5九香図(最終一番勝負91手目)
[まぼろしのアリスのおもかげ]
わたしの目にはいまも 大空のもと
アリスがいきいきとうごいてやまない
さめてはみえぬ まぼろしのそのおもかげ
がんぜないものは なおもおはないしをと
まなこきらきら 耳そばだてて
あいくるしくにじりよってくるのだ
(『鏡の国のアリス』巻末の詩から ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )
「がんぜない(頑是無い)」= 幼くて、まだ物の是非・善悪の判断がつかない。ききわけがない。
<戦後研究:何が勝負を分けたのか(3)>
5九香図(一番勝負91手目)
90手目△9六歩に、先手は、▲5九香と打った。
【これが勝因か? その3】 5九香
しかし、「理論上の最善手」は、▲5九香ではなく、あるいは
「7五歩」だった可能性がある。
最新ソフトを使って、その手の調査研究をしてみた。
変化7五歩図00
「7五歩」(図)は、後手の7四桂打の手を防いだもの。
さて、ここで後手が何を指してくるか。
候補手は、
≪P≫6四銀右 と
≪Q≫6五歩
変化7五歩図01
≪P≫6四銀右 に、6一竜(図)が有力手(他に5六金打も有力で形勢互角)
この6一竜 は後手の 6五銀 を防いでいる。
対して、6五桂 が有力と見るが、7六玉、5七桂成、7七玉、6五歩、7六金、7四歩(次の図)
変化7五歩図02
8八玉、7五歩、7七金、6六歩、6八歩、7六歩、8七金。
最新ソフトの評価をみると、こう進むとどうやら先手が良さそうだ。
もう少し続けてみる。6七歩成、同歩、6六歩、同歩、6七歩、6九金(次の図)
変化7五歩図03
6九金(図)で、全力で後手の攻撃を受け止める。
7五銀に、5九香。これで後手は攻めなければならない。
7七歩成、同金、6八歩成、同金左、同成桂、同金、9七歩成、同玉、9八歩(次の図)
変化7五歩図04
8八玉、9九歩成、同飛、9八歩、8九飛、7六香、3五桂(次の図)
変化7五歩図05
3五桂で反撃開始。
3四馬、8四馬、同歩、5三香成、同歩、4二金(次の図)
変化7五歩図06
ここまで進むと、はっきり先手良し。
3五馬と桂をはずすと3二金、同玉、5二竜以下後手玉詰みとなる。
後手3一香には、3二金、同香、4三銀。また3一金の受けには同金、同玉、4三歩。
変化7五歩図07
≪Q≫6五歩(図)も調べなければいけない手。
以下
〔イ〕7六金は、6四桂、7七金、6六歩、9六玉、9八歩と進む(次の図)
変化7五歩図08
以下、"入玉" をねらう展開。
8五歩、9九歩成、8四歩、8九と、8三歩成、9九飛、9七歩、7九と(次の図)
変化7五歩図09
ここで(1)8七銀と(2)9五玉を見ていく。
(1)8七銀には、9七飛成(!)がある(次の図)
変化7五歩図10
9七同玉に、8五金と打つ。
以下9四馬、9六歩、同銀、9八馬(次の図)
変化7五歩図11
9八同玉、9六金、9七金、7六歩(次の図)
変化7五歩図12
後手良し。
変化7五歩図13
(2)9五玉(図)の変化。
9七飛成、9六金、同竜、同玉、8二香(次の図)
変化7五歩図14
8四香、6五馬、9五玉、7八と、8六金、7七銀(次の図)
変化7五歩図15
形勢不明。
変化7五歩図16
手を戻し、
≪Q≫6五歩 に、
〔ロ〕5六金(図)があり、このほうが優るかもしれない。
対して後手〈m〉6四銀右 と〈n〉9七歩成と がある。
〈m〉6四銀右 には、8五香 が好打となる(次の図)
変化7五歩図17
7五金 は 9六玉 で先手玉が捕まらなくなるので先手良しになる。
後手はだから 9五金 とこちらに出る。
以下 8二馬、9四桂、7六玉、6六歩、同玉、8五金、同歩、8六香(次の図)
変化7五歩図18
5四歩、同馬、5五歩、4三馬、5四金、同銀、同歩、同馬、4二金(次の図)
変化7五歩図19
