桂(次の図)

研究9八玉図42
 これで後手玉は寄り。 先手勝ち。

研究9八玉図43
 戻って、3四歩に、3四同銀(図)の場合。
 これは同飛と取ってよい。 3三香 が気になるところだが、用意の一手があるので大丈夫(次の図)

研究9八玉図44
 2四桂(図)がその“用意の一手”。 2四同歩、同飛、3一玉(2三歩は2一金以下詰み)、3二角成、同玉、2一銀、4一玉、3二金、5二玉、4二金(次の図)

研究9八玉図45
 6三玉、6一竜、6二銀、7二銀、7三玉、8四馬、同歩、8三金までの “詰み”

研究9八玉図46
 3四同飛に、3三桂 の変化。
 ここでも2四桂はあるが今度は3一香と頑張る手がある。それでも先手良しだが、より鮮やかな決め手があるので紹介しておきたい(次の図)

研究9八玉図47
 5四飛(図)である。 3四桂以下の“詰めろ”になっていて、3一玉には、6三角成(5四金なら2二銀、同玉、3四桂以下詰み)を用意している。
 先手勝ち。

研究9八玉図48
 (む)4四銀引 で自陣を固めるのはどうか。
 この手には、「6七飛」とと金を払っておく。

研究9八玉図49
 「6七飛」(図)。 これで後手にはめぼしい攻め手がなくなった。
 ここで後手5八金 のような手なら、3三香と打ちこんで、3一銀に、5二角成、同歩、6一飛成で先手勝勢になる。
 6三歩 では受けだけの手で、7七歩でこれも先手勝勢。
 6四銀右 は考えられるところ。7七歩には7五銀とこの銀を繰り出してくるつもり。それでも先手わるくないが、もっと良い手がある。 6四銀右 には、5四歩が鋭い返し技である。 以下、6六歩に、3七飛とし、5四銀に、3三香(次の図)

研究9八玉図50
  盤上の中段にいる後手の金銀が役に立っていない。
 3三同桂なら5二角成で、そして3三同銀引なら同歩成、同銀に、やはり5二角成で、後手玉は “寄り”である。“3七飛”が攻防にめいっぱい働いている。

研究9八玉図51
 6二金 の変化。
 この手は、3一玉から角を取って、その角で攻めようという手である。
 これには、5二歩とする。同歩なら、もう3一玉からの角取りはなくなるので、7七歩で先手勝勢である。
 よって後手は6一歩と受け、5一歩成、同銀、6三歩に、7五桂、7七飛、5二銀で勝負をかけてくる(次の図)

研究9八玉図52
 図以下、6二歩成、4一銀、6一竜と進む。
 そこで4二銀上は2六香が厳しいので、後手は5一歩と工夫をする。同とに、4二銀上。
 以下、5二と(次の図)

研究9八玉図53
 ここで8七角の攻めはあるが、同飛、同桂成、同玉のときに、後手玉が3一角以下の詰めろになってしまう。
 なのでここは後手6六歩のような攻めになるが、5三と、同銀引、3三歩成以下、先手が勝てる。

研究9八玉図54
 「6七飛」に、7五桂(図)が、コンピューターソフトの推す手だが、どうなるか。
 ここは6六飛も有力だが、3七飛以下の変化を示しておく。
 そこで6六歩では、7八香が好手になる。
 なので後手は7七歩と工夫する。
 それには、6六金(次の図)

研究9八玉図55
 ここは後手の攻めの桂馬を取りにいくのが急所になるのだ。桂馬が入れば、2六香+1五桂の攻めがある。
 図以下、6八桂成、7五金、7八歩成、2六香、1四歩(先手1五桂を防ぐ)、5二角成(次の図)

研究9八玉図56
 5二同歩、2三香成、同玉、2一竜、2二歩、2四桂(次の図)

研究9八玉図57
 2四同玉、2二竜、2三歩、2五金、同玉、2三竜、2四桂、2六歩(次の図)

研究9八玉図58
 以下、2六同玉、2四竜、2五歩、3八桂まで、詰み。

研究9八玉図38(再掲 3七飛図)
 「3七飛図」まで戻る。 【3】7六桂 に、3七飛と打ったところ。
 「激指14」はここで評価値-373(考慮5分)としている。 3一銀 で後手が良さそうというのである(最新ソフトでは+600くらいで先手良しの評価になっている)
 ということで、最後に 3一銀 を調べておこう。

研究9八玉図59
 (め)3一銀(図)
 ここまでこの後手陣(≪亜空間要塞≫)を攻略する手をとことん調べてきた我々終盤探検隊の経験によるカンからすると、ここはきっと先手に勝ち筋があるだろうと感じる。
 具体的なその手順は、何か、という問題になる。
 3三香は有力だが、4二銀引と応じられ、はっきりしない。

 どうやら、3三歩成が良さそうである。 3三歩成、同歩、3四歩とする(3四歩に代えて2六香は3二銀で形勢不明)

研究9八玉図60
 3四歩(図)と合わせるのが見えづらい好手である。
 そこで、後手に、[4四銀引][3四同歩] とが考えられる。
 まず [4四銀引] には、そこで2六香と打つ(次の図)

研究9八玉図61
 3二桂なら、5二角成、同歩、4一金で良い。
 また、1一桂と受けるのなら、6七飛としておき、以下、6二銀引、5四歩、4二銀引、7七歩が一例で、先手勝勢(この変化は先手に怖いところがない)
 だからここでは、「3二銀」で勝負するが、5二角成、同歩、3三歩成、同銀引、3四歩(次の図)

研究9八玉図62
 こう進んでみると、これも先手勝勢の図になっている。 4四銀(4二銀)なら、2三香成、同玉(同銀は3三金以下)、2一竜で、後手玉詰み。
 8八桂成、同玉、5五角という手はあるが、9七玉で問題ない(以下3七角成、3三歩成、同玉に、3七桂が後手玉への詰めろ)

研究9八玉図63
 [3四同歩](図)の場合。 これには、3三歩とする。
 3三同桂に、そこで2六香。3三桂とさせた効果で、後手陣が弱体化している。2六香に3二銀なら、5二角成、同歩のときに、2一金と打って、同銀、2三香成、同玉、2一竜で詰むという仕組みだ。
 1一桂 の受けには、5二角成、同歩、4一金(次の図)

研究9八玉図64
 先手勝ち。2一金以下の“詰めろ”だ。
 4二角と受けるなら、8四馬とする。以下、同銀、3一金、同角に、3二金以下“詰み”である。
 こうした変化のときに「9七玉型」より「9八玉型」のほうが、角を渡しても先手玉が詰まないという意味で優れている。

研究9八玉図65   
 戻って、先手2六香に対し、2五桂打(図)とする受けもある。3七飛の“取り”になっている。
 これには冷静に6七飛としておき、6六歩、7七飛、7五歩に、3七桂と活用していく(次の図)

研究9八玉図66
 4二金以下粘る手はあるが―――
 5一竜、4一金、同竜、3二角、5二竜、4四銀引、2五桂、同桂、3三歩、同銀、4五桂、4二銀右、3三桂成、同玉、2五香(次の図)

研究9八玉図67
 先手勝勢である。

 以上の調査から、【3】7六桂 には(ウ)3七飛 で先手良しと結論する。


9八玉基本図(再掲)

 〔桐〕9八玉 は先手良し



6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉 → 先手良し

 これで〔桐〕9八玉も「先手良し」となり、この手が、11コ目の「先手勝ち筋」となった。

 つまりこの図は、明らかに「先手良しの図」なのである。しかし実戦中には“相当に良い”というような感覚はまったくない。実際、最新ソフトの評価値も、+350 くらいだし、選べる手は1つしかないのだから、勝ち筋がたくさんあってもそれはあまり意味のないことなのだ。 そして、最新ソフトが一推しの〔橘〕3三香 を我々はまったく発見できていなかった。
 なお、戦闘中に我々の相棒であった「激指14」の評価値は -257 であった。それでも、我々は「ここは先手良しになっている」ということは、“感覚的に”ではあるが、感じていたのであった。

 そして、実戦では、我々終盤探検隊が選んだ手は、〔桜〕9七玉 であった。
 この手も、“戦後調査”の結果は、「先手良し」であることを、ここで伝えておく(その内容についてはこの先の譜で見ていくことになる)


 ただし、「6七歩図」の探求は、まだこれで終わりではない。
 これ以外にも、「有力候補手」があるのだ。



第45譜につづく
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終盤探検隊 part144 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第43譜

2020年01月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第43譜 指始図≫ 9七玉まで


    [灯心草よ、いいにおい!]

「ボートは漕げるの?」一組の編棒をアリスにわたしながら、ヒツジがたずねた。
「ええ、ちょっとは――でも、陸(おか)じゃだめよ――それに編棒でなんて」といいかけたとたん、編棒は手のなかでにわかにオールに変わっていてね。気がつくと、ふたりは小さなボートにのって、流れにそってすべるように進んでいるところだった。こうなってはもうせいいっぱい漕ぐしかない。
    (中略)
 アリスは少々むっとして、しばらくは話もとぎれてしまった。そのひまにボートはゆるやかに流れをすすみ、ときには水草のしげみをわけ(オールはこうなるとますます水にとられてしまう)、ときには木の下陰をくぐったりした。それでも両岸はあいかわらず頭をこす高さの土手がそそり立っている。
「あら、おねがい、灯心草よ、いいにおい!」アリスがふいにはしゃぎだした、「ほんとだわ、なんてきれいなの!」

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 「灯心草よ、いいにおい!」の部分は、原文では「There are some scented rushes!」である。
 「scented rushes=よい香りのする灯心草」ということだが、灯心草(とうしんそう= rush)とは、イグサのことだそうである。畳に使うあのイグサである。
 アリスはボートを岸に近づけてこの灯心草をたくさん摘んでいくのであったが、イグサの花は小さく地味なものだし、はたしてイグサが手で容易に摘めるものなのかどうか。畳に使うくらいだから茎の芯が強い気がするが。
 イギリスブリテン島の「rush」という草は、もしかすると、同じイグサ属でも、我々が知っているあのイグサとは少し違う別の草なのかもしれない。
 なお、「イグサ(イ草)」のことを、「灯心草」と呼ぶのは、昔、油で明かりを灯していた時代に、イグサをその芯に使っていたことがあるからだという。だから「燈芯草」と表すこともある。

 「5マス目」に進んだアリスは、強風に乗って現れた「白の女王さま」に会う(チェスの「女王」の動きのダイナミックさを思い出すべし)
 しばらく変な会話を交わしたあと、「白の女王さま」は編棒を十四組もあやつっているヒツジに変身して、一組の編棒をアリスにわたして、「ボートは漕げるの?」とアリスに聞く。
 その編棒がボートのオールに変わり、気がつくとアリスがそのオールをあやつって、小川をボートで漕いですすんでいる。それまで小川なんてなかったのに。

 こうして、アリスは「6マス目」に進んだ。そこにはタマゴの形をした男ハンプティ・ダンプティが高い塀の上に腰かけていたのだった。
 



<第43譜 調べ尽くそう>


≪最終一番勝負 第43譜 指始図≫

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中である。



6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 ここまできたら、この「6七と図」を調べ尽くしてしまいたい。
 今回の研究発表は、〔柳〕7八歩、および、〔栃〕8一飛 についてである。



[調査研究:7八歩]

