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はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

2021詰将棋その6 答えと解説

2021年11月13日 | しょうぎ
この詰将棋の答えとその解説をしていきたいと思います。 (問題のみ見たい方はこちらへ)


その前にまず、「ヒント」として添付した練習問題の9手詰め詰将棋の答えから。

練習問題

「練習問題」の答えは、7九飛、8九角、同飛、同玉、9九金、同玉、3三角、9八玉、8八角成 まで9手詰め、となる。
初手、7九飛と下段に飛車を打って王手する。
対して玉方は「8九合」で応じることになるが、このようなとき―――最下段の飛車の王手に対する「合駒」は、飛、角、金、銀、の4通り、ということを知っておくとよい。
この場合、飛または金の合駒は、同飛以下簡単に詰む。そして角合の場合が「答え」の手順。
さらに、「銀合」ならどうなるか。―――実は「銀合」なら、この玉は詰まない。ところが、よく見れば、盤上に銀は四枚すべて置いてある。すなわち「銀は品切れ」という状況なのである。

練習問題途中図1
―――ということで、銀合はないので、玉方は「8九角」と応じるしかない(図)―――ということで、同飛、同玉、9九金以下詰ますことができるのである(次の図)

練習問題途中図2
9九金(図)と打って、同玉に、3三角と打ってこの玉を詰ますことができる。

以上の説明の通り、6二銀、6三銀の無駄に見える二枚の銀の配置は、玉方の手駒から銀を「品切れ」にするために必要な処置だったのです。
(なお、この二枚の銀は別の場所に置いても成立するが、どこでも大丈夫というわけではない。たとえば6二銀の配置が5三銀配置だとまずい。その場合は最後の3三角に4四歩と止められる手が生じてしまうためにこの問題は「不詰め」となってしまう)

この「練習問題」が「ヒント」であるというのは、本問題においても、
【1】最下段の飛車の王手とそれに対する「合駒」がキーになる
【2】3三角と遠くから角を打つ筋が(変化の中に)出現する
ということなのです。



さて、では本問題――「2021詰将棋その6」の答えと解説に入りましょう。


問題図
[答え]7三飛成、同銀、7八金、6九玉、4九飛、5九飛、同飛、同玉、7九飛、6九飛、同飛、同玉、7九飛 まで13手詰め

これが本問題の「答え」となります。

この「問題図」には、金が四枚、銀が四枚、そして飛車二枚と角二枚が盤上に置いてあります。つまり、「飛、角、金、銀」の駒はすべて使っている。その4種の駒は「品切れ」状態になっているということなのです。そのために――「品切れ」にするために――作者は、それらの駒をすべて配置しました。だからこんなふうなにぎやかな、つまり、めんどくさそうな盤面になっているのです。
問題の難易度としては、それほど難しくはありません。それでもやっぱり、駒が多いとめんどくさそうに見えますね。


さて、解説です。

問題図(再掲)

[解説]
この問題は初手が難しい選択となる。
正解手は〈A〉7三飛成 だが、他に〈B〉7八飛〈C〉7八金 と有力そうな手があり、〈D〉4九飛 も考えられる筋である。

まず初手〈D〉4九飛 は、8八玉と金を取りながら逃げられてしまうので駄目だ。

最大の紛れ筋は初手〈B〉7八飛 で、これは結局詰まないが、この解説は末尾で行うこととする。

初手〈C〉7八金 が最有力に見える。
これは対して2手目6九玉なら、4九飛までの詰みである(次の図=参考図a)
参考図a
最下段の飛車の王手に対する「合駒」として考えられる、飛、角、金、銀の4通りの駒のすべてが盤上にあり、つまり「品切れ」となっているので玉方はどれも持っておらず、したがって指す手がない。4九飛に対する「合駒」がないから投了するしかないわけである(最下段に桂、香、歩を打つのは反則手である)

しかし「初手7八金」には、8九玉と逃げられて詰まないのである。
以下4九飛、9八玉(参考図b)
参考図b
この図は詰まない図である。

しかし、もしもあの「3三」にある飛車が居なかったら―――そう、9九飛、同玉、3三角と売って、この玉は仕留められる!
―――ということに思い至れば、あの飛車を最初に捨てておけばいいのでは?―――という発想にたどり着く。
ということで―――


途中図1(1手目7三飛成まで)
初手は「〈A〉7三飛成」(図)と飛車を捨てる手が正解手となる。
「同銀」(2手目)に、それから「7八金」(3手目)とする(次の図)


途中図2(3手目7八金まで)
以下4手目8九玉なら、上で述べた通りに、4九飛、9八玉、9九飛、同玉、3三角、9八玉、8八角成までの詰みとなる。これが初手に「7三飛成」と飛車を捨てた効果。
しかしそれはこの詰将棋問題の正解手順とはならない。

今度は、3手目「7八金」に、「6九玉」とこちらに逃げる手のほうが手数が長くなるので、それが4手目の玉方の最善手となるのである。
「6九玉」には、「4九飛」(5手目)とする(次の図)


途中図3(5手目6九飛まで)
なお、この手「4九飛」に代えて、6八金と追うのは、7九玉と逃げられて、捕まえられない。
さて、「4九飛」(図)と飛車で王手した手に、今度は「飛、角、金、銀」のうち「角、金、銀」は相変わらず「品切れ」状態だが、後手はこの場合は「飛」を一枚持っている。初手、7三飛成で攻方が飛車を一枚献上したからだ。状況は変わったのだ。
というわけで、6手目は「5九飛合」となる(次の図)


途中図4(8手目5九飛まで)
ここで6八金とする手もあるが、以下7九玉、5九飛、8八玉の変化は、飛車をタダで一枚入手にしても、詰まない。

正解は、「5九同飛」(7手目)である。
以下「同玉」に、「7九飛」と打つ(次の図)


途中図5(9手目7九飛まで)
「7九飛」で、今度は逆側から飛車の横王手。
これも「6九飛」と飛車合で応じるしかなく、以下、「6九同飛、同玉」―――つまり玉を6九に戻させて―――(次の図)


詰め上がり図(13手目7九飛まで)
「7九飛」(図)と打って、詰んだ(最後のほうの手順については、一本道で、解説の必要もないだろう)



この詰将棋で作者がやりたかったことは、最後の飛車の王手と飛車合のやりとりなのですが、それだけでは問題として単純すぎるかもしれないと思ったので、それで初手に「7三飛成、同銀」という飛車捨てを付け加え、今回のこの出題図となったのでした。
飛、角、金、銀の4種の駒をすべて盤上に置いたのですが、そうしないとこの詰将棋は成立しないのです。



さて、最後に、もう一度「問題図」まで戻って初手〈B〉7八飛の “紛れ筋” を解説しておきましょう。

問題図
初手〈B〉7八飛 は、結論を言えば「詰まない」わけだが、なかなかにきわどいので、こっちの筋が有力と見て頑張ってしまう人は沼にハマった状況となってしまう。
以下、この筋が「どう詰まないか」を見ておく。

紛れ図イ
〈B〉7八飛(図)としたところ。以下6九玉に、さらに迫るには5八銀だ。対して玉方は5九玉と逃げるしかない(次の図)

紛れ図ロ
ここで攻方に2つの有力(に見える)手がある。一つは〔U〕6八銀、もう一つは〔V〕4八銀である。順に見ていこう。
まず〔U〕6八銀から。これに対して5八玉なら、5三飛成、4八玉、5七竜、3九玉、7九飛、4九銀、同飛、同玉、5九竜まで、詰み。
しかし、〔U〕6八銀に4八玉と応じられ―――(次の図)

紛れ図ハ
この玉が詰まないのである。
というわけで、〔U〕6八銀は不詰め――が確認された。

紛れ図二
次は〔V〕4八銀を見ていく。これは同玉と応じる一手だが、そこで(1)6七銀と(2)4七銀が候補手となる。どちらも飛車の開き王手で玉を追い詰めようという手である。

紛れ図ホ
(1)6七銀に4九玉なら4三飛成があるし、6七銀に3九玉も3八金から詰ますことができる。
しかし、この図のように(1)6七銀に5七玉と逃げる手があって、これでこの玉は逃れているのである(5三飛成、6七玉、7七金は、同馬と取られてしまう)


それでは、(2)4七銀はどうか。5七玉なら、今度は5三飛成以下詰みがある。

紛れ図へ
しかし、(2)4七銀に対しては、4九玉が玉の正しい逃げ方となる。4七に銀がいるので4三飛成がないので、ここに逃げていく。以下3八銀には同馬で攻めが切れているし、7九飛には4八玉と応じて逃れている(7九飛、4八玉、3八金は、5七玉と逃げて、以下5三飛成には5五歩で詰まない)

ということで、〔V〕4八銀の変化も、詰みはない。

つまり、以上の通り、初手〈B〉7八飛 は不詰めとなる。
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2021詰将棋その5 答えと解説

2021年08月26日 | しょうぎ
                         問題図のみ見たい方はこちら


答え:  1三桂  1二玉  1一角成  同玉  2一桂成  同銀
     1二歩  同玉  1三銀  1一玉  2三桂不成  まで11手詰め


解説:

11手詰めの問題は解くのがたいへんなものも多いが、これはやさしいほうの問題と思う。
とはいえ、「初手1二銀」や「初手1一角成」など、迷わせる筋もある。
「初手1二銀」は、同玉なら、1三角成以下詰む。なので1二同歩だが、そこで攻め方に継続手がなく、不詰めとわかる。
「初手3三桂」は、同銀の後、どうしようもない。
「初手1一角成」は、同玉と取ってくれれば、2二銀以下詰むのだけれど、「1一角成」に、3一玉とされると、この玉は捕まらない。

そうなると、もうこの問題図で、攻め方が“王手”を掛ける手は、一つしか残っていない。
「初手1三桂」が正解手である(次の図)


途中図1(1手目1三桂まで)
「1三桂」(図)と打てば、玉方2手目は「1二玉」しかない。
1二に玉をおびき寄せたが、桂馬を打っているので1三角成とはできない。ではどうするか。
銀を使って、2一銀や2三銀と打つのは、いずれも同銀の後継続手がない。

ここは、「1一角成」とする。
以下「同玉」で、次の図。


途中図2(4手目1一同玉まで)
ここで2二銀がすぐに見える手だろう。しかし2二銀に1二玉で、詰まない。
他に1二歩や2三桂不成も見えるがこれも詰まない。

ここでは、“好手” がある(次の図)

途中図3(5手目2一桂成まで)
5手目「2一桂成」(図)とするのが、この詰将棋問題の “狙いの一手” 。
これを同玉は2二銀、1二玉、1三銀成以下詰む(この詰みは11手だが「一歩」が残って駒余りとなる)
「1三」に打った桂馬が消えたので “1三銀成” とできるということ。つまり「初手1三桂」は玉を1二に誘い出して1一角成を同玉と取らせるために打った桂馬だが、打ったその後は「1三」に居座る “じゃま駒” になっていたというわけだ。
その “じゃま駒” の桂を盤上から消すための「2一桂成」である。

玉方の6手目は「2一同銀」

そこで「1二歩」と打って仕上げにかかる(次の図)


途中図4(7手目1二歩まで)
1一角成としたときに得た「一歩」があった。
1二同銀は2二銀までなので、「1二同玉」(8手目)

以下「1三銀、1一玉、2三桂不成」で、詰み(次の図)


詰め上がり図(11手目2三桂不成まで)
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2021詰将棋その4 答えと解説

2021年08月15日 | しょうぎ
               問題図のみ見たい方はこちら



答え:  1五飛  2六玉  4八角  3六玉  2六飛  4七玉
     4四飛  3八玉  2八飛  まで9手詰め



解説:

「玉方2一桂配置」はいくつかの余詰め筋を防いでいる駒である。
たとえば「2一桂」が置いてなかった場合、「問題図」から1三飛、2六玉、1五飛成以下の「余詰め」が発生してしまう。

さて、この「問題図」を見て、とりあえず指してみたくなる手は「初手2七角打」であろう。
しかしそれは、2六玉で詰まない。

他に解説すべき紛れ筋として、「初手1七飛」がある(次の図)

紛れ図
この1七飛(図)を、同玉なら、3四角と打ってこの玉は詰む。
しかし、1七飛に、2六玉と応じられて詰まない。以下1六飛打は3四玉と逃げられてしまい、また5三角と打つのは3六玉でこれも捕まえられない。


途中図1(1手目1五飛まで)
初手の正解手は、「1五飛」(図)である。
これを同玉なら、3七角と打って、以下2六合駒に1四飛まで――というわけ。
よって、1五飛には、玉方は2手目「2六玉」と応じることとなるが、そこでどうする?(次の図)


途中図2(2手目2五玉まで)
なお、1五飛に代えて1四飛と打つのも考えられるが、2六玉、2四飛、3六玉と進みこの玉は捕まえられない。
攻め方の3手目、ここで2七飛が考えられる。
対して3六玉と角を取りながら逃げれば6三角以下詰む。しかし2七飛に1四玉と飛車のほうを取りながら逃げられて、詰まない。

また、この図で1六飛打は、3七玉と逃げられてしまう。

3手目、正解は、「4八角」である。「3七に逃がさない」という意味だ。
この角打ちは「4八」でなければいけない。(この問題図面、「攻方6九銀配置」は実は「攻方5九歩」でもよいのだが、あえて「6九銀」にして“5九角”と打つ可能性を残し、正解手「4八角」の“限定打感”を少しだが強調させてみた――というのが作者の地味なこだわりである)

「4八角」に対し、3七合駒なら、1六飛打までの詰み。
よって、玉方の4手目は「3六玉」しかない(次の図)


途中図3(4手目3五玉まで)
ここまで進めば、あとは簡単。
以下「2六飛」と打って、「4七玉、4四飛、3八玉、2八飛」(次の図)まで、一本道の詰みとなる。

それが正解だが、「玉方2一桂配置」はこの図での3三飛からの余詰め筋も消していることを書いておきたい。
また、この図で1六飛打と、飛車を離して打つと、あとで2八飛と引く手がないので詰まなくなる。飛車打ちは「2六」の限定である。
詰将棋をつくるほうは、解く側の何倍も考えなければいけない。それが楽しくてつくっているわけだが。


詰め上がり図(9手目2八飛まで)
これが「詰め上がり図」
2六に打った飛車を、シュッと2八に引いて詰め上げる感覚が気持ち良い。




解説は以上になるが、この詰将棋問題には少し長めの15手詰めバージョンもあるので、それを以下に紹介しておく。

B案問題図
出題したこの詰将棋は、問題図をこのように改変しても同様の手順で成立する(出題した問題図をA案とし、このバージョンをB案としよう)
このほうが図面がシンプルで見た目は上等だが、手数が6手伸びて15手詰めになる。それをどうみるか。