先手良し。6五金、同金、同馬、5七玉、2四歩のようにまだまだ激闘は続くが、正しく指せば先手が勝てる形勢。
変化7五歩図20
後手〈n〉9七歩成(図)の場合。
同玉 もありそうなところだが、同香 がより有力と見て、以下を解説する。
9七同香に、9六歩。これは 同玉 と応じるのが良さそう。以下9五歩、8七玉、6四銀右、5四歩(次の図)
変化7五歩図21
5四同馬に、5一竜とする。
そこで4三馬(先手に4二を打たせない)なら、もう一度5四歩と打って、同馬に4二香と打つ。再度の5四歩に4二銀は6一竜、5四馬、5九香で先手良し。
7五金には、4二歩と打って(次の図)
変化7五歩図22
先手良し。
以下7四桂、8八玉、8六金、4一歩成、5五銀、5七金、6六歩、6八金という進行が予想されるが、金が一枚入ると4二とと引く手が後手玉への詰めろになる。
変化7五歩図00(再掲)
以上が我々の “戦後調査”の内容である。ほぼ「互角」の戦いだが、 この通りなら「先手良し」の結果となる。
とはいえ、この「7五歩」の変化を選んで実際に先手(我々)が勝てたかどうかはわからない。
今の結果は、最新ソフトを使って調べた結果であって、戦時中はそれは使えなかったのであるからこの通りに指せたとは思えない(「激指」がわれらの相棒だった)
5九香図(一番勝負91手目)再掲
実戦では、この手、▲5九香を指した。
そして、結果は「先手勝ち」
この手を選んだことが、あるいは「勝因」といえるかもしれない。
しかし、理論上は、この▲5九香は最善手とはいえない(最善は「7五歩」)
というのは―――対して、△7四桂と後手が指した場面は、どうやら「後手良し」の形勢とみられるからである。
7四桂図(一番勝負92手目)
92手目、後手の ≪ぬし≫ は△7四桂 と指した。ここでの最善手である。
次は、この図の研究をしよう。
最新ソフト(水匠2/やねうら王)の評価値は -140 で、最善手は5三香成(-140)、次善手は6五金打(-291)と出ている。
(月)5三香成 = 実戦の指し手
(火)6五金打
(水)6七金
(木)5五金
(金)5六金
(土)7五金
(日)6一竜
研究7四桂図00
(火)6五金打(図)は、6六桂、同金、9七金という鮮やかな手順で後手良しになる(次の図)
研究7四桂図01
この変化は前についた後手9六歩の手が生きた形になっている。
9七同香、同歩成、同玉、7七歩成 と進む。
研究7四桂図02
7七同銀は、9六歩、8八玉、8七香が刺さる。以下7八玉、8九香成、同金、9七歩成、7六歩、2八飛は後手優勢。
なので先手から9六歩と打って後手からの9六歩を防いでみる。
以下9五歩、同歩、9六歩、同玉、9四歩には、同馬と取る。以下同金、同竜、7八と、同金、8四銀。
ここで3五桂と反撃に出る(次の図)
研究7四桂図03
3四馬、8八金、9三香、5三香成、7四角、8七玉、5三桂、4二金、3一香、4三銀(次の図)
研究7四桂図04
4二金~4三銀と攻めて、後手陣にも火の手があがった。うっかり3五馬なら、3二銀成で後手玉が詰んでしまう。
4三同銀、同桂成、9六銀、7七玉、1四歩と応じて、凌ぐ(次の図)
研究7四桂図05
これで形勢は後手が良い。
ここで3一金としたいが4三馬と成桂を取られると先手おもしろくない(以下3二銀、同馬、同金、同玉、5四角、4三銀は後手勝勢)
なのでここで3五歩が考えられるが―――
3五歩、8九馬、同金、4七飛(次の図)
研究7四桂図06
4七飛(図)と打って、後手勝勢。
5七歩、同飛成、6七金打は6五桂がある(6五同金は8七銀成)
6七銀合なら、9四香、同歩、8七飛で以下先手玉が詰む。
研究7四桂図07
(水)6七金(図)と金を引く手。
これは「6六歩、6八金」を入れて、以下6四銀左、5四歩、7五銀と進む(次の図)
研究7四桂図08
「6六歩、6八金」が入っているので次の8六銀に7六玉とはできない。
