はんどろやノート

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終盤探検隊 part186 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第85譜

2020年12月15日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第85譜 指始図≫ 3四馬まで

指し手 ▲7六歩 


   [さあ、あんたよ]

「さあ、あんたよ」アリスはすごいいきおいで赤の女王さまの方にむきなおる。だいたいこのさわぎの張本人は、こいつとしか思えない――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
 ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」


  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第85譜 決着は泥の中で(四)>


≪最終一番勝負 第84譜 指始図≫ 3四馬まで

 ▲7九金 に、△3四馬 と馬を引いたところ。
 ここは形勢「互角」。「水匠2/やねうら王」評価値は +153 。


3四馬図
  〔S〕6八歩
  〔T〕5七金
  〔U〕6一竜
  〔V〕9五歩
  〔W〕6五金
  〔X〕7六歩 = 実戦の指し手

 ここでは、このような先手の候補手が考えられる。
 
 一つずつ、この順に解説していく。


変化6八歩図00
 〔S〕6八歩(図)と後手の6七歩成を受けた手。いちばん素直な手だ。
 これにはしかし、4三馬がある。それでどうなるか。
 次に6八桂成があるので先手は9七玉とし、以下9六歩、同玉に、9八歩がある(次の図)

変化6八歩図01
 同香ならもちろん6八桂成である。
 先手は8五歩。上部開拓をめざす。
 以下9九歩成、8四歩、8九と、8三歩成、7九と(次の図)

変化6八歩図02
 先手は「飛金香」を一気に取られてしまった。しかし先手には "入玉" の希望がある。
 ここで7三とは9九飛、8五玉(9七歩は、同飛成、同玉、8五金)、8一金、同竜、9三飛成で“入玉”ができなくなる。
 よって9五玉とするが、8一香(妙手)がある。
 8一同竜、5四馬、6一竜、9二歩、同馬、6四飛、同竜、同馬(次の図)

変化6八歩図03
 形勢不明の勝負(「水匠2/やねうら王」評価値は -371 )
 “入玉” できるかどうかの戦いになる。ソフト評価値的には後手良しとなるのだけど、"入玉" して先手玉が安全になれば、即、先手勝ちとなりそうな状況なので、評価値 -371 程度ならこれは「互角」の範囲である。


変化5七金図00
 〔T〕5七金(図)と打つ手もありそうに思えるが、これも今の変化と同じように、3四馬、9七玉、9六歩、同玉、9八歩、8五歩、9九歩成と進んでいくと―――

変化5七金図01
 こうなる。この場合も "入玉" してしまえばよいので、先手に勝ち目がないわけではないが、「5七金」と打った金がまったく働きのない無駄駒になっている分、はっきり損をしている(「水匠2/やねうら王」評価値は -670 )

 〔T〕5七金 は、先手不利、と見る。


変化6一竜図00
 〔U〕6一竜(図)は有効な手。
 今、“戦場”は6、7筋なので、6筋をしっかり受けるという意味の手だ(場合によっては5二竜も狙える)
 この手にも後手はやはり4三馬(次の図)

変化6一竜図01
 対して9七玉なら、ここでも9六歩、同玉、9八歩という将棋になる。
 それを避けて、「6五金」とできるのが6一竜の効果だ。
 しかし、対して、〔G〕6四銀右 が後手の好手(次の図)

変化6一竜図02
 (あ)6四同金は、6八桂成、6五金、7八成桂、同金、5六銀で、後手良し。
 (い)6六金と引く手にも、6八桂成。
 以下、8八玉、7九成桂と進む(次の図)

変化6一竜図03
 7九同飛、6五歩、6七金、9六歩(9七金の狙いがある)、8七金(次の図)

変化6一竜図04
 最新ソフト「水匠2/やねうら王」の評価値は -207 。「互角」の範囲だが、後手の手の選択肢が多いので厳密にはおそらく後手に勝ち筋があると思われる。
 しかしここで良さそうな後手5五銀には、3五桂、3四玉、4三歩、3五馬、5二竜の攻め合いもあるので、それでソフトの評価も互角なのである(調査上は後手良しになった)
 この図では5四馬として、次に7六歩、同歩、5五馬を狙う手もあり、現実的には後手持ちの評価となる局面だろう。

変化6一竜図05
 上の展開では先手不満。ということで、〔G〕6四銀右 に、(う)5四金打(図)の変化があり、この手に先手の期待がかかる。
 5四同銀に、6四金。
 そこで〈a〉5五銀 には “5四銀” がみえるが、以下3四馬で、これはその先を調べると後手良しになる。
 だが、5五銀には “6五金” と金を引いて受ける手があり、その変化なら互角。

 6四金に、〈b〉9六歩 が有力。この手は次に9七金以下の寄せを狙っており、だから先手は8五銀とそれを受ける(次の図)

変化6一竜図06
 8五銀(図)と受けて、逆に8四銀、同歩、同馬から先手玉が入玉できれば先手良しになる。
 後手は、5三歩、6二竜、5五銀と勝負する。以下8四銀に、5二金。
 5二同竜、8八桂成、9六玉、5二馬、6三金打(次の図)