同じように進めて‥‥

B案途中図
2八飛と引いて、この場合はまだ4九玉と逃げるスペースがあるので“続き”がある(上のA案は「玉 方4九銀」が置いてあった。あの銀は玉方にとって実は“じゃま駒”だったのだ)
以下9三角成、5九玉、4九飛、同玉、4八馬となって―――(次の図)

B案詰め上がり図
これが「B案15手詰め」の詰め上がり図。

これもわるくはないが、A案の、2八飛でピタッと詰めて着地する終わり方が気持ちいいし、解いてもらうには短いほうがよいと思ったので、9手詰めのA案を問題として提出した。

「どっちが良いだろうか」と小さいことで悩むのも、つくる楽しさの一部である。子供がお菓子を食べるときに、赤い菓子から先に食べるか、それとも黄色い菓子から食べるか、真剣に考えているときのような、そんなかんじ。
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2021詰将棋その3 答えと解説

2021年08月03日 | しょうぎ
            問題図だけを見たい方はこちらにどうぞ



答え:  2二銀  1二玉  1三銀打  2三玉  2四銀打  1四玉
     3六角  同と  1五銀打  2六玉  3四角  まで11手詰め



解説:

初手正解手は2二銀。
代えて初手3二銀が紛れ筋。初手3二角もあり、これらの紛れ筋の解説については、最後に示すこととする。


途中図1(初手2二銀まで)
初手2二銀(図)に、3二玉と逃げる手には、3三銀成がある。3三同玉、3四銀、2四玉、3三角以下、11手駒余り詰めとなる。

2手目は、1二玉が正解手となる(次の図)


途中図2(2手目1二玉まで)
ここで1三銀打の“平凡手”が3手目の正解手だが、他の手を考えるとすれば2一角がある。しかしそれは2三玉、3四銀(角)、1四玉となって、この玉は捕まらない。

この「途中図2」から、1三銀打、2三玉とすすめて、次の図になる。

途中図3(4手目2三玉まで)
ここで2四銀打と、3四銀、あるいは3四角がある。
しかし「3四」に銀や角を打つ手は、1四玉と応じられてみると、玉を逃がしてしまっている。1五~2六という脱出路を止めることができない。

2四銀打と、ここも“平凡手”にみえるこの手が正解となる。
以下1四玉に、そこで、3六角の好手がある(次の図)


途中図4(7手目3六角まで)
3六角(図)。この手があるので、この玉を補足することができる。同とと取らせて、「3六」への脱出路を塞ぐ。

3六同とに、1五銀打、2五玉、3四角で―――(次の図)


詰め上がり図
これで詰んだ。

「角角銀銀銀銀」の6枚の持駒のうち、5枚をペタペタと貼っていくような詰将棋となったが、それがこれをつくった意図である。「並べ詰め風の詰将棋をつくろう」と考えて、この詰将棋ができ上った。
詰将棋問題ばかり解いていると、捨て駒を考えるのがクセになる。逆に言えば、「並べ詰め」の訓練ができていないということになる。実戦で「並べ詰め」が現れたとき、難しくないのに妙に解きにくいのは、実戦のための練習問題としての詰将棋問題に「並べ詰め」のテイストが少ないからではないだろうか。
――――そんなことを前から思っていたので、「並べ詰め風の詰将棋をつくろう」と思ったのである。





問題図
さて、もう一度「問題図」に戻って、ここからの2つの「紛れ筋」を解説する。
「紛れ筋」というのは「詰みそうだけど、でも、詰まない」という筋のことで、これが詰んでしまうと「余詰め」となってしまうので詰将棋の作者にとっては大事件となる。

「紛れ筋A=初手3二銀」と「紛れ筋B=初手3二角」について、解説する。

紛れ図A1
まず、「紛れ筋A=初手3二銀」(図)
これを同玉は、3三銀と打って詰む。3三同玉なら3四銀以下。
よって3三銀には4三玉と逃げるが、それでも5四角、5三玉、7五角以下、手数は長くなるが、詰んでしまうのだ。
ということで、「3二銀以下余詰めがある」と思っていたので、最初の案では「攻め方3二歩」を盤上に配置した問題図だったのだが、よく調べると、「3二銀には1二玉とかわして詰まない」と判明したのだった。1二玉に、2二歩成があるので、簡単にこの玉は詰んでしまうと初めは即断していたのだったが―――(次の図)

紛れ図A2
2二歩成に1三玉(図)と逃げて、この玉はどうやら詰みを逃れている。「角角銀銀銀」と持っていても、捕まらないのだ。

「紛れ筋A=初手3二銀」は、1二玉で逃れ―――が結論となる。

紛れ図B
次に、「紛れ筋B=初手3二角」(図)
角の場合は、1二玉と逃げると、2二歩成で確実に詰む。
なのでこれは3二同玉と応じるしかない。以下3三銀、4三玉と進むが、そこで攻め方の持駒は「角銀銀銀」。どうやらこの持駒ではこの玉は捕まらない。
ということで、「紛れ筋B=初手3二角」は、同玉と取って詰まない。


いまは「詰将棋ソフト」があるので、こうした「紛れ筋」を検討するのも楽ちんです。昔は大変だったことでしょうね。
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2021詰将棋その2 答えと解説

2021年07月24日 | しょうぎ
             問題図だけを見たい方はこちらにどうぞ


答え:  1五飛  2五桂合  同飛  同玉  3七桂  同金
     1五飛  2六玉  4四角 まで9手詰め


問題図。先手の持駒は「飛飛」。飛車のみなので指し手が限られる。
3六飛と打つのは、4五玉、3五飛打、5四玉と逃げられて失敗。3四飛と打つのも同じ。
ちょっと工夫して3三飛と打つのも4五玉で捕まらない。結局、4五玉と角を取らせてはいけないのだ。
(仮に攻め方5五角配置が“5五銀配置”だったなら、3六飛、4五玉、3五飛打で詰むのだが)

というわけで初手は1五飛しかない(次の図)


途中図1(初手1五飛まで)
「1五飛」(図)に、対する玉方の「2手目」は「2五〇合」である。
つまりこれは「合駒問題」なのである。
「詰将棋を解くのが好きではない」という人の中で、「合駒問題を考えるのが大嫌い」という人は一定数存在するように思う。しかし「実戦」で勝つために、そのトレーニングとして詰将棋を解くのなら、「合駒問題」に慣れておくべきであろう。実戦で「合駒問題」は常にあることなので避けていては強くはなれない。
将棋の駒は玉を除いて「七種」ある。飛、角、金、銀、桂、香、歩の七種。その七種の駒の、どれを「合駒」として使うのが最善かを特定しなければいけない。というか、どれを「合駒」されても、それを詰まさなければいけない。そう考えると、確かにこれはたいへんだ。
作者は、「短手数だから合駒問題を解いてほしい」という思いでこの問題を出題した(9手は「短手数」といっていいですかね?)

さて、この図は、初手「1五飛」と打った場面。2手目の玉方の手を考える。
まず「歩」の合駒はない。二歩(反則)になってしまうから。
「飛」と「角」もない。“品切れ”だから(飛と角は盤上および攻め方の駒台とですべて出そろっている)
ということで、「2五」への「合駒」は、残りの「金、銀、桂、香」の4通り を考える必要がある。
このうち、「金、銀、香」のまっすぐ進むことのできる駒を合駒に使うのは、2五同飛、同玉、1五飛ともう一枚の飛車を打って、以下簡単に詰む。玉方「2六玉」に、合駒で得た駒を「2七〇」と打てばよい。
(詰将棋の「合駒問題」に慣れた人だと、このあたりまで一瞬で読める)

―――ということで、初手「1五飛」に対する玉方の「合駒」は、「2五桂合」が最善手となる(次の図)


途中図2(2手目2五桂合まで)
2手目「2五桂合」(図)。桂馬の合駒がこの場合は最もがんばれる手となる。
これには3手目「2五同飛」と取る。他に手がないからこの筋を考えるしかない。
4手目「同玉」で、次の図となる。


途中図3(4手目2五同飛まで)
ここがこの詰将棋の要(かなめ)の場面である。
ここで1五飛と打ちたくなる。
しかしそれを指してしまうとこの詰将棋は詰まなくなる。1五飛、2六玉に、桂の打ち場所は2か所だが、3八桂は同金で無効だし、1八桂は香筋が止まり1五玉と飛車を取られる。

では、どうするか。
次の一手がある(次の図)

途中図4(5手目3七桂まで)
桂馬しかないのだから、1五飛でだめということなら、ここで「3七桂」(図)と打つ手は見えるところだろう。
それが5手目の正解手である。

ただし、これを「実戦」の将棋で指せるかどうかとなると、難易度が上がる。
詰将棋の場合は「ここで必ず詰みがある」とわかっていることが大ヒントになっているので、「1五飛でダメなら3七桂と打ってみるか」ととりあえず打ってみてそこから考えることができる。
ところが「実戦」では、「詰むかどうかわからない」わけであり、3七桂が仮に見えたとしても、それが詰まなかったら読みの努力が徒労に終わる。「実戦」は詰まさなければいけないという縛りもない。つまり選択肢が広いのだ。
ましてや「実戦」の将棋はだいたい持ち時間が限られる。持ち時間の制限がない対局でも、相手に配慮して大長考するわけにはいかない。
そうした状況だと、しっかり読む前に「3七桂では詰みそうにない」と見限って、1五飛から飛車を捨てるこの“詰み筋”の読みを打ち切ってしまう可能性も高くなる。「詰むのか詰まないのか」その答えがわかっている「詰将棋」と、それがわかっていない「実戦」の条件の差は相当に大きいのだ。
「実戦」で詰みを発見することのほうが、はっきり難しい。

この「3七桂」(図)の意味を解説すると、仮に3七桂と打たずに、1五飛、2六玉となったとき、そこで4四角とすると、3七玉と逃げられてしまう。
ところが、「3七桂、同金」と、玉方の金でこの桂馬を取らせておけば、以下「1五飛、2六玉、4四角」と進んで―――(次の図)


詰め上がり図
これで玉が詰む―――というわけである。
3七桂と打った手は、同金と取らせることによって「逃げ道封鎖」をする意味だった。


問題図(再掲)
さて、戻って、これは再び「問題図」。
この詰将棋、「要の手は3七桂(5手目)」とこの解説の中で述べた。
しかしその桂馬はこの「問題図」にはなく、そして「詰め上がり図」でも桂馬の姿はない。
その「桂馬」が、何もないところから出現し、大事な仕事をして、そしてまた盤上から静かに消えている。そのことをたいへんに面白いと思うのである。困ったときに現れて助けてくれてさっと消える―――まるで鞍馬天狗(例えが古すぎる!)のようである。
これが「合駒問題」の生み出すドラマである。

この詰将棋、手数は9手と短いが、これを解くためには、その場には存在しない桂馬を使う「3七桂」を5手先に打った図を、脳内の盤上に空想して思い描く―――そういう能力が要求されるわけである。


もう一つ、指摘しておきたいことはこの「問題図」での「玉方2三歩」の存在である。
この歩が置いてなかったら、この詰将棋は詰まなくなる。同じように、「1五飛」には、2手目“2五歩合”で詰まないのだ。以下、同飛、同玉、1五飛に、2六玉と逃げられ、そこで2七歩は「打ち歩詰め」の禁じ手である。
“2五歩合”を無効にするための、「玉方2三歩配置」なのであった(これに代えて「玉方2一歩配置」でも、また「玉方2八歩配置」にしても、この詰将棋は成立する)
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7月16日出題の詰将棋の答え

2021年07月18日 | しょうぎ
             問題図だけを見たい方はこちらにどうぞ


答え: 3四桂 1二玉 2一角 同玉 1三桂 1二玉
    2二飛 1三玉 2五桂 同香 2四金 まで11手詰め
      (最後の2手は「1四玉 1二飛成」でも正解になる)



[解説]
初手は3四桂。ほとんどの人が “第一感” に浮かぶであろう平凡な手から入る。
いちおう触れておくと、初手1四桂では1二玉で詰まない(3一玉なら難解ながら詰みがある)
正解手3四桂には、玉方は1二玉と逃げる。他の逃げ場所では早詰めになる。そうして次の図。

途中図1
「ここでどうするか」がこの詰将棋のテーマ。
2二飛と打つと1一玉で不詰め。
もしも一歩でもあれば、1三歩で詰むのだが。仮に持駒が「飛角歩」なら1三歩、同玉、2二角、1四玉、1三飛で詰み。実際には歩はない。
それなら2四桂はどうか。しかしそれも同香、2二飛、1一玉で詰まない。もしも1七の桂馬が手駒になっていれば、2三桂と打てるのだが‥‥
2四桂、同香、2一角、同玉、2三飛も、3一玉で逃れている。
1四飛と打つ手もあるが、1三歩合、同飛成、同玉、3一角、1四玉、2六桂、1五玉で捕まらない。

正解は、2一角と打つ手。同玉に、1三桂(次の図)

途中図2
ここまで決めれば、あとは簡単。3一玉は2一飛で詰み。なので1二玉。
1二玉に、ここでは2二飛が有効になる。今度は1一玉には2一飛成で詰む。
よって玉は1三玉と上へ逃げ、以下2五桂から詰め上げる(次の図)

詰め上がり図


問題図を見て、その先の2一角~1三桂が見えるかどうかの問題でした。
対局前の読みのトレーニングにちょうどよい感じの問題かとおもいます。
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終盤探検隊212 仮説:亜空間の主(ぬし)の正体 

2021年02月25日 | しょうぎ

一番勝負初形図(亜空間入口図)



 こうして、我々(終盤探検隊)は、「最終一番勝負」を勝利し、≪亜空間≫から脱出することに成功したのであった。
 もしも負けていたら、我々はどうなっっていただろうか。≪亜空間≫の一部となって取りこまれ、この先もずっと将棋の調査を命じられて続けていく――というようなことを想像してしまう。
 もともと、我々終盤探検隊は、ある対局の「観測者」にすぎなかった。それがいつの間にか、「戦士」となっていた。そうなった以上、勝つことでしか、この≪亜空間≫の沼から抜け出す道はなかった。


 元々名前がないので、勝手に≪亜空間≫と名付けてこの戦いを報告してきたが、この≪亜空間≫とはいったい何であろう?
 その中に住む姿の見えないもの――≪ぬし≫=我々終盤探検隊が戦ってきた相手――とは何者であろう?