7八歩基本図

 〔柳〕7八歩(図)と打つのも、有力な手である。

研究7八歩図01(7六歩図)
 A.7六歩(図)は考えられるが、しかしこれは今までの調査の手と合流し、先手良しになる道がたくさんある。
 「3三歩成」(同銀、5二角成)、「3三香」、「5四歩」、「2五飛」、「2六飛」、「2六香」、「3七桂」で、先手良しになる。(この中で最も勝ちやすいのは「3三香」だろう)
 まだ未調査(未発表)だが、「9七玉」や「9八玉」でも、先手が勝てるかもしれない。
 指してはいけないのは、「8九香」で、これは7五桂、9七玉、7八とで、後手優勢になる。

 ということで、7八歩に、後手は、7六歩以外の手を見つけないと後手の勝ち筋はない、ということになる。


研究7八歩図02(7七歩図)
 B.7七歩(図)はどうか。
 同歩なら、7五桂と打ち、以下9七玉、7七と進んで、これは完全に先手は一手パスの状況になり、後手ペースの戦いになる。(7五桂に8八玉は6六銀で後手良し)
 しかし7七歩は、この瞬間が甘い。7八歩成としても詰めろではないし、7五桂、9七玉に、7七とと寄れないので、詰めろがかけられない。
 つまり、“この瞬間”が先手の大チャンスタイムなのである。放置してそれより速く後手玉を攻略するのが正しい。
 ここは「3三歩成」、同銀、5二角成の基本の攻めで先手勝ちになる。以下5二同歩、3一飛、4二銀左、2一飛成、3七桂の要領である。
 他に、「3三香」(3一銀なら5二角成、同歩、4一飛。3三同銀、同歩成、同玉なら、3五飛、3四香、5五飛)でも、先手良しになる。

 しかしここでは、「2五香」を紹介しておこう。 これがこの場合、“最速の攻め”になるのだ。

研究7八歩図03
 2五香(図)に、もしも「7八歩、7七歩」の手交換がなかったら、7五桂と打たれ、9七玉、7七と、9八金と金を受けに使うしかなく、これは「互角」の戦いになる。
 しかしこの場合は、後手の打った7七歩がじゃまをしてその手段が指せない。なので2五香が有効になるのである。
 ここで後手(1)7八歩成なら、2六飛で、勝ちが決まる(次の図)

研究7八歩図04
 3一桂は、2三香成、同桂、2四金だし、2四桂は、同香、同歩、3五桂、2三香、同桂成、同玉、3五金で、やはり受けがなくなる。先手が「金」を持っているので2六飛と打ったところで“勝負あった”という状態になるのである。

 だから、2五香には、(2)6二金とする。 これなら、2六飛には3一玉があって、これは後手良しになる。
 では、先手どうするか(次の図)

研究7八歩図05
 (2)6二金には、「1一飛」(図)と打つのが奇抜な面白い攻め。そしてこの場合の最速の寄せになっている。
 この攻めは、「先手が金を攻めに使える」という条件があって成立する。
 7八歩成 なら、2三香成、同玉、2一飛成、3四玉、3七桂で、後手 "受けなし"。
 1一同玉 には、2三香成、2二飛、3二角成(次の図)

研究7八歩図06
 7五桂、9七玉、3二飛、同成香、2二歩、3三歩成(次の図)

研究7八歩図07
 先手勝ちが確定した。3三同銀に、5一竜で“必至”である。

研究7八歩図08
 「1一飛」に、3一玉(図)なら、2一飛成とする。 以下、同玉、2三香成、2二飛、3三桂(次の図)

研究7八歩図09
 これで先手勝ち。

研究7八歩図10
 「2五香」に対する後手最後の手段が、この(3)2四歩(図)。 先手2六飛と打たれる前に先手の香を取ってしまおうという手。
 これには、同香、2三歩、そこで―――(次の図)

研究7八歩図11
 ここでもやはり1一飛(図)がある。
 同玉なら上の同じように2三香成で先手が勝てる。
 だから後手は2四歩と香車のほうを取るが、3二角成(次の図)

研究7八歩図12
 3二角成(図)以下、後手玉“詰み”である。 3二同玉、1二飛成、2二合、2三金、4一玉、2一竜、3一銀、3二金まで。

 以上で、B.7七歩 は先手良しが証明された。


研究7八歩図13(7五桂図)
 C.7五桂 ならどうだろうか。これが後手の最有力の手になる。
 以下、9七玉、7八と(次の図)

研究7八歩図14
 7八との位置は、7七との位置に比べると(後手にとって)良くないのだが、先手は7八歩と打つのに「一手」を余分に使っているので、理論上はあまり先手得をしていない(しかも一歩損だ)
 ここで「3三歩成」、同銀、5二角成は、角を渡すと7九角があるので、先手負け。
 「3三香」も、3一銀、3七飛、4二金で、後手が良い。

 だが、ここで「2五飛」がベストの選択になる(次の図)

研究7八歩図15
 ここで先手の手番なら、2六香で先手勝ちだ。
 とりあえず後手は、7七ととして、9八金と、先手に金を使わせる。
 そこで後手は6二金(先手の2六香に対応するにはこれしかない)だが、先手は3三香(次の図)

研究7八歩図16
 この変化は、前々譜(第41譜)での〔楓〕2五飛の研究で出てきた手順である。その時と何が違うかと言えば、先手の歩の数が一歩少なくなっている。しかし違いはそこだけで、他はまったく同じである。
 だから結論としては「先手良し」と決めてよさそうだが、“一歩の違い”が形勢に影響をもたらさないことを確認する意味でも、もう少し先まで見ておきたい。
 3三同桂、同歩成、同玉、5五飛と進む(次の図)

研究7八歩図17(5五飛図)
 ここで先手の狙い筋は4五桂で、たとえばここで後手6九金 なら、4五桂、4四玉(2二玉なら3三歩、同銀、5三桂成)に、4六銀とする。以下5四銀に、7五飛(次の図)

研究7八歩図18
 7五飛(図)が決め手で、先手勝勢。

研究7八歩図19
 したがって、先手の5五飛に、後手は 9五歩 と攻めてくるのが考えられる。香車を持っているのでこの攻めが有効手になりそうだ。
 しかしこの場合、都合の良いことに、4一の角が9六にまで利いている。なので、この後手の9五歩は詰めろにはなっておらず、先手はここで2五桂と攻めていく。
 2五桂に、2二玉 なら、7五飛がある。桂を取って3四桂がねらいだ。
 対して、7五同金、同馬、7八飛(詰めろ)は、9五歩で先手勝勢。
 7五飛以下3一玉には、3三桂打がうまい手だ(次の図)

研究7八歩図20
 この図は、先手優勢の図になっている。
 後手玉は詰めろにはなっていないが、金が入れば詰めろになるし、7七飛で先手玉はまったく安全になる。
 だから、後手9六歩、同角成、9五香のような攻めが考えられるが、同飛、同金、4一桂成、2一玉、2二香、同玉、6六馬、4四歩、9五竜のように応じて先手が勝てる。

研究7八歩図21
 2五桂に、4四玉(図)の場合。
 5九飛、5四銀、4六銀、5六香、3九飛(次の図)

研究7八歩図22
 次に3四飛以下の“詰めろ”。 それを避けて5三玉が考えられるが、5五歩、6三銀、8四馬、同銀と進めば、5四金以下後手玉が詰む。
 先手勝勢。

 C.7五桂、9七玉、7八とは、2五飛で、先手良しになる。


7八歩基本図(再掲)
 “強敵”の C.7五桂を退治したので、おそらくこれで、〔柳〕7八歩 は先手良しであろうと、見通しが立った。
 「7八歩基本図」で、後手に他の手ないかを確認したい。


研究7八歩図23
 D.6二金(図)に、どうするか。

研究7八歩図24
 D.6二金(図)には、3三香とするのが明快な勝ち方になる。
 3三同桂、同歩成、同銀なら5一竜だし、3三同桂、同歩成、同玉には、3五飛、3四香、2五桂、2四玉、5五飛だ。


研究7八歩図25
 E.6六銀 にはどう対応するのがよいか。
 ここは3三香でも先手が良さそうだが、最も勝ちやすいのは2六飛ではないかと思われる(次の図)

研究7八歩図26
 ここで後手がどうするか。先手のねらいはもちろん2五香だ。
 1四桂なら3六飛として、次の3三香が猛烈に厳しいので1四桂が無駄な手になる(後で1五歩のような手も生じてくる)
 3一桂 と先受けしてどうか。先手はそれでも2五香と打って、2三香成、同桂、2四金を狙う。
 後手は6二金とするが、そこで3三歩成(次の図)

研究7八歩図27
 3三同銀なら、2三香成、同桂、5一竜。3三同桂には、2一金、同玉、2三香不成、同桂、同飛成、1一玉、3二角成で寄っている。3三同玉には3六飛である。

研究7八歩図28
 ということで、後手は桂馬で受けても意味ないということで、7五桂(図)と攻めに使うほうが可能性がある。
 以下9七玉、7七と、同歩、同銀成、9八金と進む。この変化は、先手が7八歩と打つのに一手手間をかけているので、後手の攻めが一手早いが、しかし先手は後手の「と金」を消すことができたことが主張になる。
 このままなら先手2五香があるので、後手はそれを受けて6二金。
 そこで6三歩と打つ(次の図)

研究7八歩図29
 7二金なら6一竜で次の2五香が受からない。
 よって考えられる手は、3一玉 か、7六桂
 3一玉 以下は、6二歩成、4一玉、2三飛成、7九角、8八香(次の図)

研究7八歩図30
 8八香と受けて、先手玉に詰みはない(後手の6七とが存在していたら8七桂成以下の詰みがあった形)
 6二銀右には6一竜で後手受けなしだ。先手の勝ち。

研究7八歩図31
 7六桂(図)の場合。
 この手には、3三香が決め手になる。以下、同桂に、そこで6二歩成(次の図)

研究7八歩図32
 後手玉にまだ詰みはないのだが、次に8四馬で金を取れば、2一金以下の詰みがある。
 8八桂成なら、同金、同成銀、同玉、8七金、7九玉で先手玉は詰まず、銀をもらって後手玉に2一金以下の詰みが生じて、先手勝ち。
 2四香なら、3三歩成、同銀(同玉は3六飛)、5一竜。3一香も、3三歩成、同銀、1五桂、3四銀、3五歩と攻めて、結局、後手は手がなくなる。


7八歩基本図(再掲)

 〔柳〕7八歩 は先手良し、が結論である。





[調査研究:8一飛]

 〔栃〕8一飛 と打つのはどうだろうか。

8一飛基本図
 〔栃〕8一飛 (図)と打った。この手に狙いは、5二角成である。同歩なら、2一飛成で先手勝ちだ。
 後手の有力候補手は6つある。
 <A>7一歩<B>6二金<C>6六銀<D>7五桂<E>7六歩<F>1四歩 の6つ。


研究8一飛図01
 最初に、<B>6二金(図)から見ておこう。
 この手は、先手のねらう5二角成の金取りに対応した手で、その意味では自然な応接である。
 この手には、3三歩成とする。 同銀では5一飛成があるので、同桂だが、そこで5四歩とする(後手陣の金銀の連結を切る意味)
 以下、7五桂、9七玉、7七と、8九香、5四銀に、8五歩(次の図)

研究8一飛図02
 8五同金や7四金なら、7五馬、同金、3四桂で、先手勝ち。
 よって、後手は6五銀とし、以下8四歩、7六銀で、先手玉に“詰めろ”がかかった。
 先手はこれを、8六金と受ける(次の図)

研究8一飛図03
 8六金(図)は、詰めろを受けつつ、次に7五金の桂取りを狙っている。
 7四歩と受けても、7五金、同歩、3四桂、3一玉に、4二桂成以下、後手玉詰み。

 <B>6二金 には、3三歩成以下、先手が勝てる.


