≪月5四玉図≫
さあ、いよいよ、「先手の勝利」が近づいてきた―――かもしれない。
[月下推敲]
聞居少鄰並 草徑入荒園
鳥宿池邊樹 僧敲月下門
過橋分野色 移石動雲根
暫去還來此 幽期不負言 (詩「題李凝幽居」 賈島作)
唐の詩人、賈島(かとう)の「題李凝幽居」というタイトルの詩。
「しばらくぶりにこの家を訪れたが、やっぱええわ、来てよかったわ~」という意味の詩。
「僧敲月下門」という部分が有名で、初めは「僧推月下門」としていたのを、よく考えて「僧敲月下門」に変えた。
それが「月下推敲」という故事になっている。
≪4二銀図≫
<R>3一歩 → 先手勝ち
<S>3三銀打
<T>4二同金 → 先手勝ち
図の「4二銀」が我々の発見した手で、これを今、調査中だ。<T>4二同金で先手勝てないと思ってたが、それが再調査により結論が逆になった。
あとは、<S>3三銀打がどうなるか。
≪3三銀図≫
[烏]2五玉 → 後手勝ち
[鳶]4五玉 → 形勢不明
[鴨]3三銀成、同銀、2五玉 → 後手勝ち
[鷺]3三銀成、同銀、4五玉
<S>3三銀打と、後手が銀を打ったところ。
ここから、[鷺]3三銀成、同銀、4五玉――それで先手が勝てるかどうか、それが今回のテーマであり、もし「先手勝ち」ならば、めでたく我々終盤探検隊の任務は終了となる。
4五玉図
5四玉~6四玉~7三玉という「入玉」ができれば、それで「先手勝ち」となる。
したがって、後手はこの図では5三金がこの一手。(4二桂だと3一銀以下後手玉詰み。また3一歩、5四玉、6三銀、6五玉の展開は先手良し)
ここで3一銀が、先手の“希望”をつなぐ手。
同玉、5一竜に、4一銀と合いをする(4一桂合だと4二角、同銀、2二金以下詰む)
以下、5三竜、4二桂と進む(次の図)
ここまでは変化の余地がお互いにない。4二桂にも、同竜しかないようだ。
以下、同銀上(同銀引だと2二金、同玉、3四桂以下詰む)、5四玉(次の図)
5四玉図
ここで、後手に選択肢が多い。
〔ラ〕5三銀打
〔リ〕6二銀
〔ル〕5一桂
〔レ〕6二飛
〔ロ〕5三飛
最有力なのは〔ロ〕5三飛と思われるが、「先手勝ち」を確定させたい我々としては、これらの手を一つ一つすべて粉砕しないといけない。順に見ていこう。
5三銀打図1
〔ラ〕5三銀打は、6三玉と入玉する。以下、6七飛、7二玉、6二飛成(図)
8一玉、9二竜、7一玉、6二銀、6一玉、8二竜、4一金(次の図)
(8二竜に代えて5一銀左には、7二角、8二竜、8一飛で受け切っている)
5三銀打図2
実戦なら、ここでは7二金がふつうか。それで先手が良いが、ここでは4一金からの寄せを紹介しておく。
4一金を同玉なら、5二角、3一玉、4一飛、3二玉、3一金以下詰む。
2二玉なら詰みはなく、その場合は、3四桂、同銀、4二金として、先手良し(以下、7一竜、5二玉、3一歩、6一金で先手勝勢)
4一金に、3二玉のときは、4二金、同銀に、2四桂(次の図)
5三銀打図3
これで“詰み”だ。 2四同歩に、4一角、同玉、2三角、3二金、5二金、3一玉、4一飛、2二玉、3二角成以下。2四桂に3三玉には、2二角、3四玉、2五銀、同玉、2六金、3四玉、2五角、4五玉、3六角、5六玉、6六飛まで。
6二銀図1
〔リ〕6二銀には、7三歩成(図)が良さそうだ。これで、先手が勝てる。
7三同銀は7一飛があるので、後手は5三飛とし、6五玉に、7三銀とと金を払う。
先手は、6一飛。以下、5一歩、5四歩、6四歩、7六玉、5四飛、4五角(次の図)
6二銀図2
5五飛なら、2三角成、3二歩、6三角で先手良し。だから5六飛だが――
5六飛、同角、同歩、6三角、2二玉、3四歩(次の図)
6二銀図3