ここで5一竜のような手で攻め味をつくりたい(次に4二金の狙い)ところだが、8六銀、8八玉、8五金とされると、4二金は、同馬、同竜、9七金打で先手玉が詰まされる。
だから先手はここで8八玉と先に逃げ、8六銀に、9六香として次の8七歩をねらう(次の図)
研究7四桂図09
9七歩、8七歩、7七歩成、同銀、同銀成、同金、7六歩(次の図)
研究7四桂図10
こうなってみると、先手苦戦である。後手陣に手がついていないのが大きい。
7六歩(図)に、7八金引は、8五金~7七銀で仕留められてしまうので、7六同金と取る。
6七歩成、9七玉の後どう攻めるか難しい。
7五歩、同金、9五歩と攻めるのが良さそうだ。以下同香、同金、9六歩に、8五銀(次の図)
研究7四桂図11
9五歩に、9六歩。先手玉を下段に落とせば6七につくったと金が生きてくる。
8八玉に、8四銀(次の図)
研究7四桂図12
8四銀(図)と眠っていた銀を活用する。
粘る手は6八歩だが、9三銀、6七歩、9七角、7八玉、7五角成、7七歩、6五香、6八金打、9七歩成(次の図)
研究7四桂図13
後手勝勢(次の後手の狙いは8七と、同飛、8六銀、8八玉、7六歩)
研究7四桂図14
(木)5五金(図)と金を前進させる手。
この手には6四銀右が好手になる。同金は、同銀、5四歩、6六歩、6八金、7五銀で、後手良し。
よってここは5四金打と返す(次の図)
研究7四桂図15
5四同銀(図)に、同金は8五金で後手良し。5四金が質駒になっているので、8五同歩に、8六金、8八玉、5四馬が先手玉への “詰めろ” になるから。
だから、6四金とこちらの銀を取る。
しかし6三銀の好手がある(次の図)
研究7四桂図16
6三銀に代えて6五銀もあるところだが、5四歩と馬筋を止められるので、6三銀(図)が優る。
同金と取らせ、8五金。先手に5四歩と打つ猶予を与えない。
8五金は同歩とは取れない(8六金、8八玉、7七歩成、同銀、8七馬で先手玉詰み)
よって、
(1)7五銀 と先にもらった銀を打って受けるが、7七歩成がある。
以下同玉に、7六馬(次の図)
研究7四桂図17
6八玉、7五金と進むが、そこで先手の受けが難しい。
7七歩、6五馬、5六銀と受けてみる。
これには6七歩、同銀上、6六歩(次の図)
研究7四桂図18
7八銀と引くと6七銀で後手勝勢となる。
よってここは6五銀と取るが、6七歩成、同玉、6五金(次の図)
研究7四桂図19
後手良し。
後手の馬がいなくなって後手陣にスキができている。しかし後手の「金銀銀銀」の持駒は大きく、後手優勢である。
研究7四桂図20
8五金に
(2)9五銀(図)を考える。
同じように7七歩成、同玉、7六馬、6八玉となったとき、9五金と銀をとるのでは先手良しになる。
この場合は、7七歩成、同玉、7六金とする。以下6八玉、6六歩(詰めろ)、5七玉、7七歩(次の図)
研究7四桂図21
7七同銀、6七歩成、4八玉、7七金、7五馬、7八と、3一銀(次の図)
研究7四桂図22
1一玉に、7四馬。この手は、桂を取ると同時に後手に8九との後、4五飛の王手馬取りを打たれる手があり、それを未然に避けた。
ここで3八玉とするのは、3六金と打って、次に後手7七飛のような手をねらって後手良し。
5二香成は2八飛(3八馬なら6五馬、3九玉なら6八飛成)で先手玉 “寄り”
5二金は、5六歩がありこれも後手優勢(次に2八飛、3八歩、4六金の狙い)
では、5一竜と攻めてどうか。
以下、4六銀、4二金、2八飛、3八歩、7六馬(次の図)
研究7四桂図23
7六馬(図)として、後手優勢。
2二銀成、同玉、3二金(同玉なら5二竜で詰む)、同馬と進むだろう。
このとき、先手玉は4七銀打以下の “詰めろ” になっている。だから先手は受けに回ることになるが、どう受けても、正しく攻められると先手勝てない。
研究7四桂図24
(金)5六金(図)はさえない手にみえるが、実は防御力が高い。