研究8一飛図04
 <A>7一歩(図)
 この手は最新コンピューター・ソフトが第1候補手に推す手だった。 次にこの手を調べよう。
 これを同飛成なら、後手の術中にはまる。 7一同飛成、6二銀右、6一竜、6三銀となって―――(次の図)

研究8一飛図05
 これは、やや後手ペースの戦い。 これが後手<A>7一歩 と打った意味である。

研究8一飛図06
 <A>7一歩 には、3三歩成(図)が先手の“正着手”。
 同銀に、5二角成(次の図)

研究8一飛図07
 これを〔1〕同歩 なら、7一飛成、3四銀、2一飛成、3三玉と進む。
 そこで3六桂がある(次の図)

研究8一飛図08
 この手以外では、先手が悪くなる。
 この局面は、我々はすでに学習している。(第36譜第35譜 〔松〕3三歩成の変化)
 そのときの変化との違いは、先手が一歩多く持っていること。 違いはそれだけで、そのことはどうやら大勢に影響しない。
 図の3六桂が好手で、6九角と打たれるが、これは“打たせる”ための犠打である。 9七玉、3六角成と馬をつくられるが、この馬を目標に攻勢が取れる。
 しかしそこから先手がどう攻めるかたいへんに難しいところだったが、我々は「勝ち筋」を見つけ出すことに成功したのだった。
 その復習をしておくと、3一竜左、4四玉、3二竜右、4二桂に、3九香の手順が良い。以下、3七歩、同香、2五馬に、1五金と打つのがが好手である(次の図)

研究8一飛図09
 3四香と銀を取るのではなく、1五金(図)から馬を取るほうが良い(先手は3四竜と活用したい)
 以下、5四玉、2五金、同銀、7五金と進む。 実戦的にはまだ「互角」だが、正確に指せば先手の勝てる将棋である。

研究8一飛図10
 戻って、先手5二角成に、後手〔2〕7五桂(図)の変化を見ていこう。
 9七玉、7七とに、4三馬(次の図)

研究8一飛図11
 これで、どうやら先手良し。ここで後手4二銀右と4二歩があり、どちらも先手良しになるが、ここは4二歩のほうを示しておく。
 4二歩、9八馬、8七と、同馬、同桂成、同玉、5四角、6五歩、8一角、同竜、6六銀(次の図)

研究8一飛図12
 ここで3四歩と打つ。同銀なら2六桂と打って、2五銀に6四歩(桂を取る)で先手良し。
 したがって後手は6七飛と攻めてくる。以下9八玉、7七銀成、3三歩成、同歩、8九香(次の図)

研究8一飛図13
 ここで7六桂では7九金でもう後手の攻めがない。
 また6八飛成も9七玉で、攻めが続かない。
 よって後手は6九飛成とする。 “詰めろ”だ。 8八銀の受けなら、7八竜で後手が良い。
 4五角と受けるのは7六桂があってたいへんだ(以下9七玉、8八桂成、同香、9九竜、9八金、9五歩は形勢不明)
 しかし、このピンチを切り抜ける3四桂の手がある(次の図)

研究8一飛図14
 3四同歩なら5五角から7七角で先手勝ち。
 よって、後手3二玉だが、2二金、4三玉、4二桂成(同銀は2五角がある)、4四玉と進む(3四玉なら7九歩とし、以下同竜には3五金、同玉、5七角)
 そこで8八銀と受ける(次の図)

研究8一飛図15
 7八竜は6六角~7七角があるし、8八同成銀、同香、6七竜も、6四歩で後手の攻め駒が足らなくなる(後手は7一歩と打っているので7筋に歩が使えない)
 ここでは7六桂が一番きびしい攻めだが、7七銀、7八竜、9七玉、7七竜、8七金と受けて、受け止められる。
 後手の攻めが止まれば、4六銀のような手で後手玉を包囲していけば、先手が勝てる。

 以上の調査によって、<A>7一歩 は、3三歩成、同銀、5二角成で、先手良しと決まった。


研究8一飛図16
 <C>6六銀(図) も、結論から言うと、先手良しである。
 やはりここでも、3三歩成から入る。 これには、「同銀」、「同桂」、「同玉」と3通りの応手がある。
 「同玉」なら、3七桂とし、5四銀(4四玉のねらい)に、4五歩で、先手良し。
 「同銀」なら、5二角成とする。以下7五桂、9七玉、7七銀成(代えて7七ともあるが9八金、4二銀左、3六香で先手良し。7七銀成のほうが攻めが厚く9八金の受けには7六歩が詰めろになる)
 ここは、先手は8九香と受ける(次の図)

研究8一飛図17
 ここで後手は自陣に手を戻すことになる。 しかし4二銀右なら3四歩があるし、6二銀右なら4一馬として次に3一金の狙いが残る。 よって、4二銀左が妥当なところ。
 先手は、3七桂と右桂を活用する。
 以下、7八とに、5三馬(次の図)

研究8一飛図18
 5三同銀に3一銀以下、後手玉“詰み”
 なお、7八とに代えて6二銀右なら、8五歩で良い。

研究8一飛図19
 戻って、3三歩成に、「同桂」(図)の場合。
 これにも、5二角成とする。 以下、7七銀成、9七玉、1四歩。
 そこで3四金と打つ手が好手になる。ここに金を打っておけば5二歩なら2一竜で後手玉詰みだ。
 以下、7五桂(詰めろ)、9八金、7六歩(詰めろ)、8九香。
 金と香を受けに使うことになったが、しかしもうこれで後手の攻めは止まった。
 7八とがあるが、8五歩で―――(次の図)

研究8一飛図20
 7四金なら、5三馬、同銀、5一飛成で先手勝ち。7九角に、8六玉と逃げる“小部屋”ができている。
 よって後手は8九とで勝負だが、8四歩、同銀に、5三馬(次の図)

研究8一飛図21
 5三馬(図)で、2一金以下後手玉への“詰めろ”になっているし、受けもない。
 先手勝ち。


研究8一飛図22
 <D>7五桂は、9七玉、7七と に、この場合は8九香と受けるほうが良さそう(9八金は6二金で形勢不明)
 次に先手5二角成があるので、後手は6二金とする。
 そこで7八歩(次の図)

研究8一飛図23
 5四歩が先手の狙い筋なのだが、同銀、5一飛成と攻めた時、飛車を敵にわたすと8七飛で詰まされてしまう。
 だからその前に、7八歩(図)と打つわけだ。
 7八歩(図)に、7六と なら、5四歩、同銀、5一飛成と攻めて、先手良し。
 後手7八同と として、5四歩に、8九とで勝負してどうか。 以下、5三歩成、同金、8五歩(次の図)

研究8一飛図24
 7四金なら、8六玉で先手玉が安全になってしまい、それでは後手は勝負所を失うので、6六銀と勝負する。
 しかし、8四歩、同銀に、3二角成で―――(次の図)

研究8一飛図25
 後手玉に“詰み”があった。
 3二同玉に、4一銀、同玉、3一金というのがうまい手順(次の図)

研究8一飛図26
 3一同玉に、5一飛成、同銀、同竜、4一合、4二銀、2二玉、3三歩成以下の詰みとなる。

研究8一飛図27
 戻って、先手7八歩に、7六歩(図)の場合。
 これには、8五歩。7四金なら、9四馬として、8六玉~9五玉の脱走路を確保して先手良し(後手に7六歩と打たせた場合にはこれが先手のねらい筋になる)
 後手は3一玉から角を取りに来る。以下5二歩、6一歩、5一歩成、同銀、5二歩(次の図)

研究8一飛図28
 5二同金、同角成、同銀、8四歩、5一歩、8三歩成、7四銀、7三と、8五歩(詰めろ)、8九香、7九角、8八歩(次の図)

研究8一飛図29
 先手の欲しい駒は「桂」。7四と~7五馬として桂馬を取れば、3四桂の筋で簡単に後手玉を攻略できる。
 後手は8七とから攻めてくる手がある。8七と、同金、同桂成、同玉、6八角成(詰めろ)、9八玉、7八馬、7四と、7七歩成、7九歩(次の図)

研究8一飛図30
 7八馬をずらせば3四桂が打てる。だから6七馬が予想されるが、6四と、同銀上に、5四桂と打って先手優勢である。6四とを同銀引には、6六馬の大技がある。また、6七馬、6四とに、8六歩、同飛成、8七歩には、7七竜がある。
 図の7九歩には、4五馬もあり、以下6四と、同銀上、3七桂、6七馬、5四桂でやはり先手優勢。

 これで、<D>7五桂 も先手良しが明らかにになった。
 ――――と結論しかけたが、実はそうではなかった。


研究8一飛図31
 今の手順の途中、7七と の手が悪かったのだと後で判明したのだった。
 代えて、7六歩(図)が後手の最善手だったのである。この手で、逆に「後手良し」になるとわかったのだ!!
 7六歩は、7七歩成のと金造りが目的だが、7七とに比べると一手遅い。しかし二枚の「と金」によって、“攻めに厚み”ができる。
 ここで先手がどう攻めるか。5二角成は、7七歩成、9八金、1四歩で、後手良し。
 ここは3三歩成が最善手と思われる手。
 これを同銀なら、先手に勝てる可能性が出てくる(調べると先手良しになった)が、しかし同桂が後手の最善の応手のようだ。
 以下、5二角成に、1四歩が好手となる(次の図)

研究8一飛図32
 後手の「7五桂」と「7六歩」と「1四桂」とそれから3三歩成を「同桂」と取る手。この組み合わせが、“黄金の組み合わせ”になっているのだ。
 先手のねらい筋は5三馬だが、ここで5三馬は、同銀、5一飛成に、8七桂成、同玉、7七歩成、9八玉、7六角で、先手玉が詰まされる。
 3四歩や1五歩では、7七歩成、8九香に、5二歩と馬を取られてしまう。
 ここで指すとすれば、(あ)3四金 か、(い)4一馬 ということになるだろう。
 (あ)3四金 で先手が勝てそうに見える。これなら後手5二歩なら2一飛成で後手玉を仕留められる。
 以下、7七歩成(次の図)

研究8一飛図33
 先手玉の詰めろを受けるには、“8九香”か、“9八金”の2通り。
 しかし“9八金”だと、6六銀(詰めろ)とされ、8九香、7八ととなって―――(次の図)

研究8一飛図34
 先手負けになる。

研究8一飛図35
 だから、先手“8九香”(図)と受ける。7八となら今度は先手は金を持っているので5三馬が2一金以下の詰めろになっていて、先手良しである。
 だから後手は、8七と、同香、7七とと攻めてくる。これが後手が「二枚のと金」をつくった効果だ。
 先手は9八金と受けるしかない。
 後手は6六銀。次に後手7六歩とすれば、先手玉に“詰めろ”がかかり受けもない。
 だからその前に、先手は7八歩と受ける(次の図)

研究8一飛図36
 [7八同と]なら5三馬、同銀、5一飛成で先手良し。
 [7六歩]なら、7七歩、同歩成、7八歩で千日手の可能性が大きくなる。
 後手としては、[8七と]と勝負に行って勝ちたいが、同金、同桂成、同玉、7五金、9八玉という展開は、9三の馬が働きだし、先手良しになるようだ。これが先手7八歩の狙い。
 それ以外の手だと、[7六と]ということになり、これが後手の最善手だろう(次の図)

研究8一飛図37(7六と図)
 [7六と](図)に、先手の指す手が難しい。
 ここで 5三馬、同銀、5一飛成は、7九角で後手勝ち。

 では、8四馬、同銀、5三馬はどうか。これを同銀は、2一金で、先手勝ちとなる。
 しかし 5三馬に、7九角と打つ(次の図)