2二玉としたのは、5一飛成、同銀、4一飛以下の“詰めろ”が後手玉にかかっていたからだが、2二玉には、3四歩(図)があった。3三同銀に、7二飛と打って、先手優勢。
5一桂図1
〔ル〕5一桂は(後手にとって)良さそうな手だ。
しかしこれには、7三歩成として、この手が4一金、同玉、5二角以下の“詰めろ”になっているので、後手は7九飛と打ちたいところだが、その余裕がない。
よって後手5二歩としてみる。先手は6五玉。後手7九飛に、7六桂(次の図)
5一桂図2
7六桂が良い手だ。これは、後手が5九飛成で金をとれば、7四玉から入玉するという意味で、そのときに8四金と打たせないための、7六桂なのである。
これで形勢は先手が良いが、もう少し続けてみよう。
図から8五銀、7五金、6四歩、同玉、5五銀、同玉、5六と、同玉、5九飛成、4七玉、3五桂、4六玉、7六銀、同金、4四銀、3八銀(次の図)
5一桂図3
先手優勢は間違いないが、楽観してはいけない。4八竜なら、5六玉とする。以下、5五金、6七玉、3八竜で、先手玉は逃げやすくなる。(以下は1一銀、2二銀に、7四角が“詰めろ竜取り”)
図以下、5八竜に、7四角と打つ。この角打ちが攻防手だ。
以下、6七竜、5六銀、7六竜に、1一角(次の図)
5一桂図4
これで先手の勝ちになった。1一角は、敵の穴熊の1二香型の弱点を突いた決め手で、気持ちいい。
後手はこれを2二金と受けても(3三銀引でも)、4一金、同玉、5二角成、同玉、6二飛から詰んでいる。
6二飛図1
〔レ〕6二飛という手もある。
これには、6三歩。そこで「5二飛」と、「5三銀打」とが考えられる。
「5二飛」には、5三歩(次の図)
6二飛図2
同飛なら6四玉から入玉できそう。だから同銀だが、そこでなんと先手は4三玉と突入する(次の図)
6二飛図3
これで先手勝ちなのである。5一歩なら、3二歩、同飛、5三玉だし、4一銀でもやはり3二歩である。
6二飛図4
(先手6三歩に)「5三銀打」の場合。この変化は少しばかり複雑だ。
6五玉、6三飛、7五玉、6七飛成、7一飛、5一歩、7三歩成、6四竜、8六玉、5八金、7四と、5五竜、7三角(次の図)
6二飛図5
後手は7四とに、5五竜としたので図の7三角が絶好となったが、6六竜では7六金で、先手で受けられてしまうのでしかたがない。
7三角は、5一角成を狙っている。
6四歩、8八角、5六竜、6六金、4五竜、5八金、同と、7五金、6五金、5一角成(次の図)
6二飛図6
7五金、同と、5一銀、同竜、4一金に、3三角成で、先手勝ち。
5四玉図
〔ラ〕5三銀打 → 先手勝ち
〔リ〕6二銀 → 先手勝ち
〔ル〕5一桂 → 先手勝ち
〔レ〕6二飛 → 先手勝ち
〔ロ〕5三飛
これで、あとは、〔ロ〕5三飛だけだ。
5三飛図1
〔ロ〕5三飛には、6五玉と逃げる
5三飛図2
ここで後手はおそらくは6四歩が最善手である。他の手、たとえば6七とだと、6一飛、5一歩に、5四歩と飛車を押さえられて、先手が良くなる。
また、6一桂はあるが、7一飛で、それも先手良し。
5三飛図3
この6四歩に、逃げる手も検討してみた。しかし7六玉だと6五銀で先手勝てないようだ。また7五玉は、8四銀、7六玉、5五飛で、これも先手悪い。
というわけで、6四同玉。後手は5五銀とし、先手は6五玉(次の図)
5三飛図4
6五玉とした手で、代えて7五玉は、6七ととされて、どうも先手が勝てないようだ。ここは6五の位置が良い。
ここで後手「6三飛」なら、5五玉、4四銀、5四玉で、先手良し。
「5六と」(または6七と)なら、7一飛(次の図)と打って、先手が良い。
5三飛図5
7一飛に、5一歩、7三歩成となって「と金」ができてしまうと、先手玉の入玉を防ぐのが困難で先手が優勢。
よって、ここでは5一飛でどうかだが、それは、同飛成、同銀、3二歩、同玉、4一角、同玉、5三桂(次の図)