6四銀右なら7一竜で難しい勝負になる。
ここは、6四銀左が最善手である。
以下5四歩、同馬(次の図)
研究7四桂図25
ここで
[R]6八金、
[S]4二金、
[T]5一竜 が有力候補手。
[R]6八金、は、7五銀、6五金打と進む。
後手7五銀に6五金打と打って受けるのが5六金としたときからの構想。
しかし6七歩の切り返しがあった。(次の図)
研究7四桂図26
6七同銀は6五馬、同金、8六銀(7六玉と逃げられない)だし、6七同金は、6六歩、6八金、8六銀で後手勝ちになる。
したがってここから、5四金、6八歩成、同歩と進む。
そこで後手6六歩(次の図)
研究7四桂図27
6六歩(図)と打って、次に8六銀をねらう。
適当な受けがないので、先手は馬の居なくなった後手陣を攻めることを考える。
〈1〉8四馬、同銀、5一竜と勝負してどうか(5一竜に代えて4二金は3一角で後手良し)
5一竜は3二金、同玉、5二竜以下の “詰めろ” である。
しかし、8六銀、8八玉、2五角がピッタリの返し技(次の図)
研究7四桂図28
“詰めろ逃れの詰めろ” の角打ち。後手勝ち。
研究7四桂図29
〈2〉4二角(図)はどうか。
この4二角は攻めだけでなく受けにも利いていて、ここで後手が8六銀と出てくれば、7六玉として、「7五」に角の利きがあるので先手良しになるのだ。
この4二角に対しては、5三歩がある。次に8六銀とする意味だが、8四馬、同銀、8二竜と詰めろを掛ける。
後手は1四歩で詰めろを受け、先手は4三金と迫る(次の図)
研究7四桂図30
先手好感触の手が続いているが、8六銀、8八玉、7七銀成、同銀、同歩成、同玉、7六歩、同玉、5四角と進んで―――
研究7四桂図31
後手勝ちになった。
研究7四桂図32
[S]4二金(図)と打つ手。
これは7五銀、6八金(7七を強化した)、6七歩、同金、6六歩、6八金、8六銀、8八玉、7七歩成、同金、9七歩成と進む。これは一本道の変化だ(次の図)
研究7四桂図33
9七同香、同銀成、同玉。
同玉に代えて7九玉は、7六歩、6六金、同桂、同金、7七香、6八玉、7八香成、5七玉、8九成香と進むが、先手の持駒が桂と歩だけなので先手に勝ち目がない。
9七同玉には、しかし、6四馬がある(次の図)
研究7四桂図34
6四馬(図)で、4二に打った金が消されてしまう。
以下8八玉、4二馬、5三歩、7六歩、同金、4三馬のような進行が予想されるが、結局先手に攻める余裕が生まれてこない。
後手良し。
研究7四桂図35
[T]5一竜(図)と竜を寄っておくのはなかなか有力な手である。
対してソフトは8五金を示すが、以下8八玉に、はっきりした決め手がわからない(つまり形勢不明)
ここは7五銀を見ていく。これには6五金打が用意の手だが、5三馬としてどうなるか。
先手は4六金で香車を利かす。後手は3一馬(次の図)
研究7四桂図36
ここで先手にチャンスが来ているようにも感じられる局面であるが、実際にはどうだろうか。
〈ア〉5二香成 と、〈イ〉6八金 を有力手として見ていく(他に〈ウ〉5二竜は、6六歩、5三歩、5一歩、同竜、8六銀、7六玉、7五歩、同金、同銀、6五玉、5三桂で後手良し)
〈ア〉5二香成に、後手は6六歩。
そこで4二成香としたいところだが、8六銀、7六玉、7五歩、同金、同金、同馬、同銀、同玉に、6四角があって後手勝勢になる。
したがって後手6六歩に、先手は6八金とし、すると以下8六銀、8八玉、9七歩成、同香、同銀成、7九玉、8六桂と進む(次の図)
研究7四桂図37
ここで4二成香で勝負。
7八桂成、同玉、7七香、同金、同歩成、同玉、6七金、8六玉(7六玉には8七銀で後手勝勢)、4二馬(次の図)
研究7四桂図38
ここで4二馬(図)と成香を取って、同竜に、3一銀、5二竜、5一歩、9二竜、8五香(次の図)
研究7四桂図39
8五香(図)で後手優勢である。