 それについて少し、思うところがあるので、最後に書いておく。




 ≪亜空間≫とは、過去の世界で将棋の「敗者」となった者達の心の闇が残した「何か」ではないだろうか。


 たとえば、昔々、次のような対局があり、棋譜や勝負の伝説が残されている。


大橋宗桂(初代名人) ー 本因坊算砂

初代伊藤宗看(三世名人) ー 檜垣是安

二代伊藤宗印(五世名人) ー 三代大橋宗与(六世名人)

伊藤印達 ー 大橋宗銀

三代伊藤宗看(七世名人) ー 四代大橋宗与

伊藤看寿 ー 四代大橋宗与

九代大橋宗桂(八世名人) ― 五代伊藤宗印

大橋宗英(九世名人) ― 五代伊藤宗印

伊藤看佐 ー 大橋柳雪

大橋柳雪 ー 石本検校

天野宗歩 ー 八代大橋宗珉

天野宗歩 ー 大矢東吉

八代伊藤宗印(十一世名人) ー 小野五平(十二世名人)

関根金次郎(十三世名人) ー 阪田三吉

阪田三吉 ー 土居市太郎


 以上は、江戸時代、明治時代、大正時代の、“ライバル対決”、あるいは “因縁の対決” として歴史に残っているものである。
 これ以外にも、多くの「名もなき敗者」が過去には存在しているはず。
 勝者達のまばゆい「光」があれば、敗者達の「陰」ができる。
 勝ちたいという欲が多ければ多いほど、敗者になったときの心の底には「何か」が溜まっていくだろう。
 闘いの後、血を吐いたなどという話も聞く。

 闇の中に「敗者達」が吐いて溜まった「何か」が大量に集まって、それが≪亜空間≫をつくり、そこに住む怪物の一つが、≪ぬし≫と(我々が)呼んだものの正体かもしれない。

 我々の勝手な空想にすぎないが。



 もう一つ、考えがある。

 「亜空間の≪主(ぬし)≫」の正体は、猫なのではないか、という考えだ。
 『鏡の国のアリス』の中の「赤の女王」が子猫キティだったように。
 

 これもまあ、そうだったら面白い、という空想に過ぎない。




 これにて、終盤探検隊の報告を終わりとする。
 「番外編」として、なにか追加報告することもあるかもしれない(いまのところそのつもりはない)





亜空間戦争最終一番勝負 棋譜

先手:終盤探検隊
後手:亜空間の主(ぬし)

後手:ぬし
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ ・ ・v金 ・v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v銀v香|二
|v歩v歩v歩 ・ 桂v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v龍 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・vとv金 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:探検隊
先手の持駒:角二 金 銀 歩三 

▲3四玉 △5二金 ▲3一銀 △5一歩 ▲2二銀成 △同 玉
▲4二銀 △3三銀打 ▲4五玉 △4二銀 ▲5四玉 △5三銀
▲6五玉 △6四銀打 ▲7六玉 △5八金 ▲3三歩 △同 銀
▲3四歩 △4二銀左 ▲9一龍 △5九金 ▲6六角 △5五銀引
▲9三角成 △9四歩 ▲9六歩 △8四金 ▲8六歩 △5六と
▲7三歩成 △同 銀 ▲4一角 △3二歩 ▲6七歩 △6四桂
▲8七玉 △6七と ▲9七玉 △7七と ▲7八歩 △7六歩
▲7七歩 △同歩成 ▲7八歩 △7六歩 ▲7九香 △3一銀
▲3三歩成 △同 歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲同 香 △7六歩
▲2五飛 △3二銀 ▲5二角成 △同 歩 ▲5五飛 △4一桂
▲7六香 △同 桂 ▲5九飛 △7七角 ▲8九飛 △6八角成
▲4四歩 △9五歩 ▲8七玉 △6六歩 ▲6九歩 △6七馬
▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩 △4四歩
▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂 △7六香
▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金 △9六歩
▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金 △7五香
▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打 △同 馬 ▲同 金 △7六金
▲8八玉 △7七歩 ▲7五金 △7八歩成 ▲同 金 △7五金引
▲4二銀 △1一玉 ▲3一銀不成△9七歩成 ▲同 香 △2二銀
▲同銀成 △同 玉 ▲4二角 △3一銀 ▲1一銀 △同 玉
▲3一角成 △2二銀 ▲3二馬 △3一金 ▲同 馬 △同 銀
▲4一龍 △7七歩 ▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △7七歩成
▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △9六歩 ▲3一龍 △7七歩成
▲同 玉 △2二角 ▲同 龍 △同 玉 ▲3一銀 △同 玉
▲3二歩 △同 玉 ▲4三銀 △同 玉 ▲5五桂 △5三玉
▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩 △同 玉
▲3七金 △5五玉 ▲5六歩 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉
▲3六歩 △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五玉
▲2六金 △2四玉 ▲3五金
まで171手で先手の勝ち
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終盤探検隊211 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第110譜

2021年02月24日 | しょうぎ
5四歩図(最終一番勝負97手目)



   [夏のかがやき]

〈しあわせな夏の日々〉はやがてすぎ
夏のかがやきは色褪せるさだめ――
よしや ためいきの影が ちらちら
物語のなかにほのめいたとしても
ぼくらのお伽(とぎ)ばなしのたのしみに
そんなものが災いひとつもたらせやしない

  (『鏡の国のアリス』巻頭の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )




<戦後研究:何が勝負を分けたのか(7=結論)>

6九歩図(一番勝負71手目)

 この図は最終一番勝負71手目の図。ここで形勢が「先手良し→後手良し」に変わった。▲6九歩が「悪手」だったのだ。

 ここから―――

△6七馬 ▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩
△4四歩 ▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂
△7六香 ▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金
△9六歩 ▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金
△7五香 ▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打

 と進んで、次の図になる。


6五金打図(一番勝負99手目)

 ここははっきり「先手良し」になっている。
 つまり、形勢がまた「後手良し→先手良し」と変わったのだ。

 後手の何が悪く、そして先手の何が “形勢逆転” への布石となったのか。
 それについて調べてきたが、以下はその「まとめ」である。



[まとめ 後手の何が悪かったのか]

6九歩図(一番勝負71手目)
 71手目▲6九歩。
 それまで先手が勝てる将棋だったのにこの6九歩が「悪手」で形勢が逆転した。
 (代えて6九金または7九金なら先手良しが継続できていて、おそらくそのまま先手が勝てただろう)
 ここからは “泥沼の闘い” 。ほぼ互角に近いが、先手が苦戦模様の状態での戦いが続く。


6八銀図(一番勝負73手目)
 ここで「7八同馬」とすれば、「後手良し」が継続できていた。
 
 【後手の失敗 その1】 ここで「7八同馬」を逃したこと


7七歩図(一番勝負77手目)

 そして78手目、後手が「6八桂成」を選べば「後手良し」だった。 

 【後手の失敗 その2】 ここで「6八桂成、同歩、7七香成、同銀、8九馬」を逃したこと


7六歩図(一番勝負81手目)

 82手目、ここで後手「6七歩成」の変化は「後手良し」だった。

 【後手の失敗 その3】 ここで「6七歩成」を逃したこと


 しかし上の3つは、後手のミスとも言いにくいところがある。実際に後手が選んだ本譜の順も、理解できるところがあるからである。
 問題は、次の「4つ目の失敗」だった。


6六金図(一番勝負89手目)

 この89手目▲6六金の図で、90手目、後手は「7四桂」を打つべきだった。

 【後手の失敗 その4】 ここで7四桂を逃したこと

 このことこそが、本勝負における後手の「最大の敗因」であろうと思われるのである。
 ここで△9六歩と指したのだが、それによって先手に▲5九香と打つチャンスを与えた。5九香~5三香成の手順が、「逆転」の可能性をつくったのだった。


 しかしそれでもまだ、後手に勝ち筋があった。
 △9六歩、▲5九香、△7四桂、▲5三香成 と進み―――
 後手の最後の「敗着」は、次の場面である。


5三香成図(一番勝負93手目)

 先手が▲5三香成 としたところ。これが先手の勝負手だったが、しかし、後手がこれを「5三同歩」なら、後手良しだったことが戦後の研究で明らかになっている。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと

  
 実戦は△5三同馬(94手目)と取った。この瞬間に、形勢は「後手良し→先手良し」と、“勝利の杯” が再度先手側へと戻ったのであった。


5三同馬図(一番勝負94手目)

 ここから先は、もう後手に勝ちはなかった。
 先手は▲5四歩と打ち、以下△5四同馬に、▲6五金打と打って、以下先手が勝利したのであった。


 つまり、上の5つの後手の敗因をあえて絞るとすれば、
  「6六金図(89手目)で7四桂を逃したこと」と、
  「5三香成図(93手目)で5三同歩を逃したこと」
 この2つであろう。


 以上が、本局の「逆転」の理由を、後手の立場から、敗因を探ってみた結論である。





 さて、今度は逆に、先手の視点から、この「逆転」の理由をまとめておくとしよう。
 先手の手の何が「逆転」をもたらしたのか―――つまり、何が後手に間違わせたのか―――について、考察しておきたい。


[まとめ 先手の何が逆転勝利を呼んだのか]

4三馬図(一番勝負82手目)

 この図は▲7六歩(桂馬を取った手)に対し、△4三馬としたところ(82手目)
 
 対して、最善手は理論上は8八玉になるのだが(それなら互角)、実際は▲6八桂(83手目)と指した。
 この選択が、良かったのではないか(つまり逆転の遠因になっているのではないか)


6八桂図(一番勝負83手目)

 【これが勝因か? その1】 6八桂

 図以下は、△7六香、▲同桂、△7五歩、▲7七金と進む。


7七金図(一番勝負87手目)

 そしてここで▲7七金と打って受けた。83手目に▲6八桂とすれば、ここは▲7七金とするしかなさそうではあるが‥‥この一連の手順が、「勝利」を呼び込んだのではないか。
 この図の▲7七金に、勝つぞという、“念” がこもっているという気がするのである。

 【これが勝因か? その2】 7七金

 形勢は、しかし、厳密には「後手良し」。
 △7六歩、▲6六金と進んだときに、「7四桂」(=最善手)なら先手は勝てなかっただろう。

 しかし後手はその最善手を逃し△9六歩と指す。まだ勝利は後手寄りのところにあるが、この手は “緩手” だった。
 先手は▲5九香(91手目)


5九香図(一番勝負91手目)

 先手は、▲5九香(図)と打った。
 この手が、 “形勢逆転” を呼びこんだのであった。
  後手が、90手目「7四桂」を逃して、△9六歩だったので、この香車を打つことができた。

 【これが勝因か? その3】 5九香

 とはいえ、まだ逆転には至っていない。
 ここで△7四桂(92手目)が来て、先手は▲5三香成と銀を取る。


5三香成図(一番勝負93手目)

 次の手△5三同馬(94手目)が、後手の「敗着」となった(同歩だったら後手良し)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成

 この後は、後手にもうチャンスは来なかった。先手(我々)が、しっかりと勝ち切ったのである。


5四歩図(一番勝負97手目)

 【これが勝因か? その5】 5四歩~6五金打

 97手目▲5四歩(図)と打って、△同馬、▲6五金打 と進み、以下先手は勝利することができた。「勝利を逃さない手」がこの▲5四歩だった。



 今回の調査報告を、「最終一番勝負」の最終譜とする。





一番勝負初形図(亜空間入口図)


先手:終盤探検隊
後手:亜空間の主(ぬし)

後手:ぬし
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ ・ ・v金 ・v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v銀v香|二
|v歩v歩v歩 ・ 桂v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v龍 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・vとv金 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:探検隊
先手の持駒:角二 金 銀 歩三 

▲3四玉 △5二金 ▲3一銀 △5一歩 ▲2二銀成 △同 玉
▲4二銀 △3三銀打 ▲4五玉 △4二銀 ▲5四玉 △5三銀
▲6五玉 △6四銀打 ▲7六玉 △5八金 ▲3三歩 △同 銀
▲3四歩 △4二銀左 ▲9一龍 △5九金 ▲6六角 △5五銀引
▲9三角成 △9四歩 ▲9六歩 △8四金 ▲8六歩 △5六と
▲7三歩成 △同 銀 ▲4一角 △3二歩 ▲6七歩 △6四桂
▲8七玉 △6七と ▲9七玉 △7七と ▲7八歩 △7六歩
▲7七歩 △同歩成 ▲7八歩 △7六歩 ▲7九香 △3一銀
▲3三歩成 △同 歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲同 香 △7六歩
▲2五飛 △3二銀 ▲5二角成 △同 歩 ▲5五飛 △4一桂
▲7六香 △同 桂 ▲5九飛 △7七角 ▲8九飛 △6八角成
▲4四歩 △9五歩 ▲8七玉 △6六歩 ▲6九歩 △6七馬
▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩 △4四歩
▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂 △7六香
▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金 △9六歩
▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金 △7五香
▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打 △同 馬 ▲同 金 △7六金
▲8八玉 △7七歩 ▲7五金 △7八歩成 ▲同 金 △7五金引
▲4二銀 △1一玉 ▲3一銀不成△9七歩成 ▲同 香 △2二銀
▲同銀成 △同 玉 ▲4二角 △3一銀 ▲1一銀 △同 玉
▲3一角成 △2二銀 ▲3二馬 △3一金 ▲同 馬 △同 銀
▲4一龍 △7七歩 ▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △7七歩成
▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △9六歩 ▲3一龍 △7七歩成
▲同 玉 △2二角 ▲同 龍 △同 玉 ▲3一銀 △同 玉
▲3二歩 △同 玉 ▲4三銀 △同 玉 ▲5五桂 △5三玉
▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩 △同 玉
▲3七金 △5五玉 ▲5六歩 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉
▲3六歩 △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五玉
▲2六金 △2四玉 ▲3五金
まで171手で先手の勝ち




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終盤探検隊209 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第108譜

2021年02月19日 | しょうぎ
最終一番勝負94手目



   [Life, what is it but a dream?]

いつまでも ながれをただよいくだり――
こんじきのひかりのうちを たゆたう――
いのちとは 夢 でなくてどうする? Life, what is it but a dream?