5三飛図6
という順で“詰み”。この詰め手順で、最初の3二歩に、2二玉の場合は、3一角、3二玉、4一角(次の図)
5三飛図7
4一同玉、5三桂、3二玉、4二金、4二同銀上、同角成、同玉、4一飛(次の図)
5三飛図8
以下“詰み”である。
5三飛図9
ということで、「5六銀」が、後手本筋の手になる。
ここで先手はどこに逃げるか、悩ましい。“6四玉”、“6六玉”、“7五玉”、“7六玉”の四択。
しかしこのうち、“6六玉”は、6三飛があって簡単に先手負けるので、真っ先に除外。
我々は、「6四玉で先手勝ち」と考えていた。その“6四玉”の変化からみていこう。
6四玉、7二桂、7五玉、5五飛、8六玉、7五銀、7七玉、6七と、8八玉、7六銀、6三角(次の図)
5三飛図10(6四玉の変化)
この図、この6三角は、後手玉への“詰めろ”になっている。
そして先手玉はまだ詰まない。よって先手勝てる――というのがはじめの我々の研究だったのだが――
5三飛図11
後手4五銀。この手が、“詰めろ逃れの詰めろ”なのだ。
6三角による後手玉の“詰めろ”は、後手玉が2二に行ったときに“3四桂”という手が入る。この後手の4五銀は、その3四桂を消して、後手玉の“詰めろ”を解除しているのである。
同時に、5九飛成が可能になり、先手玉が“詰めろ”になった。
これは先手負けである。
5三飛図12(7六玉の変化)
それでは、“7六玉”と逃げるのはどうか。
これは、6七銀不成、8六玉、5五飛(好手。この手で5六飛は7五玉で先手良し)、6一飛、5一歩、6五金(次の図)
5三飛図13
この6五金は、後手からの9四桂、7七玉、7五飛の“詰めろ”を受ける手だが、これを「歩」だと、5六飛でダメだ。(5六飛に7五玉は7二桂がある。) 「金」ならば、5六飛には、6六歩として、先手良し。
しかし、6五金には、後手同飛と切って、同飛成に、7六金とするのが好判断。これは同竜しかなく、以下同銀成、同玉、7九飛、7七銀、6七と(次の図)となる。
5三飛図14
以下、6七同玉、5九飛成で、後手優勢だ。
5三飛図15(7五玉の変化)
“7五玉”。この手が駄目なら、これは「先手負け」が結論となってしまう。
ここで後手に考えられる手は、「7四歩」か、「8四銀」だ。
「7四歩」は、同玉、6二桂、8五玉となりそうだが、そこで後手に早い攻めがないので、5八金くらい。
それはしかし、6一飛、5一歩、6二飛成、5九金に、3四桂(次の図)
5三飛図16
先手が勝ちになった。
5三飛図17
後手は「8四銀」のほうが良さそうだ。8四銀、8六玉、5五飛、6三角(次の図)
5三飛図18
6三角は“詰めろ”である。詰め手順は、3二金、同玉、4一角打、2二玉、3四桂以下の簡単な順。
図からは、8五銀、7七玉、6七と、8八玉となるが、この場合は、“6四玉”の場合(5三飛成図10)の6三角より一手遅くなっている。そのため、4五銀は先手玉の詰めろなっておらず、4一飛、2二玉、6四角で、先手が良い(以下は5一飛、2四桂、同銀、8二飛)
5二歩、6一飛、4一桂と受けるなら、3四歩(次の図)
5三飛図19
3四歩は、同銀なら、1一角、3三銀、5一金で、駒のない後手は受けなしになる。3四歩に2二銀なら、5四桂と打って、これが次に4二桂成、同玉、6四角以下の詰めろになる。
ただしこの3四歩自体は詰めろではない。
よって、後手は先手玉に“詰めろ”以上の手で迫るならまだ勝ちがある。
7五飛、8九金、7七と、9八玉、7六銀、7九桂、8五飛、9六角(次の図)
5三飛図20
先手、受けきった。先手勝ち。
よって、後手5六銀に、“7五玉”なら、先手勝ちになる、とわかった。
すると――、「先手の勝ち」は、これで確定―――ということで、いいのだろうか。
我々は、勝ったのか?