変化6一竜図07
 激しいやりとりを経て、この図の形勢は互角(「水匠2/やねうら王」評価値 -194 )

変化6一竜図08
 〔H〕7四銀(図)の変化。これは6一竜の6筋の利きが通っている分、先手が6筋を受けやすいが、先手はこれには6六金と引くしかないので、先手の応手を限定できる。
 以下、6八桂成、8八玉、7九成桂、同飛。
 そこで7七香成、同玉と香車を成り捨て、「7五」への銀の進路をつくる。以下6五歩、6七金、7六歩、8八玉、7五銀。

 先手には5四歩で反撃する手がある(次の図)

変化6一竜図09
 先手はこのように攻め合いにもちこめる。ただし、ソフトの評価は「互角」である(「水匠2/やねうら王」評価値 -120 )
 5四同馬、5九香、6六歩、6八金、6四馬、8二馬、同馬、5三香成 が予想される。
 (ただし、この図では5四同銀と応じる手もある)

 この図を選ぶかどうかは後手の選択であるというところが、先手としては面白くないところだ(〔G〕6四銀右〔H〕7四銀 との選択は後手の権利)


変化9五歩図00
 〔V〕9五歩(図)は歩切れを補いつつ玉の可動スペースを広げた有効手である。
 そしてこの場合は、後手の4三馬には、9七玉で大丈夫。以下9八歩、同香、9六歩、同玉、6八桂成、同歩、9八馬は、8五歩で、先手良しだ。
 そのかわり、この手は後手6七歩成を許すことになる。以下同銀、同馬、7八金打(次の図)

変化9五歩図01
 3四馬と引くところだが、4五馬や5六馬も考えられる手。それには先手は6一竜とする。そして、もしも5六馬だったら次に4二歩、同銀、5二竜が有効な攻めになるし、4五馬だったら3七桂の手段も生まれ、4三歩の手がどこかで入る可能性も出てくる。
 なので3四馬まで引くのが妥当なところ。
 3四馬に、5四歩を入れる。4二銀に、やはりここも6一竜だ(次の図)

変化9五歩図02
 ここで後手が何をするか。7四銀としたいが、それには8二馬の活用が後手は嫌だ。
 後手6六歩が最善手か。これには同竜。
 そこで7四銀とすれば、ここで8二馬なら6五銀打で後手良し。
 先手は4三歩と切り返す。同馬(代えて同銀左は6一竜)に、5五金(次の図)

変化9五歩図03
 これは、これからの将棋。「互角」の形勢とみてよさそうだ。
 (「水匠2/やねうら王」評価値は -168 )

 〔V〕9五歩 は、この調査では最有力候補手である。


変化6五金図00
 〔W〕6五金(図)
 この手は7五金をねらっている。
 しかし、6七歩成、同銀、同馬で銀を献上することになる。
 そこでうっかり7八金打と受けると、6八桂成の後手の技が決まってしまう(次の図)

変化6五金図01
 6八桂成(図)を同歩と取ると、7六銀がある。
 したがってここは6七金と馬を取り、同成桂に、待望の7五金。
 同金、同馬、6六銀、6五馬、7五金(次の図)

変化6五金図02
 こうなって、後手優勢。
 先手としては3二馬、同玉、4三銀で、後手玉を詰ませたいが、同玉、4一竜、5四玉で、後手玉に詰みなし。
 よって、ここで1一角、同玉、3二角成とすることになりそうだが、5四角があり、同馬、7七銀成、9七玉、5四銀と進んで、逆に先手玉に “詰めろ” が掛かっている。

変化6五金図03
 そうなっては先手勝てないので、戻って、「6七歩成、同銀、同馬」に対し、7五金(図)とする。
 以下、同金、同馬となるが、そこで6六銀がある。以下7六馬に、同馬、同歩、7七金と進む(次の図) 

変化6五金図04
 先手には持駒が増えたので、なんとかここを凌ぎ切れば希望の光も見えてくるが――
 9七玉、7八歩、8八金、7九歩成、同飛、8八金、同玉、7八歩、同飛、6七金(次の図)

変化6五金図05
 どうやら、先手玉は捕まってしまった(「水匠2/やねうら王」評価値 -1022 )
 図以下、1八飛、7七銀成、9七玉、7九角、8八香、7八金で、後手勝ち。
 

3四馬図(再掲)
  〔S〕6八歩 → 互角
  〔T〕5七金 → 後手良し
  〔U〕6一竜 → 互角
  〔V〕9五歩 → 互角(最善手か)
  〔W〕6五金 → 後手良し
  〔X〕7六歩 = 実戦の指し手


 我々――終盤探検隊――が選んだ手は、〔X〕7六歩




≪最終一番勝負 第85譜 指了図≫ 7六歩まで

 我々(先手)は、▲7六歩 と桂馬を取った。
 指したかった手だが、形勢はどうなっているか。

 じつは、ここで後手6七歩成なら、後手有利。
 つまり、先手(我々)は、“悪い手” を選んでしまったのである。



第86譜につづく
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