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )





<戦後研究:何が勝負を分けたのか(5)>


5三同馬図(一番勝負94手目)
 この、94手目△5三同馬が「敗着」だったかもしれない―――というのは、もしも「5三同歩」としていたら、後手良しだったからである。そのことは 前回の譜 で示した。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと


 後手としては、5三馬で「8六」に利かす手が有効と見たのである。

 この後の実戦の進行を確認すると、この図(5三同馬図)から、▲7六金と進む(次の図)

7六金図(一番勝負95手目)
 ▲7六金(図)と受けるのは当然の一手。
 ここで後手はいろいろな手が考えられるところだが、実戦で後手が選んだ手は、△7五香。
 対して先手は、▲5四歩(次の図)

5四歩図(一番勝負97手目)
 △5四同馬、▲6五金打と進み―――(次の図)

6五金打図(一番勝負99手目)
 99手目6五金打(図)としたところでは、「先手良し」がはっきりしている。ここから先、後手にチャンスはなかった。


 すなわち、94手目△5三同馬から99手目▲6五金打のあいだに、後手の勝てそうな――あるいは互角にでも戦えそうな手段があるのかどうか。

 それをこれから調べていく。



[調査研究:7六金図」

 後手に勝てる可能性が残っているとしたら、この「7六金図」である。

7六金図(一番勝負95手目)
 この図を調査する。考えられる後手の候補手は、次の通り。
  〔い〕7五歩
  〔ろ〕7五香 = 実戦の指し手
  〔は〕9五金
  〔に〕9七歩成
  〔ほ〕6四銀
  〔へ〕8六桂
  〔と〕7七歩
  〔ち〕4三馬

 なお、この図の最新ソフト「水匠2/やねうら王」評価は 「互角」(評価値 +11 最善手7五香)

 後手がその前に「△5三同馬」の手を選択したのは、この図での〔い〕7五歩、または〔ろ〕7五香に期待していたからだと思われる。
 〔い〕7五歩 は、実際に指した手〔ろ〕7五香 と同じくらいの評価値を示す有力手である。
まずはその〔い〕7五歩 の手から。

変化7五歩基本図
 〔い〕7五歩(図)に、【X】6五金【Y】5四歩 が有力手となる。
 【Y】5四歩 は、同馬、6五金打、4三馬、7五金直、同金、同馬、6四金という展開が予想され、形勢不明(厳密には先手良しになりそう)
 
 【X】6五金 以下を本筋として解説していく(次の図)

変化7五歩図01(6五金図)
 【X】6五金(図)に、後手の候補手はいろいろある。
 (カ)7六歩(キ)9五金(ク)8六桂(ケ)6四銀(コ)6二香、など。

 最有力手は(カ)7六歩 で、まずこの手から解説する。
 これは以下、7五歩、8六桂、「5四銀」と進む(次の図)

変化7五歩図02
 「5四銀」に代えて5四歩も有力だが、この場合3一馬で後手ペースになる。後手から7八桂成、同金のあと、8五金や8五銀とされたとき、8六に打つ歩がないので困るのである。
 「5四銀」(図)と打って、歩を温存するのが正解となる。

 ここで後手は、<1>3一馬<2>4二馬<3>7八桂成<4>8五香<5>8五金 がある(次の図)

変化7五歩図03
 <1>3一馬(図)には、5一竜の手がある(次の図)

変化7五歩図04
 ここで後手が何を指すか。
 (a)6二香には、4二金で先手良し。以下7八桂成、同金、8五金には8六と打って先手が勝てる。
 他に、(b)8五香、(c)8五金が考えられる。

 (b)8五香は、7六玉、7八桂成と進む(次の図)

変化7五歩図05
 7八同金、8九香成、4三桂(次の図)

変化7五歩図06
 先手良し。

変化7五歩図07
 (c)8五金の変化。
 これには4三歩と垂らしておく。9五香なら4二歩成で先手が勝てる。
 後手6四銀がある。これに対して4二歩成は6五銀の瞬間、先手玉に9七金以下の “詰めろ” が掛かっていて後手が勝つ。
 6四銀には6六金と引いておくのが正しい手。
 そこで9二香(次の図)

変化7五歩図08
 9二同馬なら7五銀として後手良しになる。
 したがって、ここは7六金として、9三香に、8五金、7八桂成、同玉と進む。
 そこで6六歩には、5七金と受けて―――(次の図)

変化7五歩図09
 これで先手良し。
 図以下6七銀、同金、同歩成、同玉、5五銀と進めば、4二歩成で先手が勝ちに近づく。

変化7五歩図10
 <2>4二馬(図)と引く手には、8六玉と桂を取る手が成立する(次の図)

変化7五歩図11
 以下8五香に、7六玉、8九香成、4三歩(次の図)

変化7五歩図12
 ここで4三歩があるのが4二馬の弱点になっている。
 先手は飛車を取られたが、先手玉が7六玉型となり容易には詰まされない位置にいるのが大きい。
 4三同銀は、同銀成、同馬、4一竜、4二銀、5四桂と進むと先手勝勢である。
 また3一馬なら8九金としておいて次に4二金をねらう。これも後手に勝ち目のない戦いである。 
 <2>4二馬 には8六玉が鋭い判断となった。

変化7五歩図13
 それでは、<3>7八桂成(図)はどうか。これは同金と取る(同玉は6四銀で後手良し)
 そこで4二馬と引いておく。以下4三歩、同銀、同銀成のときに、8五金とする手がある(次の図)

変化7五歩図14
 先手玉は後手8六香から詰むので受けなければいけない。しかし歩はもう攻めに使ってしまった。
 ここは8六金と受ける。以下4三馬、8五金とし、すると6五馬、4一竜、3一金、5二竜、3二銀と進む(次の図)

変化7五歩図15
 後手3二銀と打つ手に代えて3二香だと4三桂という手があった。
 ここで3四歩と打って、どうやら先手良しの形勢である。対して7七歩成なら9六玉と逃げて、7八と、3三歩成、同玉、6三竜、4三馬、3五桂で先手勝勢となる。
 3四同歩なら2六桂(次の図)

変化7五歩図16
 先手優勢。4三銀や4三馬でまだ粘る手はあるが、先手優勢はまちがいない。

変化7五歩図17
 次は、「5四銀」に馬を逃げずに、<4>8五香(図)の変化。
 以下7六玉、7八桂成、5三銀成、同歩、4二金(次の図)

変化7五歩図18
 3一銀、同金、同玉、8四馬、同歩、4三歩、同銀、4二歩(次の図)

変化7五歩図19
 先手優勢。4二同玉は5一角以下 “寄り”

変化7五歩図20
  <5> 8五金(図)は、先手に7六玉と逃げさせないという手。
 5三銀成、同歩の後、9四馬とする。以下8四銀に、8二竜がある(次の図)

変化7五歩図21
 これで先手優勢。
 なお、8四銀に代えて8四香なら、4二金と打って、これも先手が良い。
 
 以上の調査から、(カ)7六歩 は 先手良しになると、結論が出た。


変化7五歩図01(再掲 6五金図)
 「6五金図」に戻って、ここで(カ)7六歩 以外の手の可能性を確かめていく。

 すなわち、(キ)9五金(ク)8六桂(ケ)6四銀(コ)6二香、である。


変化7五歩図22
 (キ)9五金(図)の変化。
 対して7七銀は8四香で後手ペースの戦いになる(形勢不明)
 ここは7七玉が良い。右辺に逃げ出す構え。
 以下〔m〕8六金 と〔n〕6三香 を見ていく。

 〔m〕8六金 には同飛もあるところ(以下同金、同桂、同玉、8四銀、同馬は互角)だが、、6七玉と逃げるほうが優る。
 これには、6三香(次の図)

変化7五歩図23
 ここは5五金打と受ける手もなくはないが、金は取らせて5八玉のほうが優る。
 5八玉、6五香、4三歩、同馬、4八玉、9七歩成、7一竜と進むのが進行の一例。
 先手玉は3八まで逃げておくのが理想。もしも後手が1四歩のような手なら、先手も3八玉としておく。
 しかしこの手順のように9七歩成のような攻めの手を見せてきたら、先手も7一竜と攻めを急ぐ(次の図)

変化7五歩図24
 8四銀、8二馬、8七と、6四馬(次の図)

変化7五歩図25
 先手優勢。

変化7五歩図26
 先手7七玉のところまで戻り、〔m〕8六金 に代えて、〔n〕6三香(図)の変化。
 これは先手玉を右辺に逃がさないという意味で、それでも右辺に逃げる6七玉は、6五香、5八玉、9七歩成、同歩、9六歩で、これは「互角」の闘いだ。
 またこの図で7五金は、8六金、同飛、同桂、同玉、8四飛で、後手優勢になる。

 ここは7五馬の手がありこれが最善手。6五香なら、5三馬、同歩、9五竜で先手良し。
 よって、7五馬には、同馬と応じ、同金で次の図となる。

変化7五歩図27
 ここで8六金は、同飛、同桂、4二銀で先手優勢。
 「4二」を防ぎつつ金取りに打つ3一角には9五竜がある。
 ここは、6六角と打ってどうかということになる。6六角に7六玉。
 そこで9九角成(同飛なら8六金で先手玉詰み)、9五竜、6六馬、8七玉の変化は、先手優勢。
 だから、後手は7五角と金を取る。
 先手は9五竜(次の図)

変化7五歩図28
 ここで後手が “4二角” と引くか、“3一角” と引くかで先手は対応を変える必要がある。
 “3一角” なら先手は5四角と打つ。以下8四馬に、5五竜(または9二竜)の手が、3二角成以下後手玉への “詰めろ” になっているので主導権を握れる。
  “4二角” なら、今度は5四角は不発になるので、その場合は5四金のほうが良い。
  “4二角”、5四金、8四銀に、4三銀(次の図)

変化7五歩図29
 4三銀と打って、後手玉は “詰めろ” になっている。先手良し。
 3一金なら、4二銀不成、同金、8四竜、同歩、5一角、3一銀、6三金で、先手勝勢となる。


変化7五歩図30
 (ク)8六桂(図)はどうだろう。
 8六桂を同玉と取るのは8五香で先手悪い。
 ここは5四銀が正解手。対して3一馬なら4三歩で先手良し。
 よって後手は4二馬とする。
 そこで8六玉としてどうか(次の図)

変化7五歩図31
 8六玉(図)と桂馬を取った。
 これには8五香があり当然そう打ってくる。以下7七玉、8九香成、同金(次の図)

変化7五歩図32
 ここで後手に手を渡ることになるのが不安要素だが、飛車だけでは早い攻めはない。先手は4三歩が楽しみだ。
 7六歩、6七玉、4七飛、5七歩、1四歩、3七香、4八飛成、4三歩(次の図)

変化7五歩図33
 後手は4八飛成で先手玉を包囲してプレッシャーをかけてきたが、ここでついに4三歩(図)を決行。
 ここで6六歩が返し技。同玉と取ると、4三銀、同銀成、同馬、4一竜のときに、6五馬で先手玉が先に詰まされてしまう。
 なので6六同金と取り、すると後手は6四馬。以下6五銀に4六馬(8六馬なら5一竜とする)
 これには5八金と受ける(次の図)

変化7五歩図34
 5八金(図)と受けて、これで先手勝勢。
 5八竜、同玉、4七金の攻めは大丈夫(後手玉の攻略は4二歩成~3一飛の攻めがある)
 4九竜のような手なら、4二歩成とし、その後は、3二と、同玉、5一竜と攻めて行けばよい。


変化7五歩図35
 (ケ)6四銀(図)も後手としては考えてみたい手。
 先手は5四歩と打つ(次の図)

変化7五歩図36
 こうして馬の引場所を問う。
 この場合は、4二馬だと5一銀がある(3一馬に4二金)
 したがって、3一馬と引いて、先手は7四金、同金、5一竜と後手陣に迫る。
 以下6五銀に、9五歩(次の図)

変化7五歩図37
 後手の6五銀は、7六銀、9六玉、9五歩、同玉、8四金打の狙いがあるので、先手はそれを受けなければいけなかった。7七歩もあるが、9五香と打たれるのが気になるので、9五歩(図)として工夫して受けたのがこの図である。9六玉となったときに8九飛が受けに利いてくるという構想だ。
 6四馬、4二金、3一香、5二竜、7六銀、9六玉、9四歩、4三桂、1四歩(次の図)

変化7五歩図38
 1四歩で、後手玉はすぐには詰まなくなった。
 だからここで3一桂成とすると、9五歩、同玉、8四金打、9六玉に、1九角成が先手玉が先に “詰めろ” になって、先手まずい。
 だからここでの先手の最善手は7七歩となる。6五銀とバックするなら、3一桂成で先手が勝ちになる。
 先ほどの9五歩、同玉、8四金打、9六玉、1九角成は、7六歩で大丈夫だ。以下9五香、8七玉、6五金は詰めろではないので、3五銀と後手玉に先に“詰めろ”を掛けて先手勝ち。

 先手7七歩に、後手は、9五歩、同玉、9八歩と玄妙な技を繰り出してくる(次の図)

変化7五歩図39
 9八歩の意味は同香、9七歩、同香とすれば、7三馬から先手玉が詰んでしまうということだ。
 というわけで、先手は7六歩と銀を取る、以下9九歩成に、3二金、同香、3一銀、1三玉、2五銀(次の図)

変化7五歩図40
 先手勝ちが決まった。


変化7五歩図41
 (コ)6二香(図)はどうなるか。
 この手には5四歩とする(次の図)

変化7五歩図42
 3一馬なら5一竜として6五香に4二銀で先手良しになる。
 また4三馬は、7五金がある。
 よって4二馬と逃げるが、5一銀がある。以下3一馬、4二金(次の図)

変化7五歩図43
 6五香、3一金、同玉、8四馬、同銀、4二金、2二玉、3一角、1一玉、7七歩、5八角(7六金以下詰めろ)、9六竜(次の図)

変化7五歩図44
 先手勝ち。


 以上の調査から、〔い〕7五歩 は 先手良し、と結論する。



 7五香図(一番勝負96手目)
 〔ろ〕7五香(図)は、実戦で後手の≪ぬし≫が指した手。
 いまの〔い〕7五歩との違いは、「6五金には7八香成がある」ということである。以下7八同玉、7六銀、6一竜の変化は形勢不明=互角(その変化については 第91譜 で示してある)

 しかし、〔ろ〕7五香には、(6五金ではなく)▲5四歩で先手が勝てたのであった。
 (これについては第92譜以降で解説している)



変化9七歩成基本図
  次に、〔に〕9七歩成(図)
 「9七歩成、同玉」を利かすことでどういう違いが出るかが注目点である。

 9七同香、7五歩、6五金、7六歩、7五歩、8六桂と進んで―――(次の図)

変化9七歩成図01
 ここで “違い” が出る。
 5四銀と打つと、同馬、同金、8五金、4二金に、9八銀の手がある。後手が「9七歩成、同香」を入れた意味はここにあった。
 なのでここは5四歩と打つ。9筋で歩をもらったので今度は歩切れにならないということで、ここは5四歩が正解になるのである。
 以下3一馬(4二馬は6七銀、6四銀に5一銀が有効手になる)、5一竜(次の図)

変化9七歩成図02
 5一竜として4二銀をねらう。後手は6四銀が指したい手なのだが、先手4二銀があるのでそれを指せない。
 というわけで後手は、7八桂成、同金、8五金と先手玉に迫ってくる。
 そこでこの変化は、「一歩」を持っているので8六歩と打てる(ここが重要ポイントである)
 以下7七香に、4二銀と打つ(次の図)

変化9七歩成図03
 これで先手良し。以下手順の一例を示す。
 4二同馬、同竜、3一銀、同竜、同玉。
 そこで5一角、4二銀、7三角成でも先手良しであるが、この変化は勝ち切るまでまだたいへん。
 ここは、5一銀、4二銀、同銀成、5一銀という手段がある。以下5一同玉に、3一角と打つ(次の図)

変化9七歩成図04
 後手に7八香成の余裕を与えずに迫ってこの図になった。後手玉は、6三桂以下の “詰めろ” である。“詰めろ” が継続すれば先手勝ちとなる。
 8二銀打なら、6三桂、6二玉、7四歩で先手勝ち。