研究8一飛図38
 以下8八銀、同角成、同金と角を銀に代えて、それから8七と、同金、同桂成、同玉に、7六銀と打つ。
 さらに、9八玉、8七金、8九玉、7八金、9八玉、8八金で―――(次の図)

研究8一飛図39
 先手玉“詰み” 

研究8一飛図40
 「7六と図」(研究8一飛図37)に戻って、では後手に他に手はあるか。 1五歩(図)は有効手であるが‥‥
 これには、後手7七歩。
 そこで5三馬が先手狙いの一手。同銀なら1一銀で後手玉詰みだ。
 後手は8七と、同金、同桂成、同玉、7八歩成と応じる(次の図)

研究8一飛図41
 「1一銀」と指したいところだが、同玉、5一飛成、同銀、同竜に、2一金と受けられて―――(次の図)

研究8一飛図42
 2一金合(図)で後手玉は詰まない。よってこの変化は後手勝ち。

研究8一飛図43
 戻って、7八歩成に、「4三馬」(図)という手段が残っていた。
 これは"詰めろ逃れの詰めろ"である。今度は後手玉は1一銀以下詰む。
 しかし、7七と、9八玉、8七金、同馬、同と、同玉と馬を消し、5四角と打てば―――(次の図)

研究8一飛図44
 これは後手優勢の図になっている。
 5四角(図)に9七玉なら7七銀成、7九桂、8一角、同竜、8九飛で、後手良し。
 8八玉なら、8一角、同竜に、7六桂がある。以下9七玉、5七飛、8七合、7七銀成と迫って、後手が勝つ将棋である。

研究8一飛図45
 (あ)3四金 と打った手に代えて、先手(い)4一馬(図)とするのはどうだろう。
 7七歩成、9八金、7八と左、3四歩、8八と寄、3三歩成、同歩(次の図)

研究8一飛図46
 後手勝ち。先手玉の受けがない。


8一飛基本図(再掲)
 以上の調査研究により、〔栃〕8一飛<D>7五桂 で後手良し、が結論となる。

 ただし、<E>7六歩、および、<F>1四歩 でも後手良しとなる。
 最後に、そのことに触れておく。
 この「8一飛基本図」から、後手は「7六歩」と「7五桂」と「1四歩」を指す方針でいけば、どうやらどの順番でこれを指しても、結局は同じ図になっていくようだ(つまり変化すると先手がより悪化してしまうということ)

研究8一飛図47(7六歩図)
 <E>7六歩(図)と打ったところ。
 ここで7八歩は、7五桂、9七玉、7八とで、これは後手良し。
 3三香、同桂、5二角成というのが有力な変化であるが、7七歩成、9七玉、7五桂、4三馬、8七とと進み―――(次の図)

研究8一飛図48
 4三馬が "詰めろ逃れの詰めろ"だったが、8七と(図)、同馬、同桂成、同玉、7五香で、後手良しになる。

 ということで、「研究8一飛図47(7六歩図)」から、結局、3三歩成、同桂(同桂と応じるのが大事)、5二角成、7七歩成、9七玉、1四歩、3四金、7五桂と進むことになり―――(次の図)

研究8一飛図49
 これは、違う手順を経て、「研究8一飛図33」(7五桂のからの変化)に合流している。
 今回の調査によって、すでに「後手良し」の結論の出た図である。

研究8一飛図50
 そして、<F>1四歩(図)も、どうやら後手良し。
 同じ図に合流することを先手が避けるとすれば、ここで5四歩のような変化があるかどうかだが、5四歩、7六歩、5三歩成、7七歩成、9七玉、7五桂、3三歩成、同桂、8九香、7八と左以下の調査結果は、後手良しとなった。
 また、3三歩成、同桂に、3四金と打って、次に2六香を狙うのは考えられる。これなら7六歩の攻めでは間に合わない。しかし7五桂、9七玉、7七と、8九香、6二金と応じられ、以下8五歩に3一玉の変化は、後手良しとなった。

 8一飛とすでに打っているわけだから、5二角成をベースに攻めていかなければ2枚の飛車が無駄になる。けれどもそれは、7六歩~7七歩成~7五桂で、結局同じ図(研究8一飛図33、49)に合流するのである。



 ―――ということで、最終的なまとめは、次のようになる。

8一飛基本図(再掲)

 〔栃〕8一飛 は、<D>7五桂、または<E>7六歩、または<F>1四歩 で後手良し である。




6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し


 見つけた「先手勝ち筋」の数はついに二桁に。




第44譜につづく
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終盤探検隊 part143 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第42譜

2020年01月10日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第42譜 指始図≫ 9七玉まで


    [あいつの夢の産物にすぎないくせしてさ]

「そこの王さまが目をさましたがさいご。あんたは消えちゃうんだぜ」ソックリダムもいいだす。「ぱっと――ローソクみたいに」
「いやよ、そんなの!」アリスは頭にきて、「それに、あたしが王さまの夢の中にしか存在しないんだったら、あんたたちこそどうなの、教えてよ」
「おんなじさ」とソックリダム。
「おんなじ、おんなじ」ソックリディーもわめきたてる。
 あんまり大声なので、アリスは思わずたしなめた。「しいっ! そんなにうるさくすると、ほんとに起こしちゃうじゃないの」
「起こすのどうのなんて、あんたもよくいうよ」とソックリダム。「あいつの夢の産物にすぎないくせしてさ。あんた、自分がほんとに存在していないことくらい、十分わかってるだろ」
「だってここにいるじゃないの、ほんとに」アリスは泣きだしちゃってね。
「泣いたって、ほんとの存在になれるわけじゃないし」ソックリダムのご意見だ、「泣くことなんかありゃしない」
「だってほんとの存在じゃなかったら」アリスはすっかりばかばかしくなってきて、泣きわらいしながら、「泣くことだってできないはずよ」
「あんた、まさかその涙をほんものと思っているんじゃないだろうね」ソックリダムがばかにしきった口調ででさえぎる。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 森で大いびきをかいて寝ている「赤の王さま」。
 ソックリディーとソックリダムの言うことには、アリスはこの「赤の王さま」の夢の中の存在で、王さまが目を覚ますと、アリスは消えてしまうのだという。
 「鏡の国」は、「赤の王さま」の見ている夢の世界だというのだ。
 C.S.ルイスのナルニア国シリーズ『最後の戦い』でナルニアが終わるとき「時の翁」が目を覚ますというエピソードを思い出す。
 もう一つ思いだすのは、『胡蝶の夢』の話である。
 これは古代中国の荘子の残した説話で、『自分は夢の中で蝶になってひらひらと楽しく飛んでいたのだが――いやまてよ、目覚めた後になって「自分」に戻って思ったのだが、「蝶になった自分」が本物で、今の自分の存在のほうがまぼろし――つまり、「自分」は、“蝶が見ている夢の中の存在” という可能性もあるのか―――というようなことを考えてもやもやした』というエピソード。

 『鏡の国のアリス』のラストでも、もとの暖炉のある部屋に戻った7歳半の少女アリスは、子猫キティを相手に、荘子の『胡蝶の夢』のような哲学的問いかけをするのである。
 「夢を見ていたのはどっちなのか」(「赤の王さま」なのか自分なのか)と。
 キティはそれに答えず、自分の手をなめてきれいにすることに夢中なのであった。




<第42譜 右桂の出番だ>


≪最終一番勝負 第42譜 指始図≫

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中である。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 「最終一番勝負」の実戦では、我々(先手番=終盤探検隊)は〔桜〕9七玉を選んだのだが、後で調べてみるとこのように、この「6七と図」で(9七玉以外の)「先手の勝ち筋」が、続々と発見されたのであった。
 ここまで来たら、「6七と図」をとことんまで調べ尽くしてしまいたい。
 ということで、今回の調査研究は、〔柊〕3七桂についてである。



[調査研究:3七桂]


3七桂基本図
 〔柊〕3七桂 は、攻めの力を溜める手。 後手が何を指すかを見て、どう攻めていくかを決めていく。
 ここで先手の手番なら、2六香と打って、次に2五飛と打てば後手陣を攻略できる。 3七桂はこうした攻めのバックアップの駒になっている。
 
 ここで考えられる後手の有力手は、次の4つ。
 A.7五桂B.7六歩C.6六銀D.4四銀引
 これを順に見ていく。

変化7五桂図01
 A.7五桂(図)、9七玉、7七と、9八金(次の図)

変化7五桂図02(9八金図)
 後手が7五桂と桂馬を攻めに使ったので、“桂馬を受けに使う”という選択肢がなくなった。
 しかし、先手は「金」を受けに使うことになった(8九香と受けるより9八金と受けるほうがしっかりしている)
 ここで後手が何を指すか。
 [1]6六銀、[2]4六銀、[3]7六桂、[4]9五歩 が候補手。

変化7五桂図03(6六銀図)
 [1]6六銀 には、2六飛と打つ。 次に2五香の狙いに備えて、後手は6二金(それでも2五香なら3一玉で後手良し)
 6二金には、3三香(次の図)

変化7五桂図04
 2筋の飛車と、この3三香の組み合わせは、破壊力がすごい。
 この場合、3一銀では5一竜があって無効なので、3三香を同桂と取る。以下同歩成、同銀、6六飛と進む。
 さらに、4二銀右(先手の5一竜を防いだ)に、2五桂とする(次の図)

変化7五桂図05
 先手の攻めが調子が良い。
 後手は6一歩。この手は、3一玉から先手の角を取りにいく狙いをもっている。
 以下、4五桂打、3一玉、3三桂右不成、同銀、同桂不成、8七桂成、同金、同と、同玉、7五桂、7八玉(次の図)
 
変化7五桂図06
 さあ、どっちが寄せ勝つか。 後手は先手玉に“詰めろ以上”で迫らないと、先手2一銀と打たれると劣勢が明らかになる。 4二玉と逃げておくのは、3四桂、3三玉、3五銀で、先手勝ち。
  また、ここで6七金と打てば後手は飛車を取れるが、それでは勝てない。

 5八金が、7七歩以下詰めろだ。
 以下、7九桂、7七歩、8八玉、8七香、9七玉、7八歩成、2一銀、2二金、6四飛(次の図)

変化7五桂図07
 先手が勝ちになった。 6四飛(図)で桂馬を取って、6四同銀に、3四桂と打てば、後手玉は“必至”になる。

変化7五桂図08(4八銀図)
 [2]4六銀(図)という手がある。3七桂取りを見せて、先手の狙いの2六飛+2五香の手を防いでいる。

変化7五桂図09
 先手は、4五桂と桂をはねる。 これで先手が調子よく見えるがどうだろうか。
 このままなら3三歩成、同桂、5三桂成の攻めや、3三香という攻めがある。
 だから4四銀としたいが、それには5二角成、同歩、4一飛、3一角、3三歩成、同銀引、同桂成、同玉、4五金で、後手玉が寄ってしまう。
 ということで、ここは後手9五歩と端を攻める。これには8九香と8筋を強化しておく。以下、9六歩、同玉、9五歩、9七玉に、そこで4四銀とする。これなら、5二角成、同歩、4一飛には、今度は7九角と打って、8八香、同角成、同金、9六香で先手玉が詰むので、その攻め筋がない。
 しかし4四銀で後手陣が弱体化したことで、すでに先手優位の局面になっている。
 7一飛と打つのがわかりやすい勝ち方(次の図)