研究7四桂図40
〈イ〉6八金(図)と後手の攻めに備える手。
これには6七歩がある。
対して平凡に同金、6六歩、6八金と応じていたのでは8六銀で先手の完封負けとなる。
なのでここは6七同銀と応じ、6六歩に7六銀で勝負する。
以下9七歩成、同香、7六銀、同玉、7五銀(次の図)
研究7四桂図41
8七玉、8六銀、7八玉、7七歩、7九玉。
先手は7九まで押し込まれてしまったが、9七銀不成なら、7七金から6八玉と右辺へ逃げるつもりである。
後手は5三桂(次の図)
研究7四桂図42
後手のこの5三桂(図)はとしてこの桂馬を攻めに使おうというのと、とする。
5五金に、9七銀不成、7七金(代えて5七金は4五桂がある)、7六歩、6八玉、7七歩成、5七玉、4一金(次の図)
研究7四桂図43
4一金(図)と強化して後手陣にスキがなくなった。図以下は7一竜、9八銀不成の進行が予想される。
後手優勢。
研究7四桂図44
(土)7五金(図)もある。
この手には、後手は6四銀左とする。
対して、7四金と桂を取り、同銀に、3五桂として勝負してどうか(次の図)
研究7四桂図45
以下、6五馬に4二金と打てる。
そこで3四歩なら、3二金、同馬、4三銀で先手有望かもしれない。
後手7五銀左のほうが問題だ。この手は9七金以下の “詰めろ” になっている。
だから先手は8四馬と切る。
研究7四桂図46
8四同歩なら先手玉への詰めろが消えるので、3二金、同馬、4三銀と攻めるのが先手ねらい。
後手は7七歩成、同玉を入れ、先手玉が9筋から逃げる手をなくしておいて、それから8四歩。
先手は予定の3二金(次の図)
研究7四桂図47
3二同馬に、4三銀と打つ。
しかし、4三同馬と取り、同桂成、6六銀打と切り返され―――
以下8七玉(8八玉は7七角以下詰み)、8六銀、同玉、8五金と進める(次の図)
研究7四桂図48
先手玉は詰んでいる。
研究7四桂図49
(日)6一竜(図)は、
6六桂、同竜、7四銀と進む。
以下、変化の一例を示しておく。
5四歩、同銀。
そこで5四同香、同銀、4二金が打てるが、それは3一金でうまくいかない。
よって5四歩、同銀に、6一竜と入り、7五銀に、6七桂(次の図)
研究7四桂図50
6七桂(図)と打って、後手に攻めの催促をする(次に6五銀がくるともう先手は勝てそうにないのでその前に無理気味に攻めさせる)
8六銀、同玉、8五金打、8七玉、6六歩(次の図)
研究7四桂図51
6八金、6七歩成、同銀、7五桂、7八玉、6五銀。
そこで5二香成。先手にも攻めの手が入った。
6六歩、5八銀、5六銀と進んで次の図。
研究7四桂図52
ここで4二金が期待の攻めだ。
しかし、4二同馬、同香成、7七歩成、同金、6七金とされ―――(次の図)
研究7四桂図53
7七歩成、同金(同玉には7六金打)、6七金(図)という手順で以下、先手玉は “詰み”。
後手勝ち。
7四桂図(一番勝負92手目)再掲
(月)5三香成 = 実戦の指し手(後手良し)
(火)6五金打 →後手良し
(水)6七金 →後手良し
(木)5五金 →後手良し
(金)5六金 →後手良し
(土)7五金 →後手良し
(日)6一竜 →後手良し
他に(星)5四歩もあるが、6六桂、5三歩成、同歩で、後手優勢。
結局、この図は正しい形勢は「後手良し」なのである。
そして実戦では、我々終盤探検隊は、(月)5三香成 と指した。
【これが勝因か? その4】 5三香成
5三香成図(一番勝負93手目)
結果的に、ここで▲5三香成 と指したことが “勝因” の一つになっている。
(正しく応じられると後手良しだったのだが)
ここで▲5三香成 と指せるのも、後手が△9六歩 と指して▲5九香 と打つ一手の猶予を与えてくれたからである。
次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(4)]につづく