 6三飛と打って抵抗する手がある。
 これには8三馬(6一金、同飛、7三馬以下詰めろ)として、8二銀打、4二金、6二玉、7四桂(次の図)

変化9七歩成図05
 7四同銀に、8二馬として、その手は7三銀、同飛、同馬、同玉、7四金以下“詰めろ”になっている。そして先手玉には詰みはない。
 先手の勝ち。

 〔に〕9七歩成 は 先手良し。



7六金図(一番勝負95手目)
  〔い〕7五歩 → 先手良し
  〔ろ〕7五香 = 実戦の指し手
  〔は〕9五金
  〔に〕9七歩成 → 先手良し
  〔ほ〕6四銀
  〔へ〕8六桂
  〔と〕7七歩
  〔ち〕4三馬

 残りの候補手については、次回に。


次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(6)]につづく
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終盤探検隊208 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第107譜

2021年02月15日 | しょうぎ
最終一番勝負93手目



   [あのこたちはふしぎの国にねそべり]

あのこたちはふしぎの国にねそべり
夢のうちにあけくれている
夢のうちに 夏はあまたたびめぐり――

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )



「あまたたび」= 何度も。たびたび。(古文に現れる言葉)




<戦後研究:何が勝負を分けたのか(4)>

5三香成図(一番勝負93手目)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成


 この図での後手の次の手 △5三同馬 が、この戦いの “敗着” かもしれない。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと


 以下、「5三同歩」の変化を研究する。

変化5三同歩図00(5三同歩図)
 〔一〕7五金〔二〕6七金〔三〕5五金〔四〕5六金〔五〕6五金打〔六〕4二歩 が、この図での後手の候補手となる。
 
 この「5三同歩図」の最新ソフト「水匠2/やねうら王」評価値は -328 となっている(最善手7五金)

変化5三同歩図01
 〔一〕7五金、9五金、8五金打と進んで、この図になる。
 以下7七歩成、同玉、8五金。
 対して、【A】8五同歩 と、【B】8五同金 とがある。

 【A】8五同歩 に、6六金(次の図)

変化5三同歩図02
 【A】8五同歩 に、6六金(図)が最善手。
 (代えて7六歩、同金、6四銀も有力だが、4二歩、7五歩、同金、同銀、同馬、6六金、同馬、同桂、4一歩成は先手良し)
 6六金には6八玉と逃げるが、7七歩、同銀、8七香という手があった。
 以下6六銀、8九香成、9二竜(次の図)

変化5三同歩図03
 9二竜に代えて4二歩もあったが、7九成香、4一歩成、1四歩で後手良し。
 9二竜(図)は4二金をねらっている。それを防いで6二飛。以下同竜、同銀と進む。

 そこで〈p〉8九金 と成香を取るか、〈q〉7四金 と桂を取るか。

変化5三同歩図04
 〈p〉8九金(図)は、6六桂、6七銀、9七歩成、同香、9六歩、同香、9七飛(次の図)

変化5三同歩図05
 まだまだこれからの将棋だが、形勢は後手良し(「水匠2/やねうら王」評価値 -700 くらい)

変化5三同歩図06
 〈q〉7四金(図)のときは、7九成香、5五桂が想定される手(5五桂に代えて7二飛は4七飛で後手優勢)
 研究の結果、そこで7六馬が最善手とわかった(次の図)

変化5三同歩図07
 7六馬(図)と飛び出して、これで後手陣が薄くなった。後手としても6七に金や銀で受けられたときのその先が読めていないと指せない手である。
 しかしどうやら “これで先手玉は寄っている” と調査してわかった。
 6七銀 と受けるか 6七金 と受けるかの二択だが「6七銀 には4八飛」、「6七金 には3八飛」と飛車を打つのが正しい寄せになる(次の図)

変化5三同歩図08
 6七銀 には4八飛(図)
 5八歩なら6九成香、同玉、6七馬で“寄り”。5八飛なら7八成香以下 “詰み”。
 というわけで5八金合だが、6九成香、5七玉、4七金、同金、6八飛成(次の図)

変化5三同歩図09
 これで “寄り”。

変化5三同歩図10
 戻って、6七金 には3八飛(図)とここに打つ。
 5八歩合なら、6九成香、5七玉に、4六金と捨て、同玉に6七馬。このときに3八飛が好位置だとわかる。
 5八銀合または5八金合の場合は、7八成香、5七玉に、5六金と打つ。同玉に、5八飛成、5七金、4五銀(金)で “詰み”
 5八飛合なら詰まないが、同じように、7八成香、5七玉に、5六金と攻める(次の図)

変化5三同歩図11
 以下5六同玉に、5八飛成、5七金、6七馬、6五玉、5七竜(同銀は6四金以下先手玉詰み)で、後手勝ち。

変化5三同歩図12
 【B】8五同金(図)の場合。
 これには7六香がある。
 そこで「6七玉」と「6八玉」があるが「6七玉」を本筋と見て以下を進めていく
 (「6八玉」には7八香成、同金、7七歩、同金、7六歩、8七金、5六銀のよう上から押さえる手が有効になる)

 「6七玉」以下、7八香成、同金に、6五馬が想定される(次の図)

変化5三同歩図13
 この6五馬(図)は後手としても勇気のある飛び出しである。後手陣はうすくなった。先手としてはそれを誘って「6七玉」としたという意味もある。
 先手は7六金と受け、後手は「6六歩」(次の図)

変化5三同歩図14
 ここで〔1〕6六同金は、同桂、同馬、5六銀がある(次の図)

変化5三同歩図15
 これで先手玉は寄っている。
 以下5六同馬は、同馬、同玉、4五角。7七玉は7六歩、同馬、同馬、同玉、5四角で。

変化5三同歩図16
 というわけで、後手「6六歩」に、〔2〕7七玉と逃げてどうか。
 これには、6七銀(次の図)

変化5三同歩図17(6七銀図)
 ここで、[紅]8七銀打 と[白]6七同金 の応手がある。

 [紅]8七銀打には、5六馬としたいのだが、それは5七歩で「互角」の変化になる。
 2九馬と桂を取る手が優る(次の図)

変化5三同歩図18
 次に5六馬として、今度5七歩なら6五桂があるので先手玉はそれで寄る。
 ここで先手が何を指すかだが、ここで5七歩(後手5六馬を防ぐ)なら6五桂があり、8八玉、7八銀成、同銀、7七歩で後手の攻めは続く。
 7五馬(後手に6五桂を打たせない)は、6三桂があっていけない。以下6五馬は同馬、同金、5六角。6三桂に9三馬と戻れば、7五歩、同金寄、同桂、同馬、8四銀でいずれも後手勝勢だ。
 6八歩と受けるのは、6五桂、同金、7八銀成、同銀、6五馬、7六銀打、5五馬、8七玉、8四歩でこれも後手優勢での戦いが続く。

 だからここで4三歩で攻め合ってどうか。
 以下5六馬、4二歩成、9七金、3二と、同玉(次の図)

変化5三同歩図19
 先手玉は “詰めろ” が掛かっている(7八銀成、同銀、6七金以下)が、この詰めろをほどくのも困難。6八歩と受けても、6五桂、同金、7六歩、同銀、7八銀成で詰み。6六馬という手はあるが、7六銀成、同馬、6五桂、同馬、同馬で、“寄り”
 受けがないのなら後手玉を詰ますしかないが、4三銀、同玉、4一竜に、4二銀(桂を残しておくほうがよい)と受けて、後手玉に詰みはなく、したがって先手勝勢である。 

変化5三同歩図17(再掲 6七銀図)
 この図まで戻って、[白]6七同金 の変化を見ていく。
 同歩成、同玉、6六歩、7七玉、5六馬(次の図)

変化5三同歩図20
 8七玉、9七金、同香、同歩成、同玉、8九馬(次の図)

変化5三同歩図21
 9六玉なら9七金以下詰まされる。8七銀と受けても、9九飛、9八歩、同馬、同銀、9六香以下詰み。
 よってここは9九香と犠打を打って、同馬に、8七銀と工夫して受ける。これなら後手9九飛が打てない。
 しかしそこで後手8四銀が好手である。同金なら9五飛(9六歩に9三飛、同竜、8八角)があるというわけだ。
 8二竜(後手玉詰めろ)には、3一金(次の図)

変化5三同歩図22
 これで後手が勝てる。やはり8四金には9五飛が有効(以下9六歩、9三飛、9八金、同馬、同玉、6七歩成)
 9八金は、同馬、同銀、9五歩。9六玉は8一香、同竜、9三銀で、後手勝勢である。
 なお、後手3一金と受けるところで3一香とすると4二銀がまた詰めろになるのでまた受けなければならない。3一金が優る。

 これで結論が出た。〔一〕7五金 は 後手良しである。


変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金
  〔三〕5五金
  〔四〕5六金
  〔五〕6五金打
  〔六〕4二歩

 最新ソフト(水匠2/やねうら王)が最有力と見ている手が〔一〕7五金だったが、これが「後手良し」とわかった。

 次に〔五〕6五金打を見ていく。


変化5三同歩図23
 〔五〕6五金打(図)
 6六桂、同金、7四香、7五歩、同香、同金、9七金(次の図)

変化5三同歩図24
 9七同香、同歩成、同玉、9六歩、8七玉、7五金(次の図)

変化5三同歩図25
 後手勝勢。


変化5三同歩図26
 〔二〕6七金(図)はどうなるだろうか。
 後手は6六歩と打つ。
 以下5七金に、8六桂(次の図)

変化5三同歩図27
 6六金、8五香、8八銀、9八桂成(次の図)

変化5三同歩図28
 9八同玉は7七歩成、7六歩、7八と、同金、9七銀でダメ。
 よって8六歩、8九成香、同銀、8六香、7八玉、2八飛と進む(次の図)

変化5三同歩図29
 6八金、2九飛成、8七歩、7四桂、5六金、1九竜、5一竜、6四香(次の図)

変化5三同歩図30
 4二金で勝負する(代えて3五桂は3四馬がある)が、6八香成、同玉、4九竜(5八金以下詰めろ)、5八香、7七金(次の図)  

変化5三同歩図31
 7七同銀、同歩成、同玉は、8七馬以下先手玉 “詰み”
 5七玉と逃げれば詰まないが、4二馬がある。
 後手勝ち。


変化5三同歩図32
 〔三〕5五金(図)には、「8六桂」が早い攻めとなる。
 そこで、先手〔ア〕4二歩の勝負手(ソフトの示す最善手。同玉なら7六玉と右辺に逃げられる)があるが―――(次の図)

変化5三同歩図33
 しかし、7八桂成、同玉、6六銀がある。以下6八玉、7七歩成(次の図)

変化5三同歩図34
 5九玉、5五銀、4一歩成、1四歩(次の図)

変化5三同歩図35
 1四歩(図)の奥の手をくり出して、後手勝勢。3一となら4六香だし、4八玉と逃げても6五馬で先手負け。

変化5三同歩図36
 ということで、「8六桂」に〔イ〕6七銀(図)と応じてみよう。
 これには8五香がある。
 そこで4二歩とするが、9八桂成(次の図)

変化5三同歩図37
 7八玉、8九成桂、4一歩成、2八飛、5八桂、7九成桂、6八玉、1四歩(次の図)

変化5三同歩図38
 後手勝勢。3一となら4八飛成で、先手 “受けなし”

 〔三〕5五金 は 8六桂 で後手良し。


変化5三同歩図39
 〔四〕5六金(図)の変化。
 この場合8六桂は、4二歩、7八桂成、同玉と進んだときに、今度は6六銀と打つ手がないので接近した形勢になる。
 その手(8六桂)よりも、この場合は9五金と攻めるほうが優る。
 先手は7五馬と守る(代えて7五銀は8四香と足されて後手勝勢)
 7五馬に8四香なら9五竜があるということだ。
 なので、後手は8六金とする(次の図)

変化5三同歩図40
 8六同馬、同桂、同玉、8四銀(次の図)

変化5三同歩図41
 そこで〔u〕5五桂が有力だが、後手6四角がある(次の図)

変化5三同歩図42
 6四角(図)と打てるのがこの(9五金以下の)変化を選んだ理由(5五金型に対してはこの角は打てなかった)
 なお、〔u〕5五桂に代えて〔v〕3五桂と打っていれば、6四角、9六玉のときに5二馬があって後手勝勢だった。5五に桂を打っておけば5二馬に6三銀と打てるということ。
 6四角(図)に、9六玉と逃げ、後手は9五歩とする。以下8七玉、8五香、9八玉と進む。
 そこで5五角と桂を食いちぎる(次の図)

変化5三同歩図43
 5五角(図)と桂馬を取る手が正しく(代えて9一角と竜を取っていると4三桂不成で先手良し)、以下5五同金に、7七歩成、5四歩、8九香成で、後手勝勢である。

変化5三同歩図44
 「変化5三同歩図41」に戻って、〔w〕7五金(図)としてみる。同銀、同玉と進めば先手有望となる。
 しかしこの手には、6四角、同金、8五香が鋭い切り返し(次の図) 

変化5三同歩図45
 9六玉、9五歩、9七玉、8九香成、4二銀(次の図)

変化5三同歩図46
 4二銀(図)は非常手段。同馬と取らせて馬筋をはずして、8九金と手を戻す。
 後手は7七銀(先手玉を8八玉と逃げさせない)
 先手6三角(後手8五銀や5二馬を防ぎつつ攻めにも利かす)に、5八飛(次の図)

変化5三同歩図47
 これで後手勝勢。4三歩なら7八飛成、同金、8六銀打、9八玉、7八銀不成。
 6八桂と受けても、5六飛成、同桂、8六金、9八玉、7八銀不成、同金、7七歩成で、後手勝ちとなる。


変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金  → 後手良し
  〔三〕5五金  → 後手良し
  〔四〕5六金  → 後手良し
  〔五〕6五金打 → 後手良し
  〔六〕4二歩


変化5三同歩図48
 最後の候補手は〔六〕4二歩(図)
 4二同馬なら、7六金で、これは先手良し。
 しかし6六桂と金を取られ、4一歩成、1四歩と進んで、どうやら後手が良い。
 3一となら、7四香(詰めろ)、3二と、同馬で、後手勝勢。
 1五歩には、9五香(次の図)

変化5三同歩図49
 9五香のところ、代えて7四香でも後手が良いが8四馬、同銀、3一銀、1三玉、9四金、7七歩成、9六玉と頑張る手段がある。だから9五香(図)のほうがよい。
 9七金以下の “詰めろ”。受けが難しい。
 8八銀と受けても、7八桂成、同玉(代えて同金には6六銀が決め手)、3四馬、で後手勝ち。



変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金  → 後手良し 
  〔三〕5五金  → 後手良し
  〔四〕5六金  → 後手良し
  〔五〕6五金打 → 後手良し
  〔六〕4二歩  → 後手良し