変化7五桂図10
 7一飛(図)。 飛車と香とを両方使わないで3七桂と力をためたおかげで、今度は「8九香」と受けて「7一飛」と二枚飛車で攻めるこの図が出現した(上の変化では「2六飛+3三香」が出てきたし、多彩な使い方ができている)
 7一飛の次の狙いはもちろん5二角成だ。
 6二銀なら6一飛成としておき、さらに6三銀なら、そこで5三歩が刺さる。
 7一飛(図)に6二金以下を解説しよう。
 その手には、8五歩と突く。7四金なら8六玉~9五玉で、先手玉が安全になり、後手に勝ち目がなくなる。
 なので、後手は3一玉で勝負。 以下8四歩、4一玉、8六玉(次の図)

変化7五桂図11
 8四銀、同馬、同歩、6三歩、同金、5二銀(次の図)

変化7五桂図12
 これで後手玉は寄り。 5二同玉に、6一飛成、4一玉、5二金、3一玉、4二金、2二玉、3一銀、1一玉、6三竜となって、先手勝ち。

変化7五桂図13
 [3]7六桂(図)。 この桂を使って攻めてきた場合。
 これは、8九香と受ける。
 この瞬間は、先手に「金香」と受けに使わせることができて後手好調にみえる。
 後手は 7八歩。 対して先手には、8五歩があった(次の図)

変化7五桂図14
 7四金なら8六玉で先手良し。 8六玉がこの場合の先手の狙い筋で、後手の7六桂の弱点を衝いている。
 8五同金にはどうするのか。同香としてはいけない。それは――――(次の図)

変化7五桂図15
 8八桂成(図)で先手負け。
 8六玉と逃げるのは8七桂成、7五玉、6四銀左上で詰みなので、8八同金だが、同と、同玉、8七金、8九玉、6九金で、受けがない。

変化7五桂図16
 8五同金を“同香と取れない”なら、なぜ8五歩を突いたのか?
 8五同金に、3三歩成(図)と攻めていくのが“正解手順”である。
 3三同銀(3三同玉なら3六飛、4四玉、5二角成で先手良し)に、5二角成、同歩、3一飛(次の図)

変化7五桂図17
 これで先手が勝ちになる。
 ここで「8五歩、同金」と突きすてた意味がわかる。 7九角に“8八歩”と歩で受けられるのだ。 もしも「8五歩、同金」の手交換なしにこの攻めを決行していたら、8八金打と受けるしかなく、それでは先手が悪いところだった。

変化7五桂図18
 なので後手は7九歩成と攻め合う。 以下、8四歩、8九と、8六玉、8四銀、同馬、同歩、7五玉、6四角(次の図)

変化7五桂図19
 玉は狭い場所から脱出できたが、6四角(図)と「王手竜取り」を掛けられた。だが、これは承知の上だ。
 8四玉、9一角、8一飛、8二飛、同飛成、同角、8一飛、6四角、6五歩(次の図)

変化7五桂図20
 これで、先手良しがはっきりした。 この場合、8一飛と一段目に飛車を打っておくのが大事。
 8二飛、同飛成、同角なら、もう一度8一飛で、もう角はたすからない(6二飛には7四桂)
 逃げるなら8六角だが、それには3三歩成。 同銀は5二角成、同歩に、3一銀、1一玉、2二金以下詰み。
 3三同玉に、3五銀(次の図)

変化7五桂図21
 3五銀と打つのが、3七桂を生かした寄せ。2五(4五)桂、2二玉、3四桂のねらいを、後手は受けられない。
 先手勝勢。

変化7五桂図22
 7八歩 では後手勝てない―――ということで、その手に代えて、9五歩(図)と攻めるのはどうか。
 この手に対しても、先手は8五歩だ。8五同金なら、今度は同香と取る。8八桂成には8六玉として、今度は9五玉と逃げれるのでこう進むと先手勝勢。
 なので、9五歩、8五歩に、後手はすぐ8八桂成と攻める。以下、同香、同と、同金、8五金(先手8八同金のところでは同玉と取る手もあるが、6六銀、8四歩、8五香と進むと先手苦労しそうだ)
 8五金に、先手どうするか。 桂が手に入ってので、1五桂と打っておく(次の図)

変化7五桂図23
 さて、手番の後手はどう指してくるか。
 1四歩 が気になるところだが、それは2三桂成、同玉、5二角成で、先手良し(1四歩の手が一手パスになってしまう)
 候補手は、8四銀8四香9六金9六歩 とある。

変化7五桂図24
 8四銀 なら今度は2三桂成、同玉、5二角成は逆に後手良しになる。
 8四銀 には、2六飛と打って“詰めろ”をかける。 以下、2四香(図)だが―――
 これは同飛と取って、同歩、2三香、3一玉、5二角成で――(次の図)

変化7五桂図25
 先手勝ち。

変化7五桂図26
 8四香(図)は、9六金以下、“詰めろ”になっている。
 これにはしかし、同馬と取ればよい。 同銀に、2六飛、1四角、2五香で――(次の図)

変化7五桂図27
 これも先手勝勢。 以下2五角、同飛、2四香は、やはり同飛、同歩、2三香で良い。

変化7五桂図28
 9六金(図)は、9八玉、8六香、7五馬、8八香成、同玉、8七金打、7九玉と進む。
 途中、8六香の手に代えて、8四銀とするのは、ここでも、2六飛、2四香、同飛、同歩、2三香で先手勝ち。
 7九玉に、後手は先手玉に詰めろを掛けたいが、掛ける手がない。
 6八玉と逃げられるともう後手は勝ち目がないので、5八金とするが―――(次の図)

変化7五桂図29
 2六香(図)で、先手勝ち。

変化7五桂図30
 9六歩(図)には、9八玉。
 そこで9七香、8九玉、9九香成、同玉、8六香も、2六香で先手勝ち。後手は先手に香車を安易に渡せない。
 なので、9八玉には、9七歩成、同金、9六歩(次の図)

変化7五桂図31
 それには、7五馬と切るのが、用意の一手。 9七歩成なら同馬で手順に馬を逃げられてしまうので、後手は7五同金。
 先手は9六竜とする(次の図)

変化7五桂図32
 先手優勢。 こう進んでみると、1五桂と打った手が効果的に働いている。
 現状、後手玉には、2三桂成、同玉、2四飛、同玉、2六竜以下の“詰めろ”が掛かっている。
 この図で3一玉と指すのは、5二角成、同歩、9一竜、5一香、2三桂成で、先手勝ち。

 7九角の攻防手が有力候補手となるが、2三桂成、同玉、2五飛、2四歩、5五飛、7六桂、1五桂、3四玉、8九歩、8四香、7七銀(次の図)

変化7五桂図33
 後手の攻め手を受け止めて、先手勝勢になった。次に3二角成とすれば“詰めろ”になる。
 ここでは6四銀左と指す手が考えられるが、5九飛、4六角成に、3五歩、同玉、2六金、4四玉、4五歩、3四玉、3二角成という要領で、先手が勝ち。

 以上見てきた通り、[3]7六桂 は、先手良し。

変化7五桂図34(9五歩図)
 〔柊〕3七桂 に、[4]9五歩(図)が最有力の手である。 “端玉には端歩を突け”の格言に沿った指し手だ。

変化7五桂図35(7八歩図)
 [4]9五歩 に対しては、「7八歩」(図)と打つのがよい。
 「7八歩」に、後手はどうするか。
 9六歩、同玉、9五歩、9七玉として、そこでまず、7八と の場合。

変化7五桂図36
 7八と(図)。 これには2六飛と打つ。

変化7五桂図37
 次に2五香と打てば後手な"受けなし"になるが、それに備えて6二金がある。これなら2五香には3一玉で後手良しになる。
 2五香ではダメなので、8五歩とこの歩を突く(次の図)

変化7五桂図38
 8五には4一の角が利いている。7四金なら3三香と打ちこんで後手陣を攻略できる(香を後手に渡しても9六香に8六玉と逃げるスペースができていることが大きい)
 8五歩に、後手は3一玉で勝負。 以下、8四歩、同歩、7四歩、4一玉、7三歩成、同金、2三飛成、7九角(次の図)

変化7五桂図39
 7九角(図)、8八歩、同と、2一竜、5二玉、8八金、7六桂、8六玉(次の図)

変化7五桂図40
 8六玉(図)と上がって、9五~9四と逃げ込むルートがある。 先手優勢。

変化7五桂図41
 「7八歩」に、(9六歩、同玉、9五歩、9七玉として)7六歩(図)の場合。
 この場合は、2六香とするのが良い手になる(次の図)

変化7五桂図42
 ここで(先手2五飛に備えて)6二金が考えられるが、それには3三歩成が好手になる。 これを同桂なら3四歩、同銀なら5一竜で先手が良くなる。
 3一銀がある。 これが粘り強い手なのだ。 以下、2五飛に、1一玉とする

変化7五桂図43
 2三飛成なら2二歩で後手良し。 先手は、3三歩成、同桂を入れて5五飛と銀を取る。
 以下、4二金、6三角成、6二銀右(先手の5一竜を防いだ)に、8五歩(次の図)

変化7五桂図44
 先手は8五歩(図)で、決着をつけに行く。 以下、6三銀、8四歩。
 こうなったとき、「7八歩、7六歩」の手交換が入っていることが先手有利に働く。つまり8七桂成、同金、同と、7六金という後手の攻めが、もしも「7八歩、7六歩」の手交換がなければ生じていて、それは厳しい勝負になっていた(次の図)

変化7五桂図45
 7五の桂を取って、1五桂と打つのが後手玉への厳しい攻めになる。 7四銀なら、5一竜がある。
 この図は、先手勝勢である。 

変化7五桂図46
 この図は、「変化7五桂図35(7八歩図)」から、9六歩、同玉、7六と(図)の変化。
 9六玉の位置で 7六と とすることによって、後手は角を手に入れた場合に、8七角、同金、9五歩、9七玉、8七桂成で、先手玉を詰ますことができる。
 しかし、それでもここで5二角成と行く手が成立するのだ!
 5二同歩なら、8四馬がある。 その瞬間、金を二枚手に入れたので、3三金から後手玉を詰ますことができる状況になっているのだ(3三金、同歩、同歩成、同玉、3四歩以下)

 それは後手負けなので、5二角成に、9五歩、9七玉と上を押さえてから、5二歩と手を戻す。
 今度8四馬は、7九角(この角が3五まで利いている)、8八香、8四銀で、後手玉は詰まなくなっていて、これは後手良しになってしまう。
 なので、先手は、4一飛と打って攻める。 後手は7九角と“王手”(次の図)

変化7五桂図47
 8八香、8七桂成、同金、同と、同玉、3一金、6一飛成、7六桂(次の図)

変化7五桂図48
 7六桂(図)には、同玉と取るのがわかりやすい勝ち方。 8八角成に、8四馬(次の図)

変化7五桂図49
 8四同銀に、3三金と打ちこむ。以下同桂、同歩成、同歩(同玉は3四歩、2二玉、3三金)、3四桂、同歩、3一竜、同銀、3三金(次の図)

変化7五桂図50
 後手玉が詰んだ。

 以上、A.7五桂 は、先手良しとなった。


変化7六歩図01
 B.7六歩 には、7八歩でもよいが、ここは「3三香」と攻めて先手が勝てる(次の図)

変化7六歩図02
 「3三香」(図)に、同桂なら、同歩成、同銀、5二角成である。
 「3三香」には、3一銀がこの場合の受けの形。この手は、タイミングを見計らって4二金とする手を含みにしている。
 3一銀に、8四馬がある。 金を一枚補充して、3二香成以下、後手玉が“詰めろ”になっている。
 だから後手はこの8四馬を取れず、7七歩成、9七玉のあと、4二金と受けることになる。4二金は角取りになっていて、5一竜なら、4一金、同竜、7九角で先手玉が詰まされて負けになる。
 しかし、3二香成がある(次の図)