part59につづく
さあ、いよいよ、「先手の勝利」が近づいてきた―――かもしれない。
[月下推敲]
聞居少鄰並 草徑入荒園
鳥宿池邊樹 僧敲月下門
過橋分野色 移石動雲根
暫去還來此 幽期不負言 (詩「題李凝幽居」 賈島作)
唐の詩人、賈島(かとう)の「題李凝幽居」というタイトルの詩。
「しばらくぶりにこの家を訪れたが、やっぱええわ、来てよかったわ~」という意味の詩。
「僧敲月下門」という部分が有名で、初めは「僧推月下門」としていたのを、よく考えて「僧敲月下門」に変えた。
それが「月下推敲」という故事になっている。
≪4二銀図≫
<R>3一歩 → 先手勝ち
<S>3三銀打
<T>4二同金 → 先手勝ち
図の「4二銀」が我々の発見した手で、これを今、調査中だ。<T>4二同金で先手勝てないと思ってたが、それが再調査により結論が逆になった。
あとは、<S>3三銀打がどうなるか。
≪3三銀図≫
[烏]2五玉 → 後手勝ち
[鳶]4五玉 → 形勢不明
[鴨]3三銀成、同銀、2五玉 → 後手勝ち
[鷺]3三銀成、同銀、4五玉
<S>3三銀打と、後手が銀を打ったところ。
ここから、[鷺]3三銀成、同銀、4五玉――それで先手が勝てるかどうか、それが今回のテーマであり、もし「先手勝ち」ならば、めでたく我々終盤探検隊の任務は終了となる。
4五玉図
5四玉~6四玉~7三玉という「入玉」ができれば、それで「先手勝ち」となる。
したがって、後手はこの図では5三金がこの一手。(4二桂だと3一銀以下後手玉詰み。また3一歩、5四玉、6三銀、6五玉の展開は先手良し)
ここで3一銀が、先手の“希望”をつなぐ手。
同玉、5一竜に、4一銀と合いをする(4一桂合だと4二角、同銀、2二金以下詰む)
以下、5三竜、4二桂と進む(次の図)
ここまでは変化の余地がお互いにない。4二桂にも、同竜しかないようだ。
以下、同銀上(同銀引だと2二金、同玉、3四桂以下詰む)、5四玉(次の図)
5四玉図
ここで、後手に選択肢が多い。
〔ラ〕5三銀打
〔リ〕6二銀
〔ル〕5一桂
〔レ〕6二飛
〔ロ〕5三飛
最有力なのは〔ロ〕5三飛と思われるが、「先手勝ち」を確定させたい我々としては、これらの手を一つ一つすべて粉砕しないといけない。順に見ていこう。
5三銀打図1
〔ラ〕5三銀打は、6三玉と入玉する。以下、6七飛、7二玉、6二飛成(図)
8一玉、9二竜、7一玉、6二銀、6一玉、8二竜、4一金(次の図)
(8二竜に代えて5一銀左には、7二角、8二竜、8一飛で受け切っている)
5三銀打図2
実戦なら、ここでは7二金がふつうか。それで先手が良いが、ここでは4一金からの寄せを紹介しておく。
4一金を同玉なら、5二角、3一玉、4一飛、3二玉、3一金以下詰む。
2二玉なら詰みはなく、その場合は、3四桂、同銀、4二金として、先手良し(以下、7一竜、5二玉、3一歩、6一金で先手勝勢)
4一金に、3二玉のときは、4二金、同銀に、2四桂(次の図)
5三銀打図3
これで“詰み”だ。 2四同歩に、4一角、同玉、2三角、3二金、5二金、3一玉、4一飛、2二玉、3二角成以下。2四桂に3三玉には、2二角、3四玉、2五銀、同玉、2六金、3四玉、2五角、4五玉、3六角、5六玉、6六飛まで。
6二銀図1
〔リ〕6二銀には、7三歩成(図)が良さそうだ。これで、先手が勝てる。
7三同銀は7一飛があるので、後手は5三飛とし、6五玉に、7三銀とと金を払う。
先手は、6一飛。以下、5一歩、5四歩、6四歩、7六玉、5四飛、4五角(次の図)
6二銀図2
5五飛なら、2三角成、3二歩、6三角で先手良し。だから5六飛だが――
5六飛、同角、同歩、6三角、2二玉、3四歩(次の図)
6二銀図3