 つまりこの「5三歩図」では、先手には勝つ道がないということになる。


 すなわち、「5三同歩」を後手が選択していたら、おそらく、後手が勝利していただろう―――という結論になる。

 この変化を選んでいれば、その前に指した「△9六歩」の手も有効手になったいたことが、上の研究内容からもわかった。9五金と出る手や9七金と打つ手が有効手となった。
 「△9六歩」の手を生かすためにも、後手は「5三同歩」と取るべきだったのである。


 【後手の失敗 その5】5三同歩を逃したこと



5三香成図(一番勝負93手目)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成

 つまり、先手が ▲5九香と打ち、△7四桂に、▲5三香成(図)としたことが、先手の「勝因」になったのである。“後手に対応を間違わせた” という意味も含んで。



5三同馬図(一番勝負94手目)

 実戦は、▲5三香成(図)を、△同馬と取った。



次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(5)]につづく
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終盤探検隊207 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第106譜

2021年02月12日 | しょうぎ
5九香図(最終一番勝負91手目)



   [まぼろしのアリスのおもかげ]

わたしの目にはいまも 大空のもと
アリスがいきいきとうごいてやまない
さめてはみえぬ まぼろしのそのおもかげ

がんぜないものは なおもおはないしをと
まなこきらきら 耳そばだてて
あいくるしくにじりよってくるのだ

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )



「がんぜない(頑是無い)」= 幼くて、まだ物の是非・善悪の判断がつかない。ききわけがない。



<戦後研究:何が勝負を分けたのか(3)>

5九香図(一番勝負91手目)

 90手目△9六歩に、先手は、▲5九香と打った。

 【これが勝因か? その3】 5九香


 しかし、「理論上の最善手」は、▲5九香ではなく、あるいは「7五歩」だった可能性がある。
 最新ソフトを使って、その手の調査研究をしてみた。

変化7五歩図00

 「7五歩」(図)は、後手の7四桂打の手を防いだもの。

 さて、ここで後手が何を指してくるか。
 候補手は、≪P≫6四銀右≪Q≫6五歩


変化7五歩図01
 ≪P≫6四銀右 に、6一竜(図)が有力手(他に5六金打も有力で形勢互角)
 この6一竜 は後手の 6五銀 を防いでいる。
 対して、6五桂 が有力と見るが、7六玉、5七桂成、7七玉、6五歩、7六金、7四歩(次の図)

変化7五歩図02
 8八玉、7五歩、7七金、6六歩、6八歩、7六歩、8七金。
 最新ソフトの評価をみると、こう進むとどうやら先手が良さそうだ。
 もう少し続けてみる。6七歩成、同歩、6六歩、同歩、6七歩、6九金(次の図)

変化7五歩図03
 6九金(図)で、全力で後手の攻撃を受け止める。
 7五銀に、5九香。これで後手は攻めなければならない。
 7七歩成、同金、6八歩成、同金左、同成桂、同金、9七歩成、同玉、9八歩(次の図)

変化7五歩図04
 8八玉、9九歩成、同飛、9八歩、8九飛、7六香、3五桂(次の図)

変化7五歩図05
 3五桂で反撃開始。
 3四馬、8四馬、同歩、5三香成、同歩、4二金(次の図)

変化7五歩図06
 ここまで進むと、はっきり先手良し。
 3五馬と桂をはずすと3二金、同玉、5二竜以下後手玉詰みとなる。
 後手3一香には、3二金、同香、4三銀。また3一金の受けには同金、同玉、4三歩。


変化7五歩図07
 ≪Q≫6五歩(図)も調べなければいけない手。
 以下〔イ〕7六金は、6四桂、7七金、6六歩、9六玉、9八歩と進む(次の図)

変化7五歩図08
 以下、"入玉" をねらう展開。
 8五歩、9九歩成、8四歩、8九と、8三歩成、9九飛、9七歩、7九と(次の図)

変化7五歩図09
 ここで(1)8七銀と(2)9五玉を見ていく。
 (1)8七銀には、9七飛成(!)がある(次の図)

変化7五歩図10
 9七同玉に、8五金と打つ。
 以下9四馬、9六歩、同銀、9八馬(次の図)

変化7五歩図11
 9八同玉、9六金、9七金、7六歩(次の図)

変化7五歩図12
 後手良し。

変化7五歩図13
 (2)9五玉(図)の変化。
 9七飛成、9六金、同竜、同玉、8二香(次の図)

変化7五歩図14
 8四香、6五馬、9五玉、7八と、8六金、7七銀(次の図)

変化7五歩図15
 形勢不明。

変化7五歩図16
 手を戻し、≪Q≫6五歩 に、〔ロ〕5六金(図)があり、このほうが優るかもしれない。
 対して後手〈m〉6四銀右 と〈n〉9七歩成と がある。

 〈m〉6四銀右 には、8五香 が好打となる(次の図)

変化7五歩図17
 7五金 は 9六玉 で先手玉が捕まらなくなるので先手良しになる。
 後手はだから 9五金 とこちらに出る。
 以下 8二馬、9四桂、7六玉、6六歩、同玉、8五金、同歩、8六香(次の図)

変化7五歩図18
 5四歩、同馬、5五歩、4三馬、5四金、同銀、同歩、同馬、4二金(次の図)

変化7五歩図19
 先手良し。6五金、同金、同馬、5七玉、2四歩のようにまだまだ激闘は続くが、正しく指せば先手が勝てる形勢。

変化7五歩図20
 後手〈n〉9七歩成(図)の場合。
 同玉 もありそうなところだが、同香 がより有力と見て、以下を解説する。
 9七同香に、9六歩。これは 同玉 と応じるのが良さそう。以下9五歩、8七玉、6四銀右、5四歩(次の図)

変化7五歩図21
 5四同馬に、5一竜とする。
 そこで4三馬(先手に4二を打たせない)なら、もう一度5四歩と打って、同馬に4二香と打つ。再度の5四歩に4二銀は6一竜、5四馬、5九香で先手良し。

 7五金には、4二歩と打って(次の図)

変化7五歩図22
 先手良し。
 以下7四桂、8八玉、8六金、4一歩成、5五銀、5七金、6六歩、6八金という進行が予想されるが、金が一枚入ると4二とと引く手が後手玉への詰めろになる。



変化7五歩図00(再掲)
 以上が我々の “戦後調査”の内容である。ほぼ「互角」の戦いだが、 この通りなら「先手良し」の結果となる。

 とはいえ、この「7五歩」の変化を選んで実際に先手(我々)が勝てたかどうかはわからない。
 今の結果は、最新ソフトを使って調べた結果であって、戦時中はそれは使えなかったのであるからこの通りに指せたとは思えない(「激指」がわれらの相棒だった)


5九香図(一番勝負91手目)再掲
 実戦では、この手、▲5九香を指した。

 そして、結果は「先手勝ち」
 この手を選んだことが、あるいは「勝因」といえるかもしれない。

 しかし、理論上は、この▲5九香は最善手とはいえない(最善は「7五歩」)
 というのは―――対して、△7四桂と後手が指した場面は、どうやら「後手良し」の形勢とみられるからである。 


7四桂図(一番勝負92手目)
 92手目、後手の ≪ぬし≫ は△7四桂 と指した。ここでの最善手である。

 次は、この図の研究をしよう。
 最新ソフト(水匠2/やねうら王)の評価値は -140 で、最善手は5三香成(-140)、次善手は6五金打(-291)と出ている。

  (月)5三香成 = 実戦の指し手
  (火)6五金打
  (水)6七金
  (木)5五金
  (金)5六金
  (土)7五金
  (日)6一竜

研究7四桂図00
 (火)6五金打(図)は、6六桂、同金、9七金という鮮やかな手順で後手良しになる(次の図)

研究7四桂図01
 この変化は前についた後手9六歩の手が生きた形になっている。
 9七同香、同歩成、同玉、7七歩成 と進む。

研究7四桂図02
 7七同銀は、9六歩、8八玉、8七香が刺さる。以下7八玉、8九香成、同金、9七歩成、7六歩、2八飛は後手優勢。
 なので先手から9六歩と打って後手からの9六歩を防いでみる。
 以下9五歩、同歩、9六歩、同玉、9四歩には、同馬と取る。以下同金、同竜、7八と、同金、8四銀。
 ここで3五桂と反撃に出る(次の図)

研究7四桂図03
 3四馬、8八金、9三香、5三香成、7四角、8七玉、5三桂、4二金、3一香、4三銀(次の図)

研究7四桂図04
 4二金~4三銀と攻めて、後手陣にも火の手があがった。うっかり3五馬なら、3二銀成で後手玉が詰んでしまう。
 4三同銀、同桂成、9六銀、7七玉、1四歩と応じて、凌ぐ(次の図)

研究7四桂図05
 これで形勢は後手が良い。
 ここで3一金としたいが4三馬と成桂を取られると先手おもしろくない(以下3二銀、同馬、同金、同玉、5四角、4三銀は後手勝勢)
 なのでここで3五歩が考えられるが―――
 3五歩、8九馬、同金、4七飛(次の図)

研究7四桂図06
 4七飛(図)と打って、後手勝勢。
 5七歩、同飛成、6七金打は6五桂がある(6五同金は8七銀成)
 6七銀合なら、9四香、同歩、8七飛で以下先手玉が詰む。


研究7四桂図07
 (水)6七金(図)と金を引く手。
 これは「6六歩、6八金」を入れて、以下6四銀左、5四歩、7五銀と進む(次の図)

研究7四桂図08
 「6六歩、6八金」が入っているので次の8六銀に7六玉とはできない。
 ここで5一竜のような手で攻め味をつくりたい(次に4二金の狙い)ところだが、8六銀、8八玉、8五金とされると、4二金は、同馬、同竜、9七金打で先手玉が詰まされる。
 だから先手はここで8八玉と先に逃げ、8六銀に、9六香として次の8七歩をねらう(次の図)

研究7四桂図09
 9七歩、8七歩、7七歩成、同銀、同銀成、同金、7六歩(次の図)

研究7四桂図10
 こうなってみると、先手苦戦である。後手陣に手がついていないのが大きい。
 7六歩(図)に、7八金引は、8五金~7七銀で仕留められてしまうので、7六同金と取る。
 6七歩成、9七玉の後どう攻めるか難しい。
 7五歩、同金、9五歩と攻めるのが良さそうだ。以下同香、同金、9六歩に、8五銀(次の図)

研究7四桂図11
 9五歩に、9六歩。先手玉を下段に落とせば6七につくったと金が生きてくる。
 8八玉に、8四銀(次の図)

研究7四桂図12
 8四銀(図)と眠っていた銀を活用する。
 粘る手は6八歩だが、9三銀、6七歩、9七角、7八玉、7五角成、7七歩、6五香、6八金打、9七歩成(次の図)

研究7四桂図13
 後手勝勢(次の後手の狙いは8七と、同飛、8六銀、8八玉、7六歩)


研究7四桂図14
 (木)5五金(図)と金を前進させる手。
 この手には6四銀右が好手になる。同金は、同銀、5四歩、6六歩、6八金、7五銀で、後手良し。
 よってここは5四金打と返す(次の図)

研究7四桂図15
 5四同銀(図)に、同金は8五金で後手良し。5四金が質駒になっているので、8五同歩に、8六金、8八玉、5四馬が先手玉への “詰めろ” になるから。
 だから、6四金とこちらの銀を取る。
 しかし6三銀の好手がある(次の図)

研究7四桂図16
 6三銀に代えて6五銀もあるところだが、5四歩と馬筋を止められるので、6三銀(図)が優る。
 同金と取らせ、8五金。先手に5四歩と打つ猶予を与えない。
 8五金は同歩とは取れない(8六金、8八玉、7七歩成、同銀、8七馬で先手玉詰み)
 よって、(1)7五銀 と先にもらった銀を打って受けるが、7七歩成がある。
 以下同玉に、7六馬(次の図)

研究7四桂図17
 6八玉、7五金と進むが、そこで先手の受けが難しい。
 7七歩、6五馬、5六銀と受けてみる。
 これには6七歩、同銀上、6六歩(次の図)

研究7四桂図18
 7八銀と引くと6七銀で後手勝勢となる。
 よってここは6五銀と取るが、6七歩成、同玉、6五金(次の図)

研究7四桂図19
 後手良し。
 後手の馬がいなくなって後手陣にスキができている。しかし後手の「金銀銀銀」の持駒は大きく、後手優勢である。

研究7四桂図20
 8五金に(2)9五銀(図)を考える。
 同じように7七歩成、同玉、7六馬、6八玉となったとき、9五金と銀をとるのでは先手良しになる。
 この場合は、7七歩成、同玉、7六金とする。以下6八玉、6六歩(詰めろ)、5七玉、7七歩(次の図)

研究7四桂図21
 7七同銀、6七歩成、4八玉、7七金、7五馬、7八と、3一銀(次の図) 

研究7四桂図22
 1一玉に、7四馬。この手は、桂を取ると同時に後手に8九との後、4五飛の王手馬取りを打たれる手があり、それを未然に避けた。
 ここで3八玉とするのは、3六金と打って、次に後手7七飛のような手をねらって後手良し。
 5二香成は2八飛(3八馬なら6五馬、3九玉なら6八飛成)で先手玉 “寄り”
 5二金は、5六歩がありこれも後手優勢(次に2八飛、3八歩、4六金の狙い)

 では、5一竜と攻めてどうか。
 以下、4六銀、4二金、2八飛、3八歩、7六馬(次の図)

研究7四桂図23
 7六馬(図)として、後手優勢。 
 2二銀成、同玉、3二金(同玉なら5二竜で詰む)、同馬と進むだろう。
 このとき、先手玉は4七銀打以下の “詰めろ” になっている。だから先手は受けに回ることになるが、どう受けても、正しく攻められると先手勝てない。


研究7四桂図24
 (金)5六金(図)はさえない手にみえるが、実は防御力が高い。
 6四銀右なら7一竜で難しい勝負になる。
 ここは、6四銀左が最善手である。
 以下5四歩、同馬(次の図)

研究7四桂図25
 ここで[R]6八金[S]4二金[T]5一竜 が有力候補手。

 [R]6八金、は、7五銀、6五金打と進む。
 後手7五銀に6五金打と打って受けるのが5六金としたときからの構想。
 しかし6七歩の切り返しがあった。(次の図)

研究7四桂図26
 6七同銀は6五馬、同金、8六銀(7六玉と逃げられない)だし、6七同金は、6六歩、6八金、8六銀で後手勝ちになる。
 したがってここから、5四金、6八歩成、同歩と進む。
 そこで後手6六歩(次の図)

研究7四桂図27
 6六歩(図)と打って、次に8六銀をねらう。
 適当な受けがないので、先手は馬の居なくなった後手陣を攻めることを考える。

 〈1〉8四馬、同銀、5一竜と勝負してどうか(5一竜に代えて4二金は3一角で後手良し)
 5一竜は3二金、同玉、5二竜以下の “詰めろ” である。
 しかし、8六銀、8八玉、2五角がピッタリの返し技(次の図)