変化7六歩図03
 3二香成(図)を、同金なら7三馬で先手良し。
 なので3二同銀だが、後手玉は寄っている。 以下、同角成、、同金、3三金(次の図)

変化7六歩図04
 3三金(図)で、後手玉は“詰み”。
 同桂なら、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4五銀、3三玉、2五桂、4二玉、3四桂、5二玉、5一竜、同玉、7三馬、6二合、5二歩以下。
 1一玉には、2二金、同金、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3一飛、3二合、3四歩以下。
 この詰み筋も、3七桂が後手玉の上部をしっかり押さえている。


変化6六銀図01
 C.6六銀(図)。 桂馬を温存して銀を攻めに使う。 それによって、先手の手を見て、場合によっては桂を受けに使うこともできる。
 この手には、4五桂と跳ねる(次の図)

変化6六銀図02
 4五桂に対し、<e>4四銀なら、5三歩、6二金、3三香で後手玉は攻略できる。
 だから後手は、<f>7七と、あるいは <g>7七銀成 を選ぶことになる。
 まず<f>7七と は、9七玉、7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成、9八金と進む(次の図)

変化6六銀図03
 後手は、攻めることで、先手に「金香」を受けに使わせ、その分だけ先手の後手陣への攻撃力は小さくなった。
 そこで4四銀。 以下5三歩、9五歩(詰めろ)、同歩、9六歩、同玉、9四歩。
 先手はこれを、9四同馬と取るのがわかりやすい。 同金なら5二歩成で、先手が攻め勝つ(以下7四角には8五歩でよい)
 9四同金では後手勝てないと見て、6二金(次の図)

変化6六銀図04
 先手に攻めの“手番”がまわった。 3三歩成とする。
 同桂に、5二歩成(次の図)

変化6六銀図05
 5二同金ならもちろん同角成である。
 後手は3一銀と抵抗するが、5一竜、4五桂に、4二飛(次の図)

変化6六銀図06
 先手勝勢である。

変化6六銀図07
 <g>7七銀成(図)の場合。
 9七玉、7五桂、8九香(代えて9八金は先手苦戦)に、7八と(次の図)

変化6六銀図08
 8九に打った香車を取りに来た7八と。
 そこで3七飛(図)の返し技があった。 次に8四馬から金を取れば、3二角成、同玉、3三金から後手玉をいっきに詰ますことができる。
 4四銀引と受けても、5三歩、6二金、3三歩成、同桂、同桂成、同銀引、3四桂で、寄り。
 なので、後手は8九とで攻め合いにでる。以下、7七飛(次の図)

変化6六銀図09
 そこで9九とでは、3三歩成から後手陣が寄ってしまう(3三同桂なら7五飛から3四桂をねらう。3三同銀なら、5二角成がある)
 なので後手は7六歩とし、3七飛に、3一香と自陣を補強する。
 対して、3三歩成と攻める(次の図) 

変化6六銀図10
 3三同桂、5三桂成、同金、3四歩、4五桂、5一竜(次の図)

変化6六銀図11
 5一同銀は、3三銀以下、“詰み”。 先手勝勢である。
 この変化も、3七桂と跳ねた桂馬が、存分に働いた。

 C.6六銀 も、先手良し。


変化4四銀図01
 D.4四銀引(図)の場合。
 先手は2六香と打つ。
 ここで後手が一手パスのような手を指したり、あるいは3五銀なら、2三香成、同玉、1一飛で、いっきに先手勝勢になる。 この場合、3七桂が後手玉の上部を押さえる駒としてよく働いている。
 よって後手は、7五桂、9七玉、7七と、9八金を決め、そこで6二金とする(次の図)

変化4四銀図02
 先手に金を使わせたので、今度2三香成~1一飛は、2二玉で、逆に後手勝ちになる。
 そして6二金は、先手の2五飛に備えた手である(2五飛、3一玉は後手良し)
 ここは5二歩が最善手になる(次の図)

変化4四銀図03
 5二同歩なら、今度は2五飛が有効となり、それは先手が勝ち。
 5二歩には、6一歩と受けるのが常識的な受けだが、この場合は、5一歩成、同銀、2三香成、同玉、3一飛で、先手優勢となる。
 だから後手は、3五銀でどうか。 2六香を除きにくる意味。
 以下、5一歩成、2六銀、同歩、9五歩、8四馬(次の図)

変化4四銀図04
 8四馬(図)で、先手は持駒を「飛金銀」と持ったので、3二角成、同玉、4一銀以下後手玉への“詰めろ”になっている。
 先手勝ち。

 D.4四銀引 も、先手良しになった。


3七桂基本図(再掲)
 結論。 〔柊〕3七桂 は先手良し

 〔柊〕3七桂は、一見、遅いように見えるが、どの変化になってもこの桂が有効に働いてくる。
 そして、「飛」と「香」をまだ両方手持ちにしているので、攻めの手段が色々と選べる。
 〔柊〕3七桂は、調べてみれば、先手がかなり勝ちやすいとわかった(この手は最新ソフトも見逃していた手だったのだが)
 ただし、感覚的・理論的には先手が指しやすいが、変化は相当に広いので、実践的には大変かもしれない。



「6七と図」のまとめ

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔柊〕3七桂 → 先手良し

 これで、「先手の勝ち筋」は、なんと、少なくとも9通り ということになった。
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終盤探検隊 part142 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第41譜

2020年01月04日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第41譜 指始図≫ 9七玉まで


    [あんたどこにもいなくなっちまうんだぜ]

「夢見ているとこだ、どんな夢だと思う?」とソックリディー。
「そんなこと、わかるもんですか」
「え、だってあんたの夢だよ」ソックリディーがしてやったりとばかり手をたたき、「もし王さまがあんたの夢見るのやめちゃったら、あんたはどこに行っちゃうんだろう?」
「そりゃここにいるでしょうよ、もちろん」
「いるかって」ソックリディーはふふんとせせらわらって、「あんたどこにもいなくなっちまうんだぜ。だって王さまの夢の中にしか存在してないじゃないか」
「そこの王さまが目をさましたがさいご。あんたは消えちゃうんだぜ」ソックリダムもいいだす。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 ソックリダムとソックリディーは、アリスに、おまえは「赤の王さま」の夢の中の存在だ、だから王さまが夢見ることをやめたらアリスは消えてしまうのだと言う。




<第41譜 天空の2五飛が隠れていた>


≪最終一番勝負 第41譜 指始図≫

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中である。



6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り)
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉




[調査研究:2六香]

 我々終盤探検隊の、〔桃〕2六香についての研究が、アップデートされたのでまずその内容を報告する。 “新手” が発見され、前回の結論が書き替えられる可能性が出てきたのだ。

2六香基本図
 〔桃〕2六香 は、前譜(第40譜)で調査研究を行い、結論は「形勢不明(後手寄り)」だった。
 その手順は、次の通りである。
 〔桃〕2六香 に、7六歩、7八歩、6六銀、9七玉、7七歩成、同歩、同銀成、2五飛、2四桂という手順である(次の図)

研究2六香図X1(2四桂図)
 先手の2五飛に、2四桂(図)と受けられて、以下難解な(つまり互角に近い)勝負となるが、どうやら最善を尽くしても先手が苦戦するようである(ここで8五歩は同金、同飛、8四銀で先手悪い)

 しかし、(研究上の話ではあるが)先手側にその状況を変えるかもしれない “新手” が見つかった。 その研究報告をしておきたい。
 この図を、「2手」戻す。つまり、2五飛を打つ前の局面に。

研究2六香図X2(7七同銀成図)
 2手戻した「7七同銀成図」。 もう一度ここで考え直す。
 2五飛 は、2四桂と受けられて先手苦戦とわかった。 
 だから、それ以外の手がないか――――というところ‥‥
 しかし3七桂は、7五桂、9八金、7六歩が“詰めろ”で、先手負けだ。
 他に、何かないのか――――(次の図)

研究2六香図X3
 あった!!!
 2三香成(図)が、 “新発見の研究手” である。
 同玉に、1一飛と打つのである。 これで、どうか(次の図)

研究2六香図X4
 1一飛(図)と打って、この飛車打ちに期待する。 この場面、「dolphin1/orqha1018」評価値は -286 なので、「だめなのか」と思ってしまうが‥‥
 1一飛に、2二玉なら、3二角成、同玉、1二飛成で後手玉詰みだ。だから後手は3四玉と上部へ逃げる。
 以下、2一飛成、7五桂、7九桂、4五玉、2六竜(次の図)

研究2六香図X5
 こう進んで、先手は「金」を手に持っているのが大きい。7五桂にも金をつかわず7九桂で受けることができた。
 後手は受けに「桂」を使うために7五桂を打つことを保留した指し方を選んできたので(先手の2五飛に2四桂の手を用意)、先手のほうも「金」を(受けに使うことなく)手に持っている。そのことが、ここにきて生きた。
 どうやらこの図に進んでみると、「先手良し」のようだ。 良いタイミングで5二や8四の金の質駒を取って、後手玉を寄せる形に持っていきたい。
 ただし、最新ソフト「dolphin1/orqha1018」の評価値は -721 で、なぜかはっきり「後手有利」と出ているが‥

 もう少し進めてみよう。 7八歩(「dolphin1/orqha1018」の推奨手)なら、4六金、5四玉、3五竜(5五金以下詰めろ)、4四銀、7五竜(次の図)

研究2六香図X6
 こう進んで、先手優勢。
 (どうやら「dolphin1/orqha1018」は4六金、5四玉、3五竜と進んだ局面で、後手によい受けがないということに、前の図の局面では気づいていなかったようだ)

研究2六香図X7
 2六竜に、 5五玉(図)とした場合(7八歩でだめならこれしかなさそう)
 これには、7八歩、7六成銀、6一竜と指すのが良い。

研究2六香図X8
 6一竜(図)として、後手玉は “4六金以下の詰めろ” になっている。 6二歩と受けるのは7二竜が継続手で先手優勢がはっきりする。
 なので4四香として頑張る手を指してどうか(代えて4五香には 6七桂、同成銀、3七桂で4五香を取りにいく)
 それには、6七桂、同成銀、5七歩、6六成銀、6七歩、同桂成、8五歩、同金、8三馬のように指す(次の図)

研究2六香図X9
 先手優勢。 盤上の四つの大駒が中央の後手玉を包囲している。

 ということで――――

研究2六香図X2(再掲7七同銀成図)
 この図は、どうやら、「2三香成、同玉、1一飛」で、先手が勝てそうだ。
 この2三香成~1一飛(この時に「金」を持駒にしていることが先手の条件)の攻めを後手が避けるには、〔桃〕2六香に対し、「7五桂、9七玉、7七と、9八金」とすぐに7五桂と打って、「金」を受けに使わせるしかない。 しかしそれは、前回(第40譜)の研究発表で、「先手良し」の結論を出している。

 だから、「新しい結論」は、次のように変わる。


2六香基本図(再掲)
  〔桃〕2六香 は先手良し。 
 

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り) → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 「6七と図」の調査結果はこう書き換えられた。





 今回は、以下、〔楓〕2五飛 という新しい手についての研究内容を報告したい。

[調査研究:2五飛]

2五飛基本図
 〔楓〕2五飛
 この手のメリットは5五の銀取りになっているところ。そして2五飛の形は後手玉が3三から中段に出てきたときに(持駒によるが)詰ませやすいということがある。
 そして、「香車」を打つことを保留して手に持っているので、この香の使い道が複数ある。具体的に言うと、3三香、または2六香という攻め。そして8九香と受けに使うこともできる。
 〔楓〕2五飛 のデメリットは、2筋を攻めるのに2六香と打った形が“逆形”になっているということである。