2二玉としたのは、5一飛成、同銀、4一飛以下の“詰めろ”が後手玉にかかっていたからだが、2二玉には、3四歩(図)があった。3三同銀に、7二飛と打って、先手優勢。
5一桂図1
〔ル〕5一桂は(後手にとって)良さそうな手だ。
しかしこれには、7三歩成として、この手が4一金、同玉、5二角以下の“詰めろ”になっているので、後手は7九飛と打ちたいところだが、その余裕がない。
よって後手5二歩としてみる。先手は6五玉。後手7九飛に、7六桂(次の図)
5一桂図2
7六桂が良い手だ。これは、後手が5九飛成で金をとれば、7四玉から入玉するという意味で、そのときに8四金と打たせないための、7六桂なのである。
これで形勢は先手が良いが、もう少し続けてみよう。
図から8五銀、7五金、6四歩、同玉、5五銀、同玉、5六と、同玉、5九飛成、4七玉、3五桂、4六玉、7六銀、同金、4四銀、3八銀(次の図)
5一桂図3
先手優勢は間違いないが、楽観してはいけない。4八竜なら、5六玉とする。以下、5五金、6七玉、3八竜で、先手玉は逃げやすくなる。(以下は1一銀、2二銀に、7四角が“詰めろ竜取り”)
図以下、5八竜に、7四角と打つ。この角打ちが攻防手だ。
以下、6七竜、5六銀、7六竜に、1一角(次の図)
5一桂図4
これで先手の勝ちになった。1一角は、敵の穴熊の1二香型の弱点を突いた決め手で、気持ちいい。
後手はこれを2二金と受けても(3三銀引でも)、4一金、同玉、5二角成、同玉、6二飛から詰んでいる。
6二飛図1
〔レ〕6二飛という手もある。
これには、6三歩。そこで「5二飛」と、「5三銀打」とが考えられる。
「5二飛」には、5三歩(次の図)
6二飛図2
同飛なら6四玉から入玉できそう。だから同銀だが、そこでなんと先手は4三玉と突入する(次の図)
6二飛図3
これで先手勝ちなのである。5一歩なら、3二歩、同飛、5三玉だし、4一銀でもやはり3二歩である。
6二飛図4
(先手6三歩に)「5三銀打」の場合。この変化は少しばかり複雑だ。
6五玉、6三飛、7五玉、6七飛成、7一飛、5一歩、7三歩成、6四竜、8六玉、5八金、7四と、5五竜、7三角(次の図)
6二飛図5
後手は7四とに、5五竜としたので図の7三角が絶好となったが、6六竜では7六金で、先手で受けられてしまうのでしかたがない。
7三角は、5一角成を狙っている。
6四歩、8八角、5六竜、6六金、4五竜、5八金、同と、7五金、6五金、5一角成(次の図)
6二飛図6
7五金、同と、5一銀、同竜、4一金に、3三角成で、先手勝ち。
5四玉図
〔ラ〕5三銀打 → 先手勝ち
〔リ〕6二銀 → 先手勝ち
〔ル〕5一桂 → 先手勝ち
〔レ〕6二飛 → 先手勝ち
〔ロ〕5三飛
これで、あとは、〔ロ〕5三飛だけだ。
5三飛図1
〔ロ〕5三飛には、6五玉と逃げる
5三飛図2
ここで後手はおそらくは6四歩が最善手である。他の手、たとえば6七とだと、6一飛、5一歩に、5四歩と飛車を押さえられて、先手が良くなる。
また、6一桂はあるが、7一飛で、それも先手良し。
5三飛図3
この6四歩に、逃げる手も検討してみた。しかし7六玉だと6五銀で先手勝てないようだ。また7五玉は、8四銀、7六玉、5五飛で、これも先手悪い。
というわけで、6四同玉。後手は5五銀とし、先手は6五玉(次の図)
5三飛図4
6五玉とした手で、代えて7五玉は、6七ととされて、どうも先手が勝てないようだ。ここは6五の位置が良い。
ここで後手「6三飛」なら、5五玉、4四銀、5四玉で、先手良し。
「5六と」(または6七と)なら、7一飛(次の図)と打って、先手が良い。
5三飛図5
7一飛に、5一歩、7三歩成となって「と金」ができてしまうと、先手玉の入玉を防ぐのが困難で先手が優勢。
よって、ここでは5一飛でどうかだが、それは、同飛成、同銀、3二歩、同玉、4一角、同玉、5三桂(次の図)
5三飛図6