研究7四桂図28
 “詰めろ逃れの詰めろ” の角打ち。後手勝ち。

研究7四桂図29
 〈2〉4二角(図)はどうか。
 この4二角は攻めだけでなく受けにも利いていて、ここで後手が8六銀と出てくれば、7六玉として、「7五」に角の利きがあるので先手良しになるのだ。
 この4二角に対しては、5三歩がある。次に8六銀とする意味だが、8四馬、同銀、8二竜と詰めろを掛ける。
 後手は1四歩で詰めろを受け、先手は4三金と迫る(次の図)

研究7四桂図30
 先手好感触の手が続いているが、8六銀、8八玉、7七銀成、同銀、同歩成、同玉、7六歩、同玉、5四角と進んで―――

研究7四桂図31
 後手勝ちになった。

研究7四桂図32
 [S]4二金(図)と打つ手。
 これは7五銀、6八金(7七を強化した)、6七歩、同金、6六歩、6八金、8六銀、8八玉、7七歩成、同金、9七歩成と進む。これは一本道の変化だ(次の図)

研究7四桂図33
 9七同香、同銀成、同玉。
 同玉に代えて7九玉は、7六歩、6六金、同桂、同金、7七香、6八玉、7八香成、5七玉、8九成香と進むが、先手の持駒が桂と歩だけなので先手に勝ち目がない。
 9七同玉には、しかし、6四馬がある(次の図)

研究7四桂図34
 6四馬(図)で、4二に打った金が消されてしまう。
 以下8八玉、4二馬、5三歩、7六歩、同金、4三馬のような進行が予想されるが、結局先手に攻める余裕が生まれてこない。
 後手良し。


研究7四桂図35
 [T]5一竜(図)と竜を寄っておくのはなかなか有力な手である。
 対してソフトは8五金を示すが、以下8八玉に、はっきりした決め手がわからない(つまり形勢不明)
 ここは7五銀を見ていく。これには6五金打が用意の手だが、5三馬としてどうなるか。
 先手は4六金で香車を利かす。後手は3一馬(次の図)

研究7四桂図36
 ここで先手にチャンスが来ているようにも感じられる局面であるが、実際にはどうだろうか。
 〈ア〉5二香成 と、〈イ〉6八金 を有力手として見ていく(他に〈ウ〉5二竜は、6六歩、5三歩、5一歩、同竜、8六銀、7六玉、7五歩、同金、同銀、6五玉、5三桂で後手良し)

 〈ア〉5二香成に、後手は6六歩。
 そこで4二成香としたいところだが、8六銀、7六玉、7五歩、同金、同金、同馬、同銀、同玉に、6四角があって後手勝勢になる。
 したがって後手6六歩に、先手は6八金とし、すると以下8六銀、8八玉、9七歩成、同香、同銀成、7九玉、8六桂と進む(次の図)

研究7四桂図37
 ここで4二成香で勝負。
 7八桂成、同玉、7七香、同金、同歩成、同玉、6七金、8六玉(7六玉には8七銀で後手勝勢)、4二馬(次の図)

研究7四桂図38
 ここで4二馬(図)と成香を取って、同竜に、3一銀、5二竜、5一歩、9二竜、8五香(次の図)

研究7四桂図39
 8五香(図)で後手優勢である。

研究7四桂図40
 〈イ〉6八金(図)と後手の攻めに備える手。
 これには6七歩がある。
 対して平凡に同金、6六歩、6八金と応じていたのでは8六銀で先手の完封負けとなる。
 なのでここは6七同銀と応じ、6六歩に7六銀で勝負する。
 以下9七歩成、同香、7六銀、同玉、7五銀(次の図)

研究7四桂図41
 8七玉、8六銀、7八玉、7七歩、7九玉。
 先手は7九まで押し込まれてしまったが、9七銀不成なら、7七金から6八玉と右辺へ逃げるつもりである。
 後手は5三桂(次の図)

研究7四桂図42
 後手のこの5三桂(図)はとしてこの桂馬を攻めに使おうというのと、とする。
 5五金に、9七銀不成、7七金(代えて5七金は4五桂がある)、7六歩、6八玉、7七歩成、5七玉、4一金(次の図)

研究7四桂図43
 4一金(図)と強化して後手陣にスキがなくなった。図以下は7一竜、9八銀不成の進行が予想される。
 後手優勢。


研究7四桂図44
 (土)7五金(図)もある。
 この手には、後手は6四銀左とする。
 対して、7四金と桂を取り、同銀に、3五桂として勝負してどうか(次の図)

研究7四桂図45
 以下、6五馬に4二金と打てる。
 そこで3四歩なら、3二金、同馬、4三銀で先手有望かもしれない。
 後手7五銀左のほうが問題だ。この手は9七金以下の “詰めろ” になっている。
 だから先手は8四馬と切る。

研究7四桂図46
 8四同歩なら先手玉への詰めろが消えるので、3二金、同馬、4三銀と攻めるのが先手ねらい。
 後手は7七歩成、同玉を入れ、先手玉が9筋から逃げる手をなくしておいて、それから8四歩。
 先手は予定の3二金(次の図)

研究7四桂図47
 3二同馬に、4三銀と打つ。
 しかし、4三同馬と取り、同桂成、6六銀打と切り返され―――
 以下8七玉(8八玉は7七角以下詰み)、8六銀、同玉、8五金と進める(次の図)

研究7四桂図48
 先手玉は詰んでいる。


研究7四桂図49
 (日)6一竜(図)は、
 6六桂、同竜、7四銀と進む。
 以下、変化の一例を示しておく。
 5四歩、同銀。
 そこで5四同香、同銀、4二金が打てるが、それは3一金でうまくいかない。
 よって5四歩、同銀に、6一竜と入り、7五銀に、6七桂(次の図)

研究7四桂図50
 6七桂(図)と打って、後手に攻めの催促をする(次に6五銀がくるともう先手は勝てそうにないのでその前に無理気味に攻めさせる)
 8六銀、同玉、8五金打、8七玉、6六歩(次の図)

研究7四桂図51
 6八金、6七歩成、同銀、7五桂、7八玉、6五銀。
 そこで5二香成。先手にも攻めの手が入った。
 6六歩、5八銀、5六銀と進んで次の図。

研究7四桂図52
 ここで4二金が期待の攻めだ。
 しかし、4二同馬、同香成、7七歩成、同金、6七金とされ―――(次の図)

研究7四桂図53
 7七歩成、同金(同玉には7六金打)、6七金(図)という手順で以下、先手玉は “詰み”。
 後手勝ち。



7四桂図(一番勝負92手目)再掲
  (月)5三香成 = 実戦の指し手(後手良し)
  (火)6五金打 →後手良し
  (水)6七金  →後手良し
  (木)5五金  →後手良し
  (金)5六金  →後手良し
  (土)7五金  →後手良し
  (日)6一竜  →後手良し

 他に(星)5四歩もあるが、6六桂、5三歩成、同歩で、後手優勢。

 結局、この図は正しい形勢は「後手良し」なのである。

 そして実戦では、我々終盤探検隊は、(月)5三香成 と指した。


 【これが勝因か? その4】 5三香成


5三香成図(一番勝負93手目)
 
 結果的に、ここで▲5三香成 と指したことが “勝因” の一つになっている。
 (正しく応じられると後手良しだったのだが)
 ここで▲5三香成 と指せるのも、後手が△9六歩 と指して▲5九香 と打つ一手の猶予を与えてくれたからである。


次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(4)]につづく
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終盤探検隊206 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第105譜

2021年02月08日 | しょうぎ
6六金図(最終一番勝負89手目)


   [七月はあえなくさったけれど]

すんだあの空は とうにいろあせ
こだまはきえ 思い出はほろび
秋のしもに 七月はあえなくさったけれど――

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )





<戦後研究:何が勝負を分けたのか(2)>

6六金図(一番勝負89手目)
 ここで「7四桂」なら「後手良し」だった(実戦は9六歩)

 【後手の失敗 その4】 ここで7四桂を逃したこと



[調査研究 変化7四桂図]

 90手目「7四桂」の変化を研究調査する。

変化7四桂基本図
 90手目に「7四桂」(図)と打てば後手良しだった―――ということで、それを確認するために、この図を調べていこう。
 なお、最新ソフト「水匠2/やねうら王」の評価値は -244 と出ている(先手の最善手7五金)

 ここで先手の有力候補手は、
 [A]7五金[B]6七金[C]5六金[D]6五金打

 以下、一つずつこれらを調べた内容を書いていく。


変化7四桂図01
 まず[A]7五金(図)から。
 これは以下、7五同金、同馬、6六金と進む(次の図)

変化7四桂図02
 ここで〈ア〉6六同馬〈イ〉5四歩 がある。

 〈ア〉6六同馬、同桂、6七銀と進み、そこで後手5五角があった。
 5六香なら、1九角成、5三香成、同歩で、後手優勢。
  そこで先手は54歩と工夫する。同馬に5六香。こんどは1九角成なら、5四香で先手良しだ(次の図)

変化7四桂図03
 しかし7八桂成、同銀、7七歩成、9七玉、9六歩、同竜、9五歩、同竜、8四銀と進んで―――(次の図)

変化7四桂図04
 結局、この 変化も後手優勢となった。

変化7四桂図05
戻って、〈イ〉5四歩(図)は、同馬なら5九香と打って勝負しようという手。
 しかし6四銀左、6六馬、同桂、6七銀、7五銀となって、後手の銀に手順に進出を許す。しかし後手の馬の利きは止まっている。
 7一竜、8四銀上、6五金と打って勝負する。
 しかしそこで後手に「5八桂成」の好手がある(次の図)

変化7四桂図06(5八桂成図)
 取られそうな桂を成る「5八桂成」(図)が好手で、〔s〕同銀なら5六角(6五金取りと8九角成の狙い)で後手優勢。また〔t〕7八金打と受けるのは4二馬でこれも後手が良い。
 放っておくと後手5九角の手がある。
 では先手は何を指すか。
 〔u〕7五金と〔v〕9五歩 の手を見ていく。

 〔u〕7五金、同銀、同竜、7七金、9七玉、5七角(次の図)

変化7四桂図07
 こう進んで、これも後手優勢である。
 7六銀、5四馬、8八香、7六金に、4二銀で後手玉にも詰めろがかかった(4二銀に代えて4二金なら、3一銀と受けて同金に7五角成で後手勝ち)
 しかし、1四歩、2五竜、2四歩となってみると―――(次の図)

変化7四桂図08
 後手勝勢。2六竜なら9六歩以下先手玉詰み。8五竜は7九角成で “必至” となる。

変化7四桂図09
 「5八桂成図(変化7四桂図06)」から、〔v〕9五歩(図)の場合。
 〔u〕7五金、同銀、同竜、7七金、9七玉となっては先手勝てないということで、〔v〕9五歩とした。これで次に7五金といく予定。今度は9六玉と逃げられるので全然違う。
 ということで、後手は4二馬と馬を活用する。
 以下、4三歩、同銀、5三香(次の図)

変化7四桂図10
 5三香(図)で後手の馬筋を止めた。
 しかし、後手にも8六銀、同玉、5三桂という切り返しがあった。
 ここで4一金なら、6五桂、4二金に、8五金以下先手玉詰み。
 よって5三桂以下、同歩成、同馬と進む(次の図)

変化7四桂図11
 5三同馬(図)の手が、“王手竜取り” になっている。
 7六玉、7一馬、4二金、7五香、8七玉、7七飛、8八玉、3一角(次の図) 

変化7四桂図12
 後手勝勢。

 以上の調査から、[A]7五金 は 後手良し、と結論される。


変化7四桂図13
 次は[B]6七金(図)と引く手。
 これには後手は6四銀右と銀を使う。対して先手は5四歩。
 以下5四同馬、5九香、4三馬。
 そこで〔1〕9七玉(次の図)

変化7四桂図14
 7五銀、8七銀、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、6六銀(次の図)

変化7四桂図15
 6六銀(図)と攻めてくる。
 7六金に、同馬と切ってくる手がある。
 以下7六同銀、7七銀成、8七銀、9六金、9八玉、7六歩(次の図)

変化7四桂図16
 後手優勢である。

変化7四桂図17
 〔1〕9七玉 に代えて、〔2〕8八玉(図)とした変化。
 7五銀、8七銀、9六歩。このとき9六歩が玉の当たりにならないので、ここで何か手が指せる。
 5一竜としてどうか。5三香成と攻めるチャンスをうかがう。
 以下6六歩、6八金引、8六銀(次の図)

変化7四桂図18
 この場合は8六銀(図)ときた。 
 同銀、同桂、8七銀、8五金、6六馬、9七銀、同香、同歩成、同玉、7七歩成(次の図)

変化7四桂図19
 こうなった。7七歩成を同金は、9六香以下先手玉詰み。
 なので5四歩、8七と、同玉と進みそうだが、そこで6四香と打って、後手勝勢である。
 結局、先手は5九香 や5一竜を生かす展開にならないままに、いいところなく自陣がつぶされてしまった。

 [B]6七金 は 後手良し。


変化7四桂図20
 [C]5六金(図)は、「6五」に利いているところに意味がある。
 6四銀右、5四歩、同馬。
 そこで【天】7一竜 としてどうか(次の図)

変化7四桂図21
 ここで7五銀と出てくれば、6五金打と打って先手良しになる。また6五銀には5四香がある。「5六金」がしっかり働く展開になれば先手もやれる。
 また後手7五金の手には、同馬、同桂、7四竜の用意がある。これが7一竜の意味(この変化は形勢互角)
 しかし「6六歩」が後手の好手である。6八金(6七と7七を強化した手)に、7五銀と出る(次の図)

変化7四桂図22
 この場合、6五金打としても、同馬、同金、8六銀、8八玉、7七金で先手が負けになる。
 後手の「6六歩」がなければ、8六銀には7六玉と逃げられたのだが‥‥「6六歩」にはそういう意味があったのだ。
 どうももう先手は受けが利かないようだ。以下は変化の一例を示しておく。
 8八玉、8六桂、8七銀、7七歩成(次の図)

変化7四桂図23
 7七同金、7六歩、同銀、同銀、同金、6二銀(次の図)

変化7四桂図24
 6二銀(図)が決め手。
 以下5五歩、7一銀、5四歩、7八飛、8七玉、7五歩(次の図)

変化7四桂図25
 8六金、6七歩成、8八金、7七銀、7八金、同銀不成、9七玉、8九銀成(次の図)

変化7四桂図26
 先手も頑張っては見たが、この図は後手勝勢になっている。
 先手にはたくさんの持駒があるのだが、後手玉に詰めろをかける有効手がない。
 先手玉は後手7七飛、8七香、9九成銀で受けの難しい状態になる。

変化7四桂図27
 【天】7一竜 には後手6六歩の好手があって先手が勝てなかった。
 ということで、【地】5九香(図)の変化を調べる。
 7五銀なら6五金打だし、6六歩は同金が馬取りになるという仕組み。
 しかしこの場合は後手7五金がある。狙いはわかりやすく8六金だ。
 これには9七玉でどうか。8六金なら同飛で勝負する(先手良し)