 ここで考えられる後手の手は、次の3つ。
 【1】7五桂【2】6六銀【3】7六歩
 ここは後手にとって重要な“分岐点”である。 後手の考え方のポイントは「持駒の桂馬をどこに使うか」である。
 「桂」を攻めに使うなら、【1】7五桂 だ。

研究2五飛図01(7五桂図)
【1】7五桂(図)、9七玉に、7七とで、先手玉に、“詰めろ”をかける(次の図)

研究2五飛図02(9八金図)
 先手は、9八金(図)と受ける。
 代えて8九香と受ける手も考えられるが、6六銀で形勢不明。 ここは香車を攻めのためにとっておくほうが優る。
 さて、9八金に、後手はどうするか。
 「6六銀」はどうか(次の図)

研究2五飛図03
 しかし、ここで2六香と打って、先手が勝てる。 後手は桂馬を使ってしまっているので、受ける駒がない。
 だから、2六香に、8七桂成、同金、同と、同玉で、金を手に入れ、2四金と打つ。受けはこれしかない。
 しかし、2四同飛、同歩、1五桂で――――(次の図)

研究2五飛図04
 先手勝勢。

研究2五飛図05(6二金図)
 戻って、先手の2六香の攻めを未然に防ぐには、「6二金」(図)しかない。
 5五飛で銀が取れるが、それでは、3一玉で後手優勢になる。 5二歩は考えられるが、6一歩以下形勢不明の戦いになるようだ。
 もっと良い手がある―――(次の図)

研究2五飛図06(3三香図)
 3三香(図)があった。
 この手が成立するのが「2六飛」ではなく「2五飛」の利点である。 3三香、同桂、同歩成、同玉(同銀は後述)のときに、5五飛と、ここで「銀」を補充できるのが「2五飛」の強みなのだ(次の図)

研究2五飛図07
 どうやらこの図は、「先手優勢」である。 以下、もう少し先まで進めて先手良しを確認しよう。
 ここで4四銀なら、5九飛(金を取る)として、次の2一銀をねらう。
 6九金なら、先手2五桂で後手玉は寄る。2五桂、2二玉、3三歩、同銀、5一竜の要領だ。
 ここから、後手9五歩が気になる手だ。これは同歩と取るが、同金、9六歩に、8七桂成と攻めをつなげてくる(次の図)

研究2五飛図08
 8七同金、同と、同玉、7六金に、7八玉と右方向に逃げていく。
 以下、8六金右に、2五桂(次の図)

研究2五飛図09
 2五桂に、2二玉なら、6八玉、5四香、3三歩、同銀、5一竜、5五香、3四桂(次の図)

研究2五飛図10
 後手玉が詰んで、先手勝ち。

研究2五飛図11
 ということで、2五桂に、4四玉(図)の場合。
 5九飛、7七金右、6九玉、6八歩、5八玉、5五香(代えて4五香なら4七桂で先手勝ち)、4七玉(次の図)

研究2五飛図12
 5九香成は、4五歩以下、後手玉詰み。
 5四銀としても、3六桂、5三玉、5五飛で、先手勝ち。 二枚の角が良く利いている。

研究2五飛図13
 3三香、同桂、同歩成に、同銀(図)の変化。
 これには、5一竜。 以下、8七桂成、同金、同と、同玉、6一金打。
 6一金打で、先手の竜を捕獲して焦らせようともくろむが、1五桂がある。以下、3四銀に、3五桂(次の図)

研究2五飛図14
 2四歩(同飛なら3三玉で後手良しになる)には、8四馬と金を入手して先手勝ち。
 また2四香なら、2三桂左成、同銀、同桂成、同玉、3五飛、3四桂、2一銀、2七香成、8四馬で、先手勝ち。
 だから、後手は3三玉と上部脱出に賭ける。 以下3二角成、4四玉、4三桂成、同銀、4一竜、4二歩、2三角成(次の図)

研究2五飛図15
 先手優勢である。 図では詰みを防いで3四歩か3五歩が予想されるが、8四馬と金を取って、その手が“詰めろ”になる。

【1】7五桂 は先手良し。


研究2五飛図16(6六銀図)
 〔楓〕2五飛 に、【2】6六銀(図)の場合。
 次に後手からは、「7七銀成」、「7七と」、「7五桂」などの攻めが考えられる。
 それをふまえて、先手は何の手を指すのが良いのか。2六香と打つのは2四桂で攻めあぐむ、3三香は3一銀で後手良し。
 そして5二角成は(7七と、9七玉、7五桂以下)形勢不明の戦いのなりそう。

 “正解”は、9七玉である(次の図)

研究2五飛図17(9七玉図)
 9七玉(図)が最善手。
 この手には、後手が7七銀成と来るのか、7七とと来るのか、あるいはその他の手なのか、敵の指し手を見て、次の手を決めることができる、という意味がある。
 (い)7七銀成 なら5二角成、(ろ)7七とには3三香と攻めて、どちらも先手良しになるのである。(7五桂は2六香で先手勝ち)
 その他の手としては、(は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀もある。
 (い)7七銀成から、順に見ていこう。

研究2五飛図18(5二角成図)
 (い)7七銀成 には、「5二角成」(図)
 以下 “7五桂” には、8九香と受ける(次の図)

研究2五飛図19(8九香図)
 このとき、先手は「金金」の持駒があるので、後手が 5二歩 なら―――(次の図)

研究2五飛図20
 3三金(図)と打って、後手玉が詰む、という仕組みである。
 3三同歩なら、2一竜、同玉、2三飛成以下詰むし、3三同銀なら、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3五金、3三玉、2三飛成(次の図)

研究2五飛図21
 2三同玉に、2一竜以下の“詰み”。 先手勝ち。

研究2五飛図22
 5二歩 に代えて、8七成銀(図)と攻める手がある。これは、同香に、7七ととする。
 対して、9八金と受けても先手が良いが、ここは3三歩成がより鮮やかな勝ち方である(次の図)

研究2五飛図23
 先手は「金金銀」と持駒がある。なので、3三歩成(図)を“同玉”なら、3四銀、同玉、3五金、3三玉、3四金打以下詰み。
 “3三同桂”は、7五飛とした手が、3四桂以下の、"詰めろ逃れの詰めろ"である。
 “3三同銀”なら、3一銀(次の図)

研究2五飛図24
 3一銀(図)以下、“詰み”。 3一同玉なら、5三馬から。
 1一玉には、2二金、同銀、同銀成、同玉、3一銀(次の図)

研究2五飛図25
 もう一度、3一銀(図)と打って、3三玉に、5一馬として、4二に金か銀を合駒することになり、3四歩、同玉、3五金、3三玉、4二馬からその合駒を取って、詰ますことができる。
 ここでも、2五飛が後手玉を詰ますためによく働いている。

研究2五飛図26
 3三歩成に、“同歩” が最も粘れる手になるが、その手には、7五飛(図)と指す。
 先手玉にかかっていた詰めろを解除した。 そして同金、同馬となれば、持駒に「金金銀銀」とあるので、後手玉に逆に“詰めろ”が掛かっている。
 よって後手はここで5二歩と馬のほうを取る。先手玉に7九角以下の“詰めろ”がかかった。
 以下、7七飛、7六歩、8四馬(次の図)

研究2五飛図27
 8四馬(図)と金を補充して、後手玉に“詰めろ”をかけた。 先手勝勢である。
 図で3一銀には、3二歩がある。 3二角には、6六馬が“詰めろ”だ。

研究2五飛図19(再掲 8九香図)
 「8九香図」まで戻って、ここで後手に、5二歩と、8七成銀 以外の手がないか、考えてみる。
 ここで後手9五歩 とか 7八と なら、先手は3三歩成とし、同歩なら4一馬、同銀なら5三馬、同桂なら7五飛が、いずれも“詰めろ”になる。 そして、3三同玉には、5一竜(同銀は同馬以下詰み)がやはり“詰めろ”になる。 先手勝ちだ。
 なので、他に考えられる手としては、ここで1四歩 くらいしかない(今度は3三歩成といくと同桂で後手良しになる)
 それには、4一馬入っておく(次の図)

研究2五飛図28
 受ける手段のない後手は攻めるしかないが、7八とか9五歩くらいしかない。 しかしそれは詰めろではないので、先手は3三歩成として、先手が勝ちになる。 3三同銀は3一金でよい。3三同玉には3五飛以下詰みがある。3三同桂には、2一金(次の図)

研究2五飛図29
 1三玉に、4二馬と銀を取って、先手の勝ち。

研究2五飛図30
 先手の「5二角成」に、“7五桂” と打たず、“7六桂”(図)という攻めはどうか。
 これには[8九香]と手堅く受けても先手良しだが、ここでは[3七桂]で勝つ手順を見ておこう。
 この[3七桂]は、2三飛成、同玉、2四金、同玉、2五金、2三玉、2四香までの“詰めろ”である。
 なので後手は3一桂と受ける(2四桂と受けるのは同飛、同歩に、2三香、同玉、3五桂以下詰み)
 先手は2六香。 以下、8八桂成に、2三飛成(次の図)

研究2五飛図31
 やはり、後手玉は、“詰み”。 同桂、同香成、同玉、3五桂以下。
 なお、この手順中、後手8八桂成の手に代えて1一玉なら、8四馬と「金」を補充すればよい。

研究2五飛図32(7七と図)
 (ろ)7七と(図)。
 (い)7七銀成 のときと同じように「5二角成」は、以下7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成と進み―――(次の図)

研究2五飛図33
 (い)7七銀成 のときは「成銀を捨てて7七と」としたが、この場合は「と金を捨てて7七銀成」なので、先手に「銀」が手に入ったかどうかの大きな違いがある(この場合は入っていないので先手たいへん)
 この図からの変化を調べてみたが、結論が出ない。つまり、形勢不明である。

研究2五飛図34
 それよりも、(ろ)7七とには、「3三香」(図)があり、これが明快な先手の勝ち筋となる(ここでも現れた3三香打ちである)
 これを 同桂 と取るのは、同歩成、同銀、8四馬で、この手が2一金以下の“詰めろ”になっていて、先手勝勢。
 同銀 は、同歩成、同玉、5二角成で、これも先手勝勢。
 よってこの3三香には、後手は 3一銀 しかない。 しかしそれも、8四馬、同銀に、3二香成、同銀、同馬、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩(次の図)

研究2五飛図35
 3四同玉に、4六桂以下、後手玉は“詰み”。
 このように、(ろ)7七とには、「3三香」で、先手が勝ちになる。

研究2五飛図36
 今の手順で、先手8四馬のときに、後手4二金(図)とする手がある。
 このときに、6六馬と銀を取りながら、後手玉をにらむ筋に行く絶好手があるために、この後手の4二金は無効である
 これが重要な変化で、もしもこれが「後手(い)7七銀成 の場合」だったら、6六馬の手がないので、その場合は逆に「後手良し」となるのである。
 つまりこの「3三香以下の攻め」は、(ろ)7七との場合に有効となるわけである。
 (7七と→3三香、7七銀成→5二角成、と攻め筋を使い分けて、先手良しに導けるという仕組みである)

研究2五飛図17(再掲 9七玉図)
 (い)7七銀成、(ろ)7七とについては片付いた。
 (は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀が残っている。いずれも、受けに回る手だ。
 先手がそれをどう攻略するか、という問題になる。

研究2五飛図37
 (は)3一桂(図)と、「2三」を先受けした。
 先手は3七桂と跳ね、7七銀成に、4五桂(次の図)