という順で“詰み”。この詰め手順で、最初の3二歩に、2二玉の場合は、3一角、3二玉、4一角(次の図)
5三飛図7
4一同玉、5三桂、3二玉、4二金、4二同銀上、同角成、同玉、4一飛(次の図)
5三飛図8
以下“詰み”である。
5三飛図9
ということで、「5六銀」が、後手本筋の手になる。
ここで先手はどこに逃げるか、悩ましい。“6四玉”、“6六玉”、“7五玉”、“7六玉”の四択。
しかしこのうち、“6六玉”は、6三飛があって簡単に先手負けるので、真っ先に除外。
我々は、「6四玉で先手勝ち」と考えていた。その“6四玉”の変化からみていこう。
6四玉、7二桂、7五玉、5五飛、8六玉、7五銀、7七玉、6七と、8八玉、7六銀、6三角(次の図)
5三飛図10(6四玉の変化)
この図、この6三角は、後手玉への“詰めろ”になっている。
そして先手玉はまだ詰まない。よって先手勝てる――というのがはじめの我々の研究だったのだが――
5三飛図11
後手4五銀。この手が、“詰めろ逃れの詰めろ”なのだ。
6三角による後手玉の“詰めろ”は、後手玉が2二に行ったときに“3四桂”という手が入る。この後手の4五銀は、その3四桂を消して、後手玉の“詰めろ”を解除しているのである。
同時に、5九飛成が可能になり、先手玉が“詰めろ”になった。
これは先手負けである。
5三飛図12(7六玉の変化)
それでは、“7六玉”と逃げるのはどうか。
これは、6七銀不成、8六玉、5五飛(好手。この手で5六飛は7五玉で先手良し)、6一飛、5一歩、6五金(次の図)
5三飛図13
この6五金は、後手からの9四桂、7七玉、7五飛の“詰めろ”を受ける手だが、これを「歩」だと、5六飛でダメだ。(5六飛に7五玉は7二桂がある。) 「金」ならば、5六飛には、6六歩として、先手良し。
しかし、6五金には、後手同飛と切って、同飛成に、7六金とするのが好判断。これは同竜しかなく、以下同銀成、同玉、7九飛、7七銀、6七と(次の図)となる。
5三飛図14
以下、6七同玉、5九飛成で、後手優勢だ。
5三飛図15(7五玉の変化)
“7五玉”。この手が駄目なら、これは「先手負け」が結論となってしまう。
ここで後手に考えられる手は、「7四歩」か、「8四銀」だ。
「7四歩」は、同玉、6二桂、8五玉となりそうだが、そこで後手に早い攻めがないので、5八金くらい。
それはしかし、6一飛、5一歩、6二飛成、5九金に、3四桂(次の図)
5三飛図16
先手が勝ちになった。
5三飛図17
後手は「8四銀」のほうが良さそうだ。8四銀、8六玉、5五飛、6三角(次の図)
5三飛図18
6三角は“詰めろ”である。詰め手順は、3二金、同玉、4一角打、2二玉、3四桂以下の簡単な順。
図からは、8五銀、7七玉、6七と、8八玉となるが、この場合は、“6四玉”の場合(5三飛成図10)の6三角より一手遅くなっている。そのため、4五銀は先手玉の詰めろなっておらず、4一飛、2二玉、6四角で、先手が良い(以下は5一飛、2四桂、同銀、8二飛)
5二歩、6一飛、4一桂と受けるなら、3四歩(次の図)
5三飛図19
3四歩は、同銀なら、1一角、3三銀、5一金で、駒のない後手は受けなしになる。3四歩に2二銀なら、5四桂と打って、これが次に4二桂成、同玉、6四角以下の詰めろになる。
ただしこの3四歩自体は詰めろではない。
よって、後手は先手玉に“詰めろ”以上の手で迫るならまだ勝ちがある。
7五飛、8九金、7七と、9八玉、7六銀、7九桂、8五飛、9六角(次の図)
5三飛図20
先手、受けきった。先手勝ち。
よって、後手5六銀に、“7五玉”なら、先手勝ちになる、とわかった。
すると――、「先手の勝ち」は、これで確定―――ということで、いいのだろうか。
我々は、勝ったのか?
part59につづく