 しかし、7七歩成、同銀、7六歩という小技があった(次の図)

変化7四桂図28
 6八銀では6七歩があるので、6六銀と出る。
 以下同桂、同金、6三馬、8七金、9六歩、8八玉、7七銀(次の図)

変化7四桂図29
 7七同金、同歩成、同玉、7六歩、6八玉、7四馬(次の図)

変化7四桂図30
 7四馬として、後手優勢。以下は想定される変化。
 5三香成、6六金、同馬、5三銀、4三桂、4二銀、7一竜、7七金打、5八玉、2九馬(次の図)

変化7四桂図31
 後手勝勢。

 以上の調査から、[C]5六金 は 後手良し。


変化7四桂図32
 4つめの候補手は、[D]6五金打(図)
 これは、6六桂、同金、7四銀と進む(次の図)

変化7四桂図33
 ここで先手が何を指すか。
 有力手は、(x)6一竜 と、(y)5四歩、そして(z)2六香 とみて、その変化を調べていくこととする。
 (x)6一竜には、7五金打が後手の好手。
 以下3五桂、3四馬、7五金、同銀、5八香、1四歩(次の図)

変化7四桂図34
 5三香成、同歩、7二竜。次に4三銀をねらう。
 しかし、7七金、同銀、同歩成、同玉、7六歩、6八玉、3五馬となってみると―――(次の図)

変化7四桂図35
 後手優勢。5七歩には5六桂、5八玉、3六馬(王手竜取り)がある。

変化7四桂図36
 戻って、(y)5四歩(図)。
 5四同馬なら5九香で、これは勝負形になる。
 だから後手は5四同銀と応じる。
 以下5一竜で先手はチャンスをうかがう。後手の馬が動いたら先手にもチャンスが生まれる。
 以下、6五銀左、3五桂、5三馬 が想定される(次の図)

変化7四桂図37
 以下6五金、7七金、同銀、同歩成、同玉、6五銀と進む。
 どうも後手優勢のようだ。2六香で勝負するが、7六歩、6八玉、5六銀(次の図)

変化7四桂図38
 先手の受けが難しい。後手優勢。

変化7四桂図39
 (z)2六香(図)と打つ手は、次に3五桂がねらいになる。
 後手6五銀に、3五桂で勝負だ(次の図)

変化7四桂図40
 6六銀、4三桂成、7七金、9八玉、9六歩(次の図)

変化7四桂図41
 先手負け。(z)2六香 もうまくいかなかった。


 これでどうやら結論がはっきりとした。

 以上見てきた通り、「7四桂」と打った「変化7四桂図」は後手良しである。

変化7四桂図基本図(再掲)
  [A]7五金  → 後手良し
  [B]6七金  → 後手良し
  [C]5六金  → 後手良し
  [D]6五金打 → 後手良し

 他に[E]6七金打や[F]5七金打も、[D]6五金打と同様に6六桂以下後手良しになる。
 そして、[G]5五金は6四銀右で後手優勢。
 また、[H]5四歩は、6六桂、5三歩成、同歩で、後手優勢。
 粘るなら[I]6一竜も考えられるが、6六桂、同竜、7四銀で、これも後手良しである。
 

 つまり、先手6六金に対し後手「7四桂」と打ったこの変化図は、はっきり後手良し、が結論となる。
 見てきたように、複雑な変化ではあるが、馬と金銀桂の圧力に押されて、先手が勝つことが困難である。ソフトの評価値以上に、先手の形勢が悪い感じがした。


 ここでの「7四桂」を逃したことが、後手最大の失敗だったのではないだろうか。



9六歩図(一番勝負90手目)
 「7四桂」を見送り、△9六歩(図)としたのが、実戦である。
 9六歩自体は有効手であるけれども、先手に5九香と打つ猶予を与えたことが、結果的に勝負に大きな影響を与えることとなった。その意味でも、ここで△9六歩を後手が選んだことは重大なミスであった。



5九香図(一番勝負91手目)

 先手は、▲5九香(図)と打った。
 この手が、 “形勢逆転” を呼び込んだのであった。

 【これが勝因か? その3】 5九香


次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(3)]につづく
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終盤探検隊205 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第104譜

2021年02月03日 | しょうぎ
≪亜空間戦争 最終一番勝負 投了図≫ 3五金まで




   [七月のとある夕ぐれ]

あかるい空のもと ボートが一そう
ゆめみごこちで たゆたいすすむ
七月のとある夕ぐれ――

りょうわきには いとけない三人むすめ
まなこきらきら 耳そばだてて
たあいないおはなしを よろこびむかえ――

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )





<戦後研究:何が勝負を分けたのか(1)>

 「亜空間戦争 最終一番勝負」は、先手終盤探検隊の勝利でフィナーレとなった。

 「勝負どころ」の、71手目~99手目の研究をして、「何が勝負を分けたのか」を突き止めたいと思う。

6九歩図(一番勝負71手目)
 ここは先手が▲6九歩(図)と打って、それまで保ってきた先手の優位をふいにしてしまったところ。
 ▲6九歩は「悪手」で、ここで形勢逆転して「後手良し」になってしまっている。ここから先手にとって苦しい戦いとなった。

 以下△6七馬、▲7八銀と進む(次の図)

6八銀図(一番勝負73手目)
 ここで「7八同馬」とすれば、「後手良し」が継続できていた(以下同玉、8八銀)
 
 【後手の失敗 その1】 ここで「7八同馬」を逃したこと

 実戦は△7四香、▲7五歩、△同香、▲7七歩と進んだ。

7七歩図(一番勝負77手目)

 【後手の失敗 その2】 ここで「6八桂成、同歩、7七香成、同銀、8九馬」を逃したこと

 「6八桂成」の手順を選べば「後手良し」だった(ただしこの変化は難しい。第83譜で解説している)

 実戦は△4四歩を後手は選ぶ。以下▲7九金、△3四馬と進む。
 そこで “9五歩” なら「互角」だったかもしれないが、実戦では先手(終盤探検隊)はその手には気づかなかった。先手は▲7六歩を選んだ(次の図)

7六歩図(一番勝負81手目)

 ここで「6七歩成」という手が見える。実戦では後手はその手を選ばず、△4三馬とした。
 しかしその「6七歩成」の変化は後で調べてみると「後手良し」だった(第86譜で解説)

 【後手の失敗 その3】 ここで「6七歩成」を逃したこと

 もちろん後手も「6七歩成」が見えなかったはずがない。△4三馬のほうがより魅力的に映ったからその手を選んだのだろう。

4三馬図(一番勝負82手目)
 この△4三馬(図)も厳しい手だが、対して “8八玉” なら「互角」の形勢となるようだ(この変化も第86譜で解説)

 しかし、我々が選んだのは、▲6八桂(次の図)

6八桂図(一番勝負83手目)

 【これが勝因か? その1】 6八桂

 理論上の最善手は “8八玉” である。しかしそれを選んだとしても、「互角に戦えたかもしれない」ということであって、先手が有利になるというわけではない。
 この▲6八桂は、最善手ではない。この図の形勢は「後手良し」だ。
 しかし、結果を見れば、ここで▲6八桂を選んだことが、「勝利への助走」になったのかもしれない。

 図以下は、△7六香、▲同桂、△7六歩、▲7七金と進む(次の図)

7七金図(一番勝負87手目)

 【これが勝因か? その2】 7七金

 ▲7七金(図)と打って頑張る。
 この一局を振り返ってみて、この手が「勝利を呼び込んだ」のではないかと思っている(この手に代えて6八歩や5九香や8八玉もあるがいずれも後手良し→第87譜

 この図の形勢は、しかし、「後手良し」。
 その理由は、△7六歩、▲6六金と進んだとき―――(次の図)

6六金図(一番勝負89手目)

 このときに、後手「7四桂」があるからだ。
 
 しかし実戦では、後手は「7四桂」を逃す。これが大きな後手の失敗だった。

 【後手の失敗 その4】 ここで7四桂を逃したこと



次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(2)]につづく
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終盤探検隊 part204 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第103譜

2021年01月28日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 投了図≫ 3五金まで


<第103譜 投了図>

 後手玉は詰んだ。

 こうして、≪亜空間最終戦争一番勝負≫ は、先手番、終盤探検隊 が勝利した。





先手:終盤探検隊
後手:亜空間の主(ぬし)

後手:ぬし
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ ・ ・v金 ・v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v銀v香|二
|v歩v歩v歩 ・ 桂v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v龍 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・vとv金 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:探検隊
先手の持駒:角二 金 銀 歩三 

▲3四玉 △5二金 ▲3一銀 △5一歩 ▲2二銀成 △同 玉
▲4二銀 △3三銀打 ▲4五玉 △4二銀 ▲5四玉 △5三銀
▲6五玉 △6四銀打 ▲7六玉 △5八金 ▲3三歩 △同 銀
▲3四歩 △4二銀左 ▲9一龍 △5九金 ▲6六角 △5五銀引
▲9三角成 △9四歩 ▲9六歩 △8四金 ▲8六歩 △5六と
▲7三歩成 △同 銀 ▲4一角 △3二歩 ▲6七歩 △6四桂
▲8七玉 △6七と ▲9七玉 △7七と ▲7八歩 △7六歩
▲7七歩 △同歩成 ▲7八歩 △7六歩 ▲7九香 △3一銀
▲3三歩成 △同 歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲同 香 △7六歩
▲2五飛 △3二銀 ▲5二角成 △同 歩 ▲5五飛 △4一桂
▲7六香 △同 桂 ▲5九飛 △7七角 ▲8九飛 △6八角成
▲4四歩 △9五歩 ▲8七玉 △6六歩 ▲6九歩 △6七馬
▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩 △4四歩
▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂 △7六香
▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金 △9六歩
▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金 △7五香
▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打 △同 馬 ▲同 金 △7六金
▲8八玉 △7七歩 ▲7五金 △7八歩成 ▲同 金 △7五金引
▲4二銀 △1一玉 ▲3一銀不成△9七歩成 ▲同 香 △2二銀
▲同銀成 △同 玉 ▲4二角 △3一銀 ▲1一銀 △同 玉
▲3一角成 △2二銀 ▲3二馬 △3一金 ▲同 馬 △同 銀
▲4一龍 △7七歩 ▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △7七歩成
▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △9六歩 ▲3一龍 △7七歩成
▲同 玉 △2二角 ▲同 龍 △同 玉 ▲3一銀 △同 玉
▲3二歩 △同 玉 ▲4三銀 △同 玉 ▲5五桂 △5三玉
▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩 △同 玉
▲3七金 △5五玉 ▲5六歩 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉
▲3六歩 △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五玉
▲2六金 △2四玉 ▲3五金
まで171手で先手の勝ち
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終盤探検隊 part203 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第102譜

2021年01月27日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第102譜 指始図≫ 5五桂まで

指し手 △5三玉 ▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩
    △同玉 ▲3七金 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉 ▲3六歩
    △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五香 ▲2六金
    △2四玉 ▲3五金 まで 先手勝ち




   [わたし世界を変えたいの]

目をさましたら
新たな舞台の幕が開く

ワンダードライブ 駆け出していく
ワンダードライブ この先の世界
曖昧な感情は 丸めて捨てていくよ
ワンダードライブ 駆け抜けていく
フリーウィル 針を振り切って
誰かの夢なんかじゃない この道は

鏡よ鏡、わたし世界を変えたいの

(アニメ『アリスと蔵六』オープニング曲『ワンダードライブ』ORESAMA楽曲 作詞 ぽん より)




<第102譜 着地!!!>


≪最終一番勝負 第102譜 指始図≫ 5五桂まで

 後手玉を詰ましに行っている。
 この図は、▲4三銀 と捨て、△同玉 に、▲5五桂 と打ったところ。

 4二玉なら、4三銀、5一玉、4二金、6二玉、5二金、7二玉、6三角まで詰み。
 3四玉は、4三角と打って、以下先手は「金銀香歩五」の持駒を使って、これも詰ますことができる。
 5四玉と逃げるのも、4三角から容易に詰む。

 よって、後手は、△5三玉
 これには、▲3一角 と角を打つ(次の図)



≪途中図 3一角まで≫

 4二銀合は、同角成、同玉、4三銀、5一玉、6三桂、6二玉、7一角成、6三玉、5四金まで詰み。

 よって、△5四玉

 以下、▲4三銀、△4五玉、▲4六歩、△同玉、▲3七金 と進む(次の図)



≪途中図1 3七金まで≫

 本譜は「▲4六歩~▲3七金」と進んだが、▲4六歩 に代えて、4八香とするのもわかりやすい詰ませ方であった(後手は飛か銀しか合駒がない)

 実戦は、図の ▲3七金 以下、△5五玉 ▲5六歩 と進む(次の図)



≪途中図2 5六歩まで≫

 図の ▲5六歩 に代えて、5八香と打つ勝ち方もあり、勝ち方としてはこちらの方が美しいかもしれない。
 5八香は、4五玉と逃げて後手玉は詰まないが、そこで7五角成とすれば―――(次の図)

変化5八香図01
 7五角成(図)として金を取り後手玉は4六金打までの “詰めろ”。そして、後手は持駒が「飛銀銀桂歩三」とあっても「7五馬」が頑張っていて先手玉に迫る有効手がなく、先手勝ちになる。

 また、いまの▲5六歩以下のこの詰み手順は、後手が△2二角を打つ前に「△7七歩成、▲同玉」を入れたので生じた。
 もしも「△7七歩成、▲同玉」を入れていなかったら、5六歩に “6五玉 ” で――以下、7五角成に同玉と取って―――(次の失敗図)

失敗図
 これは “形勢逆転” して、後手の勝ちになっている。


≪途中図2(再掲)≫
 本譜の場合は、▲5六歩(図)に 6五玉 なら、7五角成 があって後手玉詰みだ。同玉に7六金とできるのが失敗図との違い(以下6四玉に5四金まで後手玉詰み)


 実戦は、△4五玉、▲4六歩、△3五玉、▲3六歩 と進んだ。
 以下、 △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩



≪途中図3 1五歩まで≫

 先手は右下の桂香もしっかり使うことに成功した。

 △2五玉 ▲2六金 △2四玉 ▲3五金



≪最終一番勝負 投了図≫ 3五金まで

 ▲3五金(図)で後手玉詰み。

 「着地」が決まった!!





[詰手順]

一番勝負140手目 2二角まで
▲2二龍 △同玉 ▲3一銀 △同玉 ▲3二歩 △同玉 ▲4三銀 △同玉
▲5五桂 △5三玉 ▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩 △同玉
▲3七金 △5五玉 ▲5六歩 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉 ▲3六歩 △2四玉
▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五玉 ▲2六金 △2四玉 ▲3五金
        まで後手玉詰み(31手詰)
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