研究2五飛図38
 4四銀なら、5三歩、6二金、3三香で、先手勝ち。 1四歩にも3三香が有効。 つまりここはもう後手に受けがない。
 後手9五歩の攻めには、8四馬が“決め手”になる。 同銀に、3二馬(次の図)

研究2五飛図39
 3二馬(図)から、勝ちにいく。 同玉に、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3六香(次の図)

研究2五飛図40
 これで、詰んだ。

研究2五飛図41
 (に)1一桂は、6二金~3一玉や、3一銀~4二金のような手段があるのが、(は)3一桂との違い。
 ここでも、3七桂~4五桂は有効だが、ここではより勝ちやすい「3三歩成」以下の攻めを紹介しておこう(次の図)

研究2五飛図42
 「3三歩成」(図)を、同玉 は3五飛以下詰みだし、同歩 も3二金で詰む(3一桂と打っていれば3二金に1一玉と逃げられたが)
 なので、後手は 3三同銀3三同桂 の2択となる。
 3三同銀 には、5二角成、同歩、3一金でよい(次の図)

研究2五飛図43 
 この攻め形は、「後手1一桂型」(3一が空いていて1一がつまっている)だから成立した。
 図では 1四歩しかないが、2一金、1三玉、1五歩、2四歩、4五飛(ここに逃げるのがベスト)、7九角、9八玉、7七と、1四歩、2三玉、3五桂(次の図)

研究2五飛図44
 先手勝ちがはっきりした。 3五同馬、同飛となった形が、1三金以下の“詰めろ”になっている。 3五桂に3四玉なら、もちろん4三飛成以下“詰み”である。

研究2五飛図45
 3三同桂 なら、3五飛(図)
 次に5二角成があるので、後手は6二金とするが、3四歩、3一玉、5二金(次の図)

研究2五飛図46
 5二同金、同角成、7七銀成、8九香(次の図)

研究2五飛図47
 後手の手番だが、7八と では5三馬、同銀、5一竜がきびしい。 それを防ぐ 6二銀右 は、4一金、2二玉、4二金、同銀、同馬で先手勝ち(後手の手に金二枚あるが先手玉は詰まない)
 4一金 としても、5三馬、同銀、3三歩成で、やはり先手勝ちになる。
 とうことで、後手は 2二玉 とする。 それには、3三歩成、同歩、5一竜と決めにいく。
 5一同銀に、4三馬(次の図)

研究2五飛図48
 "詰めろ逃れの詰めろ"の4三馬(図)で、先手勝勢。 3二金と受けても、3三飛成、同金、2一金で“詰み”。

研究2五飛図49
 (ほ)2四桂には、「3三歩成」。
 これを 同銀 は、5二角成、同歩、3一金の攻めがある。 同玉 には3五飛、3四香、2五桂、2二玉、3四飛で先手良し。
 よって、3三同桂。 先手は、3九香と打つ(次の図)

研究2五飛図50
 以下、7七銀成に、3三香成、同銀、5二角成(次の図)

研究2五飛図51
 先手勝ち。

研究2五飛図52
 (へ)3一銀(図)は、どう攻略するか。
 一つの案としては、2六香と打って、1一桂、3七桂、7七銀成、6一竜と進めば、これは前譜(第40譜)で出てきた図に合流し、先手良しである。
 ただし、ここでは、もっと速く、そして鮮やかに攻略する手段があるので、それを紹介する。

研究2五飛図53
 (へ)3一銀に、「3三金」(図)とすぐに打ちこんでいく。
 同桂、同歩成、同玉、5二角成、同歩、3六香(次の図)

研究2五飛図54
 3四に、角、金、桂のいずれを合駒しても、同香と取って詰む。たとえば3四桂には、同香、同玉、3五金、3三玉、4五桂、2二玉、3四桂以下。
 3六香に、2二玉なら、2一金、同玉、2三飛成以下詰み。

研究2五飛図17(再掲 9七玉図)
 「6七と図」より、〔楓〕2五飛に、【2】6六銀、9七玉(図)と進めて―――
 そこで、(い)7七銀成、(ろ)7七と、(は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀、いずれも「先手良し」が明らかとなった。

 よって、 【2】6六銀 は先手良し、と結論する。


研究2五飛図55(7六歩図)
 残るは、【3】7六歩(図)
 この手 には、7八歩と受ける(代えて2六香はうまくいかないようだ)
 以下、6六銀に、9七玉。
 この時に、後手が「7六歩、7八歩」の手交換を生かす順があるかどうかの問題になる。
 (7五桂や7七歩成ではこれまでの変化に合流する →先手良し)

研究2五飛図56
 すなわち、ここで「7八と」(図)は、どうか。
 その手にも、やはり先手は―――(次の図)

研究2五飛図57
 3三香(図)と打ちこむ。 3一銀に、8四馬、同銀、3二香成(次の図)

研究2五飛図58
 3二同銀、同角成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4六桂(次の図) 

研究2五飛図59
 後手玉が詰んで、先手勝ち。

研究2五飛図60
 【3】7六歩、7八歩、6六銀、9七玉に、「3一桂」(図)の変化。
 先手3七桂に、ここで「7八と」とするのはどうか。先手は2六香と打つ。
 これで次に8四馬と金を取れば、2三飛成以下の“詰めろ”になる。すなわち2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂、3四玉、4五金、3三玉、2三金まで。
 その詰み筋を防ぐのが難しく、5四銀(4五に利かせ5三に玉を逃げるスペースを空けた)としても、5二角成がある。以下5二同歩に、2三飛成、同桂、同香成、同玉、2一竜以下、これも“詰み”。
 このように後手はもう受けがないが、7七銀不成で勝負するのはどうか(次の図)

研究2五飛図63
 この7七銀不成(図)はこれまでに出てこなかった攻めの形。 まだ詰めろではないが、8八銀不成からの攻めを狙う。
 8四馬と金を取る。上で述べた通り、2三飛成以下、後手玉への“詰めろ”。
 そこで8八銀不成、9八玉、9九銀成(次の図)

研究2五飛図64
 9九同玉と取る。
 そこで後手9七香は、9八銀と受けて後手の攻めは続かない。
 だから、2四香と受けに回ってどうか。9九の香車を銀で取ってそれを受けに使うというのが、これまでに出なかった指し回しだ。
 先手が焦るところだが、正確に指せば先手が勝てる。 3三銀と攻める手が成立した(次の図)

研究2五飛図65
 3三銀(図)と打ちこんだ。 銀を渡すのは恐いが、銀だけなら先手玉はまだ詰まない。
 3三同桂、同歩成、同銀、3四歩(詰めろ)、同銀、3二角成、同玉、3三歩、同玉、6六馬(次の図)

研究2五飛図66
 これで後手玉が詰んでいる。 4四歩(4四銀)に、4五桂打以下。

 【3】7六歩 も先手良しがはっきりしたようだ。



2五飛基本図(再掲)
 〔楓〕2五飛 は先手良し、が以上の調査研究で明らかになった。 

 相手の手を見て、攻め方を変幻自在に変えて、勝つ。
 なんとかっこいい勝ち方であろう。
 なお、コンピューターソフト「激指14」も「dolphin1/orqha1018」も、この〔楓〕2五飛は、それぞれの10コの候補手の中に挙げていない。 我々(終盤探検隊)がこれを戦後調査する気になったのは、2六香や2六飛が有力なら、では2五飛はどうなるだろうと、好奇心が湧いたからだった。



「6七と図」の最新の結論は、こうなっている。

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り) → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔楓〕2五飛 → 先手良し



第42譜につづく








[調査研究(補足):2六香]

 〔桃〕2六香についての研究の補足。

2六香基本図(再掲)
  〔桃〕2六香 に対し、「7六歩、7八歩、6六銀、9七玉、7七歩成、同歩、同銀成」と進めると、「2三香成、同玉、1一飛」で先手良し、というのが上の調査結果だった。
 そして、その筋を避けるためには「7五桂、9七玉、7七と、9八金」として金を先手に使わせるしかないが、それは前譜で「先手良し」の結論を出している。
 
 ――――ということを、上で書いたが、これは正確ではなかった。
 というのは、ここで 3一桂 と受ける手もあったからである(次の図)

研究2六香図Y1
  3一桂 と打っても、「先手良し」の結論は変わらない。しかしこの手に対してどう攻略するのがよいかという、“勉強”のために、その研究手順を以下に示しておく。
 なお、 3一桂に代えて、1一桂や2四桂の受けなら、5二角成、同歩、4一飛で、いっきに先手勝勢になる。
 この 3一桂 に5二角成は先手不利になる。 ならばどう攻めるか、というのがここでのテーマである。

研究2六香図Y2
 2三香成(図)と攻めていく手があり、この攻めを紹介する。
 これを同桂は2四金と打って、次に2五飛と打つ手が受からないので、はっきり先手良し。
 したがって後手は2三同玉。以下、2五飛、2四歩、5五飛。
 そこで6九金では1一銀と打たれて、2二香と受けることになり、それでは後手が勝ち目がない。
 だから後手は2二玉が必然手となるが、そこで1五歩(次の図)

研究2六香図Y3
 1筋に目をつけて、ここからの攻めをめざす。後手が桂馬を受けに使ったので、7五桂という手がなく、だから1筋の攻めが間に合うという計算だ。
 7六歩には、7八歩と受けておく。
 以下、6九金に、1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩(次の図)

研究2六香図Y4
 1二同玉なら3二角成があるし、次に8四馬と金を取った手が1一銀からの“詰めろ”になる。
 このとき、5五にいる飛車が後手玉の上部脱出を押さえている。
 だからここで後手4四銀が考えられる。しかしここでの4四銀はもう遅い。1一銀、2三玉、3二角成、同玉、2二金、4一玉に、8四馬(次の図)

研究2六香図Y5
 角香の持駒では先手玉は詰まない。
 後手3二歩の受けに、7三馬で先手勝ち。5二飛成と3二金の2種類の詰み筋があるので、受けがない。
 よって、先手勝ち。

研究2六香図Y6
 先手1五歩に、4四銀(図)とした場合。先手の飛車を引かせる意味だ。
 対して6五飛とがんばるのは、6六歩で形勢不明になる。
 素直に5九飛が正着。
 5九飛、7四香、1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩(次の図) 

研究2六香図Y7
 予定通り1筋を攻めたが、1二歩はまだ“詰めろ”にはなっていない。
 なので後手は7八と。
 先手は、3九飛(次の図)

研究2六香図Y8
 3九飛(図)で、“詰めろ”をかけることができた。
 そして、1一銀以下の詰めろだが、後手はもう受けがない。 2五歩には2四金があるし、1二玉は3二角成だ。
 先手勝ち。

研究2六香図Y9
 今の手順の途中、先手が1四歩としたときに、同歩 と取らず、7八と(図)を選択した場合。
 1三歩成、同香、同香成、同桂、1四歩(次の図)

研究2六香図Y10
 この1四歩(図)は、1三歩成、同玉、1四銀、同玉、3二角成以下の“詰めろ”になっている。
 なので、後手は、7七歩成、9七玉に、ここで1二歩と受ける。
 以下、1三歩成、同歩、1五桂(2三香、同桂、同桂成、1五桂以下詰めろ)、1四歩、5二飛成(次の図)

研究2六香図Y11
 この図は、2三香以下、“詰めろ”になっている。 5二同歩も、2三香、同桂、3二角成以下の詰み。
 先手勝ちがはっきりした。

研究2六香図Y1(再掲)
 これで、「3一桂 には、2三香成で先手が勝てる」と示すことができた。
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